ソフトバンクが活用したLBO(レバレッジドバイアウト)とは?仕組みやMBOとの違い、事例を解説

ソフトバンクが活用したLBO(レバレッジドバイアウト)とは?仕組みやMBOとの違い、事例を解説

レバレッジドバイアウトとは、買収時の借入金の返済義務に対して買収先のキャッシュフローを担保とするM&A手法です。レバレッジドバイアウトには、買い手の負担を大幅に軽減できるメリットがあります。

本記事では、レバレッジドバイアウトの仕組みやMBOとの違い、実際にレバレッジドバイアウトが用いられた事例について解説します。

ソフトバンクが活用したLBO(レバレッジドバイアウト)とは?

ソフトバンクが活用したLBO(レバレッジドバイアウト)とは?

LBO(レバレッジドバイアウト)とは、M&A買収手法の一つです。買収対象の信用力に基づいて資金を調達することができるため、買収側の負担を軽減させることができます。

LBO(レバレッジドバイアウト)は買収される側の企業にとってリスクが高いため、活用される場面は限定的でしたが、ソフトバンクがM&A買収に使用したことで一気に認知度が高まることとなりました。

この章では、LBO(レバレッジドバイアウト)の基本的な概要、レバレッジドバイアウトを利用したソフトバンクの買収事例を解説します。

LBO(レバレッジドバイアウト)とは?

LBO(レバレッジドバイアウト)とは、買収先の資産やキャッシュフローを担保にし、借入金を返済していくM&A手法です。

対象企業よりも少ない自己資本で買収することから、レバレッジドバイアウトという名称がつけられました。

一般的なM&Aでは、買収企業の自己資本で賄うか、買収企業の負担で融資を受けるなどの方法で費用を捻出します。

買収企業が買収対象の資産や事業を取得するために行われるので当然の流れといえますが、買い手側の負担が大きくなるためM&Aを断念するケースも珍しくありません。

買い手の負担を軽減しつつM&Aを実行する方法がLBO(レバレッジドバイアウト)であり、LBO(レバレッジドバイアウト)で負担を軽減することにより、巨大な資本を持たない企業でも積極的にM&Aを実施することが可能になります。

ソフトバンクがLBOを使用した事例

ソフトバンクがLBOを使用した事例

https://www.softbank.jp/

LBO(レバレッジドバイアウト)を使用した代表的な事例として、2006年のソフトバンクによるボーダフォン買収が挙げられます。買収に要した金額は89億ポンド(約1兆7500億円)です。

本件でソフトバンクがLBO(レバレッジドバイアウト)で調達した資金は約1兆円です。買収費用の約60%をボーダフォンの資産とキャッシュフローを担保として調達し、自社の実質的な負担を約7500億円に抑えこんでいます。

ソフトバンクは今でこそ大手携帯事業者として浸透していますが、当時は新規事業者としての免許を割り当てられたばかりで、携帯事業者としてはまだまだ駆け出しの企業でした。

近年は、ソフトバンクの有利子負債拡大が取り沙汰されることも多いですが、ボーダンフォンの買収に関してはソフトバンクの主力事業となっていることもあり、LBO(レバレッジドバイアウト)の代表的な成功事例として扱われることが多いです。

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LBO(レバレッジドバイアウト)の仕組みと利用手順

LBO(レバレッジドバイアウト)の仕組みと利用手順

M&Aによる買収でLBO(レバレッジドバイアウト)を使用する際は、通常とは異なる手順が必要になります。この章では、LBO(レバレッジドバイアウト)の利用手順を解説します。

【LBO(レバレッジドバイアウト)の利用手順】

  1. 特別目的会社(SPC)を設立する
  2. 資金調達を行う
  3. 特別目的会社(SPC)が譲渡企業の買収を行う
  4. 特別目的会社(SPC)と譲渡企業が合併する

