SMO業界の事業譲渡・株式譲渡のポイント?動向/事例/相談先も紹介

SMO業界の事業譲渡・株式譲渡のポイント?動向/事例/相談先も紹介

SMO業界は、人材不足や受注単価の低下などの原因から経営状況が悪化している企業が増えています。

今、SMO業界ではこうした業界全体の課題に取り組むため、事業譲渡を利用した経営戦略が注目を集めています。本記事では、SMO業界動向と事業譲渡のポイントを解説します。

SMO業界とは

SMO業界とは

SMO業界とは、治験の実施業務に関する高い専門性を保有するSMO企業の界隈全体を指す言葉です。

医薬品や健康食品・特定保健用食品などは、開発の最終段階で実際に効果が得られることや想定しない副作用が出ないことを確認するため、臨床研究法に基づいた治験の実施が義務付けられています。

この時に、治験の実施業務の支援を行うのがSMO企業です。製薬会社や医療機関等より依頼を受けたSMO企業は、治験コーディネーターを派遣して製薬会社・医療機関・被験者の調整役を担います。

事業譲渡とは

事業譲渡とは、事業の全部あるいは一部を譲渡するM&A手法です。M&Aと聞くと企業の売却をイメージされるかもしれませんが、事業譲渡は経営権を維持したまま、事業のみを譲渡することが可能です。

例えば、不採算の事業を切り離して経営状態を立て直したり、採算事業を譲渡して獲得した売却益を活用して企業再編を図ったりと、経営戦略の一環として幅広く活用されています。

その他のM&A手法

事業譲渡と並んで利用されることが多いM&A手法は、株式譲渡です。株式譲渡は、保有する株式を譲渡して経営権を移転するM&A手法です。

包括承継であり、企業が手掛ける事業や所属する従業員はそのまま引き継ぎされる特徴があります。ほかのM&A手法と比較すると手続きが簡便になっており、主に中小企業のM&Aで活用されています。

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SMO業界が直面している問題

SMO業界が直面している問題

SMO業界は様々な問題を抱えています。いくつかはSMO業界全体に大きな悪影響を及ぼすものであるため、軽視することはできません。この章では、SMO業界が直面している問題を解説します。

【SMO業界が直面している問題】

  1. 海外発注による受注単価の下落傾向
  2. 人材の獲得が上手くいかない
  3. 海外への事業展開を希望するも難しい

①海外発注による受注単価の下落傾向

国内のSMO業界において、主流であった生活習慣病治療薬の開発が一段落したこともあり、現在はガンを中心とした難易度の高い病気・疾患用の開発に注力しています。

従来と比較すると、開発・治験にかかる時間が長くなり必然的にコストも増加します。このような問題から海外企業に発注してコストを抑えようとする動きが強まっており、国内のSMO業界の受注単価も下落傾向にあります。

②人材の獲得が上手くいかない

SMO業界を支えているのは、治験コーディネーターと呼ばれる専門家です。治験の実施業務に関する専門性を携えており、治験実施の依頼者と被験者の間を取り持つ大切な役割を持っています。

国家資格は存在せず、SMO業界に携わるうえで必須とされる資格もありません。しかし、実際には医学や医学システムに関する知識が必要不可欠であり、製薬会社や医療機関の勤務経験がある人が優遇される傾向にあります。

日本SMO協会(SMO業界の団体)が認定する「日本SMO協会公認CRC・公認SMA」などの資格を取得することで専門性を証明する方法もあります。しかし、こうした経験や資格保有者は限られており、人材不足は業界全体の課題となっています。

