自社株の相続・贈与税が無税になる事業承継税制で承継!方法、ポイントも解説

自社株の相続・贈与税が無税になる事業承継税制で承継!方法、ポイントも解説

会社を後継者に事業承継する際は、自社株の承継と同時に相続・贈与税が発生します。納税額は株式価値に応じて算定されるため、計画的に進めておく必要があります。本記事では、相続・贈与税が無税になる事業承継税制の方法やポイントについて解説します。

自社株の相続・贈与税が無税になる事業承継税制で承継

自社株の相続・贈与税が無税になる事業承継税制で承継

自社株を承継する際は、相続・贈与税が発生します。高額納税になることも多く、経済的負担になりやすいものですが、事業承継税制を活用すれば負担を軽減させることが可能です。この章ではまず、自社株と事業承継税制の概要について解説します。

自社株とは

自社株とは、株式会社における自社の株式を指し、自社株を承継することで事業承継を行います。

自社株の承継とは

自社株の承継とは、自社の株式を後継者に承継して会社の経営を引き継ぐことを意味します。株式の保有率に応じて経営に対する影響力を持つので、自社株を承継することで事業承継が成立することになります。

自社株の承継は株式が分散していると手間取ることも多いですが、中小企業の場合は経営者が100%の株式を保有していることも珍しくないので、比較的スムーズに行えるケースが多くなっています。

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自社株の承継で起こる問題

自社株の承継で起こる問題は、相続・贈与税による納税負担です。承継する自社株に対して発生するものなので、事業承継の際は相続・贈与税を納めなくてはなりません。

特に、中小企業の非公開株式は自由に売買することができないため、換金性が低い資産とされています。自社株の承継はその資産に対して税金が課せられるため、納税資金が不足するケースも多いです。

事業承継税制とは

自社株の承継で発生する相続・贈与税は後継者の負担となりますが、事業承継税制と呼ばれる制度を活用することで負担を軽減することができます。

事業承継税制はどんな制度か

事業承継税制とは、事業承継の際の相続・贈与税の納税について一定の優遇措置を受けられる制度です。

猶予・免除措置を受けるためには、適切な手続きや一定の要件を満たす必要があります。気を付けなければならないポイントもありますが、納税負担の軽減に繋がるため積極的に活用したい制度の一つです。

猶予・免除される金額

猶予・免除される金額は、自社株の約53%(納税猶予対象株式2/3・納税猶予割合80%)です。仮に、承継する自社株の評価額が1億円である場合、5300万円相当の猶予・免除措置を受けられます。

ただ、上記の例は従来の制度の場合であり、平成30年度税制改正で大幅な見直しが図られ、改正から10年間限定で100%の猶予・免除措置を受けられるようになりました。

現在は自社株の評価額がいくらであろうと、自社株の相続・贈与税の全額の猶予・免除措置が受けられます。

事業承継税制の活用で自社株の相続・贈与税は無税になる?

相続・贈与税の一時的な猶予を受けられる措置であるため、完全に免除措置を受けて無税にするためには、納税猶予とは別の要件を満たす必要があります。

また、適用中に要件を満たせなくなった場合は、猶予措置を受けている相続・贈与税の納税義務が発生する点に注意しなくてはなりません。

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自社株を事業承継税制で承継する方法

自社株を事業承継税制で承継する方法

自社株を承継する方法には、生前贈与と死亡後に相続する2通りがあります。事業承継税制を適用するための手続きはそれぞれ異なるので、順番に解説します。

自社株の生前贈与

自社株の生前贈与は、相続が発生する前(現経営者の生前)に自社株を承継する方法です。早期から計画的に進めておき、税金負担を減らすための節税対策として用いられています。

贈与税の納税猶予手続き

贈与した年の翌年1月15日までに都道府県庁に納税猶予手続きの申請を行います。都道府県庁より認定を受けたら、発行された認定証の写しとともに税務署に申告書を提出します。

この際、猶予措置を受ける金額及び利子額に相当する担保を提供することになります。担保にする資産次第では経営に影響が及ぶこともあるため、自社株を担保提供することがほとんどです。

