
事業承継を行うためには、事業方針の決定や後継者育成など、やるべきことが沢山あります。万全の体制で臨むためには、方法や流れを把握したうえで早期に取り組むことが大切です。本記事では、事業承継の方法や流れ、過去の失敗事例から注意点を解説します。
目次
事業承継とは

事業承継とは、会社・事業の経営や資産を後継者に引き継ぐことです。会社であれば、株式を譲渡することによって経営権が移転し、事業承継が完了します。
いくら優秀な経営者でも高齢化に伴って経営力が落ちるため、適切なタイミングで事業承継を実施して次の世代に経営を引き継ぎ、会社全体を若返らせる必要があります。
しかし、近年は少子高齢化の影響から、中小企業の事業承継問題が深刻化しています。後継者不在の企業においては、従来のやり方では準備不足になることが多く、廃業を迎える事態になりかねません。
会社を長く存続させるためにも、事業承継の手段や注意点について事前に理解しておく必要があります。
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事業承継の方法と流れ

事業承継の重要性が高いのに反して、多くの中小企業では事業承継が滞っているのが実状です。余裕をもって経営を引き継ぐためには、早期から事業承継に取り組まなくてはなりません。
しかし、事業承継を検討するといっても、どんな方法があってどうやって進めればいいか分からないことも多いでしょう。この章では、中小企業の事業承継の方法や流れを解説します。
事業承継の方法
中小企業が事業承継を進める方法は主に3つがあり、それぞれに特徴があるため企業が抱えている経営課題によって最適な手段は異なります。
また、事業承継以外の選択肢として、清算・廃業や株式上場という方法もあります。ここでは、事業承継の方法と合わせて、5つの方法のメリット・デメリットを解説します。
【事業承継の方法】
- 親族内事業承継
- 親族外事業承継
- M&Aにて事業承継
- 清算・廃業
- 株式上場
1.親族内事業承継
親族内事業承継は、経営者の子や兄弟などの親族に引き継ぐ方法です。親から子に継がせたいと考えるのが人の心情として自然であるため、事業承継の大半が親族内事業承継となっています。
メリット
親族内事業承継のメリットは、後継者育成に時間をかけられることです。既に後継者候補が決まっている場合が多いため、現経営者の引退までに余裕をもって育成に取り組むことができます。
また、親族から選ばれた後継者は、社内からの反発を受けにくいことも大きなメリットです。経営者の親族ということで役員や従業員からの心象もよくなり、事業承継後も事業展開しやすくなります。
取引先からの反発も少ないので、経営者の関係性から取引していることも多い中小企業の場合、親族内の後継者であれば事業承継後も関係性を維持しやすくなります。
【親族内事業承継のメリット】
- 後継者育成に時間をかけられる
- 社内外からの反発を受けにくい
- 同族に経営を引き継げる
- 所有と経営を一致させやすい
デメリット
親族内事業承継のデメリットは、後継者候補がみつかるとは限らないことです。後継者候補の対象が親族内と限定的であるため、対象者が経営者としての素質を備えているかどうかはまったく別問題となります。
また、株式の分散によって経営権の集中が難しくなる場合があります。複数の相続人がいる場合は引き継ぐ財産を公平に分配する必要があるため、後継者のみが株式を集中的に引き継ぐという状況が作りにくくなります。
それでも後継者にすべての株式を集中させる場合は、後継者以外の相続人に対する配慮が必要になります。株式の代わりに土地や建物などの不動産を優先的に分配するなど、財産配分を取り決めておくことが大切です。
【親族内事業承継のデメリット】
- 親族内に適任者がいるとは限らない
- 株式の分散が起こりえる
- 相続人が複数いる場合は財産配分の配慮が必要
2.親族外事業承継
親族外事業承継は、社内の役員や従業員に引き継ぐ方法です。基本的に親族内事業承継が一般的ですが、親族内に後継者がいない場合の選択肢として利用されることがあります。
メリット
親族外事業承継のメリットは、広範囲から後継者候補を選べることです。親族内に限定する必要がないため、始めから高い能力・スキルを有する人材を選任できます。
また、親族外事業承継では、後継者育成に時間をかける必要もないので、親族内の育成が間に合わない場合に、一時的に親族外に継がせるという使い方もされています。
