
「事業承継補助金とはどんなものだろう?」と、お悩みではないですか?
事業承継には多額な費用がかかることも多く、それを解決するためには補助金制度を利用するのが良いとされています。
しかし、事前に準備しておかないと、事業承継補助金の申請を出すことさえできません。
ここでは、事業承継補助金の基本情報や要件、手続きの仕方を紹介します。
事業承継補助金を活用し、会社の引き継ぎを成功させましょう。
目次
1.事業承継補助金とは

事業承継補助金とは、事業を引き継いだ中小企業や小規模事業者などが取り組む事業承継の後の新たな挑戦をサポートするための制度のことです。
中小企業や小規模事業者などが世代交代をキッカケに、日本の経済を今まで以上に活性化していくことを目的に始まりました。
事業承継補助金には、2つのパターンがあります。
Ⅰ型と呼ばれるパターンは、経営者が代わった後に新たな挑戦を行う場合です。
一方で、Ⅱ型と呼ばれるパターンは、事業を再編や統合などしてから新たな挑戦を行う場合に使えます。
Ⅰ型もⅡ型も、新たな挑戦のために必要となる経費を補助してもらえるのです。
例えば、新規事業における自社ブランドを確立させるために補助金を活用した事例や、自社で開発したアプリを開発して販売戦略を拡大するために補助金を活用した事例、店舗再生を目的に新たなコミュニティサービス事業を始めるために補助金を活用した事例があります。
補助の金額に上限はあるものの、一気に事業を発展させるチャンスとなるので、積極的に利用を考えていくのが良いでしょう。
(そもそも事業承継について詳しく知りたい場合、『事業承継とは?基礎知識から成功のためのポイントまで徹底解説!』を参考にしてください。)
では実際にどの程度、事業承継補助金は利用されているのかを見ておきましょう。
1−1.事業承継補助金の採択率は?

事業承継補助金は、すべてが採択されるというわけではありません。
しかし、高い採択率があるとされているのが特徴です。2018年度の第2次補正の採択率は、Ⅰ型の後継者支援承継型のパターンで73.66%でした。
申請数は710件で、そのうち523件が採択されたのです。
一方で、Ⅱ型の事業再編・事業統合支援型のパターンで、53.43%でした。
申請数は204件で、そのうち109件が採択されています。
あまりビジネス系の補助金について詳しくなければ、ピンとこない数字かもしれません。
しかし、ものづくり補助金のような別の補助金と比べたとき、事業承継補助金の方が採択率は高いと言われています。
1−2.事業承継補助金の説明会はある?

事業承継補助金には、説明会があります。
2020年4月10日現在は、説明会の開催予定がありません。
開催が決まったら、事業承継補助金の公式サイトで公表されるので確認しましょう。
過去には、2019年4月15日から4月26日の期間で、全国10カ所・11会場で行われています。
事業承継を実施した経営者や、事業承継を支援している機関の人が参加し、事業承継補助金についての説明を受けるのです。
例年ではおおよそ2時間程度の説明を受けるので、参加すれば基礎的な事柄を一通り聞くことができるでしょう。
事業承継補助金についてまずは基礎から理解したいという場合は、参加を検討してみてください。
過去の説明会会場については、『説明会・イベント | 事業承継補助金(平成29年度補正)』で確認できます。
では、より詳しく種類についても見ていきましょう。
2.事業承継補助金の2つの種類

事業承継補助金には、以下の2つの種類があることはお話しました。
- 後継者承継支援型(Ⅰ型)
- 事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)
ここからはより詳しく解説していきます。
種類1.後継者承継支援型(Ⅰ型)

事業承継補助金の1つ目の種類が、Ⅰ型と呼ばれている後継者承継支援型です。
Ⅰ型がどのような種類なのかと言うと、経営者の交代が伴う事業承継をしてから新たな挑戦をした際に活用できる種類となっています。
例えば、親族や従業員を後継者に選び、経営者を交代してから新たな取り組みとして新商品の展開を行ったケースが該当するでしょう。
Ⅰ型は、補助の上限額が300万円となっています。
さらに条件を満たすことによって上限が300万円分増えるので、条件を満たしているなら合計600万円が補助の上限額です。
事業承継補助金の採択率のところでもご紹介しましたが、Ⅰ型はⅡ型に比べて申請数も採択数も多い種類だと言えます。
ですから、事業承継補助金の中でもよく活用されている累計です。
種類2.事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)

