電気工事会社の事業譲渡・株式譲渡のポイント、許認可引継ぎや手続きを解説

電気工事会社の事業譲渡・株式譲渡のポイント、許認可引継ぎや手続きを解説

電気工事業界は、価格競争の激化や有資格者の確保難、大手企業の内製化など、さまざまな問題を抱えています。

今後はM&Aが増加すると予測されていますが、電気工事会社が事業譲渡・株式譲渡を行う際はどのようなポイントを意識しておけばよいのでしょうか。

この記事では、電気工事会社の事業譲渡・株式譲渡のポイントや、許認可の引き継ぎや手続きについて解説します。

電気工事会社とは

電気工事会社とは

電気工事とは、電気工作物の設置・修繕を行う工事のことです。電気工作物の範囲は多岐に渡り、設置施設の規模によっても大きく異なります。

送電線や配電盤などの電気事業用電気工作物や、大工場の受電設備の自家用電気工作物、一般家庭用の一般用電気工作物など、電気工事の範囲は非常に広くなっています。

電気工事においては、電気工事士でなければ行えない作業が多いことも特徴です。電線の接続する作業などの基本的な作業も資格が必要となるので、有資格者の確保が課題にもなっています。

事業譲渡とは

事業譲渡とは

事業譲渡とは、事業の一部あるいは全部を他社に譲渡するM&A手法です。譲渡範囲は事業であるため、会社の経営権は移転しない特徴があります。

事業譲渡の最大のメリットは、譲渡範囲を自由に選べることです。自社が手掛ける事業のなかから譲渡する事業を自由に選択できるので、不採算事業のみを切り離して会社の立て直しを図ることができます。

その他のM&A手法

電気工事のM&Aにおいては、株式譲渡を利用することがあります。株式譲渡とは、売り手が保有する株式を他社に譲渡して経営権を移転するM&A手法です。

事業譲渡と明確に異なるのは、会社の経営に影響を与える点です。買い手側の株式保有率が1/2を超えるように株式を譲渡することで、実質的に経営権を移転させることができます。

主に利用されるのは、会社売却や大手傘下入りを目的としているケースです。事業譲渡の用途とは全く異なるので、電気工事のM&Aを検討する際は、事業譲渡と株式譲渡の特徴を把握しておくことが重要です。

電気工事業界が直面している問題

電気工事業界が直面している問題

電気工事業界が抱えている問題は、事業譲渡・株式譲渡を活用することで解決を目指すこともできます。この章では、電気工事業界が直面している問題をみていきます。

【電気工事業界が直面している問題】

  1. 価格競争が激しく報酬の単価が低下している
  2. 有資格者の獲得が難しくなっている
  3. 大手企業による内製化が進んでいる

①価格競争が激しく報酬の単価が低下している

1つ目の問題は、価格競争の激化により報酬単価が低下していることです。業界市場の成熟化が進んでおりシェアの奪い合いが激化しているため、報酬引き下げによる顧客獲得の動きが加速しています。

体力のある大手企業は激化する競争も耐えることができていますが、体力や資源に限りのある中小企業は限界を迎えつつあり、度重なる報酬単価の引き下げで経営が圧迫している会社が増加しています。

②有資格者の獲得が難しくなっている

電気工事はほとんどの工程において電気工事士の資格が必要となるため、現場では電気工事士が必須ですが、獲得が難しくなっているのが現状です。

背景にあるのは、激化する人材獲得競争です。事業規模の拡大を図る電気工事会社が人材獲得に奔走しているため、業界全体で人材の取り合いがおきています。

③大手企業による内製化が進んでいる

電気工事業界では、大手企業による内製化が進んでいる問題もあります。大手企業の内製化が進むと、複雑化している電気工事を一貫して行うことができるようになるため、中小企業に案件が流れにくくなります。

クライアントの立場からしても一社に任せるほうが効率的なので、大手に依頼する比率が高くなっていくことが懸念されています。

【関連】電気工事・管工事会社のM&Aは事業拡大に有効!成功事例5つを解説

電気工事会社業界の今後の動向予測

電気工事会社業界の今後の動向予測

電気工事会社の事業譲渡・株式譲渡を準備を進めるうえで、業界の動向予測を掴んでおくことはとても大切です。この章では、電気工事会社業界の今後の動向予測を解説します。

【電気工事会社業界の今後の動向予測】

  1. 地方企業による首都圏企業へのM&Aが増える可能性
  2. 各種インフラ事業による需要の安定
  3. 電気工事業界の事業譲渡・M&A動向

①地方企業による首都圏企業へのM&Aが増える可能性

近年は首都圏への人口集中が加速しているため、建設需要も首都圏に集中する傾向にあります。よって、電気工事会社が業績を伸ばすためには、首都圏への進出が欠かせないと考えられています。

