
「廃業を避けるためにタクシー会社のM&Aを行うべきか悩んでいる」とお考えではないでしょうか。
近年のタクシー業界では、観光客の増加やインバウンド需要の高まりを受けて業界全体で売上が回復しています。
そこで、ドライバーやタクシー車両を効率的に確保する手段としてM&Aによってタクシー会社を買収するケースが増加中です。
この記事では、そんなタクシー業界でのM&Aを有利に成功させるためのポイントや注意点を紹介します。
タクシー会社のM&Aの成功事例も確認して、事業承継問題を解決しましょう。
目次
1. タクシー会社のM&Aで廃業は避けられる!業界動向は?

近年のタクシー業界では、ドライバーや車両を確保する手段として『M&A』が選ばれています。
タクシー業界とは「一つの契約によって規定の乗車定員数未満の自動車を貸し切って乗客を目的地まで運ぶ事業」のことです。
近年のタクシー業界では、観光客の増加やインバウンド需要の高まりを受けて、需要が回復傾向にあります。
しかし、少子高齢化や競争激化による影響を受けて、多くの会社でドライバーやタクシー車両が不足しているのが現状です。
上記の理由から、ドライバーやタクシー車両の確保を目的として売買に動いている企業が多くいます。
ですから、中小企業であったとしても売買が成立する可能性は高いです。
具体的な目安として、ドライバーとタクシー車両をそれぞれ30件以上抱えているタクシー会社は、有利な条件で売却できる可能性が高まります。
また、以下の記事ではM&Aの手続き方法や手法などの基礎知識をまとめています。
M&Aを成功させるためのポイントについても紹介しているので、興味がある人はこちらも確認してみて下さい。
【関連】M&Aとは?成功させるための基礎知識を世界一分かりやすく解説!
1−1. タクシー業界M&Aの売却価格の相場

小規模のタクシー会社の相場は60万円〜500万円程度が一般的です。
その一方、大手のタクシー会社であれば、売却価格が10億円に及ぶこともあります。
買収に影響する代表的なポイントは、「人材」と「タクシーの所有台数」です。
つまり、豊富な経験を持つ優秀なドライバーやタクシーの所有台数が充実しているほど、売却価格は高額になる傾向にあります。
また、以下の記事ではM&Aで会社売却をする際に知っておきたい知識について紹介しています。
不利な取引にならないよう知っておくべき情報を紹介しているので、興味がある人は確認してみて下さい。
【関連】会社売却の基本を学ぶ!知っておきたい8つの知識を徹底解説!
では、売却する理由ともなるメリットを見てみましょう。
2. タクシー業界M&Aの売り手側のメリット

タクシー業界で、売却をすると以下のようなメリットが得られるでしょう。
- 廃業を避け事業承継できる
- 負債を解消し創業者利益が得られる
- 大手傘下で経営を安定させられる
それぞれ見ていきましょう。
メリット1. 廃業を避け事業承継できる
タクシー会社の事業をM&Aで売却すると、廃業が避けられ事業承継を行えます。
つまりM&Aを活用することで、これまで成長させてきたタクシー会社を信頼できる企業の中で存続させることができるのです。
その結果、あなたの後継者問題を解決できるだけでなく、従業員の雇用も維持できます。
タクシー業界は、長時間労働が多いなどで従業員の待遇が注目されやすい業界だと言われています。
したがって、経営者だけでなく、従業員にとってもM&Aはメリットが大きいのです。
メリット2. 負債を解消し創業者利益が得られる
タクシー会社を売却すると負債を引き継いでもらい、創業者利益も得られます。
さらに、廃業と比べてタクシーの処分も必要なくなることから、赤字にもなりにくいです。
買い手にとってはタクシーの台数の確保からドライバーの確保ができる部分となります。
何もないところから始めるよりも時間も手間も省ける分、売買価格が大きくなることも。
維持費などからも解放されるので、タクシー会社を買収してもらえるだけでもかなりメリットが多いでしょう。
メリット3. 大手傘下で経営を安定させられる
タクシー会社をM&Aで売却すると、経営を安定させることができます。
なぜなら、M&Aにより大手企業の参加に入ることで、資金力が高まるためです。
これによって、経営の安定が見込まれます。
中小規模のタクシー会社には、売上が思うように伸びずに、資金繰りに苦しむ経営者は少なくありません。
M&Aによる売却で、買い手の持つ運営能力と資産などを活用すれば、より安定した経営が可能となります。
次は、買い手のメリットを見てみましょう。
3. タクシー業界M&Aの買い手側のメリット

