
敵対的買収についてお調べですね。
敵対的買収とは買収対象会社の経営者の合意なく株式買収を実行することです。
普段から敵対的買収の対策をしておかなければ、いきなり公開買付を仕掛けられ、経営権をはく奪されるかもしれません。
そこで今回は敵対的買収の基礎知識や買収防衛策を詳しく解説します。
敵対的買収についての理解を深め、常に株主から応援される企業であり続けましょう。
目次
1.敵対的買収とは

敵対的買収とは買収対象会社の経営者の合意なく株式買収を実行することです。
英語では、Hostile Take Overと言います。
敵対的買収が成立すると、経営者はその地位を失う可能性が高いです。
敵対的買収の仕掛け人は、対象会社の経営権を支配できる議決権を取得するため、総株主の議決権の過半数の取得を行います。
そのため、株主が株を売却し、総株主の議決権の過半数を取得されると敵対的買収は成立してしまうのです。
一般的に、公開買い付け(TOB)によって敵対的買収は仕掛けられます。
市場価格の2~5割増しの株価で買い占めることが多いです。
敵対的買収を仕掛けるにはかなりの資金力を持っている必要があります。
1-1.敵対的買収の反対は友好的買収

敵対的買収の反対は友好的買収です。
友好的買収とは、買収者・売却者の両社経営者が合意をしたうえで行う買収を指します。
ニュースなどで報道される「M&A」や「買収」は、ほとんどが友好的買収です。
事前に合意したうえで買収が実行されるため、円滑に取引が進みます。
一方、敵対的買収は株式を買い占めて強制的に実行する買収です。
買収者が乗っ取ることから「敵対的」という表現が用いられます。
2.敵対的買収の事例

ここで敵対的買収の事例をご紹介します。
日本で敵対的買収が有名になったきっかけとなった2005年のライブドアによるニッポン放送への敵対的買収を見ていきましょう。
結果的にライブドアの敵対的買収は失敗に終わっています。
もともと、ライブドアが狙っていたのはフジテレビの経営権でした。
そのフジテレビの筆頭株主がニッポン放送だったため、まずはニッポン放送を買収しフジテレビの筆頭株主になろうとしたのです。
ライブドアは株式市場で多くのニッポン放送株を買い占め、最大株主となることが出来ました。
それを見てフジテレビもニッポン放送株を買い占めますが、ライブドアの買い占めに追い付きません。
そこで、ニッポン放送の持つフジテレビ株はすべてソフトバンク・インベストメントに5年間貸株にすることにしたのです。
このため、ニッポン放送のもつフジテレビの経営権はすべてソフトバンク・インベストメントへ移ってしまいました。
結果、ニッポン放送の経営権を取得したにもかかわらず、ライブドアは、目的のフジテレビ株を取得できなかったのです。
目的達成が出来なかったライブドアは、取得したニッポン放送株50%以上をフジサンケイグループに売却しました。
このようにニッポン放送の経営権を取得したものの、目的が達成できなかったため失敗に終わったのです。
3.敵対的買収は必ずしも悪いものではない

敵対的買収は、必ずしも悪いものではありません。
なぜなら、経営者が変わることで会社の経営状況が良くなり売り上げ向上のきっかけになる可能性があるからです。
売上向上によって株主や従業員により多くの利益を還元する場合もあります。
当然、現在の経営者当事者であれば経営権が失なわれることを嫌うでしょう。
しかし、ニッポン放送の株主は「ライブドアに株を渡した方が儲かる」と判断して株を売っています。
このように、敵対的買収は市場や経済、株主などにとって必ずしも悪いことではないことを覚えておくべきです。
4.敵対的買収のターゲットとなりやすい企業

敵対的買収は上場企業であればターゲットとなってしまう可能性があります。
中でもどのような企業がターゲットとなりやすいのか特徴を確認しましょう。
特徴1.株主構成が不安定

株主構成が不安定になっている企業は敵対的買収のターゲットにされやすいです。
経営者や協力会社が半分以上の株を保有している場合は買い占めを行っても経営権を取得できません。
しかし、利益を求める投資家が主な株主構成となっているのであれば、株主構成が不安定な状態です。
株主が利益が出ると判断すれば株主は保有株を売却するので、敵対的買収は成功しやすくなります。
株主構成が不安定な企業は、別の企業と株式の持ち合いをするようにしましょう。
特徴2.独自の強みを持っている