その手段のひとつに、地方企業による首都圏企業へのM&Aがあります。首都圏で既に経営基盤を確立している電気工事会社を取り込むことができれば、効率的に事業展開することができます。

②各種インフラ事業による需要の安定

電気工事会社は、各種インフラ事業による需要安定という動向もみられます。各種インフラを整えるためには電気工事が必要になるので、業界全体を後押しするプラス要素として捉えられています。

業界全体の需要が増加することで、競争に備えた経営基盤の強化や新規参入を目的としたM&Aが増加することが予測されています。

③電気工事業界の事業譲渡・M&A動向

電気工事業界では、首都圏進出を目指す地方企業の増加やインフラ事業による需要の安定などの動向がみられます。

電気業界の高い需要を見越したM&Aの増加は、業界全体の再編の動きを加速させることに繋がるため、事業譲渡・M&Aの案件成立数も増えてくるとみられています。

買収に積極的な姿勢を見せる買い手が増加するので、売り手側としては売却の絶好のタイミングであるともいえるでしょう。

【関連】会社売却の失敗を防ぐための5つのポイントをご紹介!成功する秘訣は?

電気工事会社の評価を高めるポイント

電気工事会社の評価を高めるポイント

電気工事会社の事業譲渡・株式譲渡で高く売却するためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。この章では、電気工事会社の評価を高めるポイントを紹介します。

【電気工事会社の評価を高めるポイント】

  1. 有資格者が多くいる事
  2. 直請比率が高く実績が豊富である事

①有資格者が多くいる事

電気工事会社の事業譲渡・株式譲渡の買い手の目的は、人材獲得であることが多いです。有資格者が多くなるほど多数の案件を同時にこなすことができるので、事業規模を拡大しやすくなります。

電気工事士の有資格者を多く保有していれば高い評価に繋がることが多いため、自社の強みとして全面に押し出すことで、交渉を有利に進められるようになるでしょう。

②直請比率が高く実績が豊富である事

案件の直請比率も重要なポイントです。クライアントから直接受けている案件は収益率が高いので、会社としての価値に直結します。

また、電気工事の実績が豊富であれば、会社としての信用力をアピールすることができます。安定した収益性があることを証明できるので、過去の実績はリスト化しておくことをおすすめします。

電気工事会社の事業譲渡・M&Aは許認可の引き継ぎが大切

電気工事会社の事業譲渡・M&Aは許認可の引き継ぎが大切

電気工事会社が事業譲渡・M&Aで事業を引き継ぐ際は、一定の手続きを行う必要があります。この章では、電気工事会社の許認可の引き継ぎについて解説します。

登録電気工事業者承継届出書とは

登録電気工事業者承継届出書とは、電気工事を引き継ぐ際に届け出する必要がある書類です。譲渡・合併・分割・相続いずれの場合も、管轄の都道府県に提出しなくてはなりません。

書類といっても、記載する内容は承継する理由や承継者・被承継者の登録を受けた年月日など、簡単なものになっています。

登録電気工事業者の登録申請とは

登録電気工事業者の登録申請は、事前に登録しておく必要のある手続きです。未登録のまま電気工事業を行った場合、10万円以下の罰金が科されることもあります。

建設業許可を受けていない電気工事業者は、登録電気工事業者として登録申請の手続きが義務付けられています。5年ごとの更新登録と届出事項に変更がある時は、速やかに届出しなくてはなりません。

登録申請が義務付けられている電気工事業者は、登録電気工事業者以外に以下の3種が挙げられます。

【登録申請が必要な電気工事業者】

  1. みなし登録電気工事業者
  2. 通知電気工事業者
  3. みなし通知電気工事業者

①みなし登録電気工事業者とは

みなし登録電気工事業者とは、建設業許可を受けている電気工事業者のことです。事業譲渡・M&Aを行うと届出事項に変更が生じるため、電気工事業開始の届出が必要になります。

②通知電気工事業者とは

通知電気工事業者とは、自家用電気工作物の電気工事のみを行う電気工事業者のことです。通知書の提出が義務付けられており、通知事項に変更があった時は電気工事業開始の届出を行います。

③みなし通知電気工事業者とは

みなし通知電気工事業者とは、建設業許可を受けていて、自家用電気工作物の電気工事のみを行う電気工事業者のことです。通知書の提出と通知事項に変更があった時は電気工事業開始の届出を行います。

