
民事再生法とは、債権者から債務の返済を待ってもらっている間に 会社を再建していく手続きを指します。
本記事では、 民事再生法と破産・倒産の違い、 個人再生や自己破産の意味について解説します。
目次
民事再生とは

民事再生法や破産・ 倒産などの言葉はテレビや新聞などで見聞きする機会も多いですが、これらがそれぞれどのようなものを指すのか、その内容までを詳しく把握している人は意外と少ないものです。
この記事では、民事再生法と破産・倒産の違いなどを解説しますが、まずは民事再生法の定義について説明します。
民事再生の定義
民事再生法とは、 債権者から債務の返済を待ってもらっている間に会社を再建する手 続きを指します。
会社経営が行き詰まってしまった場合、 破産という選択をするのではなく、なんとか会社を立て直したいと考える経営者は少なく ありません。
そのような場合は、 民事再生法を活用して破産を回避することが可能です。しかし、 そのためには債権者や従業員などへ説明をし、 犠牲を払ってもらう必要もでてくるため、 民事再生法を活用する場合の労力と精神的負担は、決して軽いものとはいえません 。
民事再生の主な種類
民事再生法を用いて会社の再建を図る場合、 以下3つの方法から選択することになります。
- 自力再建型
- スポンサー型
- 清算型
自力再建型
自力再建型とは、 民事再生法のうちで裁判所を通さずに自力で再生を図ることを指し 、私的再生と呼ばれることもあります。
自身で関係先との交渉を行う場合は精神的負担が大きい一方、専門家にサポートしてもらう場合は費用負担が増えることになります。
スポンサー型
スポンサー型とは、 民事再生法のうち、資金援助をしてくれるスポンサーから協力を得 ながら再建を図っていく方法です。
清算型
清算型とは、民事再生法のうち、M& Aによって会社や事業の一部を売却し、 獲得した売却益で返済する方法です。
そのため、清算型を用いる場合は、M&Aに精通し経験豊富な専門家に依頼できるかがカギとなります。
民事再生法に似ている会社更生法とは
民事再生法と似たような方法に、会社更生法があります。 会社更生法も、民事再生法と同じく会社を再建する目的で用いられる 法律ですが、民事再生法とは以下の違いがあります。
民事再生法 | 会社更生法 |
個人も利用可能 | 株式会社のみ利用可能 |
経営陣が残ることができる | 経営陣の総入れ替えが必要 |
担保権を行使できる | 担保権を行使できない |
株主権が残る | 株主権を失う |
民事再生法は法人も個人も利用することができますが、 会社更生法は株式会社でなければ適用されません。
また、 民事再生法は経営陣が残ることができるので、ノウハウなどを活かすことができる一方、 経営に失敗した経営陣が引き続き経営を続けるという悪いイメージ が付く可能性もあります。
民事再生と破産・倒産の違い