1.特別目的会社(SPC)を設立する

特別目的会社(SPC)とは、不動産を証券化するなどの資金流動化を目的として設立する会社です。LBO(レバレッジドバイアウト)を利用したM&Aにおいては、譲渡企業を買収するための一時的な受け皿としての役割を果たします。

買収資金はLBO(レバレッジドバイアウト)で調達するため資本金は少額で構いませんが、SPC法において資本金10万円以上が定められているため、最低でも10万円の資本金を用意する必要があります。

2.資金調達を行う

続いて、設立した特別目的会社(SPC)が買収資金を調達します。主な調達方法としては、金融機関や投資ファンドの融資があります。

特別目的会社(SPC)は資本金以外の資産を一切有していないため、LBO(レバレッジドバイアウト)によって、譲渡企業の資産・キャッシュフローを担保として資金調達します。

これによって特別目的会社(SPC)は多額の買収資金と借金を抱えることになり、M&A買収の準備が整います。

3.特別目的会社(SPC)が譲渡企業の買収を行う

特別目的会社(SPC)が調達した資金を活用して、譲渡企業の買収を行います。M&Aの買収は経営権を完全取得するために100%の株式を取得しなくてはなりませんが、株式の売却に応じない少数株主などについては、スクイーズアウトで排除を行うなどの手段があります。

なお、経営権の完全取得に拘らない場合は、株式の1/2超や2/3超を目安とすることもあります。経営権の取得自体は可能であるため、M&Aに求める条件などによりその基準が大きく変わります。

株式を取得して譲渡企業の経営権を取得したら、M&A買収は完了です。特別目的会社(SPC)を親会社として、譲渡企業を傘下に加えます。

4.特別目的会社(SPC)と譲渡企業が合併する

M&A買収は完了しましたが、現段階では特別目的会社(SPC)に債務が残っているため、最後に特別目的会社(SPC)と買収した譲渡企業の合併を行い、法人格を1つにします。

この際、ポイントとなるのは被合併企業が特別目的会社(SPC)であることです。合併では被合併企業の資産・債務の全てを合併企業に承継することになるため、特別目的会社(SPC)が抱えていた返済義務を譲渡企業に背負わせることができます。

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LBO(レバレッジドバイアウト)を活用するPEファンドとは

LBO(レバレッジドバイアウト)を活用するPEファンドとは

LBO(レバレッジドバイアウト)のメリットを最大限に活用しているのが、PEファンドです。将来性のある中小企業を買収し、短期的な成長を図ったうえで売却することにより利益を上げています。

PEファンドが売却するタイミングは、IPO(株式上場)もしくはM&Aです。この流れはPEファンドにとって一般的なものですが、複数の案件を同時並行して行わなければならないため、全てを自己資本で実行すると、負担が大きくなりすぎて回転率が悪くなる問題があります。

この問題を解決する方法として、LBO(レバレッジドバイアウト)が重宝されています。LBO(レバレッジドバイアウト)で買収対象会社の資産とキャッシュフローを担保にすることで、1件当たりの自社負担を軽減させ、さまざまな案件を同時並行させています。

PEファンドのLBO(レバレッジドバイアウト)を使用した買収は、PEファンドが主体となることもあれば債権者として関係するケースもあります。さまざまな形でかかわることになるため、LBO(レバレッジドバイアウト)と深い関係性にあるといえます。

しかし、LBO(レバレッジドバイアウト)で必ずしも利益を生み出せるとは限りません。売却の見極めなどを失敗すると一転して債務を抱えてしまうことにもなりかねないため、PEファンドであってもLBO(レバレッジドバイアウト)の活用は難しいとされています。

LBO(レバレッジドバイアウト)とMBO(マネジメントバイアウト)との違い

LBO(レバレッジドバイアウト)とMBO(マネジメントバイアウト)との違い

LBO(レバレッジドバイアウト)とMBO(マネジメントバイアウト)の違いは、買収者が社内か他者かという点と、借入金の債務者です。

MBO(マネジメントバイアウト)とは、経営陣が自社の株式を買い取って経営者として独立するM&A手法です。株式の買取資金は、金融機関や投資ファンドから融資を受けることが一般的です。

