税理士事務所・会計事務所の事業譲渡を解説!相場/ 手順/注意点

税理士事務所・会計事務所の事業譲渡を解説!相場/ 手順/注意点

近年、税理士・会計士事務所の事業譲渡・M&Aが活性化しています。税理士・会計士事務所の事業譲渡・M&Aが行われている理由は、後継者問題によって承継先に悩みを抱えていたり、業界内の競争激化で経営状態が悪化していたりとさまざまです。

こうした問題に対応するには、状況がさらに深刻になる前に行動することが大切です。本記事では、税理士事務所・会計事務所の事業譲渡のポイントと相場・手順・注意点を解説します。

目次

税理士事務所・会計事務所とは

税理士事務所・会計事務所とは

税理士事務所・会計士事務所とは、税理士や会計士が個人事業主として開業している事務所です。

基本的に税理士・会計士のどちらの事務所も税務を取り扱っており、業務内容にほとんど違いはありません。

会計士はその知識や経験を活かして、税務以外にM&Aや経営コンサルを手掛けていることもあります。

税理士とは

税理士とは、確定申告の書類作成・代理申告や税務相談等のサポートを行う税務の専門家です。

確定申告ではさまざまな税金を計算する必要があるため、日常の業務と並行するのは大きな負担です。

他人に任せたいと考えても、確定申告は原則として納税者本人以外の申告は認められていません。

この代理申告を認められているのが税理士であり、税理士法第2条によって、税理士は税務代理・税務書類の作成・税務相談を行うことができます。

会計士とは

会計士とは、会計監査を独占業務とする会計の専門家です。会計監査とは、企業の財務状況が適正なものであるか、独立した立場から監査を行うことをいいます。

一定の規模を超える企業は、会計監査を置くことが義務付けられており、会計士の監査下で適正な会計を行う必要があります。

しかし、この会計監査は非常に大規模なものとなるため、会計士が個人事業主として開業している会計事務所は会計監査を請け負っていません。会計監査を行う会計士は、監査法人に身を置いていることがほとんどです。

会計士は、税理士登録をすることで税理士業務を行えるようになるので、独立した会計士による会計事務所も業務内容は税務が中心となることが多いです。

事業譲渡とは

事業譲渡とは、事業の全部あるいは一部を譲渡するM&A手法です。M&Aと聞くと会社の売買をイメージしますが、法人だけでなく個人事業主が事業を止める際、他者に売却するときも事業譲渡を利用することが可能です。

事業譲渡では、事業としての適正な価値評価を行い、それに準じた売却益を獲得することができます。また、事業譲渡した場合も個人事業主として廃業届けを出す必要があります。

【関連】事業譲渡とは?仕組みや手続きを理解し、効果的に事業を売却しよう!

税理士事務所・会計事務所の事業譲渡は計画的に行うべき理由

税理士事務所・会計事務所の事業譲渡は計画的に行うべき理由

税理士・会計士が事務所の事業譲渡を成功させるためには、計画性を持って臨まなければなりません。その理由には以下の5つがあります。

【税理士事務所・会計事務所の事業譲渡は計画的に行うべき理由】

  1. 税理士・会計士には定年がない
  2. 継続的に続く案件が存在する
  3. 業種・資産に関する価値が変化する
  4. 将来的には大手と中小の2極化が進む
  5. 後継者がいるケースが極めて少ない業種

①税理士・会計士には定年がない

1つ目の理由は、税理士・会計士には定年がないことです。除名されない限り、一生税理士・会計士として働き続けることができます。

しかし、現役の税理士・会計士として働く明確なラインを定めておかなければ、適切なタイミングで引き継ぎを行えず、事務所が廃業となる可能性も高くなります。

②継続的に続く案件が存在する

税理士・会計士の事務所が請け負う業務は税務が中心です。税務の顧問契約は継続を前提としていることが多いため、事業譲渡の際はこれらの引き継ぎも行う必要があります。

税理士・会計士は沢山の顧客がいるため、引き継ぎに手間取ってしまうと譲受先や顧客にも迷惑をかけてしまう恐れがあります。

③業種・資産に関する価値が変化する

税理士・会計士が個人事業として開業している事務所の主な顧客は中小企業ですが、近年は後継者問題や経営状態の悪化から廃業が増加してます。

また、会計ソフトの充実も影響しています。規模の小さい会社であれば、社内の経理担当でも簡単に作成できてしまうほど利便性が上がってきています。こうした事情から、税理士・会計士に税務業務を依頼する機会が減りつつあります。

④将来的には大手と中小の2極化が進む

税理士事務所と税理士法人の間で格差が広がっている問題もあります。規模の大きい案件は法人として活動する税理士法人に流れていき、税理士事務所にくる案件は小さいものばかりという問題です。

