ビルメンテナンス会社のM&A、事業承継を徹底解説【事例あり】

ビルメンテナンス会社、ビルなど建物における清掃・設備維持・警備などを手掛ける会社です。ビルメンテナンス会社の主軸は清掃業ですが、国内人口減少によりビルやマンションなどの空室も増えているため、売上維持が厳しい状況にあります。

当記事ではビルメンテナンス会社のM&Aについて、M&Aの現状・動向やM&Aの手順・注意点、M&Aの相場などを解説します。

ビルメンテナンス会社とは

ビルなどの建物管理を行うビルメンテナンス会社は、マンション管理会社とは業務内容と対象が異なります。市場成長率は停滞ぎみであり、主軸となっている清掃業では最低賃金の引上げなどの理由により人材不足の問題を抱えています。

ビルメンテナンス会社とは

ビルメンテナンス会社は、ビル内外の清掃や衛生管理、電気・給排水・空調・消防・昇降機などの設備管理、建物・設備の点検、警備・防災業務などを行う会社です。

業務の対象となる建物には、ビル・宿泊施設・学校・商業施設・病院・集合住宅などが挙げられます。

ビルメンテナンス会社には、特定業務のみを手掛けている会社だけでなく、ビルメンテナンスのすべてを担っているところもあります。

マンション管理会社との違い

マンション管理会社では、管理組合の会計・出納事務や総会の開催、共用部の修繕・維持、設備の点検・保守、管理人による見回り・出入り業者への対応・備品の管理などを行っています。

ビルメンテナンス会社とマンション管理会社とでは、対象となる建物および業務内容が異なります

業務内容の主な違いには、マンション管理会社は居住者の生活維持のための業務以外に管理組合の運営も行いますが、ビルメンテナンス会社は建物維持に関連した業務が主体となっています。

ビルメンテナンス会社のなかにもマネジメント業務を担うケースはありますが、一般的にはビルメンテナンス会社の業務は建物の維持管理となっています。

主なビルメンテナンス会社

ビルメンテナンス会社は多数存在しますが、業界内の売上をみると下表の会社が上位となっています。

これらのビルメンテナンス会社では、管理事業のみを扱っているところは少なく、ほとんどが関連事業(賃貸・不動産の仲介・設備工事・修繕・建物の診断・マンション管理)も手掛けています。

会社 対象事業 2019年度の売上高(ビルメンテナンス事業)
イオンディライト 設備管理・警備・清掃 1,651億円
日本管財 建物管理運営・警備 752.27億円
日本空調サービス メンテナンスサービス 322.67億円
ダイビル ビル管理 115.47億円
日本ハウズイング ビル管理 102.46億円

市場規模

公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が調査した「第50回実態調査報告書」では、ビルメンテナンス会社業界における2018年度の市場規模はおよそ4.4兆円となっています。

前年度がおよそ4.26兆円だったため、微増傾向がみられます。ビルメンテナンス会社をエリアごとの売上高では、東京が最も多く、近畿、中部北陸、関東甲信越と続いています。

2017年度でマイナス成長を記録した北海道と九州エリアも2018年度にはプラスに転じ、全国の平均成長率は2.7%という結果になっています。

業界の特徴

また、前述の「第50回実態調査報告書」では、ビルメンテナンス会社業界の業務別売上高も公表されています。

業務別売上高は多い順から、一般清掃(63.5%)・設備管理(17.4)・そのほかの業務(12.1%)・警備(7.1%)という結果になっています。

2014~2019年度の結果でも売上高の順序は変わらないことから、ほとんどのビルメンテナンス会社は清掃業務が主軸になっていると考えられます。

そのほか、売上高が高い企業ほど一般清掃以外の業務を手掛けている特徴があり、月商規模が1億円を超える企業では、設備管理・警備業務・そのほかの業務に力を入れる割合が高くなっています。

業界の動向

ビルメンテナンス会社の売上高は、2014年度からプラス成長に切り替わっており、業界の事業環境はよい方向へ転じているとも考えられますが、ビルメンテナンス会社の多くは材不足の状況にあります。

最低賃金が引き上げられたことに加え、業務を請け負う金額も低いため、思うように人材を確保できていないの現状です。

なかでも清掃業務はパートを雇う割合が高いため、安い賃金で募集をかけても人材が集まりにくい状況がみられます。また、ビルメンテナンス会社の社員給与もほかの業種と比べると低い水準にあり、離職率の高さが問題とされています。

