不動産業界のM&A・事業承継!買収総額は2倍に?メリット・デメリットは?

不動産業界のM&A・事業承継は、人材不足や需要減少などの影響で、今後活発になっていくと考えられます。

本記事では、不動産業界のM&A・事業承継のメリット・デメリット、2019年の買収総額が前年の2倍になった理由などについて解説します。

不動産業界とは

不動産業界は市場規模が非常に大きく、M&Aも活発に行われています。まずこの章では、不動産業界の定義や市場規模など、基本的な事項を解説します。

不動産業界の定義

不動産業界とは、動産に関連する事業を営む業界のことです。不動産とは動かすことができない財産を指し、民法では「土地およびその定着物」と定義されています。

不動産業界の業種には、不動産を建てるゼネコンやハウスメーカー、不動産を販売するデベロッパー、不動産の賃貸を仲介する仲介業者、不動産を管理する管理会社などがあります。

不動産業界の市場規模

不動産業界の市場規模は、2015年が約39兆円、2018年が約46兆円と、ここ数年は拡大傾向にあります

都心部のオフィスの賃貸が好調である一方、住宅は一戸建て・マンションともにやや伸び悩んでいるのが現状です。

消費税増税の影響は今のところそこまで大きくなく、今後も堅調な推移が続くとみられています。

不動産業界の現状

不動産業界の現状は、インバウンドやタワーマンションによる需要増加が大きなトピックだといえます。

この章では、不動産業界の現状として、インバウンド需要とタワーマンションの増加、そして景気動向の影響について解説します。

【不動産業界の現状】

  1. インバウンド需要による宿泊施設への投資増
  2. 都市部のタワーマンション開発の増加
  3. 景気動向に大きな影響を受けている

1.インバウンド需要による宿泊施設への投資増

日本を訪れる外国人観光客は年々増えており、それに伴う宿泊施設の需要も増加しています。外国人観光客向けの宿泊施設は、外国語の対応や日本風の内装・外装などが重要で、日本人向けの宿泊施設とは求められるサービスに違いがあります。

こういったインバウンド向けの宿泊施設はまだまだ不足しており、投資が活発に行われています。

2.都市部のタワーマンション開発の増加

近年は、タワーマンションと呼ばれる超高層マンションが都市部を中心に増加しており、不動産業界の市場規模拡大の要因の一つとなっています

タワーマンションは値崩れが起きにくく換金性が高いとされており、駅前の再開発に伴って建設される事例が多くみられます。

タワーマンションの建築数は首都圏が約8割を占めており、地方での開発はそれほど進んでいないのが現状です。

3.景気動向に大きな影響を受けている

不動産業界はここ数年好調なものの、オリンピック需要やアベノミクスによる部分が大きく、景気動向に左右されやすいという特徴があります。

オリンピック後の地価暴落や人口減少による需要の縮小、そして生産緑地の税制優遇がなくなるいわゆる2022年問題など、将来的な不安要素を抱えているのも不動産業界の現状といえるでしょう。

不動産業界のM&A・事業承継動向

不動産業界は、M&Aや事業承継が活発に行われている業種の一つです。不動産業界のM&Aを行うためには、どのようなM&A・事業承継が行われているか、動向を押さえておくことが大切です。

この章では、不動産業界の主なM&A・事業承継動向について、後継者問題や人口減少などに関連した以下の4点を解説します。

【不動産業界のM&A・事業承継動向】

  1. M&A・事業承継件数は増加している
  2. 後継者問題からのM&A・事業承継が増加
  3. 市場規模の縮小や競争により経営難からM&Aが増加
  4. 人口減少を懸念した経営基盤の強化を目的としたM&Aが増加

M&A・事業承継件数は増加している

不動産業界でどれくらいM&A・事業承継が行われているかは、公表されていない案件が多いため、小規模なM&Aを含めた正確な数字は分かりません。

しかし、大手仲介会社が公表しているデータによれば、不動産業界のM&A件数は2018年で208件となっており、ここ20年ほどで最も多くなっています。今のところこの増加傾向が減少に転じる大きな要因はなく、今後もしばらく増加傾向は続くと考えられます。

後継者問題からのM&A・事業承継が増加

M&Aを行う理由は事例によってさまざまですが、近年は中小企業の後継者問題からのM&A・事業承継が増加しています。これは業種に関わらずいえる傾向で、もちろん不動産業界でも当てはまる現象です。

