飲食店の事業譲渡・株式譲渡のポイントとは?動向/事例/相談先も紹介

飲食店の事業譲渡・株式譲渡のポイントとは?動向/事例/相談先も紹介

飲食店は、競争激化による参入と退出が激しい業界で知られています。そのため、経営状態が芳しくなく、飲食店の事業譲渡を検討する企業・個人事業主も多くみられます。本記事では、飲食店の業界動向の解説と事業譲渡・株式譲渡事例を紹介します。

飲食店とは

飲食店とは

飲食店とは、注文を受けて直ちにその場で調理、飲食を提供する店です。お店での提供に限定する飲食店も多いですが、近年は多様化するニーズに合わせて、デリバリーやテイクアウトに対応する飲食店も増加しています。

食品衛生法において、飲食店は34業種に分類されています。これらを営業するには、第52条に基づく営業許可を取得する必要があります。

深夜0時を超えてアルコールを提供する場合は、「深夜酒類提供飲食店営業」という別の許可も必要になります。

事業譲渡とは

事業譲渡とは、事業の全部あるいは一部を譲渡するM&A手法です。事業譲渡の対象は事業であるため、企業の経営権を手放すことはありません。

最大の特徴は、譲渡範囲を自由に選べることにあります。企業にとって不要なモノあるいは高額の売却益獲得が見込めるモノを事業譲渡することで、企業再生を図る使い方が一般的です。

個人事業主の場合は法人形態をとっていないので、売却益は個人が取得します。事業譲渡と同時に該当事業の廃業届を出して完了となります。

その他のM&A手法

事業譲渡以外に利用されることが多いM&A手法には、株式譲渡があります。株式譲渡は有する株式を譲渡することで、経営権を移転させるM&A手法です。

株式会社は、株式の持分比率に応じて経営における権力を有することになるため、株式の譲渡と株主名簿の書き換えを行うことで株式譲渡が成立します。

中小企業の場合、経営者が全発行済株式を所有していることが多いので、M&Aも円滑に進む傾向にあります。

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飲食店業界が直面している問題

飲食店業界が直面している問題

飲食店業界は参入自体は比較的容易ですが、経営維持は難しい業界として知られています。この章では、飲食店業界が直面している問題を解説します。

【飲食店業界が直面している問題】

  1. 同地域にライバル店が多く競争激化
  2. ニーズの移り変わりが早い
  3. 後継者問題に直面している

①同地域にライバル店が多く競争激化

飲食店はライバル店が非常に多いです。活気のある通りは、向かいに同業種の飲食店が並ぶ光景も珍しくありません。

消費者は価格・味・サービスといった面から常に飲食店を比較しており、少しでも気を抜くと一気に客足が途絶えてしまうケースもあります。

また、飲食店のライバル店となるのは同業種だけではありません。飲食店にとって気軽に立ち入れるコンビニの存在は、最大の脅威になりつつあります。近年のコンビニは提供する品数が増えており、コーヒーの店頭販売なども話題を集めています。

②ニーズの移り変わりが早い

飲食店は、ニーズの移り変わりが激しい問題もあります。近年は、インスタグラムやツイッターなどのSNSを通じて、芸能人がアップロードした一枚の写真から爆発的な広がりをみせることも多いです。

記憶に新しいものでは、タピオカドリンクや一斤1,000円以上する高級食パンなどが挙げられます。

こうして広がった飲食店ニーズは、ブームが去るのも一瞬となっており、常に対応するには柔軟な対応力が求められます。

③後継者問題に直面している

経営者の高齢化が進むなか、後継者が見つからずに廃業という選択肢を取らざるを得ない飲食店も増えています。

帝国データバンクが業種別に行っている「後継者問題に関する企業の実態調査」によると、飲食店(サービス業)の後継者不在率は71.8%というデータが明らかになっています。

考えられる原因は、少子高齢化や職種の多様化です。従来の飲食店は子に継がせる親族内承継が一般的でしたが、選択できる職が増えたことで親の飲食店を継がずに自分のやりたいことを目指すというケースも増えています。

【関連】後継者とは?募集や教育を上手く行って安心して事業を引き継ごう!

