垂直型M&Aとは?期待されるシナジー効果、注意点について

垂直型M&Aとは?期待されるシナジー効果、注意点について

M&Aは、その目的によっていくつかのタイプに分けられ、得られる効果もさまざまです。そのなかの1つに垂直型M&Aがあります。本記事では、垂直型M&Aの基本概要とシナジー効果、注意点について解説します。

垂直型M&Aとは

垂直型M&Aとは

M&Aは、大きく3つのタイプに分類されます。垂直型M&Aの詳しい内容に入る前に、垂直型M&Aの基本と、水平型M&Aや新規型M&Aとの違いをみていきましょう。

垂直型M&Aとは

垂直型M&Aとは、事業の製造・流通・販売などの全てのラインを一気通貫できるように統合する手法です。

例えば、アパレル産業において衣類の製造のみを行っていた会社が、実店舗やECサイトの事業を取り込んで販路も獲得するようなケースが挙げられます。

垂直型M&Aの目的

垂直型M&Aの目的は、バリューチェーンの強化にあります。前述したアパレル産業の例を挙げると、製造から販売ラインを一社で手掛けることによって、外部の業者を通すことなく消費者に衣類を届けられるようになります。

仲介業者を減らして手数料を抑えると、総合的なコストを大幅に下げることになり、会社全体の利益向上に貢献することになります。

水平型M&Aとの違い

水平型M&Aとは、同じ業種・業態同士で行われる手法です。わかりやすい例は、現在の大手銀行です。

メガバンクと呼ばれる3社は、銀行同士の水平型M&Aを繰り返してグループを成長させてきました。

水平型M&Aの目的

水平型M&Aの目的は、スケールメリットの享受です。事業規模の拡大により、既存市場のシェア獲得や事業コストの合理化を図って企業を成長させます。

銀行同士であれば、それぞれが抱え持つ顧客リストを統合するだけでもマーケティング分野において大幅なアドバンテージを得ることができます。

新規型M&Aとの違い

新規型M&Aとは、新たな事業分野の開拓を目的に行われる手法です。幅広い事業を手掛けている大手グループは、新規型M&Aを繰り返して成長を遂げてきました。

日本企業で特に目立つのは楽天グループであり、楽天市場・楽天銀行・楽天証券・楽天トラベルなど、枚挙にいとまがありません。

最近では、楽天モバイルとして携帯キャリアサービスに参入することでも話題になっています。

新規型M&Aの目的

新規型M&Aの目的は、新規分野の開拓です。既存の事業と直接関連性のない事業では、シナジー効果を期待することはできません。

直接的なシナジー効果を目指すというよりは、資金の投資先を探しているという例えが適切だといえるでしょう。

垂直型M&Aに期待されるシナジー効果とは

垂直型M&Aに期待されるシナジー効果とは

垂直型M&Aは、ラインを一貫させることでバリューチェーンの強化を図る手法です。ここでは、具体的なシナジー効果を解説します。

【垂直型M&Aに期待されるシナジー効果とは】

  1. トップラインの成長
  2. 人材の獲得
  3. 技術の獲得

1.トップラインの成長

垂直型M&Aに期待されるシナジー効果1つ目は、トップラインの成長です。M&Aの目的は、売上高や営業収益といったトップラインの成長にありますが、垂直型M&Aでは特に強いシナジー効果を得られます。

特定の事業において、自社に足りない部分を垂直型M&Aで補うことになれば、部分的に外部に委託する必要もなくなり、大幅なコストカットの実現が可能です。

ひいては事業全体の利益向上に繋がり、トップラインの成長も果たせるようになります。

2.人材の獲得

垂直型M&Aに期待されるシナジー効果2つ目は、人材の獲得です。新たに会社や事業を取得すると、それを運営するための人手が必要になります。

例えば、実店舗を構える事業を取得するのなら、そこで働く従業員が必要になります。垂直型M&Aは、これまで事業に従事して経験を積んできた人材を獲得して、そのまま働いてもらうことができます。