そのほかには、企業文化を維持させやすいというメリットもあり、長い期間在籍している役員・従業員は企業文化に溶け込んでいるので大幅な方針転換を取る可能性が低く、会社に与える変化を抑えやすいと考えられます。
【親族外事業承継のメリット】
- 広範囲から後継者候補を選べる
- 後継者育成にかかる時間の短縮
- 企業文化を引き継ぎやすい
デメリット
親族外事業承継のデメリットは、後継者候補に事業を引き継ぐ意欲が伴わない場合があることです。社内に優秀な人材がいたとしても、経営に対する意欲が伴わなければ引き継いでもらうことはできません。
また、株式を買い取る資金が必要になるという問題もあります。親族外事業承継は有償譲渡が一般的であり、経営を引き継ぐためには後継者候補が株式を買い取らなくてはなりません。
個人保証・担保の引継ぎも難しい問題であり、中小企業の経営者は個人保証・担保と引き換えに金融機関から事業資金を調達していることが多いため、事業承継の際の引継ぎも問題になるケースも少なくありません。
【親族外事業承継のデメリット】
- 後継者候補に事業を引き継ぐ意欲が伴わない場合がある
- 後継者に株式を買い取る資金が必要
- 個人保証・担保の引継ぎ問題がある
3.M&Aにて事業承継
M&Aにて事業承継は、M&Aで買い手・後継者を探す方法です。最近では、事業承継問題を抱えている中小企業の新たな解決策として注目を集めている事業承継方法です。
メリット
M&Aによる事業承継のメリットは、広範囲から買い手・後継者を探せることです。親族や社内に後継者候補がいなくても、広い外部から後継者を求めて会社を存続させる方法を模索することができます。
また、M&Aによる売却なので、経営者の手元に売却益が残るメリットもあります。株主(経営者)は企業価値に応じた売却益を獲得することができるので、新たな事業資金や老後資金を捻出することも可能です。
さらには、買い手とのシナジー効果により、会社の急成長を狙うことも可能です。M&Aの買収側の目的は、譲渡企業の経営資源を活用した事業規模の拡大なので、譲渡企業側も相乗的に成長を図ることができます。
【M&Aによる事業承継のメリット】
- 広範囲から買い手・後継者を探せる
- 経営者の手元に売却益が残る
- シナジー効果による急成長を狙える
デメリット
M&Aにて事業承継のデメリットは、買い手・後継者探しのハードルが高いことです。好条件の相手をみつけるには相応のネットワークや時間が必要になるため、相手を探すだけで数ヵ月を要することも珍しくありません。
M&Aによって事業承継した後は経営に干渉することができないデメリットもあります。親族内や親族外事業承継のケースでは、会長や前経営者という立場で経営に携わることもできますが、M&Aによる事業承継は第三者への売却なので経営者の立場から退くことになります。
また、役員・従業員に迷惑をかける可能性もあります。異なる企業文化の統合や待遇の悪化などで、役員・従業員に不満が募り自ら退職する恐れもあります。
【M&Aにて事業承継のデメリット】
- 買い手・後継者探しのハードルが高い
- 経営に干渉できなくなる
- 役員・従業員に迷惑をかける可能性がある
4.清算・廃業
清算・廃業は、会社の存続を諦めて会社を畳む方法です。前述の3つの事業承継方法の検討を行ったうえで、実践が難しいと判断した場合の最終手段といえるでしょう。
メリット
清算・廃業のメリットは、会社を終わらせることができる点です。経営者の責務から解放されて仕事をする必要もなくなり、自由きままに暮らすことができます。
また、それなりの資金を手にすることもできます。清算・廃業できる会社は健全な経営状態であることを意味しているので、清算段階である程度の資金が残る場合が多いです。
【清算・廃業のメリット】
- 会社を終わらせることができる
- 一定の資金を残しやすい
デメリット
清算・廃業のデメリットは、従業員に迷惑がかかることです。会社を畳む際は従業員も解雇することになるので、退職金や再就職のサポートを徹底しないければ、生活に苦しむ従業員がでてきます。
また、必ずしも黒字清算できるとは限らない問題もあります。財産処分の段階で安く買いたたかれると債務を弁済しきれなくなり、経営者に借金が残る可能性もあります。
【清算・廃業のデメリット】
- 従業員に迷惑がかかる
- 黒字清算できるとは限らない