飲食店業界の今後の動向予測

飲食店業界の今後の動向予測

飲食店は数多くの問題と日常的に向き合っています。こうした問題は飲食店業界の今後の動向にどのような形で影響を及ぼすのでしょうか。ここでは、飲食店業界の今後の動向を予測していきます。

【飲食店業界の今後の動向予測】

  1. 市場規模に関わらず競争が激しい
  2. SNSなどによる集客の定番化
  3. 飲食店業界の事業譲渡・M&A動向

①市場規模に関わらず競争が激しい

飲食店は34業種に分類されており、業種によっては比較的市場規模が小さいものもありますが、ライバル店がいないわけではありません。

競争率が低くて簡単に消費者を呼び込める業種は、なかなかないものです。どの業種を選択したとしても、激しい競争環境に身を置くことは覚悟しなければなりません。

②SNSなどによる集客の定番化

若者に対するアプローチ方法として、SNSマーケティングが有効なことが判明しています。テレビCMやウェブ広告と比較すると、費用面はもちろんのこと、消費者のレスポンスを感じ取りやすいメリットも存在します。

自身でSNS投稿する方法もありますが、店で注文してくれた消費者に「SNSに投稿してくれたら割引」として投稿を促すサービスも活用されています。

近年、SNSを活用した集客は、中小企業や個人事業主でも活用できる方法として定番化しつつあります。

③飲食店業界の事業譲渡・M&A動向

飲食店業界は、業種問わず競争が激しいです。近隣のライバル店の動向チェックを欠かすことはできず、同じ通りにライバル店が開店する可能性も十分にあります。

しかし、ライバル店が多いということは、該当地域におけるニーズがあることの証明でもあります。

買い手が付く可能性が高くなるので、飲食店の競争に疲れを感じた時は、事業譲渡・M&Aを検討するタイミングとして絶妙であることも確かです。

飲食店の評価を高めるポイント

飲食店の評価を高めるポイント

飲食店の事業譲渡にあたって関心が高いポイントは「売却の可能性」です。事業譲渡の際に飲食店の評価を高めるポイントは以下の2点です。

【飲食店の事業譲渡で評価を高めるポイント】

  1. 立地面で優れている事
  2. 固定客・ファンを持っている事

①立地面で優れている事

都会の喧騒を忘れるような隠れ家的なニーズを求める消費者も一定数いますが、基本的には人通りの多い通りに構えている飲食店のほうが収益性の面で有利です。特に、駅から徒歩数分に構えている店舗は立地面で非常に有利といえるでしょう。

②固定客・ファンを持っている事

飲食店においてリピート率は重要な要素です。大手・中小問わず、新規客を固定客に変えるために徹底的なマーケティングを行う傾向にあります。

居酒屋に仕事帰りに寄ってくれるサラリーマンだったり、洋食屋のランチタイムを利用してくれるママ友の集まりだったりと、飲食店の業種によってさまざまな固定客・ファンが付くと考えられます。

固定客・ファンをどれくらい抱えているかどうかが、飲食店の事業譲渡において重要なポイントになります。

飲食店の事業譲渡・M&Aは引き継ぎ方が大切

飲食店の事業譲渡・M&Aは引き継ぎ方が大切

飲食店の事業譲渡・M&Aは引き継ぎ・手続きが大切です。特に「屋号」と「許認可」の2点が、事業譲渡を行う際の重要なポイントになります。

屋号を残す際には注意が必要

事業譲渡は包括承継ではないため、特別に契約をしない限り、売り手の債務を継承することはありません。

しかし、商号続用する場合、事業を引き継いだ買い手に支払い義務があると勘違いし、債権者が請求してくるケースがあります。

こうしたトラブルを防ぐために、事業譲渡の契約書に「商号続用責任の免責登記」に関する旨を記載したうえで、法務局に申請を出す必要があります。

飲食店は、消費者との接点が大きいため、事業譲渡の場合も屋号を変えることは滅多にないので、屋号に関する登記申請は把握しておかなければなりません。

各種許認可の申請について

飲食店の営業は、業種に対応する許認可を保健所を通して取得する必要があります。事業譲渡で名義が変更される場合、許認可を再取得しなければなりません。その際の手続きの流れは、以下のようになっています。

【飲食店の許認可取得までの流れ】

  • 保健所に申請
  • 施設検査の打ち合わせ
  • 施設の実地検査
  • 許可書の交付

基本的に役所仕事になるため、1つ1つの工程に時間がかかってしまいます。早期から再取得の申請を出しておかないと、事業譲渡後に円滑に開店できない可能性があることに注意が必要です。

飲食店の事業譲渡のポイント

飲食店の事業譲渡のポイント

飲食店のM&Aは事業譲渡を用いることが多いです。この章では、飲食店の事業譲渡のポイントの解説や事業譲渡事例を紹介します。

飲食店を事業譲渡する際の注目点

飲食店を事業譲渡する際の注目点は、事業譲渡の目的の明確化です。競争に疲れたから経営を任せられる後継者を探したい、屋号を残して成長させてほしいなど、事業譲渡にはさまざまな目的が考えられます。

事業譲渡の交渉を進めるうえで重視する点を明確にしておけば、事業譲渡が成功する可能性が高まります。

ここでは、事業譲渡の目的を取り上げましたが、ほかにも多くの成功ポイントや注意点があります。なお、

事業譲渡については以下の記事でくわしく解説しています。

【関連】事業譲渡とは?仕組みや手続きを理解し、効果的に事業を売却しよう!