独自の強みを持っている企業は、敵対的買収のターゲットになりやすいです。
高い技術力を持っている・業界1位のブランド力を持っている・シェア率No.1などの強みを欲しがる企業はたくさんあります。
また、特定の免許や資格を持った人材の採用は難しいため、敵対的買収で獲得しようとするケースもあるのです。
独自の強みを持った企業を買収してその強みを自社に活かそうとします。
特徴3.純資産額に対して株価が低い

純資産額に対して株価が低い企業も敵対的買収のターゲットにされやすいです。
純資産額とは企業の持つ資産から負債を差し引いた額を指します。
つまり、純資産額とは企業を価格で表したときの額のことです。
しかし、純資産より株価が低ければ、安い価格で良いものを手に入れることができます。
「手に入ればラッキー」と敵対的買収を考える経営者も多いでしょう。
5.中小企業での敵対的買収はほとんどない

中小企業での敵対的買収はほとんどありません。
なぜなら、中小企業には株式の譲渡制限があるからです。
つまり、非公開株式で公開買付が出来なくなっています。
株主が第三者に株式を譲渡したい場合は、取締役会または株主総会での承認を得なければなりません。
また、中小企業の場合株の半分以上を経営者や創設者が保有しているケースは多いです。
そのため、経営者の望まない敵対的買収は起きないようになっています。
そのため、経営権が強制的にはく奪される恐れがほとんどないといえるのです。
6.代表的な5つの買収防衛策

敵対的買収をされないためには、買収対策を行わなければいけません。
最大の敵対的防衛策は利益を上げ、株主に利益分配をしっかり行うことです。
そうすることで「今の経営者に投資することで自分も儲かる」と感じ、株主が株を手放さなくなります。
しかし、しっかり利益分配を行っていても敵対的買収を仕掛けられる可能性は0にはなりません。
万が一、敵対的買収を仕掛けられた時の買収防衛策を知っておくべきです。
今回は代表的な5つの買収防衛策について確認しましょう。
防衛策1.ホワイトナイト

ホワイトナイトとは、敵対的買収者に対抗して、友好的に買収・合併する会社のことです。
白馬の騎士という意味があります。
ホワイトナイトの目的は、敵対的買収者による買収から防衛することです。
敵対的買収の際に自ら友好的な企業の支配下となることを選択します。
ホワイトナイトについては、『ホワイトナイトとは?具体的な事例から意味を学び敵対的買収を防ごう』で詳しく説明しています。
防衛策2.マネジメントバイアウト(MBO)

マネジメントバイアウト(MBO)とは、企業や事業部門の経営陣が、企業や事業を買収して経営権を獲得することです。
マネジメントバイアウトを行うと、上場企業であっても非公開にしなければならないという条件があります。
株式が非公開になると、敵対的買収をすることは出来ません。
マネジメントバイアウトをすることで第三者に経営権を渡すことを防ぐことができます。
マネジメントバイアウトについては、『MBOとは?社内風土を維持しながら事業継承を行うポイントを解説』でも詳しく説明しています。
防衛策3.黄金株

黄金株とは、会社の合併などの議案を否決できる特別な株券のことを指します。
黄金株は、基本的に1株のみ発行することができるのです。
敵対的買収を仕掛けられた際に、黄金株を保有する株主によって重要事項の議決を拒否できます。
友好的な株主に黄金株を与えることが一般的です。
そして、敵対的買収による合併提案を否決してもらうことができます。
防衛策4.ポイズンピル

ポイズンピルとは、既存の株主に新株予約権を発行しておくことで敵対的買収を食い止める方法です。
企業が敵対的買収者に自社の株式の一定数を奪われてしまった場合に使用されます。
ポイズンピルは、毒薬条項という意味です。
毒薬条項には、あらかじめ敵対的買収をされた場合にどれだけの新株を発行するのかの記載がされています。
新株予約権をすでに発行されている既存株主が、市場価格よりも安い価格で新株を取得できるのです。
防衛策5.ゴールデンパラシュート