タクシー業界M&Aにおける買い手側のメリットは、以下の3つです。
- 経営資源を獲得できる
- 入構権で事業拡大を目指せる
- 配車アプリを手早く導入できる
それぞれ見ていきましょう。
メリット1.経営資源を獲得できる
タクシー会社を買収することで、健全な運営に必要な資源を得ることができます。
例えば、何もないところからスタートするには、ドライバーの育成から車両の用意まで膨大な費用がかかるはずです。
しかし、買収なら今ある経営資源をそのまま使って運営をスタートできます。
例えば、タクシー車両の購入代金は、1台で300万円〜400万円程度かかり、これに維持費が加算されることとなるのです。
スピード感のある買収なら、経営資源を活用してすぐに利益を出すことができるでしょう。
メリット2. 入構権で事業拡大を目指せる
経営資源の中には『入構権』も含まれています。
入構権とは、定められたエリアにタクシーを乗り付けることができる権利です。
売上が多い傾向のある空港、駅などにはこの入構権がなければ乗り付けできません。
しかし、入構権を得るには相応の用意と時間、費用がかかりますから、すぐに経営を始めたいときにはかなり面倒です。
タクシー会社を買収すれば、持っている入構権も得ることができます。
エリアを広げ、事業を拡大するためにも入構権が得られるメリットはとても大きいものとなるでしょう。
メリット3. 配車アプリを手早く導入できる
さらに、タクシー会社の多くで導入が進められている配車アプリも手早く導入できます。
いつも利用している人であれば、アプリを使った素早い対応をしてもらえることでリピーターとして定着するはずです。
また、効率的な運営をすることにも役立ちます。
こうした良い点が多く、すぐにでも検討したいところですが、費用が高いという点が問題となるでしょう。
そこで、既にアプリを運営に使っているタクシー会社を探すことで、費用の問題をクリアし、スピーディに用意することができます。
余計な費用をかけずに手早く事業展開することにもつながりますから、導入しているのかは調べておくと良いでしょう。
4. タクシー業界M&Aの成功事例5選

タクシー業界M&Aの5つの成功事例を見ていきましょう。
- 日本交通と兵庫県の2つのタクシー会社の事例
- 第一交通産業と広島合同タクシー会社の事例
- 第一交通産業と大宝産業の事例
- 第一交通とユナイテッドキャブの事例
- 国際自動車と夢交通の事例
それぞれ参考になりますので、チェックしてみてください。
事例1. 日本交通と兵庫県の2つのタクシー会社の事例

買収されたタクシー会社はどちらも兵庫県神戸市を中心に活動していました。
この買収では、タクシー台数を増やすことにより経営基盤を安定させることができるはずです。
今後は、経営の強化や神戸市における事業展開を手広く進めていくことができるでしょう。
事例2. 第一交通産業と広島合同タクシーの事例

買収されたタクシー会社は広島県内で営業を続けていました。
顧客を抱えていたこともあり、広島県内でタクシー台数を確保し、エリアを広げるのには効果的な会社です。
この買収では台数の確保とエリア拡大を同時に行ったことによる成功を見ることができます。
事例3. 第一交通産業と大宝産業の事例

愛知県名古屋市で経営していたタクシー会社を買収したものです。
こちらも台数の増加とエリアの確保が目的となりました。
抱えていた台数が多いことから、今後は名古屋市周辺での営業業績を買い手のリソースによってさらに伸ばすことができるようになるはずです。
事例4. 第一交通とユナイテッドキャブの事例

東京に本社を置くタクシー会社の買収事例です。
既存のタクシー台数と合わせて500台規模の会社となり、東京都内にも影響力を持つことができます。
買収されたタクシー会社が持つ車両は20台ほどでしたが、こうした少ない台数であってもシナジー効果などのメリットがあれば十分に売買を成立させることはできるはずです。
事例5. 国際自動車と夢交通の事例

こちらは、とても大きな事例で「東京に本社のある年商8億のタクシー会社」を買収した事例です。
事業拡大を目指して行われたものですが、買い手となる国際自動車も相当な規模があり、車両の数は3,000台を超えることになりました。
このように多くの事例で車両を確保し、エリアを広げることが目的とされています。
厳しくなるタクシー業界を生き残り、今後もより事業を進めていくためにもM&Aという選択肢は十分に検討に値するものともいえるでしょう。
では、次の項目で事例のように成功するためのポイントについて解説していきます。
※関連記事
M&A事例50選!成功への鍵を徹底解説!【2020年最新版】
5. タクシー会社をM&Aで有利に売却するポイント