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5.株式上場
株式上場は、株式市場に株式を新規公開して自社株を売り出す方法です。第三者への売却なのでM&Aで事業承継した場合に近い状態です。
メリット
株式上場のメリットは、経営と資本を分離できることです。経営者の独断で企業方針を決定できなくなるため、企業としての安全性を確保することができます。
また、株式売却による現金化が容易になるメリットもあります。証券取引所を介して不特定多数の投資家が株式を売買できるようになるので、簡単に自社株式を換金することができます。
【株式上場のメリット】
- 経営と資本の分離
- 株式の現金化が容易になる
デメリット
株式上場のデメリットは、上場基準が厳しいことです。市場によって異なる形式要件と実質的審査基準を満たす必要があり、どの企業でも気軽に実施できるものではありません。
準備に時間がかかるデメリットもあります。上場基準が厳しいことや要件に実質的に数年以上の実績が定められていることから、思い立ってすぐに株式上場できるというわけではありません。
【株式上場のデメリット】
- 上場基準が厳しい
- 準備に時間がかかる
事業承継の流れ
基本的に、経営者という立場から事業承継を経験するのは人生で一度きりです。実際に事業承継計画を進めようしても、流れが分からないことが多いでしょう。
ここでは、事業承継計画の策定のために把握しておきたい流れを解説します。事業承継は、以下の7つの手順に沿って進めていきます。
【事業承継の流れ】
- 会社の現状を確認する
- 後継者候補を決める
- 事業承継方法を決める
- 事業承継計画を練る
- 役員や従業員、取引先などに説明する
- 事業承継計画に則り、経営改善や後継者育成を始める
- 事業承継を実行する
1.会社の現状を確認する
事業承継するということは、次の後継者に経営を委ねることになるので、引継ぎ前に会社の状況を改めて確認しておくことが大切です。
特に、資産・負債は大きく影響を与えるポイントになるため、事業用資産や経営者の個人保証・担保の有無を確認しておきましょう。
また、経営者の健康状態の確認も必須です。経営者が病気を患っている場合、事業承継の時間的な猶予が少なくなるため、計画を前通しで進める必要が生じます。
2.後継者候補を決める
会社の現状確認が終わった後の流れは、後継者候補を決定します。親族内や社内の役員・従業員から後継者候補をリストアップして、経営を引き継ぐ意思があるかを確認します。
後継者は今後の会社経営を任せる重要な人材なので、経営者としての素質や能力・スキルを総合的に評価して候補を決めます。
しかし、経営者と面識のある人材の場合、主観的な評価になりやすい問題もあります。客観的な評価が必要になる場合は、外部の専門家に面接の場に同席してもらうよう依頼する方法も有効です。
3.事業承継方法を決める
親族内に後継者候補がいる場合は親族内事業承継でよいですが、そうではない場合はほかの事業承継方法を検討する必要があります。
その場合は、主に親族外事業承継とM&Aによる事業承継のメリット・デメリットを比較検討することになります。
しかし、メリットばかりを追い求めると非現実的な方法を選択してしまい、失敗に終わる可能性もあります。
親族外事業承継は、後継者に資力を求めるという点であまり現実的ではないため、おおむねM&Aによる事業承継を選択することになります。
M&Aで事業承継をする流れ
M&Aでの事業承継の流れは、M&A先の選定・交渉や契約書の締結などが必要になります。基本的には、ほかの事業承継方法と流れが異なるため、M&A・事業承継の専門家に相談することから始めます。
その後は相談先のアドバイスを受けながら、デューデリジェンスや契約書を締結して成約(クロージング)に向けて進行していきます。
M&Aが成約すると買い手側に経営権が移転して、事業承継の一連の流れが完了します。株式譲渡であれば権利義務や従業員の引継ぎも行われるので、会社に与える変化もごく僅かに抑えることができます。
【M&Aで事業承継をする流れ】
- M&A・事業承継の専門家への相談
- M&A先の選定・交渉
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
4.事業承継計画を練る
親族内や親族外事業承継での4番目の流れは、事業承継計画を練ることです。綿密に練られた計画書を策定しておくことで、実行の際に失敗するリスクを抑えることができます。