この2極化は今後も激しさを増すとみられており、税理士や会計士の事務所は厳しい立場になることが懸念されています。

⑤後継者がいるケースが極めて少ない業種

会社や事業の引き継ぎは親族に事業承継することが多いですが、国家資格である税理士・会計士は誰でもなれるわけでもないため、基本的に親族内に後継者がいないことも少なくありません。

事務所に所属する税理士・会計士も、いずれは独立したいと考えていることが多いので、税理士・会計士事務所を存続させるためには事業譲渡を活用するしかないという問題もあります。

【関連】税理士事務所や会計士事務所はM&Aを行うべき!M&Aの成功ポイントも解説

税理士・会計士業界の悩み

税理士・会計士業界の悩み

税理士・会計士業界はいくつかの悩みを抱えており、税理士・会計士事務所の経営状況を悪化させる要因にもなっています。

【税理士・会計士業界の悩み】

  1. 受験者数が減少している
  2. 全体的に高齢化している
  3. 業界全体で競争が激しくなっている

①受験者数が減少している

国税庁のまとめによると、税理士の受験者数は減少の一途を辿っています。考えられる原因は、AIによる業務代行への懸念とされています。

近年の技術の発達は目まぐるしく、将来的にAIで代行できる業種は増加する見込みです。税務も一定のルールで基づいて行われるため、AIによる再現は十分の可能とされており、税理士という業種に不安を抱く人も少なくありません。

会計士は2006年度の会計士の活動領域の拡大を目的とする政策が実施されたことで、一時的に受験者数が増加しました。しかし、一過性のブームとなり、現在は従来通りの受験者数に落ち着きをみせています。

ピーク時と比較すると、税理士・会計士ともに減少を続けており、新たな働き手が減ってきてしまっている問題があります。

②全体的に高齢化している

受験者数の減少によって新規参入者が減ってしまい、既存の税理士・会計士の高齢化が止まらないという問題もあります。

特に、税理士・会計士は定年がないこともあり、数ある業種のなかでも高齢化が深刻化しています。

③業界全体で競争が激しくなっている

税理士・会計士は、メイン顧客である中小企業が減っている影響により、競争が激化しています。

一昔前までは、事務所を開業すれば沢山の案件が流れこんできて安泰でしたが、現在は積極的なマーケティングも行わなければならない時代が訪れています。

税理士事務所・会計事務所の競争が激化した理由

税理士事務所・会計事務所の競争が激化した理由

将来安泰のイメージが強かった税理士・会計士業界の競争が激化している理由は、平成14年度の税理士法の改正によって営業活動が自由化されたことにあります。

それまでは営業活動を禁止されていたので、全ての税理士・会計士が顧客からの依頼を受けるまで、待機するだけの保守的な業務を行っていました。

しかし、税理士法の改正によって、自ら案件を獲得しにいく積極的な税理士・会計士案件が流れてくるのを待つ保守的な税理士・会計士に二分されます。以降は税理士・会計士の営業活動の戦略化が進み、現在へと至ります。

税理士事務所・会計事務所の事業譲渡のおすすめの相談先

税理士事務所・会計事務所の事業譲渡のおすすめの相談先

税理士・会計士事務所の事業譲渡は、事業譲渡の専門家のサポートが必要不可欠です。その際のおすすめの相談先には、以下の3つがあります。

【税理士事務所・会計事務所の事業譲渡のおすすめの相談先】

  1. M&A仲介会社
  2. 近隣の税理士事務所・会計事務所
  3. 都市銀行・地方銀行

①M&A仲介会社

M&A仲介会社は、M&Aの専門性をもって売り手と買い手の仲介役を担うM&Aの専門家です。事業譲渡はM&A手法のなかでも定番なので、M&A仲介会社が日常的に取り扱っている案件といえます。

事業譲渡は、買い手との交渉や法的な手続きなどの数多くの工程を行うため、幅広い分野の知識を必要とします。

当事者間で進行させるのは至難の業ですが、M&A仲介会社はこれらの一貫したサポートを提供しています。

M&A総合研究所は、中堅・中小規模のM&A仲介を請け負うM&A仲介会社です。M&A仲介業務に特化したアドバイザー・会計士・弁護士の3名による事業譲渡の一貫したサポートを提供しています。

お受けする相談内容には、税理士・会計士事務所に関するものも多く、多数の事業譲渡仲介実績を保有しています。

料金体系は完全成功報酬制を採用しています。税理士・会計士事務所の事業譲渡が完了するまで一切の費用が発生しません。税理士・会計士事務所の事業譲渡の際は、お気軽にご連絡ください。