タクシー会社のM&Aで有利に売却するポイントは、以下の3つです。
- ドライバーの稼働率を見直す
- 営業区域を見直す
- 配車アプリを導入する
これら3つのポイントを押さえておくことで、有利な条件で売却しやすくなります。
それでは、順番に見ていきましょう。
ポイント1. ドライバーの稼働率を見直す

タクシー会社をM&Aで有利に売却するために、ドライバーの稼働率を見直しておきましょう。
一般的に、ドライバーの稼働率が高いと、収益が下がる傾向があります。
なぜなら、残業や夜勤が多いことでドライバーのモチベーションが低下するためです。
そこで、ドライバーの稼働率を見直して非効率な営業を減らし支出を適正化しておけば、赤字を黒字に転換することもできます。
具体的には、ドライバーごとの乗客人数や収益をリストアップして、収益の低い時間帯の労働を削減しましょう。
また、収益の高い時間帯にドライバーを集中させることで収益アップが期待できるので、買収側の企業から好印象を持ってもらえます。
このように、ドライバーの稼働率を見直しておくことにより、有利な条件で売却できる可能性が高いです。
ポイント2. 営業エリアを見直す

タクシー会社M&Aで有利に売却するために、営業エリアを見直しておきましょう。
タクシー業界で赤字が発生する要因の一つに、需要の低いエリアにおけるドライバーの大量投入が挙げられます。
このような赤字を解消するために、不採算の営業エリアからは撤退しましょう。
また、利益を最大限に得られるエリアでのみ営業を行うことで、黒字への転換も期待できるのです。
一般的に、営業エリアが広いと知名度が上がりますが、代わりに管理が難しくなります。
そのため、非効率な管理による経費がかさんでいるケースが珍しくありません。
したがって、不採算の営業エリアからは撤退して、採算の取れる営業エリアに力を入れましょう。
このように、M&A前に体制を整えておくことで、有利な条件で売却できる可能性が高まります。
ポイント3. 配車アプリを導入する

タクシー会社M&Aで有利に売却するために、配車アプリを導入しましょう。
配車アプリを導入するには、膨大な時間と費用がかかります。
そのため、経営状況が厳しいタクシー会社である場合は、配車アプリの導入は現実的でないかもしれません。
しかし、上述のような経費削減を行った結果、事業の拡大に資金を回せるようになった場合には、配車アプリの導入を前向きに検討すると良いでしょう。
なぜなら、近年のタクシー業界のM&Aでは、配車アプリの獲得を目的とした買収が増加しているためです。
したがって、あらかじめ配車アプリを導入しておくことで、有利な条件で売却できる可能性が高まります。
また、以下の記事ではM&Aにおける基本的な手法やポイントについて紹介しています。
具体的な手続きの流れについても解説しているので、興味がある人は確認してみて下さい。
【関連】M&Aの基本的な手法とは?手法を分類する3つのポイントから解説!
以上、タクシー会社のM&Aで有利に売却する3つのポイントを紹介しました。
これら3つのポイントを押さえて準備しておけば、有利な条件で売却できる可能性が高いです。
しかし、タクシー会社のM&Aには気をつけるべきこともあるので知っておかなくてはなりません。
ここからは、タクシー会社をM&Aで売却するときに気をつけるべき注意点を見ていきましょう。
6. タクシー会社M&Aの注意点は?

タクシー業界におけるM&Aの注意点は、以下の2つです。
- M&A先の企業にドライバーが馴染めないことがある
- 債権者の同意が得られない可能性がある
それぞれ見ていきましょう。
注意点1. M&A先の企業にドライバーが馴染めないことがある

M&Aを行う前に、相手先企業の労働条件や環境などの違いを確認しておいて下さい。
なぜならM&A自体が成立したとしても、相手企業の労働条件や環境に馴染めなかったドライバーが退職してしまう可能性があるためです。
タクシー業界では、コストの大半を人件費で占められているほど、ドライバーは重要な資源となっています。
そのため、ドライバーの確保を目的としたM&Aは少なくありません。
ところが一方で、近年のタクシー会社のM&Aでは、企業統合を急いでしまう傾向があります。
その結果、相手企業の文化に馴染めずドライバーが流出してしまう可能性があるのです。
したがって、M&A直後から従業員がスムーズに業務を引き継げるように、綿密に準備をしておきましょう。
労働条件や環境の違いを確認した上で、ドライバーにとってのメリットやデメリットを具体的に説明できるようにしておくことが大切です。
注意点2. 債権者の同意が得られない可能性がある