MBO(マネジメントバイアウト)の目的は、意思決定権の獲得による経営の効率化です。株式を取得した新たな経営者と、出資者である金融機関や投資ファンドの意向を中心に経営方針を決定することができるようになるため、円滑な意思決定が可能となります。

MBO(マネジメントバイアウト)とLBO(レバレッジドバイアウト)は、どちらもM&Aにおける資金調達方法ですが、MBO(マネジメントバイアウト)の借入金の返済義務は買収者が背負うことになるため、LBO(レバレッジドバイアウト)とは根本的に目的が異なります。

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LBO(レバレッジドバイアウト)やM&Aのご相談はM&A総合研究所へ

LBO(レバレッジドバイアウト)は、通常のM&Aとは異なる手続きが必要になります。LBO(レバレッジドバイアウト)の過程で必要になる特別目的会社(SPC)の設立には、SPC法に基づいた設立基準が存在するため、専門的な知識が欠かせません。

LBO(レバレッジドバイアウト)やM&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。LBO(レバレッジドバイアウト)を含め、M&A経験豊富なアドバイザーと弁護士による専属サポートで相談から成約まで全面的にサポートいたします。

料金体系は完全成功報酬制を採用しておりますので、安心してご利用いただけます。LBO(レバレッジドバイアウト)やM&Aに関する無料相談は24時間お受けしておりますので、LBO(レバレッジドバイアウト)でお悩みの際は、お気軽にM&A総合研究所までご連絡ください。

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LBO(レバレッジドバイアウト)が使用された事例

LBO(レバレッジドバイアウト)が使用された事例

ここまで、ソフトバンクの事例を挙げてLBO(レバレッジドバイアウト)の概要に触れてきましたが、そのほかにも使用された事例がいくつかあります。

この章では、LBO(レバレッジドバイアウト)を使用したM&A事例を、成功事例と失敗事例に分けて解説します。

LBO(レバレッジドバイアウト)が成功した事例

ソフトバンクによるLBO(レバレッジドバイアウト)の成功事例は有名ですが、それ以外にもいくつもの成功事例があります。ここでは、LBO(レバレッジドバイアウト)が成功した事例をピックアップして紹介します。

1.リップルウッドHDによる日本テレコムの買収

1.リップルウッドHDによる日本テレコムの買収

https://www.softbank.jp/

2003年10月、リップルウッド・ホールディングス(米国の投資ファンド)は日本テレコムHDの子会社である日本テレコム(現在はソフトバンクに吸収合併済み)の株式を取得して買収しました。

本件の買収資金の調達先は、国内外の金融機関(シティグループ、J.P.モルガンチェース、みずほ銀行、東京三菱銀行など)です。買収資金2613億円のうち2090億円をLBO(レバレッジドバイアウト)により調達しました。

当時、日本テレコムホールディングスは経営状態の悪化が問題視されており、本件で獲得した売却益のうち1500億円を有利子負債の支払いに充てています。

リップルウッドは、自社の経営陣を送り込むことで経営状態の立て直しを図ります。イグジットを、今後の発展が期待されるデータ通信分野の日本市場への参入と定めています。

リップルウッドによる日本テレコム再建は見事に成功し、買収からわずか1年後の2004年7月、日本テレコムの全株式をソフトバンクに約3400億円で売却しています。

ソフトバンクは普通株式を1433億円で買い取るほか、純有利子負債1640億円を肩代わりする形で、日本テレコムを買収しました。

2.ゴールドマン・サックスによるオールテルの買収

2.ゴールドマン・サックスによるオールテルの買収

https://www.goldmansachs.com/japan/

2007年、ゴールドマン・サックスはオールテルを買収しました。275億ドル(約3兆3300億円)の取引となり、買収資金はアメリカの投資ファンドであるTPGキャピタルより調達しています。