税理士事務所・会計事務所のM&A・事業承継ならM&A総合研究所

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②近隣の税理士事務所・会計事務所

事業譲渡は会計・財務・税務等の知識を必要とします。これらは税理士・会計士の分野なので事業譲渡案件を積極的に請け負う事務所も存在します。

税理士・会計士が同業に依頼することについて違和感があるかもしれませんが、M&A・事業譲渡に関する知識も必要とするため、不思議なことではありません。

また、事業譲渡は第三者による客観性が求められる部分もあります。特に売却価格の交渉の土台となる企業価値評価は客観的な評価が必要となるため、税理士・会計士も第三者に依頼して算出することが一般的です。

③都市銀行・地方銀行

都市銀行・地方銀行は、融資以外にM&A仲介業務もおこなっています。税理士・会計士事務所の事業譲渡の相談先の候補として挙げられます。

ただ、銀行は大規模な案件を好む傾向にあるため、個人事業主として活動する税理士・会計士の事業譲渡の依頼は受け付けてくれないことがあります。銀行は相談止まりになる可能性があることに注意が必要です。

【関連】M&Aのアドバイザリー業務は銀行がオススメ?

税理士事務所・会計事務所の事業譲渡時の相場

税理士事務所・会計事務所の事業譲渡時の相場

税理士・会計士の事務所を事業譲渡する際、売却価格に関心を寄せる税理士・会計士も多いでしょう。

税理士・会計士の事務所は企業価値評価という計算法を用いて算出します。複数の手法が用意されており、財務指標を参考にして適正な価値を算出します。

財務指標は事業の性質によって異なりますが、税理士・会計士の業務内容の場合、年間顧問報酬直近の営業利益を参考にすることが多いです。

【関連】M&Aに欠かせないバリュエーション(企業価値評価)とは?

税理士事務所・会計事務所を事業譲渡する手順

税理士事務所・会計事務所を事業譲渡する手順

実際に税理士・会計士が事務所を事業譲渡するなら、どのような手順を必要とするのでしょうか。税理士・会計士事務所の事業譲渡の具体的な手順を解説します。

【税理士事務所・会計事務所を事業譲渡する手順】

  1. 事業譲渡の専門家に相談
  2. 譲渡先の選定・交渉
  3. 基本合意書の締結
  4. デューデリジェンス
  5. 最終契約書の締結
  6. クロージング

M&A・事業譲渡の専門家に相談

まずは、M&A・事業譲渡の専門家に相談することから始めます。相談内容としては、売却価格や売却の可能性に関するものが一般的です。

税理士・会計士事務所の仲介実績などに着目したうえ複数の専門家に見積もりをとって、特定の専門家に絞るとよいでしょう。

譲渡先の選定・交渉

相談先が決まったら、税理士・会計士事務所の事業譲渡先となる買い手の選定・交渉です。相談先のネットワークを活用して業界内から条件のよい候補を探し出します。

特定の買い手よりコンタクトが取られたら、具体的な資料を提供して本格的な交渉へと移ります。

基本合意書の締結

交渉がある段階まで進むと、基本合意書を締結します。現段階の交渉内容に双方が合意していることを示すための契約です。

契約書ではありますが、税理士・会計士事務所の事業譲渡が決まったわけではありません。今後の交渉次第では振り出しに戻る可能性もあります。

デューデリジェンス

デューデリジェンスは、譲渡対象の事業の価値・リスクを調査する活動です。潜在的なリスクを洗い出して、適正な価値を算出するために実施されます。

買い手側が実施するものなので、売り手である税理士・会計士がするべきことはあまりありません。しかし、買い手に求められる資料の提供や、実地調査の立ち会いなどの協力が必要となることはあります。

最終契約書の締結

デューデリジェンスで深刻な問題が認められなかった場合、最終契約書の締結へと移ります。最終的な交渉内容を落とし込む契約書であり、事業譲渡が成約したことを意味します。

本契約書の締結後は、一方的な契約破棄をすると破棄された側に損害賠償請求する権利が与えられるので注意が必要です。

クロージング

クロージングは、売り手側の引き渡しと買い手側の対価の支払いを行う工程です。税理士・会計士事務所は従業員や顧客・取引先の引き継ぎを行う必要があるので、最終契約書の締結から一定の期間を空けてからクロージングを実施することが一般的です。

全ての引き継ぎ準備が終わった段階でクロージングを行い、税理士・会計士事務所の経営権の譲渡と対価を受け取ります。

税理士事務所・会計事務所の事業譲渡にある注意点

税理士事務所・会計事務所の事業譲渡にある注意点

税理士・会計士の事務所の事業譲渡の際は、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。これらを怠ると事業譲渡が失敗に終わってしまうこともあるので、事前に把握しておくことが大切です。

