個人事業主が廃業した場合、退職金は得られる?小規模企業共済の積立

退職金とは従業員が退職する際に支払われる手当であり、日本の企業では退職金制度を取り入れているところも多いです。企業が廃業する際も退職金制度が設けられている場合は、就業規則に記載された規定に則って、退職金を受け取ることができます。

では、個人事業主が廃業する場合、退職金はどのように扱われるのでしょうか。この記事では、個人事業主が廃業した場合における退職金の取り扱いや小規模企業共済の積立制度について解説します。

個人事業主の廃業

同じ事業を継続して行っている個人事業主が廃業を選択する場合、決められた機関に廃業届を出す必要があります。

個人事業主の廃業手続きは法人とは違るため、事業をやめる際は事前に必要な届出を確認しておくことが大切です。

個人事業主とは

個人事業主とは、株式会社に代表される法人をつくらずに事業を行っている者を指します。一般に自営業と呼ばれる事業者も個人事業主にあたります。

個人事業主に該当するケースには、飲食店・スクール教室・各士業・ネイリストなどがあり、どこかの企業に属しておらず、1つの事業のみを継続して行うのが個人事業主の特徴です。

個人事業主の事業規模に明確な区分は設けられていませんが、その大半は小規模であり、個人事業主のみで事業をおこなっていたり、家族が従業員であるケースも多くみられます。

廃業とは

廃業とは、諸事情により事業を継続して行えなくなった個人事業主が、事業をやめることをいいます。廃業と聞くと経営悪化によるものというイメージも強いですが、廃業は黒字であっても行うことができ、理由に関係なく事業をやめることを廃業といいます。

個人事業主が廃業する際は資産の処分などを行い、管轄の税務署・都道府県税事務所へ必要書類を提出すれば手続きが完了します。

税務署へ出す「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」のほか、青色申告者・消費税を納めている者・家族などを雇用している者、それぞれ必要書類が変わります。

開廃業の届出のほかに必要となる書類には主に以下のようなものがあり、自身の要件に合ったものを提出しなければなりません。

  • 所得税の青色申告の取りやめ届出書
  • 事業廃止届出書
  • 給与支払事務所等の廃止届出書
  • 所得税および復興特別税の予定納税額の減額申請書

そのほか、管轄の都道府県税事務所にも書類の提出が必要です。都道府県によって書類の名称や、提出までの期間が違うため、廃業する際は事前に確認した手続きを進めましょう。

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個人事業主が廃業した場合の退職金

日本の企業の多くは退職金制度を設けているため、サラリーマンであれば退職時に退職金を受け取るケースがほとんどです。

しかし、個人事業主は単独で事業を行っているため、退職金をもらうことはできません。雇用主が個人事業主自身であるため、毎月お金を積み立てて準備をしていなければ、廃業に伴う退職金に該当するものを得ることはできないということです。

また、従業員を雇っている場合、退職金制度について労働条件通知書や就労規則に定めていなければ支払う必要はありません。

しかし、個人事業主が行っている事業は小規模であることが多く、雇っている従業員も少数であることが大半なので、従業員への退職金支給について定めている個人事業主は少数でしょう。

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個人事業主の廃業保証

退職金があれば廃業後の生活費に充当することができるのに、と考える個人事業主の方も少なくないでしょう。では、個人事業主の場合、退職金に代わるような制度はないのでしょうか。

個人事業主が廃業する際、小規模企業共済という制度を利用すれば、退職金のようにまとまった額を得ることが可能です。

それ以外に、国民年金基金や個人型確定拠出年金の制度を活用すれば、老後の年金額を増やすこともできます。

小規模企業共済

小規模企業共済とは、個人事業主を含む小規模な事業者向けに、毎月の掛金を積み立てけば廃業する際に共済金を受け取れる制度です。

独立行政法人中小企業基盤整備機構による共済制度であり、毎月の掛け金は個人事業主自身の経済状況に合わせて選ぶことができ、廃業時の退職金のように受け取ることができます。

給付される共済金は積み立てた金額に運用で増えた額が加えられるため、個人事業主が単独で退職金を積み立てるよりも多少の増額を見込むことができます。

ただし、個人事業主が制度を利用する場合、掛け金積み立て期間が20年未満で任意解約してしまうと、受け取れる共済金は積み立てた掛金の額よりも下がってしまうため、注意が必要です。