民事再生法の意味に続いて、本章では民事再生法と破産・倒産の違いについて解説します。
破産・倒産とは
倒産とは、一般的には企業が債務超過に陥り、 返済の目処が立たずに経営が継続できなくなった状態を指します。 また、 破産とは企業や個人が返済できなくなった場合に行う手続きのこと を指します。
中小企業では多くの場合において、 金融機関から融資を受ける際に経営者個人も連帯保証人になってい るので、会社が債務の返済をできなくなった場合は 経営者個人も破産手続きを行うことになるケースがほとんどです。
民事再生のメリット・デメリット
民事再生法にはいくつかのメリット・デメリットがあります。 本節では、民事再生法のメリットとデメリットを解説します。
民事再生のメリット
民事再生法の主なメリットには、以下の4つが挙げられます。
- 会社を継続できる
- 負債が一部減免される
- 債権者が債権の一部を回収できる可能性がある
- 従業員の雇用が継続可能
民事再生法の大きな目的でありメリットは、 会社を継続できる点です。また、 民事再生法は再建の可能性を高めるため、 債権者などから返済を待ってもらったり、 返済額を一部減免してもらったりすることができます。
これは債権者からみれば回収額が減るという意味ではデメリットになりますが、 少しでも回収できる可能性が残っているという意味ではメリットで もあります。
そのため、債権者から納得の得られる説明ができるか、誠実さを示せるかが重要になります。場合によってはトラブルに発展するので、精神的負担はけっして軽いものではありません。
また、民事再生法では、 従業員を継続して雇用してもらえる可能性があります。ただし、 再生計画によっては、一部の従業員が解雇される場合もあります。
民事再生のデメリット
民事再生法には、以下5つのようなデメリットもあります。
- 金融機関のブラックリストに登録される
- 予納金が必要
- 精神的負担が大きい
- 信用力が低下する
- 再生計画通り進まなければ破産になる
裁判所を通して民事再生法を利用する場合、 その企業は金融機関のブラックリストに載ることになります。 また、民事再生法を裁判所を通して行う場合、 予納金を納めなければなりません。
民事再生法の予納金額は、 法人の場合は200万円以上、 個人事業主の場合は15万円以上必要です。そのほかにも、民事再生法を活用する場合のデメリットとして、 精神的な負担の大きさがあります。
破産・倒産のメリット・デメリット
民事再生法のメリットとデメリットに続いて、破産・ 倒産のメリット・デメリットを解説します。
破産・倒産のメリット
破産・倒産には、以下4つのメリットがあります。
- 破産により負債がなくなる
- ゼロから再スタートできる
- 債務の精神的負担から解放される
- 一部の財産を残せる
破産・倒産の場合、民事再生法とは違い、負債はリセットされます。 これにより、債務に追われる精神的負担からは解放されることになります。
悪い見方をすればほとんどの財産を失うことになりますが、 よい見方をすれば債務がなくなりゼロから再スタートできることになります。 実際に、破産・倒産することで再スタートを切り、 セカンドライフの構築に成功する人も少なくありません。
また、 保有財産を何もかも失うわけではなく、 一部の財産は残すことも可能です。現在住んでいる住宅も一定期間は住み続けることができるので、その間に新たに住む場所をみつけることも可能です。
親族や知り合いに住宅を買い取ってもらい、賃貸契約で済み続けるという方法をとるケースもあります。
破産・倒産のデメリット
破産・倒産には、以下4つのデメリットもあります。
- 金融機関のブラックリストに載る
- 一定期間クレジットカードが作れない(5年~7年)
- 官報に掲載される
- 連帯保証人がいる場合その人に請求が行く
破産・倒産すると金融機関のブラックリストに載るので、 金融機関からの借入が難しくなったり、 5年から7年の間クレジットカードが作れなくなったりするなど、 社会的な信用力が失われます。
また、免責が決定するまでの間は、 裁判所からの許可がなければ引越ししたり海外へ行ったりすること ができないなどの制限が課せられます。
そのほかにも、 官報に掲載されたり連帯保証人に請求が行くなどのデメリットもあ ります。
民事再生と破産・倒産の比較表
民事再生法を利用した場合と破産・ 倒産した場合の比較は下表の通りです。
破産・倒産 | 民事再生法 | |
目的 | 会社・事業の清算 | 会社・事業の再建 |
手続き | 破産管財人が資産と負債を整理し債権者に分配 会社は清算 |
再生計画を作成・債権者の承認を経て裁判所が可決 再生計画の実行 |
申し立ての要件 | 債務超過で返済不可能 | 債務超過に陥る危険性があり返済不可能 |
予納金 | 20万円~ | 法人200万円~ 個人事業主15万円~ |
債権者 | まったく回収できないケース多い | 一定額回収できるケース多い |
従業員 | 全員解雇 | 継続雇用(一定数解雇や給与カットのケースあり) |
民事再生法の目的は会社・
手続き方法は、民事再生法の場合は
従業員に関しては、
また、債権者に関しては、
個人事業主が廃業した場合、退職金は得られる?小規模企業共済の積立
民事再生と個人再生、自己破産は何が違う?