【税理士事務所・会計事務所の事業譲渡にある注意点】

  1. 契約先・顧問先からの理解
  2. 雇用する従業員の離職阻止
  3. 時代や規模に対応する能力

①契約先・顧問先からの理解

税理士・会計士は、複数の顧客と契約しています。継続を基本とするものですが、事業譲渡の際は買い手と新たに契約をしてもらって引き継ぎをしなくてはなりません。

事業譲渡が決定したら、事務所の経営者が変わることについて説明を行い、理解してもらう必要があります。

②雇用する従業員の離職阻止

従業員も新たに契約する必要があります。雇用条件が変更することも考えられますので、処遇について事前説明を行わなければなりません。

説明不十分や雇用条件に不満があると、自主退職してしまう可能性があります。特に、税理士・会計士の有資格者は高い評価を受けていることも多く、事業譲渡の前提条件が満たされなくなってしまう恐れもあります。

③時代や規模に対応する能力

近年の傾向として、税理士・会計士の業務内容も広がりつつあります。税務業務による安定した顧問契約は難しくなっており、M&A等の業務を行う税理士・会計士も増えています。

また、顧客獲得のためのマーケティングに力を入れているところもあります。時代の流れに沿った能力が備わっているかというのも、税理士・会計士事務所の事業譲渡のポイントです。

事業譲渡以外の税理士事務所・会計事務所の引き継ぎ

事業譲渡以外の税理士事務所・会計事務所の引き継ぎ

税理士・会計士の事務所は、事業譲渡以外にも引き継ぎする手法が2つあります。この章では、事業承継と合併について解説します。

事業承継とは

事業承継とは、会社や事業に関する全てのものを、次なる経営者に引き継ぎすることをいいます。

親族に引き継ぎする親族内承継が一般的ですが、親族内に税理士・会計士の有資格者が居ない場合、外部から適任者をみつけて引き継ぎするM&Aによる事業承継が多いです。

【関連】事業承継は相談先で成功が決まる!すぐ使うべき専門窓口7選を紹介!

合併とは

合併とは、複数の法人や事業を一つに統合する手法です。税理士・会計士が母体を大きくするメリットは、双方の経営資源を統合できることにあります。

規模が大きくなるにつれて知名度やブランドの向上に繋がり、新規の顧客獲得もやりやすくなります。

事業譲渡との違い

事業承継は、経営理念などを含めた事業の全てを引き継ぎしますが、事業譲渡は必ずしも全てを譲渡するわけではありません。

合併は、吸収される側が消滅する特徴を持ちます。合併は税理士・会計士の事務所としての名前が残らない可能性があることに注意が必要です。

税理士事務所・会計事務所の事業譲渡する際の営業権の扱い

税理士事務所・会計事務所の事業譲渡する際の営業権の扱い

営業権とは、事業譲渡の売却価格と純資産の差額のことで「のれん」とも呼ばれています。

税理士・会計士は、複数の顧問契約を抱えているので無形資産の比率が高く、純資産よりも高い評価を受けることが一般的です。

しかし、税理士・会計士の業務は「一身専属権」という特定人に専属し、他者に移転しないという性質を持っています。そのため、営業権ではなく雑所得として処理されることになります。

まとめ

まとめ

税理士・会計士業界はさまざまな悩みを抱えており、経営状態が傾いている事務所も多く見受けられます。

中小企業の減少や会計ソフトの台頭によって、税理士・会計士の活動範囲が狭まるなか、業務内容の見直しや事業譲渡を活用した戦略が求められています。

税理士・会計士の事務所の事業譲渡を検討の際は、必要に応じて専門家に相談すると成功率も高まるでしょう。

【税理士事務所・会計事務所の事業譲渡は計画的に行うべき理由】

  1. 税理士・会計士には定年がない
  2. 継続的に続く案件が存在する
  3. 業種・資産に関する価値が変化する
  4. 将来的には大手と中小の2極化が進む
  5. 後継者がいるケースが極めて少ない業種

【税理士・会計士業界の悩み】

  1. 受験者数が減少している
  2. 全体的に高齢化している
  3. 業界全体で競争が激しくなっている

【税理士事務所・会計事務所の事業譲渡のおすすめの相談先】

  1. M&A仲介会社
  2. 近隣の税理士事務所・会計事務所
  3. 都市銀行・地方銀行

【税理士事務所・会計事務所を事業譲渡する手順】

  1. 事業譲渡の専門家に相談
  2. 譲渡先の選定・交渉
  3. 基本合意書の締結
  4. デューデリジェンス
  5. 最終契約書の締結
  6. クロージング

【税理士事務所・会計事務所の事業譲渡における注意点】

  1. 契約先・顧問先からの理解
  2. 雇用する従業員の離職阻止
  3. 時代や規模に対応する能力