こうした状況を改善するために、高齢者・外国人を採用して人材を補ったり、請負金額アップの交渉・勤務計画の見直し・スキルの向上などで売上のアップを図ろうとするビルメンテナンス会社はもみられます。

一部のビルメンテナンス会社では、状況の改善のためにロボットを導入していますが、価格・効果・安全性などの理由により導入を見送っているところも多いです。

ビルメンテナンス会社M&Aの現状と動向

ビルメンテナンス会社では、事業性に見通しが立たないなどの理由により、国内同業者へのM&Aや海での事業拡大を目的とするM&Aを行うケースもみられます。この章では、ビルメンテナンス会社M&Aの現状と動向について解説します。

ビルメンテナンス会社M&Aの現状

公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が調査した「第50回実態調査報告書」によれば、ビルメンテナンス会社の成長率は、2016年度は0.5%と1%以下に下がっているものの、以降は上昇傾向が続き、2019年度には2.7%にまで高まっています。

しかし、国内人口の減少や建物の空室率などを考えると、ビルメンテナンス会社の先行きは不透明な部分も多いといえるでしょう。

ビルメンテナンス業界全体の受注量が減少すれば競争激化は避けられず、そうなれば受注料の低下は余儀なくされるので、経営はより厳しくなると考えられます。

そのような事態を鑑みて、ビルメンテナンス会社は売上を維持するためにM&Aという手段を選ぶケースも増えてきています。

ビルメンテナンス会社のM&A動向

ビルメンテナンス会社のM&A事例をみると、既存事業の補完を目的としたものの多くみられます。多くのビルメンテナンス会社は清掃業を主軸としていますが、清掃業だけでは事業の継続が困難であると判断し、設備・警備などの業務を手掛ける会社をM&Aで獲得しています。

また、ビルメンテナンス会社のなかには、国外での事業拡大のためにM&Aを行うケースもみられます。

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【事例】ビルメンテナンス会社M&Aの事例

この章では、実際に行われたビルメンテナンス会社のM&A事例をピックアップして紹介します。

  1. 東洋テックによる新栄ビルサービスの株式譲受
  2. 三幸による都市総合サービスの株式譲受
  3. 関西エレベーターによるアルデプロへの株式譲渡
  4. 東洋テックによる大阪ビルサービスの株式取得
  5. 日本ハウズイングによる亜細亜総合防災の株式譲受

①東洋テックによる新栄ビルサービスの株式譲受

https://www.toyo-tec.co.jp

ビルメンテナンス会社による1例目のM&Aは、東洋テック株式会社による株式会社新栄ビルサービスの株式譲受です。

2020年4月、警備・ビル管理事業を手掛ける東洋テックは、マンションやビルの清掃事業など行う新栄ビルサービスの全株式を取得し、完全子会社としました。

東洋テックは、新栄ビルサービスのもつノウハウや資源を活用し、自社事業との一体化と人材の共有化により相乗効果発揮を目指すとしています

②三幸による都市総合サービスの株式譲受

https://www.sanko-inc.co.jp

ビルメンテナンス会社による2例目のM&Aは、三幸株式会社による都市総合サービス株式会社の株式譲受です。

総合ビルメンテナンス事業を営む三幸は、2019年6月、設備・環境管理や警備・保守、清掃業務などを手掛ける都市総合サービスの株式を取得しました。

三幸は既に都市総合サービスの株式8.87%を取得しており、今回のM&Aで残りの株式をすべて買い取って完全子会社化しています。

本M&Aにより、三幸は都市総合サービスとの係を強め、ビルメンテナンス会社としての事業拡大および企業価値向上を目指すとしています

③関西エレベーターによるアルデプロへの株式譲渡

http://www.kansai-ev.co.jp

ビルメンテナンス会社による3例目のM&Aは、株式会社関西エレベーターによる株式会社アルデプロへの株式譲渡です。

エレベーター・機械式駐車場の保守管理事業を営む関西エレベーターは、2015年9月、賃貸管理事業などを手掛けるアルデプロへ、全株式を4.135億円で譲渡しました。

アルデプロは関西エレベーターを取得することにより、不動産管理の新規受注や関西圏へのエリア拡大などを目指すとしています。

④東洋テックによる大阪ビルサービスの株式取得

https://www.toyo-tec.co.jp

ビルメンテナンス会社による4例目のM&Aは、東洋テック株式会社による株式会社大阪ビルサービスの株式取得です。

警備・ビル管理事業を手掛ける東洋テックは、2015年7月、清掃事業を営む大阪ビルサービスの株式70%を取得して連結子会社としました。

東洋テックは大阪ビルサービスをグループに加えることにより、収益基盤をさらに強め、同社のもつ清掃業のノウハウを警備・ビル管理へ活かすことで、相乗効果発揮にも期待できるとしています。