計画書として書面にしておくと、周囲の人間と共有しやすくなる利点もあります。役員や相談先の専門家と意見のやり取りをしながら、事業承継計画を練ります。
5.役員や従業員、取引先などに説明する
事業承継計画を練った後の流れは、社内外への説明です。事業承継で経営者が変わることに周囲からの理解を得る必要があるので、事業承継計画に具体性がでたタイミングで説明するのがポイントです。
タイミングを誤ると事業承継に不安を感じた従業員が辞めたり、取引先が不信感を持って契約を打ち切る恐れもあります。
6.事業承継計画に則り、経営改善や後継者育成を始める
事業承継の流れ6段階目は、経営改善や後継者育成です。事業承継計画に則り経営改善を進め、できるだけよい状態で会社の経営を引き継ぐように努めます。
事業承継の流れのなかで、後継者育成は特に重要なプロセスです。主要部門のローテーションや経営幹部として参画させるなどして、経験を積ませることが大切です。
また、取引先への顔通しも行っておくと、事業承継後の関係性も良好に保ちやすくなります。取引先や顧客を軽んじると、契約を打ち切られて業績の低下を招く恐れもあります。
7.事業承継を実行する
後継者育成までの流れが終わったら、事業承継を実行します。現経営者が保有する株式を後継者候補に譲渡して経営権を移転します。
ここまでの流れで後継者育成が完了していないという場合は、一度流れを止める選択も有効です。というのは、無理して事業承継を進めても、引継ぎ後の事業がうまくいかない可能性があるためです。
事業承継は、会社を存続させるための手段です。親族内事業承継の場合は後継者に十分に経営を任せられると判断できる水準まで、育成を進めることが大前提となります。
経営者の高齢化で事業承継を急がなければならない場合は、それ以外の事業承継方法も視野に入れる必要があるでしょう。
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事業承継の失敗事例から学ぶ注意点

事業承継の検討を始めた時点で、時間的な猶予がないことケースも多いです。一刻も早く事業承継を実施したいと考えるかもしれませんが、そのような時こそ慎重さが必要です。
この章では、事業承継の注意点を方法別に解説します。事業承継を実行に移す前に、過去の失敗事例を振り返ってみましょう。
1.親族内事業承継での注意点
まずは、親族内事業承継での注意点を解説します。過去の失敗事例で特に多く見受けられるポイントには以下の4点があります。
【親族内事業承継での失敗事例】
- 後継者の育成がうまく行かなかった
- 後継者の準備不足
- 後継者の体調が急変した
- 多額な相続税が発生し経営が成り立たなくなった
後継者の育成がうまく行かなかった
こちらは、親から子へ親族内事業承継を行ったものの、後継者の育成不足から事業が安定しなくなり業績が低下して失敗した事例です。
主な原因は、経営者(親)の権力を自分の力と勘違いした後継者(子)が慢心したことです。経営に必要な能力・スキルを身につけることを怠ったことで、経営が傾くことになりました。
また、社内の人材や取引先との関係の構築に努めていなかったことも原因の一つであり、経営者としての責務を果たさなかったことで、支持も失う結果となりました。
後継者の準備不足
こちらは、親から子へ親族内事業承継を行ったものの、社内の反発が激しく業績が低下した失敗事例です。
本件の後継者は、大手商社勤務で十分な能力・スキルを養っている人材であり、経営者としての素質も十分として事業承継も円滑に行われました。
本件の失敗原因は、後継者の引き継ぐ事業に対する理解が足りていなかったことです。事業に対する関心や理解もないまま経営に携わったことで、古参社員の不満が爆発して社内が混乱する結果となりました。
後継者の体調が急変した
こちらは、親族内事業承継を行ったものの、後継者が経営者としてのプレッシャーに押しつぶされて体調を崩してしまった失敗事例です。
経営や事業に対する関心も高く、経営者としての責務を果たしていましたが、後継者本人にとって経営者の業務は負担が大きく倒れてしまいます。
周囲に相談できる役員もおらず、経営者の自分が頑張らなければと気負いすぎたことがきっかけとなり、心身ともに限界がおとずれました。
多額な相続税が発生し経営が成り立たなくなった
