コーポレート・インバージョンとは?三角合併を活用した税対策や企業の事例を解説

コーポレート・インバージョンについてお調べですね。

コーポレート・インバージョンとは、海外企業とのМ&Aで税対策をする方法です。

会社法の改正により、日本でもコーポレート・インバージョンを行う企業が増えてきています。

一方で、コーポレート・インバージョンは税金逃れとして問題視されているのです。

そのため、コーポレート・インバージョン対策税制が取られるようになりました。

コーポレート・インバージョンを検討している企業では、きちんとコーポレート・インバージョン対策税制のについて理解しておかなければ、課税が発生する場合があります。

そこで今回は、コーポレート・インバージョンの意味や企業の導入事例、対策税制などについて詳しく解説していきます。

正しい方法でコーポレート・インバージョンを行い、賢く節税しましょう。

1.コーポレート・インバージョンとは

コーポレート・インバージョンとは、海外企業とのМ&Aで税対策をする方法です。

具体的には、以下の方法で行われます。

  1. 自国に本拠を置く多国籍企業が法人税の低い外国に法人を設立
  2. 外国法人がその企業グループの最終的な親会社になるように本社機能を移転
  3. 組織再編成を行うことで自国の法人税を免れる

日本の法人税率は約30%と、世界的見ても非常に高い税率となっています。

日本よりも法人税が低い(または、法人税がない)国に親会社を設立することで、税金の支払いを抑えることができるのです。

1-1.日本でのコーポレート・インバージョンの始まり

日本でコーポレート・インバージョンを活用した税対策が導入され始めたのは、平成19年です。

新会社法の施行に伴い、海外法人の日本子会社が親会社の株式を対価として吸収合併する三角合併が可能となったのです。

そのため、節税を目的としたコーポレート・インバージョンも実質的に可能となりました。

コーポレート・インバージョンを行う際には、クロスボーダーМ&Aを実施します。

まずは、クロスボーダーМ&Aについて詳しく見ていきましょう。

1-2.クロスボーダーМ&Aとは

クロスボーダーМ&Aとは、国内企業と海外企業によるМ&Aのことです。

国内企業が海外企業を買収するМ&AをのことをIN-OUTというのが一般的です。

一方、海外企業が国内企業を買収するМ&AをOUT-INと言います。

コーポレート・インバージョンの場合は、海外に企業を設立し、日本企業を子会社化させるのです。

コーポレート・インバージョンは、「タックスヘイブン」と言われる国々で実施されます。

では、タックスヘイブンについて詳しく見ていきましょう。

1-3.タックスヘイブンとは

タックスヘイブンとは、課税が低い、もしくはない地域のことを指します。

租税回避地や低課税地域とも言われます。

コーポレート・インバージョンを行う際に、タックスヘイブンである国に会社を設立し親会社とすることで、本来払わなければいけない法人税を節税することができるのです。

タックスヘイブンの国や地域は世界中に存在しています。

その中でも特に、ヨーロッパや近郊の島国に集中しているのです。

タックスヘイブンの国は40か国以上に上ります。

その中でも特に有名な国は以下の通りです。

  • ケイマン諸島
  • ヴァージン諸島
  • パナマ
  • リベリア
  • スイス
  • ルクセンブルク
  • リヒテンシュタイン
  • シンガポール
  • 香港
  • モナコ
  • リベリア
  • バハマ
  • バーレーン
  • ベリーズ