国民年金基金

国民年金基金とは、個人事業主が加入して毎月掛け金を支払うで、自身が受け取る年金額を増やす制度です。

国民年金基金の加入対象は、第1号被保険者に該当する20歳以上から60歳未満の者とされており、掛け金の上限額は毎月6.8万円です。掛金はすべて社会保険料控除の対象になるため、節税の効果にも期待できます。

ただし、給付が始まるのは60歳または65歳であるため、廃業に合わせた給付は望めません。国民年金基金は、小規模企業共済のように廃業した時点で退職金を受け取りたい方向けというよりは、老後の年金額を増やしたい方向けの積立方法といえるでしょう。

個人型確定拠出年金

個人型確定拠出年金とは、毎月の掛金と運用方法を決め、増やした資産を受け取る私的年金制度です。加入できるのは60歳未満で国民年金の第1号被保険者であり、個人事業主も加入できます。

給付開始は60歳からとなっているため、国民年金基金と同様、老後に受け取る年金額を増やす方法です。

廃業したからといって退職金のように受け取ることはできませんが、60歳未満であっても指定条件を満たしてれば脱退一時金を得ることは可能です。

個人事業主の掛金は毎月6.8万円までの範囲で設定することができ、掛金はすべて課税所得の控除対象となります。

ただし、国民年金基金にも加入している場合は、毎月の掛金限度額が両方合わせて6.8万円までとなるため、国民年金基金で満額を積み立てていると個人型確定拠出年金の積立ができない点に注意が必要です

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個人事業主向け小規模企業共済の積立条件

個人事業主向け小規模企業共済を利用する場合、積立条件はどのようになっているのでしょうか。小規模企業共済は条件によって加入できない場合もあるため、事前によく確認しておくことが大切です。ここでは、個人事業主向け小規模企業共済の積立条件についてみていきましょう。

従業員数の決まり

個人事業主が小規模企業共済を利用する際は、決められた条件を満たしていなければ加入することはできません。

退職金として共済金の積立を始めるには、個人事業主が行う事業の種類によって、雇用する従業員数を満たす必要があります。

【常に雇用している従業員の数】

  • 建設・製造・運輸・サービス(宿泊と娯楽に限定)・不動産・農業など:20人以下
  • 商業(小売・卸売)・サービス業(宿泊と娯楽以外):5人以下

個人事業主がいくつかの事業を行っている場合、主軸としている事業が対象になります。また、従業員数に家族従業員と共同経営者(2名まで)を含むことはできません。

加入の資格を得られないケース

個人事業主が従業員の要件を満たしている場合でも、以下に該当する場合は小規模企業共済に加入することができません。退職金制度として利用したい場合はよく確認しておくようにしましょう。

  • 共同経営者ではない事業専従者
  • 非営利法人(協同組合を含む)の役員など
  • 貸家業などを並行して行い、給与所得を得ている(法人か個人事業主と常に雇用関係にある)
  • 学業を本業として全日制の高校に通っている
  • 商業登記簿謄本に役員登記が行われていない会社の役員
  • 生命保険会社の営業職員など
  • 中小企業退職金共済制度・建設業退職金共済制度・清酒製造業退職金共済制度・林業退職金共済制度の保証を受ける人

廃業後にもらえる退職金

個人事業主が廃業後に共済金を退職金として受け取る際は、「共済金金A」と分類に当てはまります。例えば、毎月1万円の掛金を積み立てていた場合は、以下のようになります。

  • 掛金の年数5年:621,400円
  • 掛金の年数10年:1,290,600円
  • 掛金の年数15年:2,011,000円
  • 掛金の年数20年:2,786,400円

ただし、掛金を納めた月が半年未満の場合は、共済金A(退職金)は受け取れないため、退職金として共済金を受け取りたい場合は積み立て月数に注意が必要です。

個人事業主向け小規模企業共済のメリット

個人事業主向け小規模企業共済を利用するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、小規模企業共済の主なメリットを3つ紹介します。