【贈与税の納税猶予手続き】

  1. 贈与の実行
  2. 都道府県庁に贈与税の納税猶予の申請
  3. 税務署へ申告

自社株の相続

自社株の相続は、経営者の死亡後に自社株を承継する方法です。現経営者が死亡した場合は、自社株を相続して相続人が会社の経営を引継ぎしなくてはなりません。

相続税の納税猶予手続き

相続開始後8ヶ月以内に都道府県庁に納税猶予手続きの申請を行います。審査後に認定証が発行されるので、認定証の写しとともに税務署へ申告します。

相続税の納税猶予措置を受けるためには、贈与税と同じく担保提供が必要です。納税額及び利子額に相当する担保を税務署に提供します。

【相続税の納税猶予手続き】

  1. 相続の実行
  2. 都道府県庁に相続税の納税猶予の申請
  3. 税務署へ申告

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自社株を事業承継税制で承継するポイント

自社株を事業承継税制で承継するポイント

この章では、自社株の承継で事業承継税制を活用するためのポイントを解説します。納税猶予・免除措置を受ける上で重要となる要件についてみていきます。

要件を満たす必要がある

納付猶予・免除措置を受けるためには、一定の要件を満たして都道府県庁より認定を受ける必要があります。

審査のポイントになる要件は、会社・先代経営者・後継者それぞれに定められており、全てを満たさないと認定を受けることはできません。

1.会社の主な要件

会社の要件で注目されるのは、中小企業に該当するかということです。中小企業の事業承継を円滑にするための制度であるため、大前提として中小企業とみなされる必要があります。

従業員の雇用要件については、平成30年度の改正により雇用を維持できない場合も、納税猶予の要件を満たせるように改められました。

ただし、一定の書類の提出義務があり、従来の制度同様、雇用要件充足を継続的に確認していかなくてはなりません。

【会社の主な要件】

  • 中小企業であること
  • 上場企業・風俗営業会社に該当しないこと
  • 資産管理会社に該当しないこと
  • 雇用の8割以上を5年間維持すること

【中小企業の定義】

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 資本金の額又は出資の総額が3億円以下
常時使用する従業員の数が300人以下
卸売業 資本金の額又は出資の総額が1億円以下
常時使用する従業員の数が100人以下
小売業 資本金の額又は出資の総額が5千万円
常時使用する従業員の数が50人以下
サービス業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下
常時使用する従業員の数が100人以下

中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」より

【資産管理会社の定義】

資産管理会社とは、具体的な事業を手掛けておらず資産管理を主たる目的とする会社を指します。事業承継税制の目的は中小企業の生産活動を維持することであるため、資産管理会社は対象外となります。

  • 総資産のうち特定資産の割合が70%以上(資産保有型会社)
  • 総収入金額のうち特定資産による運用収入が75%以上(資産運用型会社)

2.先代経営者の主な要件

先代経営者の要件でポイントになるのは、承継前に代表権を有していたという点です。議決権の所有割合や筆頭株主であるなどの要件を満たしていなければ、先代経営者からの承継として認められず、納税猶予措置を受けることができません。

また、生前贈与の場合は承継時点で代表を交代することになります。その後は代表者として経営に携わることはできないので、十分に準備を進めておく必要があります。

【先代経営者の主な要件】

  • 会社の代表権を有していたこと
  • 承継以前に一族で50%を超える議決権を有していたこと
  • 承継以前に後継者を除き、一族の中で筆頭株主であったこと

3.後継者の主な要件

後継者の要件では、承継後に後継者が代表者であるという点がポイントになります。後継者の保有株式が一定の割合を超えていれば、先代経営者から後継者に適切な引継ぎが行われたことが認められ、後継者の要件を満たすことができます。

後継者の要件は、相続人が一人の場合はスムーズに満たせる場合がほとんどですが、複数人に渡る場合は相続人間の話し合いがまとまらず、申請期限を過ぎてしまうことがあります。

申請期限を過ぎると納税猶予措置を受けることができなくなります。申請期限はそれぞれ相続・贈与開始日を基準とするため、計画的に進めておかなくてはなりません。

また、生前贈与で納税猶予措置を受ける場合は、役員に就任してから3年以上経過する必要があります。事業承継間際になってからでは間に合わないので、早期から準備を進めておくことが大切です。

【後継者の主な要件】

  • 後継者が会社に代表者であること
  • 一族で50%を超える議決権を有していること
  • 一族の中で筆頭株主であること
  • 猶予対象株式を継続保有すること
  • 承継前に会社の役員を務めていた(相続の場合)
  • 20歳以上である(贈与の場合)
  • 役員就任から3年以上経過(贈与の場合)

納税猶予を続けるための要件がある

要件を満たすと相続・贈与税の納税猶予措置を受けられますが、承継後すぐに全ての税金が免除になるわけではありません。

免除措置が適用されるまでは一時的な納税猶予措置に過ぎませんので、継続して納税猶予を受けるために要件を満たし続ける必要があります。

事業継続要件については、承継後5年間は都道府県庁に年次報告書を提出する義務があります。要件を満たした状態で事業を継続していることを、書面で提出して確認を受けます。