⑤日本ハウズイングによる亜細亜総合防災の株式譲受

https://www.housing.co.jp

ビルメンテナンス会社による5例目のM&Aは、日本ハウズイング株式会社による株式会社亜細亜総合防災の株式譲受です。

オフィスビルや賃貸マンションの管理事業などを営む日本ハウズイングは、2015年4月、消防設備工事と点検事業を手掛ける亜細亜総合防災の全株式を取得し完全子会社としました。

日本ハウズイングは、亜細亜総合防災をグループ傘下とすることにより、消防設備工事と点検への強い要望に応えられる体制を整えるとしています

ビルメンテンナンス会社のM&A相場

M&Aを行う際は売却価格がどのくらいになるのかが気になるとことですが、M&Aの売却価格は経営状況や資産・負債、業界動向などが影響するうえ、最終的には当事者間の話し合いで決まります。

そのため、ビルメンテナンス会社のM&A相場はこのくらいと断言することはできませんが、過去の事例や企業価値算定により、ある程度の目安を知ることは可能です。

例えば、M&Aのマッチングサイトをみると、実際に行われた事例の価格は1000万円以下~5億円の範囲であり、募集案件で多い希望価格は1000~5000万円となっています。

ビルメンテナンス会社のM&A価格は、一般的に売却側の純資産に数年の利益を加えても計算されますが、上記の事例はあくまでも参考となるものです。

自社の企業価値算定を専門家に依頼すれば、より具体的な価格を知ることができるので、ビルメンテナンスのM&Aを検討する際は、専門家に相談することをおすすめします。

M&Aの相場はいくら?価格の決め方や譲渡価格をアップさせる方法を解説!

ビルメンテナンス会社のM&Aの流れ

この章では、ビルメンテナンス会社のM&Aを行う際の一般的な流れについて、各手順を解説します。

  1. 専門家に相談する
  2. M&A先の選定・交渉
  3. トップ同士の面談
  4. 基本合意書の締結
  5. デューデリジェンスの実施
  6. 最終契約書の締結
  7. クロージング

1.専門家に相談する

ビルメンテナンス会社のM&Aにおける1つ目の手順は、専門家への相談することです。M&Aにおいては、使用するM&Aスキームの決定やM&Aの相手先探し、取引価格の算出、交渉・成約手続きなどを経なければなりません。

いずれも専門的な知識やネットワークが必要になるため、ビルメンテナンス会社のM&Aを検討した段階で、M&A仲介会社などの専門家へ相談することから始めます。

2.M&A先の選定・交渉

ビルメンテナンス会社のM&Aにおける2番目の手順は、交渉相手の選定と交渉です。まずサポートを依頼した専門家からM&A交渉相手の候補が数社ピックアップされるので、その中から交渉を進める相手を選びます。

その後は専門家を介して相手先へ打診し、M&Aの進める意向が確認できたら、交渉へと進みます。

3.トップ同士の面談

ビルメンテナンス会社のM&Aにおける3番目の手順は、トップ同士の面談です。売り手・買い手のトップが実際に顔を合わせて、互いの人となりを見極めたりM&A後の経営方針を確認したりなど、資料ではわからない部分を確認していきます。

4.基本合意書の締結

ビルメンテナンス会社のM&Aにおける4番目の手順は、基本合意書の締結です。トップ同士の面談を終え、両者がこれまで交渉した条件に大筋で同意したら、内容を文書にまとめて基本合意書を締結します。

基本合意書はあくまでも仮の合意条件に基づいて作成されるため、それ自体に法的拘束力はありませんが、独占交渉権など一部事項には法的拘束力を持たせるのが一般的です。

5.デューデリジェンスの実施

ビルメンテナンス会社のM&Aにおける5番目の手順は、デューデリジェンス(DD)の実施です。買収側は、売却側が提出した資料に誤りがないかを確認するための調査を行います。

デューデリジェンス(DD)によって、財務・事業の将来性・買収のリスクなどを把握して、M&Aを実際に行うか否かを判断します。

デューデリジェンスとは?注意点と相談すべき専門家を解説!