③海外への事業展開を希望するも難しい

日本と海外のSMO業界を比較すると、治験速度の遅さやコストの高さといった課題が目立っています。

新薬の承認にかかる時間という面でも大きな違いが生まれており、日本のSMO業界は海外より大幅に遅れを取っているのが現状です。

こうしたなか、海外展開するのは非常に高リスクであり、経営資源に余裕のある一部の大手企業しか実質的に不可能です。

SMO業界の今後の動向予測

SMO業界の今後の動向予測

新薬の開発に欠かすことができないSMO業界ですが、SMO業界の近況はどうなっているのでしょうか。この章では、SMO業界の近況から今後の動向予測をみていきます。

【SMO業界の今後の動向予測】

  1. 委託される治験業務の件数が増加
  2. 業者数が少なく新規参入が予測される
  3. SMO業界の事業譲渡・M&A動向

①委託される治験業務の件数が増加

SMO業界の主な顧客は、製薬会社や医療機関です。特に、製薬会社の新薬開発への注力は凄まじく、SMO業界の業務の安定化の大きな一因となっています。

製薬会社の国内大手である武田製薬やアマテラス製薬は、M&Aによる買収を繰り返してその規模を常に拡大させています。

時代のニーズに沿う新薬を開発するために大量の被験者を必要としており、被験者との調整役を努めるSMO業界への委託件数は増加傾向にあります。

②業者数が少なく新規参入が予測される

国内のSMO業界の業者数は40数社といわれています。新薬開発に必要不可欠である需要を考えると、圧倒的に業者数が少ないことが分かります。

競争環境が比較的穏やかであるSMO業界の市場獲得を目指して、異業種からSMO業界に新規参入する企業が増えてくることが予測されます。

③SMO業界の事業譲渡・M&A動向

SMO業界はその需要が伸びていますが、治験業務1件あたりに掛ける時間が長期化していることから、委託数の増加の一方で契約症例数は減少しています。

こうしたニーズはSMO業界全体の事業規模拡大を促進しており、事業譲渡・M&Aにおいて売り手市場になりつつあり、SMO業界で事業譲渡・M&Aする絶好のタイミングともいえるでしょう。

SMO企業が評価を高めるポイント

SMO企業が評価を高めるポイント

SMO業界で事業譲渡を成功させるなら、事業の価値を高めたうえで臨む必要があります。SMO企業の評価を高めるポイントは主に以下の2つです。

【SMO企業が評価を高めるポイント】

  1. 優秀な人材を保有している事
  2. 治験コディーネーターの教育ができる事

①優秀な人材を保有している事

SMO業界に求められる役割は、治験業務の円滑な進行サポートです。サポートにあたる治験コーディネーターの具体的な仕事は、被験者募集や説明文書の作成、スケジュール管理など多岐に渡っており、求められる経験・スキルは非常に高くなっています。

これらのサポートを一貫して行える治験コーディネーターは、製薬会社や医療機関から高い査定を受け、ひいてはSMO業界における高評価に繋がります。

②治験コーディネーターの教育ができる事

治験コーディネーターは、後発も育てなければなりません。座学だけではどうしても経験が足りないため、ベテランの治験コーディネーターの実務に同伴するなど、研修プログラムを確立させているSMO企業は有利です。

業種問わず人材不足が叫ばれるなか、大手企業が社内の人材育成ノウハウを求めて他社を買収する事例も増えています。

SMO業界においても同様であり、治験コーディネーターの教育に力を入れている企業は、高い評価を受けられるでしょう。

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SMO企業の事業譲渡・M&Aは将来を見据えた動きが大切

SMO企業の事業譲渡・M&Aは将来を見据えた動きが大切

SMO業界の事業譲渡・M&Aは将来を見据えた動きが大切です。この章では、SMO業界の将来で考えられる可能性を中心に解説します。

診療報酬改定は今後も行われる可能性があるため、コスト削減が意識ついている

医療分野では、働き方改革として診療報酬改定が頻繁に行われています。医療現場にかかる負担は大きく、報酬の見直しを行わなければ医療従事者が途絶えることを懸念したことによるものです。

診療報酬が上がる分、ほかの分野でコストを抑えなければならないという考えから、新薬の開発コストを下げようとする動きもみられます。

SMO業界のみに全てのしわ寄せがくるわけではありませんが、今後の診療報酬改定次第では経営状況に大きな影響を与える可能性があります。

現在ある設備を使い多角的に他の検査も行える

治験業務に必要な設備は多岐に渡ります。これらは医療全般に広く活用できるものなので、その利用範囲はSMO業界に限定されません。

設備は固定資産として企業としての評価に繋がります。設備が豊富に整っている場合は、SMO業界以外から買い手を探す選択肢もあります。

SMO企業の事業譲渡のポイント

SMO企業の事業譲渡のポイント

SMO業界のM&Aは事業譲渡が多く活用されています。この章では、SMO業界の事業譲渡のポイントの解説と事例を紹介します。

SMO企業を事業譲渡する際の注目点

SMO業界の事業譲渡の注目点は、従業員の雇用契約です。SMO業界の人材は大変重宝されていますが、事業譲渡は従業員の雇用条件を引き継ぎしません。

新たに雇用契約を締結することになるため、事業譲渡後の雇用条件などについて交渉を進めておく必要があります。

従業員の立場からすると、事業譲渡後の自分の処遇に不安があって当然です。事業譲渡によって転籍することになる従業員に対してはきちんと説明する場を設けるなどの対応が求められるでしょう。

事業譲渡の進め方は以下の記事でくわしく解説しています。SMO業界の事業譲渡を検討の際は、ぜひあわせてご参照ください。

【関連】事業譲渡とは?仕組みや手続きを理解し、効果的に事業を売却しよう!