事業承継補助金の2つ目の種類が、Ⅱ型と呼ばれている事業再編・事業統合支援型です。
Ⅱ型がどのような種類なのかと言うと、事業再編や事業統合をしてから新たな挑戦をした際に活用できる種類となっています。
例えば、事業を行っていて今までより経営を安定化させて収益性も高めるために、同業他社を経営統合してお互いのノウハウを組み合わせて新たなサービスを生み出したケースが該当するでしょう。
Ⅱ型は、補助の上限額が600万円となっています。
さらに条件を満たすことによって上限が600万円分増えるので、条件を満たしているなら合計1,200万円が補助の上限額です。
したがって、Ⅰ型よりも高額な補助金を受け取ることができる種類だと言えます。
ですが、どちらも誰もが受けられる補助ではありません。
要件についても知っておきましょう。
3.事業承継補助金の要件

事業承継補助金の要件には、以下のようなものがあります。
- 後継者承認支援型の要件
- 事業再編・事業統合支援型の要件
これらの要件を満たしていなければ、事業承継補助金は利用できません。
それぞれの要件について、詳しく見ていきましょう。
3-1.後継者承継支援型(Ⅰ型)の要件

後継者承継支援型と呼ばれるⅠ型を満たすためには、定められた期間内に経営者の交代をきっかけに経営上の新たな取り組みなどを行うことが必要です。
親族内承継や、外部人材への承継が利用される主なケースだと考えられています。
また、補助の対象者は中小企業や小規模事業者です。
つまり、中小企業などが事業承継の際に経営を良くするために新たなことにチャレンジするならⅠ型が使える可能性が出てきます。
例えば、先代経営者から二代目経営者への交代があってから、新たな商品を開発した場合です。
交付の決定を受けてから新たな商品を開発することで、後継者には補助金が交付されます。
補助の対象となる経費は、人件費や店舗などの借り入れ費、設備費、原材料費、旅費、マーケティング調査費、広報費、外注費、委託費などのように、具体的に定められているので気をつけましょう。
経費は事業所が廃止するケースや、既存の事業を廃業するケース、既存の事業を集約するケースでは範囲が広がります。
広がった場合、廃業登記費や在庫処分費、解体・処分費、原状回復費も補助してもらえるようになるのです。
3-2.事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)の要件

事業再編・事業統合支援型と呼ばれるⅡ型を満たすためには、定められた期間内に事業再編や事業統合をきっかけに経営上の新たな取り組みなどを行うことが必要です。
また、補助の対象者は中小企業や小規模事業者となっています。
Ⅰ型と違うのは、事業承継ではなく事業再編や事業統合を契機として、事業について新たなチャレンジを行うことです。
事業承継補助金という名前ではありますが、事業承継以外でも申請できることには気をつけておきましょう。
例えば、同業他社としてしのぎを削っていたA社とB社がお互いに今後のことを考えて経営統合した場合が考えられます。
A社とB社が合併によってC社になってから、新サービスを推し進めていくのであれば、Ⅱ型の補助が受けられる可能性が出てくるのです。
補助の対象となる経費はほとんどⅠ型と変わりません。
しかし、Ⅱ型の場合には事業所が廃止するケースや、既存の事業を廃業するケース、既存の事業を集約するケースで移転費・移設費も対象となります。
では、これらを受けるためにはどのような申請を必要とするのかについても見ていきましょう。
4.事業承継補助金の申請手続きとスケジュール

事業承継補助金の申請手続きには、書類の提出が必要です。
書類の提出には期限があり、事業承継補助金の種類によって異なります。
後継者承継支援型(Ⅰ型)は3次募集まであるため各募集期限までに提出しなくてはなりません。
平成30年の後継者承継支援型(Ⅰ型)募集期間は、以下のようになっていました。
後継者承継支援型(Ⅰ型) | 開始日 | 締切日 |
1次募集 | 平成30年4月27日 | 平成30年6月8日(電子申請は9日) |
2次募集 | 平成30年7月3日 | 平成30年8月17日(電子申請は18日) |
3次募集(電子申請不可) | 平成30年9月3日 | 平成30年9月26日 |
また、事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)は2次募集までとなっているため期限内に提出してください。
平成30年の事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)募集期間は、以下のようになっていました。
事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型) | 開始日 | 締切日 |
1次募集 | 平成30年7月3日 | 平成30年8月17日(電子申請は18日) |
2次募集(電子申請不可) | 平成30年9月3日 | 平成30年9月26日 |
平成30年の募集期限は目安のため、『中小企業庁:財務サポート「事業承継」』で最新の情報を確認してください。
さらに事業承継補助金は電子申請も行えるので、やりやすい方法を取りましょう。
電子申請では締切日が1日多く設けられています。
しかし、各支援型の最終募集では電子申請は行えないので注意してください。
それでは、各種申請書類について見ておきましょう。
4−1.事業承継補助金の各種申請書類
平成30年度の事業承継補助金に必要な書類は、以下のようなものです。
- 事業計画書
- 補足説明資料
- 住民票
- 認定経営革新等支援機関による確認書
- 応募資格を有していることを証明する後継者の書類
- その他添付書類
- 募集要項の加点事由に該当する場合の書類
この中で、特に注意するべき書類は、『応募資格を有していることを証明する後継者の書類』『その他添付書類』『募集要項の加点事由に該当する場合の書類』です。
それぞれについて、順番に見ていきましょう。
応募資格を有していることを証明する後継者の書類