飲食店の事業譲渡事例

飲食店のM&Aはその多くが事業譲渡です。ここでは、事業譲渡事例の一部をピックアップして紹介します。

【飲食店の事業譲渡事例】

  1. Eオーナーズフードによるチムニーへの事業譲渡
  2. ジェイアンドジェイによるアスラポート・ダイニングへの事業譲渡
  3. JFLAホールディングスによるレインズインターナショナルへの事業譲渡

Eオーナーズフードによるチムニーへの事業譲渡

2013年7月、Eオーナーズフードは同社の飲食店9店舗をチムニーの新設子会社へ事業譲渡することを公表しました。

Eオーナーズフードは関西を中心に「豊丸」等のブランドで居酒屋8店舗、ラーメン店1店舗を運営する企業です。居酒屋は魚介類を中心としたメニューで、業績を上げています。

チムニーは今回の事業譲渡において、魚介類コンセプトの居酒屋の獲得と関西圏の店舗網拡大を果たします。

ジェイアンドジェイによるアスラポート・ダイニングへの事業譲渡

2018年5月、ジェイアンドジェイは同社の海鮮居酒屋業態の事業をアスラポート・ダイニングへ事業譲渡することを公表しました。

ジェイアンドジェイは、熊本県・福岡県を中心に九州全域で海鮮居酒屋61店舗を運営する企業です。

アルラポート・ダイニングは今回の事業譲渡で獲得した店舗について、グループの経営資源を活用することで仕入や物流でのコスト削減を実現し、メニュー充実を図るとしています。

JFLAホールディングスによるレインズインターナショナルへの事業譲渡

2020年3月、JFLAホールディングスは連結子会社アスラポートの事業「焼肉業態牛角事業」をレインズインターナショナルへ事業譲渡することを公表しました。

アスラポートは、焼肉屋・居酒屋・ラーメン屋等の幅広い業種の飲食店を運営する企業です。今回はフランチャイズ加盟している牛角の焼肉屋店舗を事業譲渡しました。

JFLAホールディングスは、今回の事業譲渡を事業の選択と集中としており、今後は事業ポートフォリオの拡充と実行に移行するとしています。

事業譲渡に適した飲食店とは

飲食店の事業譲渡のメリットの1つに、不採算店舗の撤退があります。各地域に複数の店舗を広げている大手飲食店は、地域によって売上が悪い店舗も出てきます。

事業譲渡で店舗ごと手放すことで、残された店舗にリソースを集中させることができます。個人事業主の場合も、複数の店舗を構えているとマネジメントが追いつかない問題があります。時には事業譲渡で規模を縮小させる判断も大切といえるでしょう。

飲食店の株式譲渡のポイント

飲食店の株式譲渡のポイント

飲食店のM&Aは事業譲渡が主流ですが、株式譲渡を使うケースも見受けられます。飲食店の株式譲渡のポイントと事例を紹介します。

飲食店を株式譲渡する際の注目点

飲食店の株式譲渡のポイントは、虚偽申告を行わないことです。M&Aは売り手と買い手の信頼関係で成り立っており、後から虚偽の内容が発覚すると信頼を落としてしまうことになります。

特に焦点となるのは、デューデリジェンスです。株式譲渡は包括承継のため、M&Aの終盤でデューデリジェンスを実施してM&A対象の価値・リスクを徹底的に調査します。

意図的に隠しているリスクが発覚すると、交渉に悪い影響を与えることは確実です。トラブルを避けるためにも、M&A初期段階で全てのリスクについて相談先に打ち明けておくことが大切です。