3.技術の獲得

垂直型M&Aに期待されるシナジー効果3つ目は、技術の獲得です。製造・流通・販売は扱う製品は同じでも、それぞれに必要な技術は異なります。

これまで携わっていなかった事業分野は、技術・ノウハウの面で不足していることが想定されるため、M&Aと同時に補わなくてはなりません。

垂直型M&Aであれば、事業と同時に特許権や技術・ノウハウを獲得してバリューチェーンの強化に大きく貢献してくれます。

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垂直型M&Aが行われる際の流れ

垂直型M&Aが行われる際の流れ

垂直型M&Aで会社を買収する場合の流れは、以下のようになっています。

【垂直型M&Aが行われる際の流れ】

  1. M&Aの専門家へ相談
  2. 買収先の選定・交渉
  3. 基本合意書の締結
  4. デューデリジェンスの実施
  5. 最終契約書の締結
  6. クロージング
  7. PMIの実施

1.M&Aの専門家へ相談

垂直型M&Aはシナジー創出の最大化を図るために、専門家の知識が欠かせません。M&Aの仲介を専門的に請け負う専門家に相談することから始めます。

相談先の候補はいくつもありますが、垂直型M&Aでおすすめの相談先はM&A仲介会社です。

幅広いネットワークを保有しているため、垂直型M&Aで取り込みたい事業をもつM&A先の選定で大幅なアドバンテージが得られます。

2.M&A先の選定・交渉

相談先の専門家が決定したら、専門家のネットワークを活用してM&A先の選定に移ります。

垂直型M&Aに求める条件や達成したい目的を専門家と共有しておくことで理想的なM&A先が見つかる可能性が高まります。

選定を続けていくうちに特定の会社とやり取りを行うようになったら、M&A先より提供される企業概要書等の検討を行い、交渉を進めます。

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3.基本合意書の締結

基本合意書は、現段階における交渉内容に双方が合意していることを示すための契約書です。

取引価格や今後のスケジュールなどが記載されますが、今後の交渉によって変更される可能性があり、独立交渉権や秘密保持義務など一部の条項を除き、法的な効力を持ちません。

4.デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスは、取引対象の価値・リスクを調査する活動です。M&A先より提供されている資料と実態に差異がある可能性を考慮して、買い手側から専門家を派遣して行います。

税務・法務・財務等のあらゆるデューデリジェンスを並行して行い、潜在的なリスクを徹底的に調査して不安要素を取り除きます。

5.最終契約書の締結

最終契約書は、M&A取引の最終的な内容に双方が合意していることを示す契約書です。

デューデリジェンスの内容が反映されているため、全ての条項が最終的な内容となり、法的な効力を持ちます。

6.クロージング

最終契約書の内容に基づいて、取引対象の引き渡しと取得対価の支払いを行う、クロージングを実施します。

売り手は、取引先や従業員に説明する期間を必要とするため、最終契約書締結から一定期間を空けてから実施されることが一般的です。

7.PMIの実施

PMIとは、買収後の事業安定化を図るために統合プロセスです。会社や事業を引き継いだとしても、即座に平常運転とはいきません。

従業員が環境の変化に戸惑ってしまうことも想定されるため、さまざまな施策を講じる必要があります。

代表的な施策としては、売り手企業の重要な人材に一定期間、会社に残ってもらう顧問契約です。経営者や役員に現場を回せるようになるまで、事業の安定化に大きく貢献してくれます。

垂直型M&A実行の際に使用される手法

垂直型M&A実行の際に使用される手法

垂直型M&Aを行う際に使用される手法には、主に株式譲渡と事業譲渡があります。ここでは、それぞれの特徴をみていきましょう。

【垂直型M&A実行の際に使用される手法】

  1. 株式譲渡
  2. 事業譲渡

1.株式譲渡

株式譲渡は、売り手が保有する株式を譲り受けることで、経営権を取得する手法です。

買収は基本的に100%の株式取得を目標とすることが多いため、株式譲渡が多く用いられています。

例えば、ある製品の製造ラインを手掛ける会社を子会社化した場合、その会社が保有する工場や技術、人材をそのまま引き継ぐことができます。

製品の製造ラインの1つを自社で行えるようになるので、大幅な効率化に期待ができます。

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2.事業譲渡

事業譲渡は、事業あるいは事業の一部を取得する手法です。会社自体を買収するのではなく、必要となる事業のみを買収します。

工場は自社で用意できるけど、人材だけは外部から調達したいという時に活用されます。垂直型M&Aを目指すうえで必要な事業のみを買収できるので、徹底的に無駄を省くことが可能です。

