アーンアウトとは?損しないためのアーンアウト条項の4つの注意点

アーンアウトについてお調べですね。

アーンアウトとは、売却後に条件を満たした場合に譲渡対価を上乗せをして支払われる追加報酬のことです。

アメリカでは多く活用されてきましたが、最近日本でもアーンアウトを活用するM&Aが増えてきました。

売り手企業・買い手企業ともにメリットのあるアーンアウトですが、気を付けなければ損してしまうかもしれません。

今回はアーンアウトの意味や目的、事例を分かりやすく解説。

気を付けなければならない注意点も詳しく説明しています。

アーンアウトについての理解を深め、自社にとって有利なM&A取引を実行しましょう。

1.アーンアウトとは

アーンアウトとは、売却後に条件を満たした場合に譲渡対価を上乗せをして支払われる追加報酬のことです。

英語表記では、Earnoutと書きます。

通常、M&Aでは最終合意条約の締結と同じタイミングで譲渡対価の全額を一括で支払われるものです。

しかし、アーンアウト条項では「1年後、売り上げが10億円に達成した場合に残りの譲渡対価と利益を上乗せして対価を支払う」といった規定を結びます。

このようにM&Aで売却した事業の今後の業績を加味して、その後発生した利益も買い手企業が支払う義務をアーンアウトと呼ぶのです。

2.アーンアウト条項を盛り込む目的

アーンアウト条項を盛り込む目的は売り手企業・買い手企業それぞれにあります。

それぞれの目的を確認しましょう。

売り手企業の目的.多くの資金を手に入れられる可能性がある

アーンアウト条項を盛り込むことで、多くの資金を手に入れられる可能性があります。

通常のM&Aだと、企業価値算定で決まった譲渡対価を一括で支払われるものです。

しかし、売却後に事業が成長し、買い手企業が儲かったのであれば利益還元してもらえます。

このように、アーンアウトで決めた条件を達成すれば、当初よりも多くの資金を手に入れることが出来るのです。

買い手企業の目的.買収時に背負うリスクが軽減する

アーンアウト条項を盛り込むことで、買収時に背負うリスクが軽減されます。

買収を決める時、だれにも買収した事業の業績を正確に予測できません。

もちろん、「利益が出る」と判断して買収を決定しているものの、不確実な将来への投資はリスクともいえます。

しかし、アーンアウトを活用することで分割で支払うことができ、まとまった資金の必要がありません。

また、利益が出れば多く支払い、利益が出なければ少なく支払うといった正確な対価を支払うことが出来るのです。

3.アーンアウト条項の事例

アーンアウト条項が利用されたM&Aの事例として、マネックスによるコインチェックのM&Aが有名です。

2018年4月、マネックスは仮想通貨交換業者のコインチェックを36億円で完全子会社化すると発表しました。

このM&Aでは、追加で譲渡対価を支払うアーンアウト条項が定められています。

具体的なアーンアウト条項の内容は以下の通りです。

18年~21年3月期までの3年間の純利益合計額に対し、2分の1を上限に追加で取得費用を支払う

ただし、いつ・いくらの費用が支払われるのかまでは公表されていません。

このM&Aにおいて、アーンアウト条項が盛り込まれた理由は2つあります。

  • M&A時、まだ仮想通貨交換業の登録を済ませておらずみなし業者だったから
  • コインチェックは過去に不正流出問題を起こしていて、イメージが悪かったから

このような理由から、マネックスはアーンアウト条項を設けてリスク分散を図ったのです。

まだ定められた3年が経過していないため、いまだにどうなるかは判断できません。

今後のコインチェックの動きに注目が高まります。

4.アーンアウト条項を盛り込んだ時の処理の流れ

アーンアウト条項を盛り込んだ時、どのように対価が支払われるのか気になりますよね。

そこで、アーンアウト条項を盛り込んだ時の処理の流れを3つに分けて解説します。

しっかりと確認していきましょう。

流れ1.アーンアウト条項の締結

まずは、アーンアウト条項を締結しましょう。

アーンアウト条項は、基本合意時に両社の同意を得る必要があります。

このときに、以下の内容を取り決めるようにしましょう。

基本額 M&A成立時に無条件で支払う額
追加報酬
(アーンアウト額)
定めた条件を満たしたときに支払われる追加報酬額
アーンアウトの支払い条件 「1年後売り上げが10億円以上を達成させる」
「2年以内に申請中の特許が承認される」
など、追加報酬を支払うための条件
支払い時期 追加報酬を支払う時期