これらの国は、課税率が低いことからコーポレート・インバージョンを行う際に使用されているのです。

2.企業のコーポレート・インバージョンの事例

コーポレート・インバージョンは、海外の有名企業でも行われています。

今回は、以下の3つの企業の事例を確認しましょう。

  1. Google
  2. ファイザー製薬
  3. Amazon

では、1つずつ見ていきましょう。

事例1.Google

2017年にIT大手企業のGoogleは、傘下であるアルファベット社の本社をオランダからイギリスのバミューダ諸島に移転させました。

バミューダ島はタックスヘイブンの地域として有名で、法人税は非課税なのです。

この移転は、199億ユーロ(約2兆4600億円)の資金の租税回避が目的でした。

アルファベット社はまず、アイルランドの子会社からオランダのダミー会社に収入を移転しました。

そして、所得税のかからないバミューダ諸島にある別のアイルランドの子会社に移す節税手法を利用し、199億ユーロを移したのです。

このコーポレート・インバージョンに対しアルファベット社側は、「私たちは事業を行っている国ごとの税法を順守し、支払うべき税は全額支払っている」と主張しています。

事例2.ファイザー製薬

2015年11月、アイルランドの製薬会社アラガンをファイザー製薬が1600億ドルで買収しました。

アラガンの時価総額は15兆円、ファイザーの時価総額は25兆円です。

規模の小さい企業が大きな企業を吸収合併したわけは、税逃れにあります。

ファイザー製薬は海外発注文の税金数年分、計9兆円を未払いにしていたため、アメリカの内国歳入庁と揉めていたのです。

しかし、コーポレート・インバージョンによって、ファイザー製薬は法的に消滅したことになります。

消滅した会社は税金の支払い義務はなくなるので、結果として、9兆円の未払いと、1兆円の新たな税金を支払わずに済んだのです。

また、アイルランドの法人税率は12.5%とアメリカの35%と低くなっています。

そのため、アメリカに本社を置くよりも法人税の支払い額が少なくなるのです。

事例3.東京エレクトロン

2013年9月24日、半導体製造装置で当時世界第4位だった東京エレクトロンは、世界1位の企業であるアプライド・マテリアルズと経営統合しました。

そして、統合後の持株会社をオランダに設立したのです。

この経営統合の目的は、三角合併による節税です。

オランダの法人税は、25%と日本(30%)やアメリカ(35%)よりも低くなっています。

そのため、オランダに本社を置くことで法人税の支払い額が少なくなるのです。

3.コーポレート・インバージョンでどれくらいの節税ができるのか

コーポレート・インバージョンによって節税できる額は、企業の規模によって異なります。

日本の法人税率は30%に設定されています。

この数字は、世界的に見ても非常に高い税率です。

そのため、タックスヘイブンの国や地域にコーポレート・インバージョンを行うことで法人税が下がるのです。

例えば、法人の利益が1,000万円だったとします。

その場合、日本での法人税は1,000万円×30%=300万円となります。

仮に、コーポレート・インバージョンで本社をシンガポールに移すとなると、法人税は17%です。

その結果、法人税は1,000万円×17%=170万円となります。

このように、法人税率が異なることで支払う税金がかなり変わってくるのです。

4.コーポレート・インバージョン対策税制

コーポレート・インバージョンを行うことで、節税することができます。

しかし、税金逃れとして問題視されているのです。

そのために設けられているのが、コーポレート・インバージョン対策税制となっています。

コーポレート・インバージョン対策税制とは、租税回避行為を防止するための制度です。

コーポレート・インバージョン対策税制は、国内法人の株主の所得を国内法人の収益の額とみなし、益金の額に算入します。

株主が三角合併により、外国法人を通じその国内法人の発行済株式等の80%以上を間接保有することになった場合は以下のような計算です。

特定外国法人が各事業年度で留保した所得をその持株割合に応じて計算します。

5.三角合併を用いてコーポレート・インバージョンを行う際の流れ

日本でコーポレート・インバージョンを行う際は、三角合併を用いる手法がとられます。

三角合併とは、吸収合併の1つです。

消滅企業の株主に対して存続企業の親会社の株式を交付する方法の合併になっています。

では、三角合併を用いてコーポレート・インバージョンを行う際の流れについて確認しましょう。

  1. 子会社による親会社の取得
  2. 子会社による合併契約承認
  3. 株主総会による情報開示
  4. 合併対価の割り当て

では、1つずつ見ていきましょう。

流れ1.子会社による親会社の取得

まず、子会社によって親会社を取得する必要があります。

なぜなら、存続企業の親会社が消滅会社の株主に対して直接的に自社株式の交付はできないからです。

子会社による親会社の株式取得は原則として禁じられています。

しかし、三角合併の場合においては許容されているのです。

流れ2.株主総会による合併契約承認