後継者問題は経営者の高齢化に加えて、親族など身近な人間に後継者がいないという昨今の事情も要因ともなっています。そのため、M&Aを活用して親族以外から後継者をみつけようとする動きが活発化してきています。

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市場規模の縮小や競争により経営難からM&Aが増加

不動産業界の市場規模はここ数年は堅調に推移していますが、人口減少などで将来的に縮小していく可能性は高いと考えられます。市場規模が縮小すると必然的に競争が加速し、経営難に陥る不動産会社が増えてくるでしょう。

経営難に陥った不動産会社がM&Aに活路を見出そうとする動きは、今後活発になると予想されます。

人口減少を懸念した経営基盤の強化を目的としたM&Aが増加

2020年現在、人口は減少傾向に向かってはいるものの、今のところ不動産業界に大きな影響は与えていません。

しかし、将来的に人口減少が問題になるのは確実であり、それを見越して経営基盤強化のためにM&Aを行う事例も出てきています

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不動産業界のM&A・事業承継の買収総額は2倍に増加

2019年の不動産業界のM&A買収総額は約2222億円で、前年の約1027億円に比べて2倍強に増加しています

一年で買収総額が倍になるのは相当ともいえますが、その背景にはどういう要因があるのでしょうか。

この章では、不動産業界のM&A・事業承継の買収総額が2倍に増加した背景や、不動産業界M&Aが今後どうなるかについて解説します。

不動産業界のM&A・事業承継に今起きていること

2019年の買収総額が増えたのは、大型のM&Aあったことが大きな要因です。買収額1位の米フォートレスによるユニゾホールディングスのTOBは買収額が1368億円で、この一件だけで前年の買収総額を上回っています。

ここまで大型の買収となったのは、この買収がエイチ・アイ・エスによる敵対的買収への対抗策だったことも要因だと考えられます。

一般にほとんどのM&Aは友好的なものですが、不動産業界のM&Aでは敵対的買収も発生しているのが最近の動向です。

不動産業界のM&A・事業承継の今後

今後の不動産業界のM&A・事業承継がどうなるか予測するのは簡単ではありませんが、要因としては市場の縮小・技術革新・人材不足などが挙げられます。以下では、この3つの要因について解説します。

【不動産業界のM&A・事業承継の今後】

  1. 建設需要が減少し市場が縮小する恐れ
  2. 技術革新によるビッグデータの活用
  3. 人材不足の深刻化

1.建設需要が減少し市場が縮小する恐れ

日本はこれから人口が減少していくので、必然的に住宅の建築需要が減少し市場が縮小する恐れがあります

また、2020年は新型コロナウイルスの影響で、着工床面積が20%程度減少すると予測されており、さらなる市場縮小を招く可能性も指摘されています。

2.技術革新によるビッグデータの活用

近年の不動産業界では、ビッグデータを活用するなどした技術革新がみられます。こういったITを活用した不動産業界の技術革新のことは「不動産テック」と呼ばれています。

例えば、過去の取引情報のビッグデータから不動産の売却価格を求める技術などがあり、こういったサービスを専門とする不動産テックベンチャーも増加しつつあります

3.人材不足の深刻化

不動産業界は90%の会社が人材不足といわれており、ほかの業種と比べても人材不足の深刻度が高い傾向にあります。なかでも不動産賃貸業は長時間労働が多いこともあり、人材不足が深刻だといわれています。

日本が少子化していくことを考えると、今後不動産業界の人材不足が解消される可能性は低く、さらに深刻化する可能性もあると考えられます

不動産業界のM&A・事業承継のメリット・デメリット

不動産業界のM&A・事業承継を成功させるには、そのメリットとデメリットを理解して、デメリットをできるだけ排除しつつ、メリットを享受できるように準備していくことが大切です。

この章では、不動産業界のM&A・事業承継のメリット・デメリットについて解説します。

不動産業界のM&A・事業承継のメリット

まずは、不動産業界のM&A・事業承継のメリットを解説します。主なメリットには以下の5つがあります。

【不動産業界のM&A・事業承継のメリット】

  1. 後継者問題の悩みが解決する
  2. 従業員の雇用先を確保する
  3. 大手の傘下に入り経営が安定する
  4. 個人保証・担保が解消される
  5. 譲渡・売却益を獲得できる

