
「廃業を避けるために空調設備会社のM&Aを行うべきか悩んでいる」とお考えではないでしょうか。
近年の空調設備業界では、中小企業の増加を受けて生き残りをかけた競争が激化しています。
そこで、差別化を図るべく事業規模を拡大する手段として、M&Aによって空調設備会社を買収するケースが増加中です。
この記事では、そんな空調設備業界でのM&Aを有利に成功させるための条件や注意点を紹介します。
空調設備会社のM&Aの成功事例も確認して、事業承継問題を解決しましょう。
目次
1. 空調設備会社はM&Aで廃業を避けられる!業界動向は?

近年の空調設備業界では、差別化を図るべく事業規模拡大を狙う目的で、M&Aによって空調設備会社を買収するケースが増加しています。
ここで空調設備事業の定義をおさらいしておくと、「冷房などの空調設置工事を手がける事業」のことです。
近年の空調設備業界では、中小企業の増加を受けて、業界内の競争が激化しています。
そのため、他の企業と差別化を図るためにワンストップ経営を目指して、空調設備会社を買収するM&Aが増加中です。
ワンストップ経営とは、店舗設備の企画から保守点検までの包括したサービスを行うための経営体制を指します。
加えて、空調設備業界では高齢化による影響にも晒されているのが現状です。
具体的には、29歳以下の従業員の割合は、業界全体の1割程度しかいません。
したがって、若手の従業員を多く抱えている会社は、M&Aで有利に売却できる可能性が高いため事業承継が叶いやすいです。
具体的な目安として、若手の従業員が2割程度所属している会社は、有利な条件で売却できる可能性が高まります。
また、あなたの会社が事業を引き継いでもらいたいなら、そのような若手の多い会社を買い手に選べば安心できるはずです。
以上、空調設備業界のM&A動向について解説しました。
ここからは、空調設備業界M&Aの売却価格の相場を見ていきましょう。
1−1. 空調設備業界M&Aの売却価格の相場

小規模の空調設備会社であれば5,000万円〜6億円程度が一般的です。
その一方、大手の空調設備会社であれば、売却価格が10億円に及ぶこともあります。
相場に影響する代表的なポイントは、「得意先の有無」と「若手の従業員数」です。
つまり、定期的に受注している得意先があり若手の従業員数が多いほど、売却価格は高額になる傾向があります。
以上、空調設備業界M&Aの売却価格の相場を紹介しました。
そして、空調設備業界のM&Aでは、売却利益以外にもメリットがあります。
ここからは、空調設備会社M&Aにおける売り手側にメリットを見ていきましょう。
2. 空調設備会社M&Aの売り手側のメリット

空調設備会社M&Aにおける売り手側のメリットは、以下の3つです。
- 外部に事業承継できることから会社を残せる
- 売却によってまとまった資金を得られる
- リソースを活用して経営を安定化できる
これらのメリットによって、会社の経営状態を良い方向に向けることが可能となります。
また、リタイア後も会社が成長していく姿を見ることができるので参考にしてみてください。
メリット1. 外部に事業承継できることから会社を残せる
空調設備会社でM&Aを選べば、外部に事業承継できることから会社を残せます。
売却先から後継者候補が選ばれ、今後の経営がそのまま続けられるからです。
従業員の雇用をそのまま継続して会社を続けてもらうことも可能ですから、職を失ってしまう心配も必要なくなります。
自社の資金不足やその他の理由で従業員の待遇改善ができなかったというケースでは、承継先に待遇についても相談できるでしょう。
特に若手が多い空調設備会社では従業員を求めるところが多いので、待遇改善などは多い傾向があります。
このような会社存続のメリットがありますから、M&Aが選ばれているのです。
メリット2. 売却によってまとまった資金を得られる
売却によって、まとまった資金が得られるのもメリットです。
会社をリタイアした後の生活について、考えたことがある人は多いかと思います。
経営状態があまり良くなければ、リタイア後の生活に余裕がない可能性も捨てきれません。
ですが、空調設備会社をM&Aで売買することで売却資金を得られます。
得た資金はすべて使えるわけではないですが、廃業するよりも手元に多く残すことができるため今後の生活にも余裕を持つことができるでしょう。
場合によっては、大きな金額で取引してもらえることもあります。
まずはどの程度の相場となっているか自社のことを調べてみるとイメージしやすいです。
メリット3. リソースを活用して経営を安定化できる
空調設備会社を買収した企業からリソースを使うことができるため、経営を安定化できます。
これは、事業拡大やエリア拡大によって今後も事業を手広く進めて、競争の激化する市場でより他社と差別化をすることが目的となっていることが多いからです。
買収した空調設備会社の経営が安定化し、より利益を生む状態になればこれほど喜ばしいことはありません。
ですから、リソースをしっかりと供給してもらえるので売却後でも安定して会社が育つ姿を見ていけるわけです。
また、中小企業ではどうしても伸び悩んでしまうケースも多くあります。
大手企業が持つノウハウが合わさることで今までにないサービスを生み出す可能性がありますから、従業員にとってもメリットを生み出せるはずです。
こうした売り手側のメリットがありますが、買い手側にもメリットがあるからこそ売買が成立します。
交渉にも役立つので買い手側のメリットについてもチェックしてみてください。
3. 空調設備会社M&Aの買い手側のメリット