また、株式譲渡の詳細な内容は以下の記事でまとめています。高額売却のテクニックや手続きについてもくわしく解説しています。

【関連】株式譲渡とは?正しく意味を理解し高い価格で売却しよう

飲食店の株式譲渡事例

飲食店のM&Aは事業譲渡に次いで株式譲渡も活用されます。ここでは、近年の飲食店の株式譲渡事例を紹介します。

【飲食店の株式譲渡事例】

  1. エムアンドオペレーションによる石垣食品への株式譲渡
  2. 壁の穴によるジー・テイストへの株式譲渡

エムアンドオペレーションによる石垣食品への株式譲渡

2018年12月、エムアンドオペレーションは、同社の発行済株式51%を石垣食品へ株式譲渡することを公表しました。

エムアンドオペレーションは直営1店舗、外部受託6店舗を運営する企業です。業種は居酒屋や焼肉屋となっており、業績を順調に伸ばしています。

石垣食品は今回の株式譲渡で取得した店舗について、店舗運営のノウハウ獲得に最大限活用するとしています。

壁の穴によるジー・テイストへの株式譲渡

2018年8月、壁の穴は同社の発行済株式92.51%を神戸物産の連結子会社ジー・テイストへ株式譲渡することを公表しました。

壁の穴は、スパゲティ専門店「壁の穴」を運営する企業です。讃岐うどんのチェーン店などを含め、29店舗を展開しています。

ジー・テイストは、壁の穴の知名度や立地面の好条件を活用することで、店舗網の強化を図っていくとしています。

株式譲渡に適した飲食店とは

株式譲渡に適した飲食店は、経営状態が悪化している店です。競争激化による経営状態の悪化の場合、一定以上のニーズがあることは確かです。

したがって、買い手の経営資源を活用することにより、経営状態を立て直すことも十分に可能です。株式譲渡は、飲食店の存続と成長を両立させることができるM&A手法であるといえるでしょう。

飲食店のその他のM&A手法

飲食店のその他のM&A手法

飲食店では、基本的に事業譲渡と株式譲渡を用いることが一般的ですが、大手企業同士のM&AになるとTOBが用いられることもあります。

TOBとは、事前公告を行ったうえで株式市場外から一定の価格で株式を買い付けるM&A手法です。

大手企業の株式は、広く一般の投資家の間で取引されているうえ、株式市場に流通しない株式も存在するため、経営権を取得できる範囲まで買い集めるのは時間がかかってしまいます。

そこで、買付公告を実施することで効率的に株式を買い集めることが可能になります。株式の売買は事業譲渡ではできないことなので、場面に応じて使い分けることが大切です。

飲食店を事業譲渡・株式譲渡する際の引き継ぎ・手続きについて

飲食店を事業譲渡・株式譲渡する際の引き継ぎ・手続きについて

M&Aの際の引き継ぎは、用いる手法によって必要な手続きが異なります。一般的に株式譲渡は自動的に引き継ぎされるものが多いですが、事業譲渡は特別に行うべき手続きが沢山あります。

例えば、飲食店の売掛金はクレカ決済やスマホ決済による未回収代金として経常的に発生します。売掛金を事業譲渡で引き継ぎする場合は、債権者が変わったことを伝える債権譲渡の通知を行う必要があります。

そのほかには、従業員の引き継ぎも重要です。飲食店は店舗を回すだけの人員が必要不可欠となるため、その店舗で働いている人員はそのまま引き継ぐケースがほとんどですが、事業譲渡にあたっては従業員別に同意を得ておかなくてはなりません。

上記は一例となっており、事業譲渡ではあらゆる引き継ぎについて個別に手続きしなければなりません。下表は事業譲渡・株式譲渡の引き継ぎをまとめたものです。

  事業譲渡 株式譲渡
売掛金 債権譲渡の通知 自動的
買掛金 免責的債務引受契約 自動的
従業員 個別の同意 自動的
取引先 個別の同意 自動的
許認可 再取得 引き継ぎ可能
地位 買い手との交渉で決定 会社に残る場合は別途交渉

飲食店を事業譲渡する際の相談先

飲食店を事業譲渡する際の相談先

飲食店の事業譲渡は引き継ぎや目的の明確化など、押さえておくべきポイントがいくつもあります。

これらの手続きと飲食店の店舗営業の並行は経営者にとって大きな負担となるため、事業譲渡・M&Aの専門家への相談をおすすめします。

M&A総合研究所は、主に中堅・中小規模の事業譲渡・M&A仲介を請け負っているM&A仲介会社です。多数の事業譲渡・M&A仲介実績を持っており、多くの飲食店の事業譲渡を成約に導いてます。

料金体系は完全成功報酬制を採用しています。着手金や中間金は発生せず、事業譲渡・M&Aが成約した時に初めて成功報酬が発生します。

無料相談は24時間お受けしています。飲食店の事業譲渡・M&Aの際は、M&A総合研究所にご相談ください。

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まとめ

まとめ

本記事では、飲食店の業界動向や事業譲渡のポイントについて解説しました。事業譲渡はその効果を最大限に活用することで、さまざまなメリットを得ることができます。

飲食店を畳むことを検討しているのであれば、事業譲渡も視野に入れると可能性が広がります。その際は、事業譲渡・M&Aの専門家に相談すると、事業譲渡を円滑に進めることができるでしょう。

【飲食店業界が直面している問題】

  1. 同地域にライバル店が多く競争激化
  2. ニーズの移り変わりが早い
  3. 後継者問題に直面している

【飲食店業界の今後の動向予測】

  1. 市場規模に関わらず競争が激しい
  2. SNSなどによる集客の定番化
  3. 飲食店業界の事業譲渡・M&A動向

【飲食店の評価を高めるポイント】

  1. 立地面で優れている事
  2. 固定客・ファンを持っている事