民事再生のほかに個人再生という手段がありますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。本章では民事再生と個人再生、自己破産の違いを解説します。
個人再生とは
債務者が個人である場合、個人再生(小規模個人再生) を利用することがほとんどです。 個人事業主の再生も、基本的には企業の再生と同じような考え方で進 められます。
小規模個人再生と給与所得者等再生
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生があります。 給与所得者再生は小規模個人再生に含まれる再生方法で、 給与所得者等再生を利用するためには以下の要件を満たす必要がありま す。
- 個人債務者であること
- 今後安定した収入が見込めること
- 住宅ローンを除いた負債総額が5000万円を超えていないこと
つまり、 給与所得者等再生はサラリーマンなどの安定した収入のある人が対 象となります。
個人再生と民事再生の違い
個人再生は民事再生法のひとつです。 民事再生法は法人と個人が利用可能であり、 個人再生は個人が利用する場合の制度です。
個人再生をするべきケース
前述したとおり、個人再生を利用するためには以下の条件があります
- 個人債務者であること
- 今後安定した収入が見込めること
- 住宅ローンを除いた負債総額が5000万円を超えていないこと
つまり、返済能力はあるものの、 自己破産すると返済が不可能になるような場合においては、個人再生 が有効です。
例えば、 自己破産してしまうと保有資格を失って仕事ができなくなるケース や、 現状のままでは住宅ローンが払えなくなるケースなどが該当します 。
自己破産とは
自己破産とは、 裁判所で選任された破産管財人によって資産と負債を確定させ、 債権者に資産を分配する仕組みのことです。 自己破産と個人再生の違いや、 自己破産をすべきケースは以下の通りです。
自己破産と個人再生の違い
自己破産と個人再生の大きな違いは、 財産を清算して債権者に分配するか、 借金をカットした分を返済していくかの違いです。
自己破産をするべきケース
自己破産をするべきケースは、 自力では返済の目処が立たない場合です。 返済すべき借金をカットしても、 安定した収入がなく返済が不可能と判断される場合に選択します。
民事再生と個人再生、自己破産の比較表
民事再生法を法人に適用した場合と個人再生の場合、 自己破産した場合の比較は下表の通りです。
破産・倒産 | 民事再生法 | 個人再生 | |
目的 | 会社・事業の清算 | 会社・事業の再建 | 個人事業の立て直し |
手続き | 破産管財人が資産と負債を整理し債権者に分配 会社は清算 |
再生計画を作成・債権者の承認を経て裁判所が可決 再生計画の実行 |
要件をクリアしたうえで裁判所の許可を得て、圧縮された債務を分割払い |
申し立ての要件 | 債務超過で返済不可能 | 債務超過に陥る危険性があり返済不可能 |
個人債務者であること |
予納金 | 20万円~ | 法人200万円~ 個人事業主15万円~ |
15万円~ |
債権者 | まったく回収できないケース多い | 一定額回収できるケース多い | 一定額回収できるケースが多い |
従業員 | 全員解雇 | 継続雇用(一定数解雇や給与カットのケースあり) | 継続雇用 |
法人が民事再生法を利用する場合と、個人が民事再生法を利用する場 合の基本的な考え方は同じです。
個人再生のうち給与所 得者再生を適用する場合は、個人債務者であること、今後安定した 収入が見込めること、住宅ローンを除いた負債総額が5000万 円を超えていないこと、といった要件を満たす必要があります。
予納金の額は、自己破産の場合が20万円~、 民事再生法を利用する場合が200万円~、個人再生の場合が15 万円~となっています。
債権者は、 自己破産の場合債権を回収できないケースがほとんどですが、 民事再生法を利用している場合・ 個人再生の場合は一定額の回収が可能です。
民事再生が可能な会社とは

民事再生法の適用が可能な会社とは、 今後売上と利益の上昇が見込めて、 コスト削減によって債務超過を解消できる目処が立つ会社です。
しかし、 民事再生法で最も大切なのは、経営者の覚悟です。 民事再生法を利用する場合、 会社再建のために一部の従業員を解雇する覚悟があるか、 会社再建のために自身の個人資産をすべて投げ打ってでも会社を再 建する覚悟があるかなどが問われます。
会社 を立て直す方法には、M& Aによって事業の一部を売却することで、 返済額をまかなうやり方もあります。M& Aによって買い手を探し、 売却益を得るための交渉を円滑に進めるには、M& Aに精通した専門家のサポートが欠かせません。
M& A総合研究所では、M&Aアドバイザーと弁護士がM& Aによる売却をフルサポートします。料金体系は完全成功報酬制となっておりますので、安心してご相談ください。
無料相談は24時間お受けしていますので、会社の再建でお悩みの際はM&A総合研究所までお気 軽にご連絡ください。
民事再生をするべきケース

上前述のように、民事再生法の適用が可能な会社とは、今後売上と利 益の上昇が見込めて、コスト削減によって債務超過を解消できる目 処が立つ会社です。
さらに、民事再生法で重要となるのは、 金融機関や取引先に必要と思われている会社であるかどうかという 点です。
近年は、 民事再生法によってその会社の再生が可能であるかどうかだけでな く、 その会社が地域にとって本当に必要なのかどうかも考慮される傾向 にあります。社会的に意義のある事業内容であれば、 民事再生法を活用するべきといえるでしょう。
民事再生の手続きには何が必要?