電気工事会社の事業譲渡のポイント

電気工事会社の事業譲渡のポイント

電気工事会社の事業譲渡には、成功に導くためのいくつかのポイントがあります。この章では、電気工事会社の事業譲渡の注目点や事例を紹介します。

電気工事会社を事業譲渡する際の注目点

電気工事会社を事業譲渡する際の注目点は、従業員の引き継ぎです。事業譲渡は権利義務を包括的に承継しないので、転籍について従業員から個別に同意を得なければはなりません。

電気工事会社の買い手は、特に電気工事士の有資格者の獲得を優先しています。該当の従業員が転籍に応じないとクロージング条件を満たせなくなる可能性があるので、スムーズに転籍させるための対策を徹底する必要があります。

また、事業譲渡に関しては以下の記事でわかりやすく説明しています。手続きを進めるうえでの注意点なども解説しているので、ぜひご覧ください。

【関連】事業譲渡とは?仕組みや手続きを理解し、効果的に事業を売却しよう!

電気工事会社の事業譲渡事例

ここでは、電気工事会社の事業譲渡事例から、話題性のあったものを2つ紹介します。

【電気工事会社の事業譲渡事例】

  1. 日立電線の子会社間の電気工事業の譲渡
  2. ビスキャスによる電気工事業の譲渡

1.日立電線の子会社間の電気工事業の譲渡

日立電線の子会社間の電気工事業の譲渡

https://www.hitachi-metals.co.jp/

2004年4月、日立電線(現日立金属)は子会社である新田電気の電気工事業を同じく日立電線の連結子会社である藤長電気に事業譲渡することを公表しました。

新田電気および藤長電気は電線・ケーブル販売事業を手掛ける電気工事会社です。当時は電気工事業界の厳しい競争環境化にあり、経営の効率化やサービスの向上などを課題としていました。

本件の目的は、藤長電気の電設分野と新田電気の電販分野の一体化です。今後は、藤長電気に集中させることで、販売力の向上や物流化の効率化を目指し、経営基盤の強化を図るとしています。

2.ビスキャスによる電気工事業の譲渡

ビスキャスによる電気工事業の譲渡

http://www.viscas.com/index.html

2016年10月、ビスキャスは、「地中及び海底送電線事業」を古河電工へ、「配電線・架空送電線事業」をフジクラへ事業譲渡しました。

ビスキャスは古河電工とフジクラの合弁会社であり、配電システムやその基盤となる電線・ケーブル等の関連システムを包括的に取り扱うケーブルメーカーです。

古河電工とフジクラは今回の事業譲渡について、ビスキャスの再編を目的としています。各事業の運営に必要な資産や人材を承継し、それぞれ独自に運営していくことを明らかにしています。

事業譲渡に適した電気工事会社とは

事業譲渡に適した電気工事会社は、複数の事業を手掛けている会社です。譲渡を検討している事業以外にも複数の事業があれば、事業譲渡後も安定して会社を維持することができます。

逆に、単一の事業しか持たない会社の場合は、会社が抜け殻となってしまう可能性があります。その場合は株式譲渡が最適となることもあるので、あわせて検討することも大切です。

電気工事会社の株式譲渡のポイント

電気工事会社の株式譲渡のポイント

電気工事会社のM&Aは事業譲渡が一般的ですが、株式譲渡を利用することもあります。この章では、電気工事会社の株式譲渡のポイントを解説します。

電気工事会社を株式譲渡する際の注目点

電気工事会社の株式譲渡の注目点は、簿外債務の見落としです。株式譲渡の引き継ぎ対象は負債を含めた全ての資産なので、簿外債務も自動的に引き継ぎしてしまいます。

株式譲渡の成約後に簿外債務の存在が発覚すると、売り手と買い手との間でトラブルが発生することもあります。

トラブルを避けるためには、事前に相手方に対して簿外債務を伝えておくことが大切です。M&A戦略策定の段階から資料としてまとめておけば、円滑に交渉を進められるようになります。