6.最終契約書の締結

ビルメンテナンス会社のM&Aにおける6番目の手順は、最終契約書の締結です。デューデリジェンス(DD)結果、買収側がM&Aを実施することに問題ないと判断した場合、最終契約書の締結へと移ります。

最終契約書の締結前は、デューデリジェンス(DD)の結果を踏まえ、必要があれば条件変更などを協議し、最終的な条件を決定します

基本合意書とは違い、最終契約書は記載されている事項すべてに法的拘束力があるため、締結後に一方的に破棄した場合などは、損害賠償請求を受ける可能性があります。

7.クロージング

ビルメンテナンス会社のM&Aにおける最後の手順は、クロージングです。クロージングでは、重要な文書・印鑑などの受け渡し、M&A取引代金の決済や、株券の受け渡しなどを行い、必要書類に調印を済ませると、経営権・事業の所有権が買収側に移行します。

ビルメンテナンス会社M&Aを行う際の注意点

ビルメンテナンス会社のM&Aを行う際は、いくつか注意しておくべき点があります。この章では、重要なポイント3点について解説します。

  1. 従業員の流出
  2. 情報の漏洩
  3. 簿外債務の発覚

1.従業員の流出

ビルメンテナンス会社の業界においては、人材の確保が課題とされています。そのため、M&Aに伴い売却側の従業員が離職してしまっては、買収側はM&A後の経営計画に狂いが生じかねません。

売却側は、特に優秀な人材が流出してしまわないよう、対策を講じておく必要があります。また、M&Aを行うことを伝えるタイミングにも注意が必要です。

従業員に対してM&Aを行うことを知らせるのはM&A成立後が望ましく、交渉段階では役員など一部に限定し、不安を煽らないようすることも大切です。

2.情報の漏洩

M&Aの手続きを進める間に、情報が漏洩してしまうケースもあります。情報漏洩は故意であるか否かにかかわらず起こることがあるため、十分注意しておかなければありません。

例えば、相手先企業へ自社の名前を隠した状態で情報開示をした段階でも、同じ地域に同業者が数えるほどしかいないようなケースでは情報漏洩が起こり得ます。

そのような事態を避けるためには、自社だとわからないように情報をぼやかすことも大切です。所在地を市町村の範囲から都道府県にまで広げるなど、いろいろな方法があるので専門家に相談してみるとよいでしょう。

また、交渉先が情報を得るためだけに接触を図るケースも考えられるため、質問に対しての回答があまりにも遅い相手とは交渉を避けるなどの方法も情報漏洩のひとつの手段です。

3.簿外債務の発覚

簿外債務を見落としてしまうと、買収側のM&A後の経営にも大きく影響します。また、場合によっては、売る側に賠償責任が生じる可能性もあります。

買う側はデューディリジェンス(DD)をしっかりと行って簿外債務の有無を調査し、売却側はM&Aを行う前に自社の財務状況を確認しておき、簿外債務合った場合は隠さずに伝えることも大切です

ビルメンテナンス会社M&Aのおすすめの相談先

ビルメンテナンス会社のM&Aをご検討の際は、M&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は中小規模のM&Aを取り扱っており、ビルメンテナンス業界に精通したアドバイザーも在籍しています。

経験豊富なM&Aアドバイザーと弁護士が担当につき、ご相談からクロージングまで親身になってフルサポートいたします。

料金システムは完全成果報酬型を採用しているため、万一ご成約に至らなければ手数料は発生いたしません。

ビルメンテナンス会社のM&Aをご検討の際は、お気軽にM&A総合研究所の無料相談をご利用ください。お電話またはメールより24時間ご相談をお受けしています。

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まとめ

ビルメンテナンス会社の業界は市場成長率のわずかな上昇がみられるものの、人材の不足や賃金の上昇、低い請負料といった問題を抱えています。

そのような状況下、事業継続や人材確保のためにM&Aを行うビルメンテナンス会社もみられます。

ビルメンテナンス会社M&Aの現状と動向

  • 売上アップのためにM&Aを選択する
  • 国内M&Aは顧客を囲い込みの目的が多い
  • 国外M&Aは事業拡大目的が多い

【ビルメンテナンス会社のM&Aの流れ】

  1. 専門家に相談する
  2. M&A先の選定・交渉
  3. トップ同士の面談
  4. 基本合意書の締結
  5. デューデリジェンスの実施
  6. 最終契約書の締結
  7. クロージング

【ビルメンテナンス会社M&Aを行う際の注意点】

  • 従業員の流出を防ぐ
  • 情報の漏洩に注意する
  • 簿外債務の発覚