SMO企業の事業譲渡事例

過去の事例からみても、SMO業界のM&Aは事業譲渡が多く用いられています。ここでは、SMO業界の事業譲渡事例をピックアップして紹介します。

【SMO企業の事業譲渡事例】

  1. アイロムによる医薬品事業の事業譲渡
  2. アイロムによる臨床試験事業の取得
  3. 新日本科学による事業譲渡

アイロムによる医薬品事業の事業譲渡

2012年12月、アイロムは連結子会社3社が手掛ける医薬品事業をウィーズホールディングスの子会社リーフに事業譲渡しました。

アイロムは、医薬品事業とSMO事業を中心とする企業でしたが、本事業譲渡によってSMO事業に特化することになります。現在も国内のSMO業界大手として、医薬品開発に大きく貢献しています。

アイロムによる臨床試験事業の取得

2016年10月、アイロムはIDT Australia Limited(オーストラリア)の臨床試験事業を取得することを公表しました。

IDTは、CMO事業と臨床試験事業を展開しており、オーストラリアのSMO業界で重要な役割を担っている企業です。

アイロムは、臨床試験の技術・ノウハウを転用することで、自社グループの研究開発を促進させるとしています。

新日本科学による事業譲渡

2017年9月、新日本科学の子会社SNBL USA(米国)がScientific Resource Center(米国)を分社化して動物輸入検疫・飼育・販売事業をOrient Bio(韓国)に譲渡しました。

SNBL USAは前臨床事業を手掛けており、SRCは実験動物の供給を担当しています。本件に伴い、SNBL USAとOrientBioは長期契約を締結し、今後も強固な協力体制を維持していくとしています。

事業譲渡に適したSMO企業とは

事業譲渡に適してるSMO企業は、海外進出ルートを持っていることです。日本のSMO業界は海外と比較すると遅れを取っていますが、国内市場だけでは企業成長に限りもあるため、大手は海外進出の足がかりを求めています。

海外進出ルートを持っている企業はSMO業界でも高い評価を受け、事業譲渡の買い手も、みつかりやすくなります。

SMO企業の株式譲渡のポイント

SMO企業の株式譲渡のポイント

SMO業界のM&Aを成功させるにはさまざまな可能性を模索することが大切です。ここでは、SMO業界の株式譲渡のポイントや事例を紹介します。

SMO企業を株式譲渡する際の注目点

SMO業界の株式譲渡は、簿外債務に注意が必要です。簿外債務とは、賃借対照表に記載されない債務をいい、現金主義の会計処理を行う中小企業では経常的に発生します。

株式譲渡は包括承継となっているため、買い手が簿外債務を認識しないまま引き継ぎしてしまうケースがあります。成約後にトラブルに発展する可能性もあるため、売り手側が事前報告しなければなりません。

SMO業界は業者数も少ないため、悪い噂が広まるのも早いです。簿外債務を始めとした潜在的リスクの意図的な隠蔽は自社の評判を大きく落とすことになり、SMO業界におけるM&A自体が厳しくなってしまう恐れもあります。

株式譲渡は簿外債務以外にもさまざまな注意点があります。以下の記事で詳細に解説していますのでぜひご覧ください。

【関連】株式譲渡とは?正しく意味を理解し高い価格で売却しよう

SMO企業の株式譲渡事例

SMO業界におけるM&Aは株式譲渡が利用されることもあります。ここでは、近年のSMO業界の株式譲渡事例を紹介します。

【SMI企業の株式譲渡事例】

  1. 新日本科学によるエムスリーへの株式譲渡
  2. ヒップによるメディカル・データ・ビジョンへの株式譲渡

新日本科学によるエムスリーへの株式譲渡

2018年10月、新日本科学は100%子会社新日本科学SMOの全発行済株式をエムスリーへ株式譲渡しました。

新日本科学SMOは前臨床事業とSMO事業を主力事業とする企業です。新日本科学は今回の株式譲渡について選択と集中としており、今後は前臨床事業に注力していくことを明かしています。

