ホテル・旅館の事業譲渡・株式譲渡のポイントとは!動向/事例/相談先も紹介

ホテル・旅館の事業譲渡・株式譲渡のポイントとは!動向/事例/相談先も紹介

近年、ホテル・旅館のM&Aの動きが活発しています。背景には、訪日外国人の増加や地方観光客の増加があり、ニーズに対応するためのキャパシティを確保しようとする動きが強まっています。

ホテル・旅館とは

ホテル・旅館とは

ホテル・旅館は、宿泊以外に飲食、レジャーなど幅広い機能を果たしている施設です。時代に合わせて変化する宿泊客のニーズに合わせて、提供するサービスも多様化させてきました。

しかし、一口にホテル・旅館といっても、両者には決定的な違いがあります。ホテル・旅館業界の動向を解説する前に、まずはホテル・旅館の定義や事業譲渡について触れていきます。

ホテルとは

ホテルとは、洋式の宿泊施設です。厚生労働省の旅館業法概要によると、以下のように定義されています。

【旅館業法によるホテルの定義】

  • 客室のタイプ:洋室
  • 客室の広さ:9平方メートル以上
  • トイレ:水洗かつ洋式
  • 施錠:指定なし

以前は、客室数や施錠などについて細かい指定がありましたが、平成30年の旅館業法改正によって洋室の構造設備の基準に大幅な緩和が行われています。

旅館とは

旅館とは、和式の宿泊施設です。ホテルと同様、最低限必要な客室数が基準から廃止されています。客室が和室かつ7平方メートル以上であれば、旅館として定義されることになります。

【旅館業法による旅館の定義】

  • 客室のタイプ・・・和室
  • 客室の広さ・・・7平方メートル以上(寝台を置く場合は9平方メートル以上)
  • トイレ・・・タイプの指定なし
  • 施錠・・・指定なし

事業譲渡とは

事業譲渡とは、事業の全部あるいは一部を譲渡するM&A手法です。合併や買収を伴うM&A手法とは異なり、会社の経営権は維持したままという特徴があります。

最大のメリットは譲渡対象を自由に選べることにありますが、譲渡対象について個別の交渉・手続きを要するというデメリットも存在します。

その他のM&A手法

M&A手法のなかで、株式譲渡も利用されることが多いです。株式譲渡は、売り手が保有する株式を譲渡することで経営権を移転するM&A手法です。

会社そのものを売却して経営者としてリタイアしたり、大手グループの傘下に入ることで経営資源を活用して事業規模を拡大したり、という活用方法がされています。

ホテル・旅館業界が直面している問題

ホテル・旅館業界が直面している問題

近年のホテル・旅館業界はいくつかの問題を抱えています。この章では、ホテル・旅館業界の経営状態を圧迫させている主な要因について解説します。

【ホテル・旅館業界が直面している問題】

  1. 旅行サイトの影響により収益が低下
  2. 建物の修繕費などの投資負担が経営を圧迫
  3. 従業員不足が深刻

①旅行サイトの影響により収益が低下

ホテル・旅館業界の傾向の1つとして、オンラインでホテル・旅館の宿泊予約ができる旅行サイト・アプリのサービス拡充があります。

ホテル・旅館の情報を始め、近隣のレジャー施設の情報などもまとめて掲載しており、消費者に対する効果的な宣伝効果をもたらしています。

しかし、老舗のホテル・旅館の中には、これらサービスへの対応が遅れているところも多く、柔軟な対応を見せる同業種に宿泊客を取られて収益が低下するといった問題も発生しています。

②建物の修繕費などの投資負担が経営を圧迫

ホテル・旅館業の経営を圧迫する要因の1つに、維持コストがあります。大きな割合を占めるのが修繕費であり、建物の経年劣化を抑えるために高額の管理・メンテナンス費用を要します。

客室の利用率に関係なく毎月の支出になるので、ホテル・旅館の経営に大きな負担となる傾向にあります。

③従業員不足が深刻

日本全国あらゆる業種において人材不足が叫ばれていますが、ホテル・旅館業界の人材不足も深刻化しています。

特に、接客を担当するホテルスタッフや仲居は一朝一夕で接客技術を身につけられるものではなく、雇用後の一定期間の研修などを通して人材育成しなくてはなりません。お金の問題だけではないというのも、より深刻さを増しています。