空調設備会社M&Aにおける買い手側のメリットは、以下の3つです。
- 幅広いサービスを提供できる
- 事業規模や顧客を拡大できる
- スケールメリットを受けられる
買い手のメリットを知ることで、最適なM&Aの戦略を練ることもできるはずです。
ぜひ参考にしてみてください。
メリット1.幅広いサービスを提供できる
空調設備会社の事業をM&Aで買収すると、幅広いサービスを提供できます。
例えば、ワンストップ経営化を狙って、同業種で自社の行っていないサービスが行える事業・会社を買収するとどうなるでしょうか。
店舗設備の企画から保守点検までの包括したサービスを提供できるようになるため、顧客の満足度を向上させることができます。
また、他社との差別化にもつながり、新たな得意先が獲得しやすいだけでなく、安定した売上の計上が見込めます。
したがって、包括したサービスを実現させるべくM&Aによってこれらの効果を狙う経営者が多いです。
具体的な事例としては、電気設備会社が空調設備会社を買収したケースが挙げられます。
メリット2. 事業規模や顧客を拡大できる
買収により、事業規模や顧客を拡大することができます。
つまり、M&Aによって同業種の企業を買収することで、事業や得意先の顧客をそのまま引き継ぐことが可能です。
そのため、既存事業を強化することができて、今までよりも安定した経営が期待できます。
また、M&Aの直後から安定した売上の計上が見込めるのも嬉しいメリットです。
したがって、M&Aでの買収によって事業規模や顧客の拡大を図る経営者が増加しています。
メリット3. スケールメリットを受けられる
空調設備会社の事業をM&Aで買収すると、スケールメリットが受けられます。
スケールメリットとは、同様のものが多数集まることで大きな効果を生み出す作用のことです。
規模メリットと呼ばれることもあります。
この、スケールメリットを得られることで人員や資金を投入するなどの戦略を練ることもできるわけです。
また、一社で施工部品を大量に仕入れることが出来るので、部品調達コストを削減できます。
このように、スケールメリットの活用によって生産性から効率性まで幅広く向上が可能です。
以上、空調設備会社M&Aの買い手側のメリットを紹介しました。
では、本当に成功したケースはあるのか確認してイメージを膨らませてみましょう。
4. 空調設備業界M&Aの成功事例5選