  • 規定の範囲内から掛金の額を選べる
  • 節税が可能
  • 退職金の受け取り方法を選べる

規定の範囲内から掛金の額を選べる

個人事業主向け小規模企業共済では、毎月の積み立て掛金を1,000円~7万円の間で選ぶことができます。500円単位で掛け金を決めることができるため、経済状況や将来受け取る退職金の額から設定が可能することができます。

少しでも退職金の額を上げたいという場合は、前納による方法を活用するとよいでしょう。前納減額金が退職金として受け取れるため、受取金額を増やすことができます。

節税が可能

個人事業主向け小規模企業共済の積み立て掛金は、課税所得の控除対象になります。掛金全額が控除されるため、将来に受け取る退職金のほかに節税の効果もあります。

退職金の受け取り方法を選べる

廃業後の生活は個人事業主それぞれ異なりますが、個人事業主向け小規模企業共済では退職金の受け取り方法を選ぶことができる点がメリットです。

退職金の受け取り方法は3種類あり、一括・分割・一括と分割の併用から選ぶことができます。ただし、分割・一括と分割の併用を選択する場合は、以下の条件を満たさなければなりません。

  • 共済金の種類が、共済金AもしくはB
  • 退職金の受け取り理由が共済契約者の死亡ではない
  • 退職金の受け取りを請求した日に60歳を迎えていること
  • 退職金の額が分割の場合で300万円以上
  • 退職金の額が一括・分割の併用の場合で330万円以上(一括分が30万円以上、分割分が300万円以上)

個人事業主の廃業を避ける際の相談先は?

個人事業主が廃業する場合、退職金の共済制度を利用していなければサラリーマンのように退職金をもらうことはできません。

個人事業主が一人で事業を行っているのであれば、自身で決断したことなので退職金がなくても納得できますが、従業員がいる場合は廃業に伴い解雇しなければならず大きな影響を与えることのなります。

廃業は決して悪いことではありませんが、決断する前に一度M&Aの実施を検討してみることをおすすめします。小規模事業であってもM&Aは可能であり、従業員の雇用を引き継ぐこともできます。

廃業するを決断する前にM&Aの可能性を検討されたいという個人事業主の方は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。

M&A総合研究所は、中小・中堅規模の案件を扱う仲介会社です。アドバイザー・会計士・弁護士が3名体制で就き、ご相談からクロージングまでを丁寧にサポートいたします。

料金体系は完全成功報酬制を採用しておりますので、ご成約まで一切費用はかかりません。無料相談は24時間お受けしておりますので、お電話・メールフォームからお気軽にお問い合わせください。

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まとめ

個人事業主が廃業する場合、企業に勤めるサラリーマンとは違い、退職金をもらうことはできません。しかし、小規模企業共済を利用すれば、廃業する際に退職金の代わりとなる共済金を受け取ることができます。

毎月掛け金の積み立ては必要ですが積立額は選ぶことができ、節税効果も得られるため上手に活用するとよいでしょう。また、従業員がいる場合は、廃業を決断する前にM&Aの実施も視野に入れて検討することをおすすめします。

【小規模企業共済のメリット】

  • 規定の範囲内から掛金の額を選べる
  • 節税が可能
  • 退職金の受け取り方法

【小規模企業共済の加入条件(常に雇用している従業員の数)】

  • 建設・製造・運輸・サービス(宿泊と娯楽に限定)・不動産・農業など:20人以下
  • 商業(小売・卸売)・サービス業(宿泊と娯楽以外):5人以下
  • 個人事業主がいくつかの事業を行っている場合は主軸としている事業が対象
  • 従業員数に家族従業員と共同経営者(2名まで)を含むことはできない

【小規模企業共済の加入が得られないケース】

  • 共同経営者ではない事業専従者
  • 非営利法人(協同組合を含む)の役員など
  • 貸家業などを並行して行い、給与所得を得ている(法人か個人事業主と常に雇用関係にある)
  • 学業を本業として全日制の高校に通っている
  • 商業登記簿謄本に役員登記が行われていない会社の役員
  • 生命保険会社の営業職員など
  • 中小企業退職金共済制度・建設業退職金共済制度・清酒製造業退職金共済制度・林業退職金共済制度の保証を受ける人