こちらは、複数の相続人がいる親族内事業承継の失敗事例です。遺言書に遺産相続について明記されていましたが、相続人の一人が納得しなかったことで相続トラブルに発展します。
結局、遺産分割がまとまらず多額の相続税を納める結果となり、事業資金も枯渇する状況になってしまい、経営が成り立たなくなりました。
2.親族外事業承継での注意点
続いて、親族外事業承継での注意点です。いくつかある注意点のなかで、1点だけ特に注意しておきたいポイントがあります。
【親族外事業承継での失敗事例】
- 後継者候補への嫌がらせ
後継者候補への嫌がらせ
こちらは、役員への事業承継の失敗事例です。後継者候補の勤務歴は十数年と浅いものの、経営者からの信頼も厚く、次期経営者として期待が集まっていました。
しかし、社内へ事業承継を公表した途端、古参役員による嫌がらせが横行するようになります。自分より勤務歴の浅い役員に先を越されたことによる嫉妬が原因となっており、執拗な嫌がらせであったといいます。
さらに、嫌がらせを主導する役員を支持する従業員も加わる事態に発展し、後継者候補はすっかり意気消沈してしまいます。事業を引き継ぐ自身を喪失した後継者候補は、自ら退職して会社を去る結果となりました。
3.M&Aによる事業承継の注意点
最後に、M&Aによる事業承継の注意点を解説します。ほかの事業承継方法よりも選定範囲が広がるため、注意すべきポイントも増えます。
【M&Aによる事業承継の失敗事例】
- 自らM&A先を探した
- 望まないM&A先に事業承継を行った
自らM&A先を探した
こちらは、M&Aによる事業承継で自らM&A先を探した失敗事例です。自分でM&A先を探すのに時間がかけ過ぎたことで自社の経営状況の悪化が続き、売却条件も引き下げる結果となりました。
本件の失敗原因は認識の甘さです。M&A先が簡単にみつかるという楽観的な考え方が災いして、取返しのつかない致命的な状況に追い込まれてしまいました。
望まないM&A先に事業承継を行った
こちらは、成約を急ぎすぎたことで、望まないM&A先に事業承継を行った失敗事例です。不誠実な買い手に事業承継を行ってしまい、従業員の待遇が引き下げられたというものです。
若い従業員ならば辞職して再就職の道を選ぶこともできますが、40~50代の中堅社員は再就職も難しく辛い状況に追い込まれる結果となりました。
事業承継を成功させるポイント

事業承継の後も後継者や社員はその会社で働くことになるので、よりよい形で事業を存続できるように努めなければなりません。
そのため、事業承継に取り組む際は、いくつかの成功ポイントを押さえておくことが大切です。特に重要性の高いポイントは以下の4つです。
【事業承継を成功させるポイント】
- 事業承継の準備を早めに行う
- 後継者の見極めや育成を行う
- 事業承継先を厳選する
- M&A・事業承継の専門家に相談する
1.事業承継の準備を早めに行う
事業承継を成功されるためには、とにかく早めに準備を行うことが大切です。基本的に事業承継のタイムリミットは現経営者の引退までです。
高齢を迎えて経営者としての限界を迎えるまでに後継者育成を終えている必要があるので、早期の取り組みがポイントになります。
また、早めに準備を進めていると、計画に具体性を持たせることができます。事業承継を予定通りに進めやすくなるほか、トラブル発生時も冷静に対処しやすくなるメリットがあります。
2.後継者の見極めや育成を行う
親族内事業承継では後継者の育成が必須です。経営者としての覚悟が醸成されていないまま、経営を引き継いでも失敗する可能性が高いので、時間的な余裕をもって育成に取り組む必要があります。
親族外事業承継の場合は、社内の人材から優れた後継者候補を選定する必要があります。既に能力やスキルを持つ人材を選べるので育成の手間が省けますが、後継者として相応しい人材を見極める力が求められます。
また、後継者の経営方針に対する考えも重要なポイントです。企業文化や経営方針を必ずしも引き継ぐ必要はありませんが、あまりに大きな方針の転換は従業員に混乱を与える恐れがあるため、手放しでいると事業承継が失敗することも考えられます。
3.事業承継先を厳選する
親族や社内に後継者候補がいない場合、第三者に事業承継するM&Aによる事業承継を実施することになります。
M&Aによる事業承継は、広範囲から事業承継先を選定できるというメリットがありますが、厳選するだけの手間が必要になることも意味しています。