ホテル・旅館業界の今後の動向予測

ホテル・旅館業界の今後の動向予測

ホテル・旅館業界はいくつもの問題を抱えていますが、今後はどのような動きをみせるのでしょうか。ここでは、ホテル・旅館業界が抱える問題から、今後の動向を予測します。

【ホテル・旅館業界の今後の動向予測】

  1. 今後ますます収益性が低下する懸念がある
  2. 廃業・倒産の件数が増加する可能性
  3. ホテル・旅館業界の事業譲渡・M&A動向

①今後ますます収益性が低下する懸念がある

今後の動向予測の1つに、異業種参入による競争激化が挙げられます。近年、日本の文化が世界に広まりをみせることで日本に興味を持つ訪日外国人が増えています。

このこと自体は好材料ですが、需要を見越した投資目的によるホテル・旅館の事業譲渡・M&Aが活発になっていることが不安要素として懸念されています。

巨額の資本を活用した設備拡充や広告宣伝によって多くの宿泊客を奪われてしまい、ひいては収益性の低下に繋がる恐れもあります。

②廃業・倒産の件数が増加する可能性

帝国データバンクの「老舗企業」の倒産・廃業調査によると、2018年度における創業100年以上の老舗企業の倒産・休廃業・解散件数は465件というデータが明らかになっています。

業種の内訳を件数順に見ると、「呉服・服地小売」22件に次いで、「ホテル・旅館」18件で2位です。

原因は、昨今の目まぐるしいIT化の進展に対応できなかったことや後継者不在などが考えられます。老舗企業のこの大勢は今後も続くと見られており、廃業・倒産の件数も増加する見方がされています。

③ホテル・旅館業界の事業譲渡・M&A動向

ここまでみてきた問題は、ホテル・旅館業界にとって深刻さを増しつつあります。実際に廃業・倒産しているホテル・旅館も数多く、この流れを止めるためには何かしらの対策を講じなければなりません。

その対策法の1つとして、事業譲渡・M&Aがあります。赤字経営を続けて債務を拡大させるよりも、傷が浅いうちに事業譲渡・M&Aして売却益を獲得しようとする動きが強まっています。

【関連】【2020年最新】M&Aでホテルを売却するなら今がチャンス!異業種の買収も増加中!

ホテル・旅館の評価を高めるポイント

ホテル・旅館の評価を高めるポイント

事業譲渡を検討する際は、売却益の最大化のためにポイントがあります。ホテル・旅館の事業譲渡において大切なポイントは以下のものです。

【ホテル・旅館の評価を高めるポイント】

  1. 従業員が揃っており、立地もよい事
  2. 旅行サイトに頼らない宣伝方法がある事

①従業員が揃っており、立地もよい事

ホテル・旅館において従業員はとても大切です。宿泊業・サービス業の離職率は高いことで知られており、従業員獲得に難を抱えるホテル・旅館も少なくありません。これは買い手側のホテル・旅館も例外ではなく、経験のある従業員は重宝される傾向にあります。

立地については、周辺の施設がポイントになります。人気観光地やレジャー施設があると地域への一定以上の観光客流入が見込めるため、ホテル・旅館としての価値を大きく高めてくれます。

【関連】事業譲渡・事業売却後の社員・従業員の退職金や雇用契約など処遇を解説

②旅行サイトに頼らない宣伝方法がある事

ホテル・旅館を買収しようとする企業は、旅行サイトを始めとしたオンライン広告を活用した宣伝方法について、既に十分なノウハウを持っていることがほとんどです。

重視されるのは、独自の宣伝方法を持っていることです。旅行サイト以外からの安定した流入があるホテル・旅館であれば、買収後に効果的に事業を拡大させることが可能です。

ホテル・旅館の事業譲渡・M&Aは時流に合ったサービスが大切

ホテル・旅館の事業譲渡・M&Aは時流に合ったサービスが大切

ホテル・旅館を事業譲渡・M&Aする際は、時流に合ったサービスが大切になります。ポイントは以下のものが挙げられます。

柔軟なサービスを提供できる

ホテル・旅館のサービスの根幹は宿泊業ですが、それだけでは激化する競争のなかで宿泊客を呼び込むことはできません。

例えば、ナイトライフサービスの充実です。ホテル・旅館に宿泊する際、昼間は観光などで楽しい時間を送れますが、夜は手持ち無沙汰になってしまうことも多いです。バーやクラブが充実していれば、宿泊客は夜の時間も楽しく過ごすことができるでしょう。

また、増加する訪日外国人に対応するために、英語・中国語に対応できるスタッフの確保も重要なポイントです。現地で母国語を話してくれるスタッフがいれば安心して宿泊することができます。

許認可を持ち、コンプライアンスを満たしている

ホテル・旅館の営業は、旅館業法3条に基づく許認可が必要です。近年は個人でも民泊サービスを提供できるアプリ・サービスが充実しており、無許可営業している事例も多数見受けられます。無許可営業に対しては、罰金や営業停止命令等の厳しい罰則が課せられます。

このような法的リスクは事業譲渡・M&Aにおける評価を大きく落とす要因になりますので、許認可の取得は絶対です。

ホテル・旅館の事業譲渡のポイント

ホテル・旅館の事業譲渡のポイント

ホテル・旅館を事業譲渡する際は、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。この章では、ホテル・旅館の事業譲渡におけるポイントと事業譲渡事例を紹介します。