では、本当にM&Aは空調設備会社で行われているのか、空調設備業界M&Aでの成功事例を5つをみていきましょう。
- ラックランドと大阪府の2つの空調設備会社
- 四電工と有元温調
- 新コスモス電機とフィガロ技研
- 東京競馬場とタック
- 橋本総業と若松物産
それぞれが独自の目的をもってM&Aをしているので、自社に近いものを見つけてみるのもおすすめです。
事例1. ラックランドと大阪府の2つの空調設備会社
東京に本社のあるラックランドは、同業種である空調設備会社の大阪エアコンとオーエイテクノを買収。
それぞれの企業が大阪府で事業を進めていることから、買収はスムーズに進みました。
同業種を取り込むことにより、エリアの拡大とシナジー効果を得ることが目的として行われた事例です。
同じ業種を取り扱う企業同士が手を組む形で、M&Aをするケースも少なくありません。
こうした事例では、お互いの顧客などや事業エリアを最適化できることにより事業をより安定化させることもできるでしょう。
事例2. 四電工と有元温調
香川県に本社を持つ四電工が2018年に有元温調を買収。
有元温調は関西圏を中心に空調設備会社として事業を進めているほか、管工事事業も手掛けている会社でした。
この事例では、空調に限らず管工事事業にも手をかけられる他、取り込みによるシナジー効果を高く得ることが可能となります。
新たな得意先や事業拡大と強化によって、双方にとって有益な効果が多く得られる事例と言えるでしょう。
事例3. 新コスモス電機とフィガロ技研
大阪府に本社がある新コスモス電機は2016年にフィガロ技研の株式を取得。
このフィガロ技研は大阪府箕輪市でガスセンシング技術の開発に力を入れ、経営を続けていました。
新コスモス電機はガスセンサ・ガス警報器市場でより他社との差別化をすることにより、生き残りを目的としています。
経営の安定化とより事業を進めるために、お互いの間で徹底的に協力体制を整えていることで目的は達成できると言えるでしょう。
事例4. 東京競馬場とタック
東京競馬場がタックの株式を2015年に取得することで子会社化。
タックは、東京都に本社を置き空調設備事業を手掛けている会社でした。
空調設備会社と競馬場という異例の組み合わせですが、空調設備事業の内製化を図ることが大きな目的でした。
この事例により、空調設備の担当ができることで安定した経営状態を得ることができたのです。
このように、業種が違う会社がM&Aの買い手として現れることも珍しくありません。
事例5. 橋本総業と若松物産
橋本総業は2013年に若松物産の株式を取得して子会社化。
若松物産では空調設備の販売や施行を手掛けており、大型の空調システムに関するノウハウを持っていました。
中部地区における営業基盤を強化するためにM&Aが行われた事例です。
買収することにより、若松物産が保有していた大型空調システムを使った事業に乗り出すことができるようになったことから、幅広く事業の展開をしていけるようになりました。
M&Aでさらなるエリア拡大を目指すのも経営戦略として有効です。
以上が、空調設備会社M&Aの5つの成功事例でした。
※一緒に読みたい関連記事
M&A事例50選!成功への鍵を徹底解説!【2020年最新版】
5. 空調設備会社M&Aで有利に売却する条件

空調設備業界で有利に売却を進めるためには、以下3つの条件を満たしておく必要があります。
- 付帯サービスにも対応している
- 定期的に受注している得意先企業がある
- 若手の従業員が多く在籍している
それぞれわりやすく解説するので、ぜひ自社が該当しているのか確認してみてください。
条件1. 付帯サービスにも対応している
売却する事業で付帯サービスを提供していると、M&Aでの売却が有利になりやすいです。
空調設備業界における付帯サービスとは、施工を終えた後の定期的な保守点検を指します。
近年のM&Aでは、ワンストップ経営を図る目的から、付帯サービスを提供する空調設備会社の買収ケースが増加中です。
このような理由から、付帯サービスが充実している空調設備会社の買収価格は高く設定されます。
あなたの会社がすでに付帯サービスを行っているなら、積極的に高額売却を狙っていきましょう。
条件2. 定期的に受注している得意先企業がある
定期的に仕事を受注している得意先があるなら、安定した利益が見込める証ともなるので大きな価値を持つことがあります。
また、買い手の企業は得意先が多いことがわかると事業規模の拡大も期待できるのです。
このような理由から、得意先が確保されている空調設備会社の買収価格は高く設定されやすくなります。
自社の価値を高めることにもつながりますので、取引先を増やせるように動き出してみると良いでしょう。
条件3. 若手の従業員が多く在籍している
若手の従業員が多く在籍していると、M&Aでの売却が有利になりやすいです。
近年において空調設備業界に携わる人の年齢の約3割を、55歳以上が占めています。
加えて、29歳以下の従業員は全体の1割程度のみしかおらず、若手従業員の減少が深刻化しているのです。
そのため空調設備業界では、高齢化による技術継承問題に悩まされています。
したがって、若手の従業員が多く在籍する空調設備会社の買収価格は高く設定されやすいです。
具体的な目安としては、29歳以下の若手従業員が全体の2割程度を占めていると有利に売却できる可能性が高まります。
お話してきた条件に当てはまっていれば、納得のできるM&Aを成立させられる可能性が高いです。
さっそく動き出したいところですが、その前に知っておきたい空調設備会社のM&Aでの注意点に触れていきます。
6. 空調設備業界M&Aの注意点は?