従業員の雇用維持や事業の存続など、誠実に対応してくれる事業承継先を見極めなくてはなりません。
4.M&A・事業承継の専門家に相談する
事業承継では、方法の決定や後継者育成などのスケジュールを計画的に実行する必要があるため、は初期段階の事業承継計画の策定が重要になります。
また、M&Aによる事業承継の場合、M&Aの専門的な知識も必要です。M&A・事業承継の専門家のサポートがなければ、準備不足になる可能性が高くなります。
専門性の高いアドバイスは、事業承継の至る流れで役立てることができます。M&A・事業承継の専門家の相談先を探すことから始めると、事業承継が成功する可能性が高まります。
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事業承継におすすめの相談先

事業承継の方法や流れにお悩みの際は、M&A総合研究所にご相談ください。中小企業のM&A・事業承継の仲介に注力しており、豊富な経験・ノウハウを積み重ねています。
後継者不在の場合でも、M&Aによる事業承継で会社が存続できる可能性はあります。弊社独自のネットワークを活用し、広範囲から買い手・後継者を探して事業承継プランを模索します。
また、最短3ヵ月のM&A成約の実績を有しており、圧倒的なスピーディー成約も強みとなっております。
M&Aの料金体系は完全成功報酬制を採用しています。必要な手数料は成約時に発生する成功報酬のみなので、M&Aによる事業承継の策定段階から必要な手数料が明確になっています。
無料相談は24時間体制でお受けしています。M&Aや事業承継のことなら、お気軽にM&A総合研究所までご連絡ください。
まとめ

本記事では、事業承継の方法や流れを解説しました。事業承継は準備することや引き継ぐ資産が多いため、経営者が一人で準備するのは負担が大きくなります。
事業承継を計画的に進めるには、早期から取り組んでおく必要があり、その際はM&A・事業承継の専門家のサポートを受けながら進めると万全の体制で臨みやすくなります。
【事業承継の方法】
- 親族内事業承継
- 親族外事業承継
- M&Aにて事業承継
- 清算・廃業
- 株式上場
【親族内事業承継のメリット】
- 後継者育成に時間をかけられる
- 社内外からの反発を受けにくい
- 同族に経営を引き継げる
- 所有と経営を一致させやすい
【親族内事業承継のデメリット】
- 親族内に適任者がいるとは限らない
- 株式の分散が起こりえる
- 相続人が複数いる場合は財産配分の配慮が必要
【親族外事業承継のメリット】
- 広範囲から後継者候補を選べる
- 後継者育成にかかる時間の短縮
- 企業文化を引き継ぎやすい
【親族外事業承継のデメリット】
- 後継者候補に事業を引き継ぐ意欲が伴わない場合がある
- 後継者に株式を買い取る資金が必要
- 個人保証・担保の引継ぎ問題がある
【M&Aにて事業承継のメリット】
- 広範囲から買い手・後継者を探せる
- 経営者の手元に売却益が残る
- シナジー効果による急成長を狙える
【M&Aにて事業承継のデメリット】
- 買い手・後継者探しのハードルが高い
- 経営に干渉できなくなる
- 役員・従業員に迷惑をかける可能性がある
【清算・廃業のメリット】
- 会社を終わらせられる
- 一定の資金を残しやすい
【清算・廃業のデメリット】
- 従業員に迷惑がかかる
- 黒字清算できるとは限らない
【株式上場のメリット】
- 経営と資本の分離
- 株式の現金化が容易になる
【株式上場のデメリット】
- 上場基準が厳しい
- 準備に時間がかかる
【事業承継の流れ】
- 会社の現状を確認する
- 後継者候補を決める
- 事業承継方法を決める
- 事業承継計画を練る
- 役員や従業員、取引先などに説明する
- 事業承継計画に則り、経営改善や後継者育成を始める
- 事業承継を実行する
【親族内事業承継での失敗事例】
- 後継者の育成がうまく行かなかった
- 後継者の準備不足
- 後継者の体調が急変した
- 多額な相続税が発生し経営が成り立たなくなった
【親族外事業承継での失敗事例】
- 後継者候補への嫌がらせ
【M&Aによる事業承継の失敗事例】
- 自らM&A先を探した
- 望まないM&A先に事業承継を行った
【事業承継を成功させるポイント】
- 事業承継の準備を早めに行う
- 後継者の見極めや育成を行う
- 事業承継先を厳選する
- M&A・事業承継の専門家に相談する