1.後継者問題の悩みが解決する

近年はどの業種でも経営者の高齢化が進んでおり、いかに後継者をみつけて会社を引き継げるかが課題となっています。

不動産業界でも中小企業を中心に後継者問題が深刻化しており、M&Aによる事業承継の普及が急務となっています。

2.従業員の雇用先を確保する

従業員の雇用を確保するために、M&Aを利用するというのも有力な手段です。M&A後に従業員の雇用を継続するかどうかは買い手が決めることですが、普通は買収後に従業員を解雇することはありません

むしろ優秀な従業員がいる不動産会社の場合は、その従業員の獲得を目的に買収を行う買い手もたくさんいます。

買収側は売却側より大手のことが多いので、M&Aの結果雇用が確保されるだけでなく、雇用条件が改善されるケースもよくあります。

3.大手の傘下に入り経営が安定する

M&Aで買収を行う会社は資金力のある大手が多いので、その傘下に入って経営を安定させられるというメリットもあります。

大手の傘下に入るというと、大手から無理やり買収されるという間違ったイメージを持っている人もいますが、実際は売り手側から大手の傘下に入ることを望むケースのほうが多いです。

4.個人保証・担保が解消される

中小の不動産会社では多くの経営者が個人保証をしていると思いますが、個人保証というのは会社の倒産が自身の破産に結び付く可能性があるので、経営者にとっては大きな精神的負担となります。

また、新しい事業に挑戦したくても、個人保証や担保が負担になって実行できないケースもあります。

M&Aで不動産会社を売却すると、基本的には個人保証や担保も買い手企業に引き継がれるので、プレッシャーから解放され新しい事業にもチャレンジしやすくなるメリットがあります。

5.譲渡・売却益を獲得できる

M&Aで不動産会社を売却すると、譲渡・売却益を得ることができます。お金を手に入れられるというのはやはり大きなメリットです。

M&Aで手に入れた売却益を元手に新しい事業を始めたり、引退後の生活費に充てたりすることができます。

M&Aはスキームによって、売却益が経営者個人に入る場合と、譲渡企業に入る場合があるのが注意点です。

例えば、株式譲渡は売却益が経営者(株主)に入りますが、事業譲渡の場合は譲渡企業の利益となります。

さらに、売却益には所得税などの各種税金がかかるので、最終的に手元に残るお金がいくらになるかを計算しておく必要があります。

不動産業界のM&A・事業承継のデメリット

次に、不動産業界のM&A・事業承継のデメリットについて解説します。主なデメリットは以下の4つがあります。

【不動産業界のM&A・事業承継のデメリット】

  1. 希望通りの条件で譲渡・売却できるとは限らない
  2. 従業員や顧客からの反発がある可能性
  3. 買収成約後、従業員の雇用条件が変わる可能性
  4. 準備に時間がかかる・後継者育成に時間がかかる

1.希望通りの条件で譲渡・売却できるとは限らない

M&Aは買い手と売り手の交渉によって条件が決まるので、必ずしも希望通りの条件で譲渡・売却できるとは限りません。むしろ、こちらの希望が全て通るようなM&Aはまれともいえるでしょう。

M&Aで交渉が長引くと、とにかく成約させることだけが目的になってしまい、納得いかない条件で契約を締結して後悔するケースもあります。

納得いく条件で成約できそうにない場合は、思い切って交渉を破断にする勇気も時には必要です。

2.従業員や顧客からの反発がある可能性

M&Aを行うと従業員の雇用条件や労働環境が変化し、買い手の傘下に入った場合はブランドや社名が変わることもあります。

環境の変化は従業員や顧客の反発を招くことがあり、結果として従業員が退職してしまったり、顧客が離れたりしてM&Aが失敗するケースもあります。

従業員や顧客はその会社や商品に思い入れがあることも多く、雇用条件をよくすれば必ず喜んでくれるとは限らないのがM&Aの難しい点といえるでしょう。

3.買収成約後、従業員の雇用条件が変わる可能性

不動産会社をM&Aで売却すると、従業員の雇用条件が変わることがあります。雇用条件が改善される場合は問題ありませんが、もし条件が悪くなる部分がある場合、それを不満に思った従業員に離職される恐れがあります