ホテル・旅館を事業譲渡する際の注目点

ホテル・旅館の事業譲渡のポイントは従業員の引き継ぎです。事業譲渡で従業員を転籍させるためには、個別の同意が必要になるので引き継ぎ準備が完了するまで時間がかかる傾向にあります。

情報保護の観点から早期に説明しておくことはできないので、事業譲渡の正式な契約が締結されてから実際に引き渡しを行うまでの間に、処遇の説明と転籍の同意を得ておく必要があります。

また、事業譲渡の進め方や注意点については以下の記事で詳細にまとめていますので、あわせてご覧ください。

【関連】事業譲渡とは?仕組みや手続きを理解し、効果的に事業を売却しよう!

ホテル・旅館の事業譲渡事例

こちらでは、ホテル・旅館の事業譲渡事例を紹介します。

【ホテル・旅館の事業譲渡事例】

  1. ナチュラルグリーンリゾートによるアルファクス・フード・システムへの事業譲渡
  2. ロイヤルホテルによるFlorentiaへの事業譲渡
  3. 西武HDによるオーストラリア企業の事業取得

ナチュラルグリーンリゾートによるアルファクス・フード・システムへの事業譲渡

2017年8月、ナチュラルグリーンリゾートは同社のホテル運営事業をアルファクス・フード・システムへ事業譲渡することを公表しました。

ナチュラルグリーンリゾートは自然環境調和型ホテル「ナチュラルグリーンパークホテル」を運営する企業です。自然豊かな土地にホテルを構え、実質的な本社機能を兼ねています。

アルファクス・フード・システムは外食産業向けの情報システム企業です。異業種からの参入となり、今後はホテルの運営を通じて、外食産業の適格なニーズ把握や新商品開発に努めるとしています。

ロイヤルホテルによるFlorentiaへの事業譲渡

2015年2月、ロイヤルホテルは同社所有のリーガロイヤルホテル京都をFlorentiaへ事業譲渡することを公表しました。

ロイヤルホテルは、国内主要都市に数多くのホテルを展開する大手企業です。リーガロイヤルホテル京都は1969年の開業以来、格式のあるホテルとして運営されてきました。

Florentiaは、アメリカのファンド・フォートレス・インベストメント・グループの関係会社です。主にホテル資産を所有しており、本事業譲渡も資産として確保する目的で実施されました。

今後は、ロイヤルホテルがFloerntiaからホテル運営を受託する形で営業していくことも公表されています。

西武HDによるオーストラリア企業の事業取得

2017年7月、西武HDはStayWell Hospitality Group Pty Ltd(オーストラリア・SHGP)のホテル事業を事業譲渡で取得することを公表しました。SHGPは、オーストラリアを拠点にホテルを30店舗展開している企業です。

西武HDは、今回の事業譲渡について、自社の既存事業に加えて海外ホテル事業を成長させていくことで、グローバル市場においても飛躍的な成長を目指すとしています。

事業譲渡に適したホテル・旅館とは

ホテル・旅館が事業譲渡を検討するケースはさまざまですが、多くに共通しているのは経営に関して不安要素を持っていることです。

近年のホテル・旅館業の需要の高まりを見越して、異業種からの参入も多く見受けらます。競争激化が予想されるなかで、事業譲渡で一定の利益を確定しておこうと考えるホテル・旅館が多いです。

ホテル・旅館の株式譲渡のポイント

ホテル・旅館の株式譲渡のポイント

ホテル・旅館は事業譲渡が多いですが、株式譲渡を活用する場合もあります。事業譲渡とは性質が異なりますので、ポイントをみていきましょう。

ホテル・旅館を株式譲渡する際の注目点

ホテル・旅館を株式譲渡する際は、簿外債務の存在に注意する必要があります。簿外債務とは、貸借対照表に記載されない債務を指し、特に中小企業の会計処理において発生しがちな潜在的リスクです。