ここでは簿外債務を取り上げましたが、株式譲渡の注目点はほかにも沢山あります。株式譲渡の手法に関しては以下の記事で分かりやすく紹介しています。

【関連】株式譲渡とは?正しく意味を理解し高い価格で売却しよう

電気工事会社の株式譲渡事例

ここでは、電気工事会社の株式譲渡事例を紹介します。電気工事業界で話題になった事例をピックアップしています。

【電気工事会社の株式譲渡事例】

  1. 南海辰村建設による京阪電気商会の子会社化
  2. オーテックによるフルノ電気工業の子会社化

1.南海辰村建設による京阪電気商会の子会社化

南海辰村建設による京阪電気商会の子会社化

https://www.nantatsu.co.jp/

2013年9月、南海辰村建設は京阪電気商会の株式87.8%を取得して子会社化することを公表しました。

京阪電気商会は京都を中心に総合電機設備を手掛ける電気工事会社です。京阪間を中心に強固な経営基盤を築いており、電気工事会社として豊富な実績を保有しています。

南海辰村建設は京阪電気商会の電気工事のノウハウを活用することで、自社の電気工事業の原価削減や京都を中心とした外部顧客網の拡大に努めるとしています。

2.オーテックによるフルノ電気工業の子会社化

オーテックによるフルノ電気工業の子会社化

https://www.o-tec.co.jp/

2016年8月、オーテックはフルノ電気工業の全株式を取得して子会社化することを公表しました。取引価格は非公表とされています。

フルノ電気工業は北海道留萌管区内で電気工事業を手掛ける会社です。取引先は官公庁が中心となっており、豊富な実績から地域における信頼も厚い電気工事会社です。

オーテックは今回のM&Aについて、北海道エリアの顧客確保と人材獲得を目的としています。フルノ電気工業の信頼や豊富な人材を活用して、さらなる事業規模の拡大を目指します。

株式譲渡に適した電気工事会社とは

株式譲渡に適した電気工事会社は、事業規模の拡大を目指している会社です。株式譲渡で大手の傘下に入ると、大手が保有する経営資源を活用して事業の安定化や拡大を図ることができます。

結果的に会社を大きく成長させることに繋がりますので、素早く事業規模を拡大させたい時は株式譲渡を利用した大手傘下入りが有効な選択肢の一つです。

電気工事会社のその他のM&A手法

電気工事会社のその他のM&A手法

電気工事会社のその他のM&A手法には、TOB(公開買付)があります。株式市場に出回っていない株式を一定の価格で買付できるので、上場企業を買収する際に広く活用されています。

電気工事業界では、大手同士のM&Aも多く見受けられます。その際は、効率よく株式を買い付けるための手法として、TOBが利用されることも珍しくありません。

電気工事会社を事業譲渡・株式譲渡する際の引き継ぎ・手続きについて

電気工事会社を事業譲渡・株式譲渡する際の引き継ぎ・手続きについて

電気工事会社のM&Aは、事業譲渡と株式譲渡のどちらを利用するかで必要な引き継ぎ・手続きが異なります。

株式譲渡は権利義務に関して包括承継となるため、従業員や取引先なども自動的に引き継ぎされます。個別に同意を取る必要もないので、手続きが非常に簡便です。

一方の事業譲渡は、権利義務に関して包括承継されないので、従業員や契約先から個別に同意を得て手続きを行う必要があります。特に、電気工事士の転籍などが伴う場合は、慎重に進めておかなくてはなりません。

電気工事会社を事業譲渡する際の相談先

電気工事会社を事業譲渡する際の相談先

電気工事会社の事業譲渡・株式譲渡を検討の際は、M&A総合研究所にご相談ください。M&Aの経験豊富なアドバイザー・会計士・弁護士の3名体制で相談から成約までの一貫したサポートを行います。

電気工事業界に精通した専門家も在籍しています。許認可の引き継ぎに必要な手続きの代行や業界動向の調査を通して、万全の体制で事業譲渡・株式譲渡に臨みます。

料金体系は完全成功報酬制を採用しています。手数料は成約段階で発生する成功報酬のみなので、最終的に必要な費用が初期段階から明瞭化されています。

無料相談は24時間体制でお受けしています。電気工事会社の事業譲渡・株式譲渡のことなら、M&A総合研究所にご相談ください。

電気工事・管工事会社のM&A・事業承継ならM&A総合研究所

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まとめ

まとめ

本記事では、電気工事会社の事業譲渡・株式譲渡のポイントを解説しました。電気工事業界では、首都圏への進出を目指す地方企業や事業基盤の強化を目指す大手企業などにより、事業譲渡・株式譲渡が活性化しています。

各種インフラ事業による電気工事会社の需要増加も見込まれているため、今後も再編の動きが強まってくるとみられています。

電気工事会社の事業譲渡・株式譲渡を検討する際は、早期から準備を進めておくことが大切です。

【電気工事業界が直面している問題】

  1. 価格競争が激しく報酬の単価が低下している
  2. 有資格者の獲得が難しくなっている
  3. 大手企業による内製化が進んでいる

【電気工事会社業界の今後の動向予測】

  1. 地方企業による首都圏企業へのM&Aが増える可能性
  2. 各種インフラ事業による需要の安定
  3. 電気工事業界全体で事業譲渡・M&Aが活性化する

【電気工事会社の評価を高めるポイント】

  1. 有資格者が多くいる事
  2. 直請比率が高く実績が豊富である事

【電気工事会社の許認可の引き継ぎ】

  • 登録電気工事業者承継届出書とは電気工事を引き継ぐ際に提出する書類
  • 登録電気工事業者の登録申請とは電気工事業者として登録する手続き