事業譲渡でM&Aを行う場合は、雇用条件の変化に特に注意する必要があります。株式譲渡は経営者を変更するだけなので雇用条件が変化しないことも多いですが、事業譲渡は新たに雇用契約を結びなおすので、雇用条件が変化することが多くなります

雇用条件を変化させたくない場合は、雇用条件を変えないことを契約の条件に盛り込むなどして対応することもできます。

4.準備に時間がかかる・後継者育成に時間がかかる

M&Aは準備から成約まで時間がかかることが多く、トータルで1年以上かかるケースも珍しくありません

また、スムーズな事業承継を行うには後継者を育成する必要があり、数年程度かかるのが一般的です

引退したいと思ってM&Aによる事業承継を行っても、実際に引退できるまでにはそこから数年はかかると思っておかなければなりません。

したがって、M&Aの事業承継は、引退する何年も前の段階から、プランを練って準備を進めていく必要があります。

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不動産業界のM&A・事業承継の買い手側の注意点

不動産業界のM&Aで会社を買収する際は、そのメリットと注意点を把握しておく必要があります。この章では、M&A・事業承継における買い手側のメリットと注意点について解説します。

買い手側にはどんなメリットがある?

不動産業界は、長時間労働などによる人材不足、人口減少による需要減少と競争激化など、さまざまな問題を抱えています。

企業が抱えている問題を解決する手段としてM&Aによる買収を活用できるのは、買い手の大きなメリットです。

不動産業界内のほかの分野へ進出できるのも、M&Aの買い手のメリットだといえるでしょう。例えば、不動産賃貸業を営んでいる会社が不動産管理などの分野へ事業拡大したい時、M&Aによる買収が有力な選択肢となります。

買い手側の注意点

株式譲渡などの手法で会社を買収すると、その会社が持っている負債を引き継ぐことになります。M&Aの買い手側は、契約を締結する前に、デューデリジェンスなどで買収する会社の負債を把握しておくことが大切です。

特に、帳簿に表れない簿外債務は、デューデリジェンスでできるだけ洗い出しておくことが重要になります。

また、譲受した不動産に含み益や含み損がある場合は、それに対する税金の取り扱いをはっきりさせておくことも注意点です。

不動産業界のM&A・事業承継の相談先

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M&A総合研究所では売上規模一億円から数十億円程度の案件を主に取り扱っており、中堅から中小規模の不動産会社のM&Aに最適です。案件規模が小さいことを理由に、仲介を断られたことがある方にもおすすめです。

成約までのスピードを重視しており、平均3か月から6か月での成約を実現しています。業界動向が変わってしまう前に最善の条件で成約するとともに、経営者様の本業への支障を最小限に抑えることが可能です。

無料相談は随時お受けしていますので、不動産業界のM&A・事業承継をお考えの方は、お電話かメールでお気軽にお問い合わせください。

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まとめ

買収規模の増大や需要減少による競争激化などにより、不動産業界のM&A・事業承継は今後活発になっていくと考えられます。

不動産業界の現状や動向、およびM&Aのメリットやデメリットを理解して、満足いくM&Aが行えるようにしておくことが大切です。

【不動産業界の現状】

  1. インバウンド需要による宿泊施設への投資増
  2. 都市部のタワーマンション開発の増加
  3. 景気動向に大きな影響を受けている

【不動産業界のM&A・事業承継動向】

  1. M&A・事業承継件数は増加している
  2. 後継者問題からのM&A・事業承継が増加
  3. 市場規模の縮小や競争により経営難からM&Aが増加
  4. 人口減少を懸念した経営基盤の強化を目的としたM&Aが増加

【不動産業界のM&A・事業承継の今後】

  1. 建設需要が減少し市場が縮小する恐れ
  2. 技術革新によるビッグデータの活用
  3. 人材不足の深刻化

【不動産業界のM&A・事業承継のメリット】

  1. 後継者問題の悩みが解決する
  2. 従業員の雇用先を確保する
  3. 大手の傘下に入り経営が安定する
  4. 個人保証・担保が解消される
  5. 譲渡・売却益を獲得できる

【不動産業界のM&A・事業承継のデメリット】

  1. 希望通りの条件で譲渡・売却できるとは限らない
  2. 従業員や顧客からの反発がある可能性
  3. 買収成約後、従業員の雇用条件が変わる可能性
  4. 準備に時間がかかる・後継者育成に時間がかかる