三角合併の場合も、吸収合併と同じく株主総会による特別決議が必要となります。

しかし、三角合併の場合においては否決されることはまず考えられません。

そのため、実質的には消滅企業の決議要件が満たされているかを確認するためのものです。

なお、親会社に関しては株主総会は実施する必要がありません。

流れ3.株主総会による情報開示

株主総会の決議には、十分な情報開示が必要です。

具体的には、以下の情報を提供しなければいけません。

  • 合併条件の相当性に関する情報
  • 合併時価の換価方法
  • 合併対価の発行主体の親会社の情報
  • 最終事業年度の計算書類
  • 監査報告書

上記の書類をあらかじめ準備しておき、必要に応じて開示するようにしましょう。

流れ4.合併対価の割り当て

株主総会で決議されたら、続いては合併対価の割り当ての実行です。

三角合併において、親会社株式を合併時価とします。

会社法において、親会社の取得数・保有期間には特に制限はありません。

そのため、合併対価の割り当てには以下の3種類が考えられます。

  • 親会社が子会社に対して直接新株発行を行う
  • 親会社が子会社に対して自己株式の処分を行う
  • 子会社が市場で親会社の株式を買い付ける

合併対価を割り当て、三角合併は完了します。

6.コーポレート・インバージョンの税務処理

コーポレート・インバージョンの流れを確認してきました。

このように、コーポレート・インバージョンを活用すると、法人税を下げることができます。

では、具体的な税務処理方法について確認していきましょう。

税務処理は以下の2種類に分けられます。

  1. 適格要件
  2. 非適格要件

では、1つずつ見ていきましょう。

税務処理1.適格要件

コーポレート・インバージョンにおける税務処理はまず、適格要件か否かを知る必要があります。

なぜなら、税務処理が異なるからです。

三角合併における適格条件は以下の通りとなっています。

①合併対価要件
被合併法人の株主に合併法人株式等以外の資産が交付されないこと
ただし、合併の直前で合併法人が被合併法人の発行済株式の総数の3分の2以上に相当する数の株式を有する場合において株主に交付される金銭等は除く
②事業関連要件
被合併法人の被合併事業と合併法人の合併事業とが相互に関連するものであること
③事業規模要件
被合併法人の被合併事業と合併法人の合併事業のそれぞれの売上金額、従業者数、被合併法人と合併法人の資本金の額、またはこれらに準ずるものの規模の割合が5倍を超えていないこと
④経営参画要件
合併前の被合併法人の特定役員のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかが合併後に合併法人の特定役員となることが見込まれていること
⑤従業者引継要件
被合併法人の合併直前の従業者のうち、その総数の80%以上に相当する数の社員が合併後に合併法人の業務に従事することが見込まれていること
⑥移転事業継続要件
被合併法人の合併前に行う主要な事業が合併後に合併法人において引き続き行われることが見込まれていること
⑦株式継続保有要件
合併により交付される合併法人株式等のうち支配株主に交付されるものの全部が支配株主により継続して保有されることが見込まれていること
⑧支配要件
合併会社とその親会社との間に完全支配関係があること

適格条件を満たしている場合において、課税は繰り延べられます。

そのため、合併に課税はなされません。

税務処理2.非適格要件

上記の適格条件に満たしていない、非適格要件の場合、合併時の時価によって合併法人に資産・負債を譲渡したものとして所得の金額を計算します。

この際、組織編成によって資産の移転を行う際でも、原則として譲渡損益を計上します。

7.コーポレート・インバージョンを行う際には専門家に相談しよう

コーポレート・インバージョンは、節税対策に有効的な手法です。

しかし、コーポレート・インバージョンは問題視されており、М&Aの手法によっては課税が発生します。

そのため、コーポレート・インバージョンをはじめとしたクロスボーダーМ&Aを検討している場合はМ&A専門家に相談しましょう。

М&A専門家は、国内の案件だけではなく海外М&Aの案件も豊富に持っています。

複雑な税務処理などのアドバイスなどももらえるのです。

実際にコーポレート・インバージョンの事例があるかどうかМ&Aアドバイザーに聞いてみましょう。

相談のみであれば無料で行ってもらえますよ。

まとめ

コーポレート・インバージョンとは、海外企業とのМ&Aで税対策をする方法を指します。

しかし、コーポレート・インバージョンは税金逃れとして問題視されているのです。

税金逃れを防ぐコーポレート・インバージョン対策税制に該当する場合、課税が発生します。

そのため、コーポレート・インバージョンを検討している場合にはМ&A専門家に相談しましょう。

М&A専門家に相談することで、過去の事例などから的確なアドバイスをもらえます。

正しい方法でコーポレート・インバージョンを行い、賢く節税しましょう。

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