垂直型M&Aの注意点・問題点

垂直型M&Aの注意点・問題点

垂直型M&Aは、正しく実施できれば絶大な効果を期待できますが、注意点もいくつか存在します。ここでは、垂直型M&Aの注意点を3つ解説します。

【垂直型M&Aの注意点・問題点】

  1. 市場調達の方がコストを削減できる可能性が常にある
  2. 企業として大きくなりすぎるリスク
  3. 法的なコスト

1.市場調達の方がコストを削減できる可能性が常にある

垂直型M&Aの注意点・問題点1つ目は、市場調達の方がコストを削減できる可能性が常にあることです。

自社でラインの統合化を図っても、効率化ができなければコストやリスクが増加するだけになってしまいます。

その都度、仲介手数料を払ってでも市場から調達するほうが、結果的にコストを抑えられることもある点に注意しなければなりません。

2.企業として大きくなりすぎるリスク

垂直型M&Aの注意点・問題点2つ目は、企業として大きくなりすぎるリスクです。企業が大きくなると全体的な維持コストが大きくなるデメリットがあります。

垂直型M&Aで効率化を図り、業績が伸びるなら問題ありませんが、何かしらの問題が発生して業績が落ち込んだりすると一気に負担がのしかかってしまいます。

その際は、保有施設の売却や従業員のリストラなどを行うこともあり、結果的に垂直型M&Aの実施前より事業規模が小さくなる可能性もあります。

3.法的なコスト

垂直型M&Aの注意点・問題点3つ目は、法的なコストです。垂直型M&Aではさまざまな手続きを行う必要があり、それらには法的な内容も含まれます。

法的リスクを伴いつつも、安心して垂直型M&Aを実施するためには、弁護士などの専門家に報酬を支払って手続き代行・アドバイスを受ける必要があります。このように法的リスクを抑えるための支出も法的コストといいます。

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垂直型M&Aの事例

垂直型M&Aの事例

垂直型M&Aの事例として分かりやすいのは、スマートフォンのiPhoneで知られる「Apple」です。

iPhoneは、2007年6月29日の初代登場以降、進化を繰り返して様々な機能が追加され続けています。

時代の流れと共に変わる消費者のニーズに対応するべく、常に最新技術を搭載し続けることを可能とした背景には数々の垂直型M&Aの姿がありました。

【垂直型M&Aの事例】

  1. AppleによるPrimeSense買収
  2. Appleによるノバウリス・テクノロジーズ買収

1.AppleによるPrimeSense買収

記憶に新しいのは、3D技術を保有するイスラエルのPrimeSense社を買収した事例です。

2013年に約360億円を投資して行われたもので、しばらく後にiPhoneXの顔認証機能「Face ID」に応用されることが判明します。

また、FaceIDのために、PrimeSense社以外にもイスラエルのスタートアップを何社も買収しています。1つの機能を追加するために何百億円の投資を行う、Appleの垂直型M&Aの事例でした。

2.Appleによるノバウリス・テクノロジーズ買収

英国のノバウリス・テクノロジーズ社の買収事例です。リアルフェースや音声アシスタントの技術を保有する会社で、iPhoneの新機能や搭載されている機能の改善に応用されることが期待されています。

今回の買収事例は、GoogleとAppleのAIスタートアップ争奪戦としても話題になり、2010年~2019年のAIスタートアップ買収件数は、Appleが20件となりトップという結果になりました。

このように、競争率が激しい業界でも積極的に垂直型M&Aが活用されていることが分かります。

垂直型M&Aにおすすめの相談先

垂直型M&Aにおすすめの相談先

垂直型M&Aの目的は、ライン統合によるバリューチェーンの強化です。業種や規模に合わせた適切なM&A手法を選択することで、効率的に実践することで効果を最大限に高めることができます。

M&A総合研究所には、M&Aに明るい多数の専門家が在籍しています。状況に合わせた垂直型M&Aプランを提示して、シナジー効果を最大化を図ります。

料金体系は完全成功報酬制を採用しています。成約まで手数料が発生しませんので、安心してご相談いただけます。

無料相談は24時間お受けしています。垂直型M&Aを検討の際は、M&A総合研究所にご相談ください。

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まとめ

まとめ

垂直型M&Aは、ライン統合を図り、バリューチェーンの強化を目的として行われる手法です。垂直型M&Aを実施する際は、いくつかの注意点を抑えなければならないため、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けて進めるようにしましょう。

【垂直型M&Aに期待されるシナジー効果とは】

  1. トップラインの成長
  2. 人材の獲得
  3. 技術の獲得

【垂直型M&A実行の際に使用される手法】

  1. 株式譲渡
  2. 事業譲渡

【垂直型M&Aの注意点・問題点】

  1. 市場調達の方がコストを削減できる可能性が常にある
  2. 企業として大きくなりすぎるリスク
  3. 法的なコスト

【垂直型M&Aの事例】

  1. AppleによるPrimeSense買収
  2. Appleによるノバウリス・テクノロジーズ買収

垂直型M&Aにお悩みの際は、M&A総合研究所にご相談ください。M&Aの目的や条件をお伺いしたうえで最適なM&Aプランを提示いたします。