そのほかには、臨時報告・随時報告の義務もあります。受贈者または相続人が死亡した場合や会社の合併・株式交換など、大きな変化が生じた時はそれぞれ報告しなくてはなりません。

報告の種類によっては申請期限が定められているものもあるので、納税猶予の適用が取り消されないよう、報告時期について十分に注意しておく必要があります。

納税猶予が取り消された場合の納税額

納税猶予の要件を満たせなくなり、適用が取り消された場合の税額は、納税猶予税額及び利子額の全額です。

また、納税猶予を受けていた期間に応じた利子を上乗せして、2ヶ月以内に納付しなくてはなりません。

事業承継時の相続・贈与税額よりも高くなるので、事業承継税制の適用は要件の継続が前提となります。

ただし、「猶予対象株式の継続保有」については、譲渡した株式の割合分のみの課税となっているため、必ずしも全額を納付する必要はありません。

納税猶予が免除になるケースがある

納税猶予適用中に一定の要件を満たすことで、納税猶予税額の全額免除措置を受けることができます。免除措置を受けた税額については、納税義務が解除され無税となります。

相続税・贈与税の個別の要件と共通する要件は下表のようになります。現経営者や後継者の死亡もしくは再承継によって免除措置が受けられます。

【納税猶予の免除要件】

  要件
相続税 後継者(相続人)が死亡した場合
贈与税 現経営者(贈与者)又は後継者(受贈者)が死亡した場合
相続税・贈与税共通 ・申告期限後5年間において、やむを得ない理由により、後継者が代表権を有しなくなった日以後に後継者が猶予継続贈与を行った場合
・申告期限後5年経過後に、後継者が猶予継続贈与を行った場合
・申告期限後5年経過後に、会社の破産開始手続きの開始又は特別清算開始の命令を受けた場合

猶予継続贈与とは、納税猶予措置を受けている後継者(2代目)が、次の後継者(3代目)に自社株を贈与することを指します。

後継者(2代目)が受けていた納税猶予税額のうち、次の後継者(3代目)が納税猶予を受ける自社株の対応する部分の免除が受けられます。

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事業承継を検討する際におすすめのM&A仲介会社

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事業承継税制を適用した事業承継は、必要な手続きや維持する要件が複雑なので、M&A・事業承継の専門家に相談することをおすすめします。

M&A総合研究所は、M&A・事業承継の仲介サポートを行っているM&A仲介会社です。中小企業の事業承継サポートを積極的に手がけており、事業承継税制を活用した事業承継の豊富な実績があります。

また、事業承継税制は平成30年度に改正されて大幅に利便性が向上しています。事業承継税制を熟知した専門家がメリットを最大限に引き上げ、相続・贈与税の負担を軽減します。

無料相談は24時間お受けしています。自社株の承継でお悩みの際は、ぜひM&A総合研究所までご相談ください。事業承継税制の適用を含め、事業承継の準備をお手伝いさせていただきます。

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まとめ

まとめ

本記事では、自社株の相続・贈与税が無税になる事業承継税制について解説しました。相続・贈与税は自社株の承継で負担になることが多いので、事業承継税制は積極的に活用したい制度です。

しかし、事業承継税制は要件を満たすためには、事前準備が必要不可欠です。準備の一環として、全体の流れの把握や専門家へ相談も検討しておくと、自社株の承継をスムーズに行えるようになります。

【事業承継税制まとめ】

  • 事業承継税制とは相続・贈与税の優遇措置を受けられる制度
  • 一定の要件を満たすことで全額猶予・免除が受けられる

【贈与税の納税猶予手続き】

  1. 贈与の実行
  2. 都道府県庁に贈与税の納税猶予の申請
  3. 税務署へ申告

【相続税の納税猶予手続き】

  1. 相続の実行
  2. 都道府県庁に相続税の納税猶予の申請
  3. 税務署へ申告

【会社の要件】

  • 中小企業であること
  • 上場企業・風俗営業会社に該当しないこと
  • 資産管理会社に該当しないこと
  • 雇用の8割以上を5年間維持すること

【先代経営者の主な要件】

  • 会社の代表権を有していたこと
  • 承継以前に一族で50%を超える議決権を有していたこと
  • 承継以前に後継者を除き、一族のなかで筆頭株主であったこと

【後継者の主な要件】

  • 後継者が会社に代表者であること
  • 一族で50%を超える議決権を有していること
  • 一族の中で筆頭株主であること
  • 猶予対象株式を継続保有すること
  • 承継前に会社の役員を務めていた(相続の場合)
  • 20歳以上である(贈与の場合)
  • 役員就任から3年以上経過(贈与の場合)