最後に、民事再生法に必要な手続きと費用について解説します。
民事再生の手続き
民事再生法を利用する場合、以下の流れで手続きが進められます。
- 民事再生の申し立て
- 民事再生手続きの開始
- 監督委員の選任
- 監督委員と打ち合わせ
- 再生計画の作成
- 再生計画の承認
- 再生計画の実行
民事再生法適用の申し立ては煩雑であるため、 弁護士に依頼することが一般的です。 もし再生が難しいと判断されれば、 民事再生法の申し立ては棄却されます。
民事再生にかかる費用
民事再生法を利用する場合にかかる費用の目安は以下の通りです。
収入印紙代 | 1万円 |
切手代 | 3,880円 |
予納金 | 200万円~500万円(裁判所ごと・負債総額ごとに設定) |
弁護士報酬 | 数百万円(弁護士ごと・負債総額ごとに設定) |
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まとめ

本記事では、民事再生法を利用した場合と破産・ 倒産した場合を比較して解説しました。民事再生法とは、債 権者から債務の返済を待ってもらっている間に会社を再建する手続 きを指します。
民事再生法を活用する場合は非常に複雑な手続きが必要になるうえ、経営者自身の覚悟も問われます。
少しでも精神的負担を減少し、民事再生法の活用して自社を再建するためには、専門家のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。
【民事再生法による会社再建方法の種類】
- 自力再建型
- スポンサー型
- 清算型
【会社更生法と民事再生法の違い】
民事再生法 | 会社更生法 |
個人も利用可能 | 株式会社のみ利用可能 |
経営陣が残ることができる | 経営陣の総入れ替えが必要 |
担保権を行使できる | 担保権を行使できない |
株主権が残る | 株主権を失う |
【民事再生法を利用する場合の流れ】
- 民事再生の申し立て
- 民事再生手続きの開始
- 監督委員の選任
- 監督委員と打ち合わせ
- 再生計画の作成
- 再生計画の承認
- 再生計画の実行
【民事再生法を利用する場合の費用(目安)】
収入印紙代 | 1万円 |
切手代 | 3,880円 |
予納金 | 200万円~500万円(裁判所ごと・負債総額ごとに設定) |
弁護士報酬 | 数百万円(弁護士ごと・負債総額ごとに設定) |
【民事再生法のメリット】
- 会社を継続できる
- 負債が一部減免される
- 債権者が債権の一部を回収できる可能性がある
- 従業員の雇用が継続可能
【民事再生法のデメリット】
- 金融機関のブラックリストに登録される
- 予納金が必要
- 精神的負担が大きい
- 信用力が低下する
- 再生計画通り進まなければ破産になる
【破産・倒産のメリット】
- 破産により負債がなくなる
- ゼロから再スタートできる
- 債務の精神的負担から解放される
- 一部の財産を残せる
【破産・倒産のデメリット】
- 金融機関のブラックリストに載る
- 一定期間クレジットカードが作れない(5年〜7年)
- 官報に掲載される
- 連帯保証人がいる場合その人に請求が行く
【民事再生法を利用した場合と破産・ 倒産した場合の比較】
破産・倒産 | 民事再生法 | |
目的 | 会社・事業の清算 | 会社・事業の再建 |
手続き | 破産管財人が資産と負債を整理し債権者に分配 会社は清算 |
再生計画を作成・債権者の承認を経て裁判所が可決 再生計画の実行 |
申し立ての要件 | 債務超過で返済不可能 | 債務超過に陥る危険性があり返済不可能 |
予納金 | 20万円〜 | 法人200万円〜 個人事業主15万円〜 |
債権者 | まったく回収できないケース多い | 一定額回収できるケース多い |
従業員 | 全員解雇 | 継続雇用(一定数解雇や給与カットのケースあり) |
【民事再生法を法人に適用した場合と個人再生の場合、 自己破産した場合の比較】
破産・倒産 | 民事再生法 | 個人再生 | |
目的 | 会社・事業の清算 | 会社・事業の再建 | 個人事業の立て直し |
手続き | 破産管財人が資産と負債を整理し債権者に分配 会社は清算 |
再生計画を作成・債権者の承認を経て裁判所が可決 再生計画の実行 |
要件をクリアしたうえで裁判所の許可を得て、圧縮された債務を分割払い |
申し立ての要件 | 債務超過で返済不可能 | 債務超過に陥る危険性があり返済不可能 |
個人債務者であること |
予納金 | 20万円〜 | 法人200万円〜 個人事業主15万円〜 |
15万円〜 |
債権者 | まったく回収できないケース多い | 一定額回収できるケース多い | 一定額回収できるケースが多い |
従業員 | 全員解雇 | 継続雇用(一定数解雇や給与カットのケースあり) | 継続雇用 |