清算タイミングは買収から1年後です。オールテルをベライゾン・ワイヤレスに売却することで、多大な利益を生み出しており、本件は成功という形で幕を閉じました。

なお、今回の買収対象会社と売却先になったベイラゾン・ワイヤレスとオールテルは、共に米国携帯大手事業者です。

契約者数を競い合うライバル同士でしたが、統合により通信最大手のAT&Tを抜きさったことで、全米最大の携帯電話サービスが誕生しています。

LBO(レバレッジドバイアウト)は失敗例も多い

LBO(レバレッジドバイアウト)は成功すると見返りが大きい反面、リスクも伴います。そのため、予想に反して資金繰りがうまくいかなくなり、倒産している企業も少なくありません。

1.ダイセンHDによるさとうベネックの買収

1.ダイセンHDによるさとうベネックの買収

http://www.nextcp.jp/

2012年、ダイセンホールディングスはネクスト・キャピタル・パートナーズからさとうベネックを買収しました。しかし、さとうベネックが背負った借入金を返済することはできず、黒字倒産しています。(倒産時の総資産50億7045万円に対して総負債額44億2985万円)

さとうベネックが黒字倒産したのは、買収からわずか8ヵ月後であり、黒字倒産の原因はさとうベネックの返済能力が不足していたためとされています。

LBO(レバレッジドバイアウト)により、さとうベネックのキャッシュフローが急激に悪化したことで、総資産のほうが上回っているにも関わらず倒産という結果になっています。

LBO(レバレッジドバイアウト)は買い手側の負担軽減というメリットがある反面、M&A対象会社の倒産危機も伴っています。本件は、LBO(レバレッジドバイアウト)に潜む典型的なリスクが表面化したことで失敗した事例といえるでしょう。

2.米国の投資家によるトリビューン社の買収

2.米国の投資家によるトリビューン社の買収

https://www.chicagotribune.com/

2007年、米国の投資家・サミュエル・ゼル氏はトリビューン社(米新聞大手)を買収しました。しかし、トリビューン社はわずか1年後の2008年12月に約1兆2000億円の負債を抱えたままチャプター・イレブン(日本における民事再生法)を申請しました。

サミュエル・ゼル氏は「墓場のダンサー」などの異名を持っており、短期間の投資で莫大な利益を生み出すことで知られている伝説の投資家です。

しかし、トリビューン社は買収段階で既に破綻するほどの債務を抱えており、当時から再建の可能性は絶望的だったとされています。なお、本件でLBO(レバレッジドバイアウト)で調達した資金は7000億円です。

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まとめ

まとめ

LBO(レバレッジドバイアウト)は多大な利点がある一方で、失敗して多大な債務を抱えてしまうことも珍しくありません。LBO(レバレッジドバイアウト)のリスクを正しく認識していないと、M&Aが失敗に終わってしまう可能性も高いため注意が必要です。

LBO(レバレッジドバイアウト)を使用したM&Aを計画的に実行するためには、専門家のサポートが必要不可欠です。LBO(レバレッジドバイアウト)で資金調達する金融機関との調整も進める必要があるため、早い段階で相談することをおすすめします。

【LBO(レバレッジドバイアウト)まとめ】

  • レバレッジドバイアウトとは買収先の資産やキャッシュフローを担保にして借入金を返済していくM&A手法
  • レバレッジドバイアウトは失敗に終わるケースも多い
  • レバレッジドバイアウトはPEファンドがよく使用する

【LBO(レバレッジドバイアウト)の利用手順】

  1. 特別目的会社(SPC)を設立する
  2. 資金調達を行う
  3. 特別目的会社(SPC)が譲渡企業の買収を行う
  4. 特別目的会社(SPC)と譲渡企業が合併する