該当者によって提出する書類が異なります。
経営経験を有している者(役員・経営者を3年以上の要件を満たすもの)は、該当する会社の履歴事項全部証明書または閉鎖事項全部証明書を提出します。
この書類は、応募日以前3カ月以内に発行されたものを用意してください。
一方、創業・承継に関する研修等を受講した者は、以下の3つの書類のうち1つ以上を提出してください。
- 産業競争力強化法に規定される認定特例創業支援事業を受けた証明書
- 潜在的創業者掘り起こし事業を受けた証明書
- 中小企業大学校の実施する経営者、後継者向けの研修を履修した証明書
経営経験を有している者で創業・承継に関する研修等を受講していた場合は、上記で書いた5つの書類をいずれか1つ以上の提出で問題ありません。
その他添付書類

こちらの書類も該当者ごとに提出する書類が異なっています。
個人事業主の場合 (被承継者・承継者いずれも必要) |
直近の青色確定申告書一式(税務署受付印のあるもの) |
先代の廃業届及び後継者の開業届(事業承継を終えている場合) | |
事業譲渡契約書(法人から事業譲渡を受け個人事業を開業する承継を終えている場合) | |
会社の場合 | 履歴事項全部証明書(応募日以前3カ月以内に発行されたもの) |
直近の確定申告書(税務署受付印のあるもの) | |
直近の決算書(貸借対照表・損益計算書) | |
特定非営利活動法人の場合 | 履歴事項全部証明書(応募日以前3カ月以内に発行されたもの) |
直近事業年度の事業報告書、活動計算書、貸借対照表 | |
社員総会における表決権50%以上を中小企業者が有していることがわかる資料(中小企業者の支援を行うために中小企業者が主体となって設立する場合) |
個人事業主が、法人から事業譲渡を受け個人事業を開業する承継の場合は、被承継者である法人に関わる「会社の場合」の資料も必要となります。
会社の場合、退任・就任をともなう代表者交代による事業承継を予定している場合は被承継者分書類のみ、承継済みの場合は承継者分の書類のみ提出してください。
募集要項の加点事由に該当する場合の書類

こちらの書類は任意での提出になる書類です。
- 債権者調整プロセスを経て、各プロセスの支援基準を満たした債権放棄等の抜本的な金銭支援を含む事業再生計画を策定したことを証する書類
- 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けていることがわかる書類
- 経営力向上計画の認定書
- 応募者の所在する市区町村と、近接する市区町村地域またはそれ以外の地域への販売規模がわかる決算書類
これらの書類を提出すると、選考時に加点され採択が有利となります。
該当する書類がある場合は必ず提出しましょう。
以上が、事業承継補助金を申請する際に必要な書類でした。
必要な書類に抜けがないように、入念に確認しておいてください。
ちなみに、事業承継補助金にも、事業承継の際に活用できる制度があるので見ておきましょう。
5.事業承継補助金以外の補助金・助成金制度

事業承継補助金以外の補助金や助成金制度には、業種ごとに使えるものと地域ごとに使えるものがあります。
それぞれについて、具体的に見ていきましょう。
5-1.業種ごとに使える制度
業種ごとに使える制度は、以下の2つを紹介します。
- 小規模事業場産業医活動助成金(産業医コース)
- 農の雇用事業
それぞれについて順番に確認していきましょう。
制度1.小規模事業場産業医活動助成金(産業医コース)

小規模小規模事業場産業医活動助成金(産業医コース)は、小規模事業場が産業医と契約を締結した場合に活用できる助成金制度です。
この助成金制度は、産業医によって産業医活動が行われた場合に実費を助成してくれます。
事業承継の前に、産業医と契約しておきたいというときは利用するのが良いでしょう。
制度2.農の雇用事業