売却によってどのような利益を得られるのか、債権者に説明をして同意を得ておくようにして下さい。
M&Aによるタクシー会社の売却は、経営改善のための前向きな決断と言えます。
ところが、経営体制が変化することの不安から、反対の意見を唱える債権者が出てくることがあるのです。
たとえ反対の債権者がいたとしても、M&A自体は行うことができます。
しかし、債権者がM&Aに反対して資金提供を止めてしまった場合には、経営に大きな影響が出てしまうこともあるのです。
したがって、債権者から同意を得るために、M&Aでの売却の有用性や今後得られる利益について、しっかり説明を行うことが重要だと言えます。
では、どのくらいの相場になるのかについて見ていきましょう。
7. タクシー会社のM&Aにおける相場はどれくらい?

これまで、タクシー会社のM&Aにおけるメリットや事例、注意点などを紹介してきました。
中には、タクシー会社のM&Aにおける相場はどれくらいか知りたいという人もいるでしょう。
タクシー会社のM&Aの相場は、中小企業であれば数億円、大手であれば十億円以上が目安ですが、断言するのは難しいと言えます。
なぜなら、価格は売り手企業が持つ経営資産や経営状態などの企業価値で大きく変化するからです。
例えば、同程度の利益を上げている会社であっても、負債が異なると売却価格も異なります。
ですので、相場価格を把握するためには「企業価値算定」が必要になるのです。 次は、企業価値算定で相場価格を把握する方法を見ていきましょう。
「企業価値算定」を実施して相場価格を把握する
M&Aによって自社を売却する場合、どの程度の価格になるか知りたければ「企業価値算定」を実施しましょう。
専門知識を持つM&A仲介会社では、無料で企業価値の算定サービスを行っている会社もあるのです。
企業価値算定を行い、実際に売却をしたときにどれほどの価格になるのかを把握しておけば、M&Aを行った際に「相場より安い価格で売ってしまった」ということが防げます。
ですので、M&Aの前には企業価値算定を行って自社の価格を把握しておく必要があるのです。
8. タクシー会社のM&AはM&A総合研究所にお声がけ下さい!

タクシー会社のM&Aをスムーズに進めるためには、M&A仲介会社のサポートが必要です。
しかし、「どのM&A仲介会社に相談すれば良いかわからない」という人も多いでしょう。
もし、タクシー業界に詳しい専門家に依頼したいということなら、M&A総合研究所にお声がけ下さい。
M&A総合研究所は、タクシー会社のM&A経験がある専任の会計士やアドバイザリーが、相手企業の選定からクロージングまでを一括でサポート致します。
また、料金は完全成功報酬型を採用しており、着手金・中間金などは不要の業界最安値水準でご依頼が可能です。
もし、M&Aのサポートを依頼する仲介会社が決まっていなければ、ぜひM&A総合研究所にお声がけ下さい。
それでは最後に、タクシー業界の主要配車アプリTOP3について確認しておきましょう。
9. 【補足】国内主要タクシー配車アプリTOP3

タクシー業界の主要アプリを確認し、自社のアプリ開発や運営に活かして下さい。
ここでは、国内における主要タクシー配車アプリTOP3を見ていきます。
提供会社 | アプリ名 | 参加タクシー台数 |
Japan Taxi | 全国タクシー | 60,292 |
第一交通産業 | モタク | 36,000 |
みんなのタクシー | みんなのタクシー | 10,000 |
M&Aでの売却を考えている場合には、タクシー配車アプリは非常に重要です。
大手アプリを参考にし、自社にも使えるアプリを取り入れるとM&Aが成功しやすくなります。
メリットや成功事例と合わせて押さえておくことで、タクシー業界のM&Aを有利な条件で成功させましょう。
まとめ
タクシー業界では、観光客の増加やインバウンド需要の高まりを受けて、M&Aでの買収が増加傾向にあります。
また後継者問題・事業承継問題を解決するためのM&Aも増加中です。
ただし、自社だけでM&Aを完結させるのは非常に大変と言えます。
信頼できるM&A仲介業者に相談し、事業承継問題を解決しましょう。