また、これらは必ず最終契約書にも明記するようにしましょう。

流れ2.アーンアウトの支払い条件の評価

M&A成立後、アーンアウトの支払い条件について評価を行います。

評価期間はアーンアウトの支払い条件によって異なりますが、M&A成立後3年以内が一般的です。

この期間が長くなればなるほど、M&A成立時には予測していなかったことが発生する可能性が高くなります。

そのため、できるだけ短く設定する必要があるのです。

設定された条件の期間が経てば、アーンアウトの条件が達成されているか判断を行います。

流れ3.買い手企業による追加報酬の支払い

アーンアウトの支払い条件が達成されていれば、追加報酬が買い手企業から支払われます。

追加報酬は「目標売上を超えたら10億円支払う」「利益の2分の1を支払う」など条件によって様々です。

評価後迅速に支払われるよう、支払い時期を設定しておきましょう。

5.アーンアウト条項を結ぶときの注意点

アーンアウトは将来の利益を加味した魅力的な条件ではありますが、注意点もあります。

4つの注意点を理解しないまま、アーンアウト条項を盛り込むと後で損するかもしれません。

アーンアウト条項を締結する際には、自社にメリットのあるアーンアウト条項を盛り込みましょう。

それでは4つの注意点を詳しく確認して下さい。

注意点1.買い手企業によって業績操作される可能性がある

買い手企業によって、売却後の事業の業績操作をされるかもしれません。

なぜなら、買い手企業は業績を抑えることで追加報酬を少なくしようと考える可能性があるからです。

こういった事態を防ぐためには、アーンアウトの権利を侵害する行為を一切禁止するといった内容を盛り込む必要があります。

また、財務指標をアーンアウトの支払い条件の基準にするのではなく、一定の事実の発生をアーンアウト条項の基準にするのも有効です。

例えば、特許の取得や認可の取得などを条件とするのも良いでしょう。

注意点2.買い手企業に再売却される可能性がある

売却した事業を買い手企業によって再売却される可能性があります。

その場合、アーンアウトの支払い条件を満たしたか評価をすることが出来ません。

つまり、売り手企業が追加報酬を受け取る権利を侵害されることになるのです。

このようなことが起きないよう、アーンアウト条項には以下のような内容も盛り込みましょう。

  1. 評価期間中の売却を禁止する
  2. 万が一売却する場合は対価の支払いをしなければならない

買い手企業に再売却されたら賠償責任を追及できるよう、条件を盛り込むよう注意しましょう。

注意点3.売却直後に受け取れる対価が少ない

当然ですが、アーンアウト条項を盛り込むことで売却後に受け取る対価が少なくなります。

M&A直後は譲渡対価の半分しか支払われないなんてこともあり得るでしょう。

必要な資金を早く手に入れるためには、アーンアウト条項を結ぶ際に基本額を高く設定しなければなりません。

双方の合意が必要なため、しっかりと交渉しましょう。

注意点4.アーンアウトの評価期間によって評価が大きく変わる

アーンアウトの評価期間によって評価が大きく変わってしまうので注意しましょう。

アーンアウトの評価期間は出来るだけ短い期間に設定することを心掛けるべきです。

3年以上も先の業績を条件にされると、「その業績の責任は売り手企業にはないのではないか?」という疑問が生まれます。

出来るだけ短い期間に設定し、達成できる条件に交渉するようにしましょう。

6.M&Aをするなら必ずM&Aアドバイザーに相談しよう

アーンアウト条項を盛り込む・盛り込まないに関わらずM&Aを検討しているのであれば、必ずM&Aアドバイザーに相談しましょう。

M&Aアドバイザーとは、M&Aを総合的にコンサルティングしてくれる存在です。

自社だけでM&Aを完結させようとすると、膨大な時間と労力がかかってしまいます。

また、アーンアウトなどの契約書に盛り込む条項の内容を弁護士などの専門家の力が必要です。

M&Aアドバイザーなら弁護士などの専門家を紹介してくれます。

このようにM&Aアドバイザーの存在はM&Aを行うにあたって不可欠です。

まずは自社に合うM&A仲介会社を見つけ、信頼できるM&Aアドバイザーに相談しましょう。

M&A仲介会社については『【M&A仲介会社BEST5を発表】有名企業5社を徹底比較!!』で詳しく説明しています。

参考にして下さい。

【補足】アーンアウト条項のあるM&Aによる会計処理方法

「アーンアウト条項のあるM&Aによる会計処理方法ってどうなるの?」と気になる人もいるはずです。

アーンアウト条項がある場合、日本基準の場合と国際基準(IFRS)の場合とで会計処理方法は異なります。

両方の場合を確認しておきましょう。

会計処理方法1.日本基準による会計処理

日本基準において、アーンアウト条項付きのM&Aは条件付取得対価として会計処理しなければなりません。

条件付取得対価の会計処理は、当該条件付取得対価の交付または引き渡しが確実になるまで会計処理は行わないことが定められています。

会計処理の手順は以下の通りです。

  1. M&A効果発生日時点に譲渡価格を計上する
  2. アーンアウト条項による条件付取得対価の支払いが確定したときにのれんを計上する

万が一、アーンアウト条項で決められた条件が達成しなかった場合、売り手企業から対価を返してもらうといったこともあります。

これも条件付取得対価に含まれるのです。

このように、日本基準においては、まず譲渡対価を会計処理し、その後追加で会計処理をします。

会計処理方法2.国際基準(IFRS)による会計処理

一方、国際基準(IFRS)において、アーンアウト条件付きのM&AはM&A効果発生日に条件付き対価を公正価値で計上します。

日本基準のように追加の処理はありません。

一括処理を行うため、M&Aによって得られる利益を厳密に計算しなければならないのです。

このように、買い手企業が買収した事業にどれほど期待しているか(見立てだ建てられているのか)が重要となります。

日本企業よりも国際基準の方が、買収した事業の利益達成が可能であるかはじめの会計処理時に見極めておくことが必要なのです。

まとめ

アーンアウトとは、M&Aの譲渡対価を分割で払い、売却後に利益を上乗せして対価を支払われることです。

売り手企業にとっては気を付けなければならないことがたくさんあります。

M&Aの専門家であるM&Aアドバイザーに相談をし、自社に有利なM&Aを成立させましょう。