ゴールデンパラシュートとは、企業買収で役員が解任された場合に大幅に割増された退職金を支給させることで、企業価値を低下させる方法です。
買収コストを引き上げることで、買収者との交渉材料として活用することができます。
敵対的買収を仕掛けられそうな場合でも、経営陣の保身のためではないと主張することができるのです。
ほかに買収防衛策はたくさんあります。
詳しくは『買収防衛策とは?正しい方法を理解して敵対的買収を防ごう』で説明していますので、確認してみて下さい。
7.普段からできる2つの買収防衛策

買収防衛策をお伝えしましたが、いずれも敵対的買収を仕掛けられてから行うアクションばかりです。
そこで、普段から敵対的買収を防ぐための買収防衛策もあります。
- 企業価値向上
- 安定株主の獲得
これらの買収防衛策を常に意識することで、企業を守れる確率がグッと上がります。
それぞれ詳しく確認しましょう。
方法1.企業価値向上

敵対的買収を防ぐために、企業価値の向上させることを心がけましょう。
企業の価値を向上させ、株主や従業員の満足度を上げることで敵対的買収を防ぐことができます。
そのためにも、株主の還元率を定期的に見直したり満足度を確認する必要があるでしょう。
そうすることで、企業価値は向上します。
企業価値を向上させるには、以下の3つのポイントが大切です。
- 事業の利益を高める
- 独自の強みを生かす
- 法務・財務状況をクリアにする
では、1つずつ見ていきましょう。
ポイント1.事業の利益を高める
売却したい会社の事業が利益を出していることは、企業価値を高める大きな要素です。
過去から安定して利益を生み出しており、今後も継続できる事業だと判断されれば企業価値は高まります。
そのために、しっかりと売り上げを伸ばし無駄な経費を削ることが大切です。
ポイント2.独自の強みを生かす
企業価値を高めるには、他社にはない強みを持っていることも大切です。
他の企業にはないような強みがあれば、高額でも手に入れたいと思われるでしょう。
独自の強みとは、人材・ノウハウ・販売先・取引先・技術・営業拠点・製造拠点など多岐に渡ります。
自社にしかない強みを、自信を持ってアピールしましょう。
ポイント3.法務・財務状況をクリアにする
法務・財務状況をクリアにすることが大切です。
なぜなら、少しでもリスクが見えると売却額は大幅に引き下げられてしまうからです。
法務・財務状況の確認するポイントは、以下になります。
- 訴訟問題を抱えていないか
- 取引先との契約に問題がないか
- 会計処理が適正に行われているか
- 簿外債務がないか
企業価値を下げないため、これらを全てクリアにしておきましょう。
企業価値についての詳細は、『企業価値とは?評価方法やメリット、向上の条件を分かりやすく解説!』を併せて確認してくださいね。
方法2.安定株主の獲得

敵対的買収を防ぐために、安定株主を獲得しましょう。
安定株主とは、短期的目線の利益ではなく長期的に株式を購入してくれる株主を指します。
安定株主を多く獲得していることで、敵対的買収を防ぐことができます。
万が一敵対的買収を仕掛けられたとしても、ホワイトナイトの役割を果たしてくれる可能性があるでしょう。
安定株主を獲得するためには、企業価値を高める必要があります。
他にも、長期保有した場合にインセンティブを与えるなどの工夫が必要です。
8.敵対的買収から防衛するには経営コンサルタントに相談しよう

敵対的買収から防衛するためには、経営コンサルタントに相談しましょう。
買収防衛策は非常に種類が多く、タイミングや状況によってどの買収防衛策を実施すべきか判断できない経営者は多いです。
経験や知識の多い経営コンサルタントに相談することで、最適な対策方法を教えてくれます。
また、敵対的買収を仕掛けられてから買収防衛策を実施するのは遅いです。
普段から企業価値を高めるためにも、経営コンサルタントの力を借りましょう。
まとめ
敵対的買収とは買収対象会社の経営者の合意なく株式買収を実行すること。
普段から敵対的買収の対策をしておかなければ、いきなり公開買付を仕掛けられ、経営権をはく奪されるかもしれません。
経営コンサルタントの力を借り、買収防衛をしっかりと行うべきです。
敵対的買収についての理解を深め、常に株主から応援される企業であり続けましょう。