(引用:農の雇用事業 | 新規就農相談センター)
農の雇用事業は農業に関する2種類の助成金制度です。
1つ目の種類では、農業法人等が就業希望者を雇用して、生産技術や経営ノウハウを習得させる研修を実施する場合に、研修経費の一部を助成してくれます。
もう1つの種類では、農業法人等において、次世代の経営者を育成するための研修経費と、代替職員を雇用した場合の人件費を助成してもらえるのです。
農業を行っている場合には、利用するのが良いでしょう。
5-2.地域ごとに使える制度
地域ごとに使える制度は、ここでは以下の3つを紹介します。
- 団体向け小規模事業者持続化支援事業
- ふるさと企業経営承継円滑化事業(承継準備型)助成金(福井県)
- 事業承継支援事業(宮崎市)
それでは順番に見ていきましょう。
制度1.団体向け小規模事業者持続化支援事業

団体向け小規模事業者持続化支援事業は東京都の事業協同組合や商店街組合などが対象の補助金制度です。
事業継続、承継に関した講習会などの実施費用が補助されます。
事業承継のときには、セミナーなどの講習会に行くことが多いです。
補助金制度を利用して、事業承継にかかる費用を抑えましょう。
制度2.ふるさと企業経営承継円滑化事業(承継準備型)助成金(福井県)

(引用:ふるさと企業経営承継円滑化事業(承継準備型)助成金)
福井県にある中小企業者が対象の補助金制度です。
企業価値の評価等を行う時にかかる費用を最大150万円まで助成してくれます。
事業承継の際には、企業価値を知ることが重要です。
補助金制度を利用して、事業承継にかかる費用を抑えましょう。
制度3.事業承継支援事業(宮崎市)

(引用:宮崎市事業承継支援事業補助金)
宮崎県宮崎市の中小企業が対象の補助金制度です。
事業承継や企業の合併・買収に関して、専門家への委託料等に最大30万円まで補助してくれます。
このように、地方自治体ごとに補助金制度がある場合が多いので、自分の地域にもないかを確認してみてください。
以上が、事業承継補助金以外の補助金や助成金の制度についてでした。
自分の使える制度がないかどうか、各都道府県の「中小企業団体中央会」に相談に行くのも良いでしょう。
ちなみに、事業承継にかかる費用を抑えたいのなら、事業承継税制の活用も検討してください。
6.事業承継税制も活用しよう

事業承継にかかる費用を抑えたいのなら、事業承継税制も活用しましょう。
事業承継税制は、会社を相続または贈与した際に課せられる税金を猶予することができる制度です。
猶予した税金が、最終的に免除されることもあるため、多額の費用を抑えることができます。
詳しい内容については、『事業承継税制で節税しよう!改正内容から手続き方法を完全ガイド!』で解説しているので、ぜひ参考にしてください。
以上が事業承継税制についてでした。
事業承継は、相続や贈与の他にもM&Aで外部の企業に買い取ってもらう方法もあります。
実は、M&Aで行う事業承継でも事業承継補助金は利用できるのです。
そこで、M&Aと事業承継補助金の関係について紹介します。
7.M&Aでも事業承継補助金は利用できる

M&Aを行う場合でも、事業承継補助金は利用することが可能です。
事業承継補助金制度の事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)はM&Aタイプと分類されています。
M&Aで獲得した店舗や会社を改装等するときに、最大1,200万円まで補助してくれるのです。
このように、事業承継補助金はM&Aの場合でも申請できます。
スムーズな手続きを行うためには、専門家である『M&A総合研究所』にぜひご相談ください。
8.M&Aを行うなら『M&A総合研究所』に相談しよう

(引用:M&A・事業承継のマッチングプラットフォームならM&A総合研究所)
M&Aで外部の企業に会社を買い取ってもらうなら『M&A総合研究所』にお声掛けいただければ徹底的にアドバイスいたします。
登録料などすべての費用が無料となっているため、気軽に相談可能です。
買い手候補探しから、税務までお困りのことがあればトータルサポートさせていただきます。
また、成果報酬制で専属の担当者がつくプランもありますので、引き継ぎ成功までサポートをご希望の方はその旨をお伝えください。
企業名 | M&A総合研究所 |
URL | https://masouken.com/ |
各種手数料 | 無料(一部有料プランあり) |
「M&A総合研究所」の無料プランを有効に活用して会社を任せられる企業を見つけてみてください。
M&Aが成功すれば、事業承継の費用を最低限に抑えて事業を引き継げるでしょう。
まとめ
事業承継補助金は後継者承継支援型「経営者交代タイプ」(Ⅰ型)と事業再編・事業統合支援型「M&Aタイプ」(Ⅱ型)という2つの補助金制度が分けられます。
それぞれ、要件が異なるため、あなたに適合した制度に申請してください。
M&Aを行う場合も事業承継補助金が受け取れるため、『M&A総合研究所』活用し、会社の新たな発展を応援しましょう。