また、SMO業界国内大手のエムスリーは経営資源を投下することで新日本科学SMOのさらなる成長を図ります。

ヒップによるメディカル・データ・ビジョンへの株式譲渡

2017年6月、ヒップは100%子会社コスメックスの全発行済株式をメディカル・データ・ビジョンへ株式譲渡しました。

コスメックスは、SMO事業に特化している企業です。メディカル・データ・ビジョンは、医療情報統合システムの開発や医療データの分析・運用を主力事業としており、今回の株式譲渡を機にSMO事業に参入することになります。

メディカル・データ・ビジョンは、大規模な医療データをコスメックスのSMO事業に活用することでグループ全体の成長を図ります。

株式譲渡に適したSMO企業とは

株式譲渡に適しているのは、事業規模を拡大したい企業です。株式譲渡で大手の傘下に入る最大のメリットは、経営資源の活用です。

豊富な資金を活用して必要な人材を確保したり、設備を拡張したりとさまざまな試みができます。

経営者として経営状況に悩まされることもなくなるので、事業に専念することも可能です。事業規模の拡大やSMO業界の発展を目指すなら、株式譲渡が適切な手法といえるでしょう。

SMO企業のその他のM&A手法

SMO企業のその他のM&A手法

SMO業界のM&Aは事業譲渡と株式譲渡が主流ですが、資本業務提携が活用されることもあります。

資本業務提携は、独立性を維持しながら協力関係を構築する業務提携です。相互に株式を取得することで資本関係が生じるため、広義のM&Aとして扱われます。

SMO業界においては、特定の新薬を開発するために一時的な協力関係を必要とする場面が多く、その際に資本業務提携が活用される傾向にあります。

SMO企業を事業譲渡・株式譲渡する際の引き継ぎ・手続きについて

SMO企業を事業譲渡・株式譲渡する際の引き継ぎ・手続きについて

SMO業界のM&Aでは、引き継ぎに関する手続きも大切です。特に事業譲渡を利用する際は、契約上の地位に関して個別の手続きが求められます。

SMO業界で特に重視されるのは、従業員や取引先です。経験豊富な治験コーディネーターや製薬会社・医療機関との安定した契約は、SMO業界の事業譲渡において高い評価を受けます。

事業譲渡が正式に決まった後に、従業員や取引先に同意を得る必要があるので注意が必要です。株式譲渡は包括承継ですが、その場合も説明や報告は欠かせないでしょう。

  事業譲渡 株式譲渡
売掛金 債権譲渡の通知 自動的
買掛金 免責的債務引受契約 自動的
従業員 個別の同意 自動的
取引先 個別の同意 自動的
許認可 再取得 引き継ぎ可能

SMO企業を事業譲渡する際の相談先

SMO企業を事業譲渡する際の相談先

SMO業界の事業譲渡は業界の動向チェックや注意点の把握が欠かせません。これらを怠ると事業譲渡が成約しても満足する結果が得られない可能性が高くなってしまいます。

これらの課題をクリアしつつSMO業界で事業譲渡するなら、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。

M&A総合研究所は、主に中堅・中小規模のM&A仲介を請け負っているM&A仲介会社です。幅広い業種の事業譲渡に対応しており、SMO業界に精通している専門家も在籍しています。

SMO業界の動向調査を行ったうえで、事業譲渡の効果が最大限に高まるタイミングで実施することが可能です。

無料相談は24時間お受けしています。SMO業界における事業譲渡を検討の際は、M&A総合研究所にご相談ください。

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まとめ

まとめ

当記事では、SMO業界の動向や事業譲渡のポイントを解説しました。SMO業界の国内市場は比較的小さく、海外進出を図る企業も増えています。その過程で事業譲渡・M&Aによる事業規模の拡大も進行しており、SMO業界全体で再編の動きが強まっています。

こうしたSMO業界の動向は売り手市場にも繋がっており、事業譲渡のタイミングが訪れているともいえます。SMO業界の事業譲渡を検討の際は、必要に応じてM&Aの専門家に助言を仰ぐと成功率も高まるでしょう。

【SMO業界が直面している問題】

  1. 海外発注による受注単価の下落傾向
  2. 人材の獲得が上手くいかない
  3. 海外への事業展開を希望するも難しい

【SMO業界の今後の動向予測】

  1. 委託される治験業務の件数が増加
  2. 業者数が少なく新規参入が予測される
  3. SMO業界の事業譲渡・M&Aは売り手市場になりつつある

【SMO企業が評価を高めるポイント】

  1. 優秀な人材を保有している事
  2. 治験コディーネーターの教育ができる事