空調設備業界でM&Aに踏み切るときには以下2つの注意点に気をつけてみてください。
- 債権者の同意が得られない可能性がある
- 他業種の企業を視野に入れて売却先を探さなければならない
空調設備業界で生き残っていくために、M&Aは非常に有効な手段です。
しかし、注意点をまもらなくてはせっかく成立したとしても満足できる効果を得ることはできませんので、ぜひ参考にしてみてください。
注意点1. 債権者の同意が得られない可能性がある
債権者の同意が得られない可能性があることは、最初に考えておくべきことです。
確かに、債権者の同意をもらわなくてもそのままM&Aに踏み切ることはできます。
ですが、反対しているのにも関わらずにそのまま進めてしまうと、資金提供を打ち切られてしまう可能性があるのです。
そうすると、経営に大きな影響が出てきてしまい、狙っていたM&Aでの効果を十分に得られないことがあります。
また、成立後に事業が成り立たなくなることで大きな問題となることも。
ですから、必ず債権者の同意を得てから進めるようにしておきましょう。
注意点2. 他業種の企業を視野に入れて売却先を探さなければならない
空調設備業界のM&Aで売却を考える際には、他業種の企業を視野に入れなくてはなりません。
なぜなら、ワンストップ経営を図る目的で、他業種からのM&Aによる買収ケースが増加しているためです。
そうすると、必然的に多くの買い手候補を見つける必要があります。
しかし、異業種の相手を見つけるのはそう簡単ではありません。
これは、異業種とあまり関わり合いがないことから、ニーズのある企業を見つけることが難しいからです。
難しいときには専門家に依頼するなどの方法も検討するべきでしょう。
以上が、空調設備会社のM&Aを行う際の注意点でした。
M&Aを行う際には、以上の2つについて気をつけてください。
7. 空調設備会社のM&AならM&A総合研究所にお任せください

空調設備業界のM&Aでの事例は数多くありますが、法務から税務まで様々な手続きや戦略を必要とします。
もしM&Aを検討されているということでしたら『M&A総合研究所』にお任せください。
条件に合う買い手を複数見つけることができるほか、異業種でのM&Aの成立にも動き出せます。
また、法務から税務に関してまで豊富な知識を保有した会計士が在籍しておりますので、不安な手続きなどがあるとしてもサポート・アドバイスが可能です。
さらに、企業価値の算定から相談料まで無料ですのでお気軽にお声掛けいただけます。
セカンドオピニオンとしてご依頼していただく形でも問題ありませんので、まずはぜひお声掛けください。
※M&A仲介会社に関して詳しく知りたい方はこちら
8. 【補足】空調設備業界・資本金別事業者数一覧

空調設備業界の資本金別事業者数一覧を確認して、自社の戦略作りに活用してみましょう。
ここでは、国内における空調設備業界の事業者数を資本金別に見ていきます。
大臣・知事の許可を得た業者数 | |
資本金 | 業者数 |
個人 | 7,923 |
200万円未満 | 2,178 |
200万円〜500万円未満 | 17,836 |
500万円〜1,000万円未満 | 12,967 |
1,000万円〜2,000万円未満 | 19,991 |
2,000万円〜5,000万円未満 | 18,069 |
5,000万円〜1億円未満 | 3,430 |
1億円以上 | 2,060 |
(引用:国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について」より)
このように、空調設備業界の事業者は個人や小規模な会社が多いです。
空調設備業界の事業者は個人や小規模な会社が多く、M&Aによりシナジー効果を得るために多くの企業からニーズがあります。
廃業を選ぶよりも圧倒的にメリットが多く、経営者自身の今後を考える余裕もできるでしょう。
この記事で紹介したポイントや注意点を参考に、ぜひM&Aという選択肢も検討してみてください。
まとめ
空調設備業界では、競争激化による生き残りを図るためM&Aでの買収が増加傾向にあります。
また高齢化による影響を受け、事業承継の手段として選ばれることも増えてきていると言えるでしょう。
ただし、自社だけでM&Aを進めるのは失敗のリスクが高いです。
信頼できるM&A仲介業者に相談し、経営している空調設備会社の課題を解決する参考にしてみてください。