この簿外債務を認識しないまま包括承継である株式譲渡を実施すると、買い手は想定外のリスクを抱え込むことになるため、後からトラブルに発展する恐れがあります。

こうしたリスクを避けるためにも、自社が抱えている簿外債務について徹底的に調査しておかなければなりません。

ここでは財務リスクである簿外債務を例に挙げましたが、株式譲渡は他にも多くのポイントがあります。M&A・株式譲渡は以下の記事でもくわしく解説しています。

【関連】株式譲渡とは?正しく意味を理解し高い価格で売却しよう

ホテル・旅館の株式譲渡事例

ここでは、ホテル・旅館の株式譲渡事例を紹介します。

【ホテル・旅館の株式譲渡事例】

  1. モスによるヒューリックへの株式譲渡
  2. えびす旅館によるベストワンドットコムへの株式譲渡

モスによるヒューリックへの株式譲渡

2018年8月、モスは同社の株式88%をヒューリックへ譲渡することを公表しました。モスは石川県のホテル日航金沢を運営しているホテル会社です。

地上30階建ての高層ホテルは北陸随一のスケールを誇っており、宿泊以外にもランチやウェディング会場として幅広く活用されています。

ヒューリックは、今回の株式譲渡について観光産業における競争力をつけることを目的としています。

えびす旅館によるベストワンドットコムへの株式譲渡

2018年12月、GLOBAL NETWORKは100%子会社えびす旅館の全株式をベストワンドットコムへ譲渡することを公表しました。

えびす旅館は京都で旅館を運営している企業です。2015年3月にオープンしたばかりで比較的新しく、全室和式になっている落ち着きのある旅館です。

ベストワンドットコムは、クルーズ旅行専門のオンライン旅行企業です。これまでホテル・旅館業には携わっていませんでしたが、今回の株式譲渡をきっかけに参入することになります。

株式譲渡に適したホテル・旅館とは

ホテル・旅館の株式譲渡では、企業再生や事業規模の拡大を狙ったものが多くみられます。

事例からみても、経営者が入れ替わるだけで経営理念や運営体制に大きな変化が見られるものはほとんどありません。買い手の経営資源を活用することで、企業の存続と繁栄を両立させることも可能です。

ホテル・旅館のその他のM&A手法

ホテル・旅館のその他のM&A手法

ホテル・旅館の他のM&A手法は、会社分割がみられます。会社分割は、事業の全部あるいは一部とその権利義務を包括承継するM&A手法です。

事業譲渡と似ていますが、権利義務の包括承継という点で大きく異なります。具体的には、従業員や許認可の引き継ぎが可能であることを意味します。

ホテル・旅館を運営するうえでの許認可は必須であり、従業員も重要な存在です。引き継ぎ漏れのリスクを大幅に下げられる点を重視して、会社分割を利用するケースもあります。

【関連】会社分割とは?4つの種類や税務・メリットやデメリット・事業譲渡との比較について解説

ホテル・旅館を事業譲渡・株式譲渡する際の引き継ぎ・手続きについて

ホテル・旅館を事業譲渡・株式譲渡する際の引き継ぎ・手続きについて

ホテル・旅館の事業譲渡・株式譲渡の際は、従業員や許認可を始めとした引き継ぎ・手続きが必要です。ホテル・旅館で特に重要なものをまとめたのが下表です。

  事業譲渡 株式譲渡
売掛金 債権譲渡の通知 自動的
買掛金 免責的債務引受契約 自動的
従業員 個別の同意 自動的(自主退職リスクはある)
許認可 再取得 引き継ぎ可能
地位 買い手の同意 会社に残る場合は別途交渉

ホテル・旅館を事業譲渡する際の相談先

ホテル・旅館を事業譲渡する際の相談先

ホテル・旅館の事業譲渡は、従業員の引き継ぎを始めとした様々な注意点があります。全てをクリアして万全の体制で事業譲渡に臨むためには、M&Aの専門家のサポートが欠かせません。

M&A総合研究所は、中堅・中小規模のM&A仲介を得意とするM&A仲介会社です。幅広い業種に対応しており、ホテル・旅館業のM&A・事業譲渡においても多数の仲介実績があります。

報酬体系は完全成功報酬制を採用しています。事業譲渡や株式譲渡が成約するまで一切の手数料が発生しないので、成約しないまま費用だけがかかってしまうことはありません。

無料相談は24時間お受けしています。ホテル・旅館の事業譲渡・M&Aなら、M&A総合研究所にご相談ください。

ホテル・旅館のM&A・事業承継ならM&A総合研究所

電話で無料相談
0120-401-970
WEBで無料相談
M&Aのプロに相談する

まとめ

まとめ

ホテル・旅館業界は、観光業の需要の高まりから、同業種はもちろん異業種からも大きな注目を集めています。

今後もさまざまな企業が活発に動き出すことも想定されるため、事業譲渡・M&Aについてある程度把握しておくと柔軟な対応が取れます。

【ホテル・旅館業界が直面している問題】

  1. 旅行サイトの影響により収益が低下
  2. 建物の修繕費などの投資負担が経営を圧迫
  3. 従業員不足が深刻

【ホテル・旅館業界の今後の動向予測】

  1. 今後ますます収益性が低下する懸念がある
  2. 廃業・倒産の件数が増加する可能性
  3. ホテル・旅館業界の事業譲渡・M&A動向

【ホテル・旅館の事業譲渡・M&Aで評価を高めるポイント】

  1. 従業員が揃っており、立地もよい事
  2. 旅行サイトに頼らない宣伝方法がある事