中小企業経営者のための事業承継対策とは?補助金や事業承継税制も解説

中小企業経営者のための事業承継対策とは?補助金や事業承継税制も解説

中小企業が事業承継をスムーズに進めるためには、国の補助金や事業承継税制を上手に活用するこことがポイントになります。

特に事業承継税制は、2018年の改正以降、関心度の高いものとなっています。この記事では、事業承継・M&Aを検討している中小企業経営者が知っておきたい事業承継対策について解説します。

中小企業経営者のための事業承継対策とは?

中小企業経営者のための事業承継対策とは?

全国の中小企業が抱える経営課題のひとつには、経営者の高齢化に伴う事業承継があります。2019年の中小企業白書によると、59歳以下の経営者は1992年から2017年にかけて約45%減少している一方、60歳以上の経営者は同じ期間に約25%増加してます。

業種・業界に関わらず、多くの中小企業が経営者の高齢化および後継者問題に直面していることがわかります。

中小企業の定義

中小企業基本法という法律では、中小企業は業種分類ごとに定義がされており、そのうち小規模企業はさらに定義があります。

【中小企業の業種分類ごとの定義】

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

【小規模企業の定義】

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他  従業員20人以下
商業・サービス業  従業員 5人以下

なお、中小企業基本法のほかに、会社法・法人税法・租税特別措置法などでも中小企業について定義されていますが、それぞれ内容が異なります。

事業承継とは

事業承継とは文字通り「事業」を「承継」することですが、決して単純な引き継ぎ作業ではなく、さまざまな要素が含まれています。

事業承継の方法には、親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継の3つがあり、どの方法でも経営権・自社株・経営状態などを引き継ぎます。

事業承継がうまくいかなければ、あっという間に業績が悪化してしまう恐れもあるため、後継者や引継ぎ先を選ぶ際は慎重に進める必要があります。

また、事業承継を行いたくとも後継者がみつからない中小企業が多いのも事実であるため、中小企業は注意して事業承継問題に取り組む必要があるといえるでしょう。

1.親族内事業承継

経営者の配偶者・子ども・兄弟などの親族へ事業を引き継ぐことを親族内事業承継といい、いわゆる同族経営企業やオーナー企業と呼ばれる中小企業で多く用いられる事業承継方法です。

中小企業のなかでは最も一般的な承継方法であり、2019年中小企業白書によれば、全体の55.4%が親族内事業承継を選択しています。

2.親族外事業承継

経営者の親族ではなく、自社の役員や従業員などへ事業を引き継ぐことを親族外承継といいます。後継者となるのは、勤務経験の長い副社長や役員、従業員などが一般的です。

2019年中小企業白書によれば、役員・従業員への事業承継は体の19.1%となっています。近年では、M&A(株式譲渡)によって親族外へ事業承継をするケースも増えてきています。

3.M&Aによる事業承継

前述した親族内事業承継と親族外事業承継はどちらも後継者が個人ですが、M&Aによる事業承継では法人に対して事業を引き継ぐことができます。

M&Aによる事業承継は、親族内や従業員に適任者がみつからない場合や、経営者が会社売却益を確保したいと考えている場合は有効な手段です。

近年はM&Aが広く認知されたこともあり、2019年中小企業白書によれば、全体の16.5%が社外への事業承継(M&A含む)を行っています。

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中小企業経営者が事業承継対策を行う理由

近年、事業承継対策に対する関心が高くなっていますが、その背景には中小企業経営を取り巻く環境があります。ここでは、中小企業経営者が事業承継対策を行う5つの理由について解説します。

【中小企業経営者が事業承継対策を行う理由】

  1. 後継者問題
  2. 自分の高齢化問題
  3. 人材不足問題
  4. 事業の将来性の問題
  5. 廃業・倒産の回避

1.後継者問題

中小企業が事業承継対策を行う理由として最も代表的なのは、後継者問題を解決するためです。経営者に子どもがいない場合もあり、さらに近年では経営者の子どもなどの親族が会社を引き継がないことも増えてきています。

親族外事業承継を選択するにして、自社の役員・従業員に適任の後継者候補がいるとは限らず、さらに会社を継ぐ意思があるかどうかもわかりません。

このような後継者問題を解説する手段として、早い段階から事業承継対策に取り組む中小企業が増加しています。

2.自分の高齢化問題

後継者問題と同時に考えられることが多いのは、経営者の高齢化問題です。中小企業経営者の年齢分布をみると、1995年の最も多い経営者の年齢は47歳だったのに対し、2018年は69歳となっており、経営者年齢の高齢化が進んでいることが窺えます。

事業承継をするタイミングにある中小企業が全国に多く存在していることを意味しており、言い換えると、事業承継対策が必要な中小企業が多いということになります。

3.人材不足問題

現在、国内の中小企業はその多くが人材不足に頭を抱えており、新入社員や中途社員の確保だけでなく、将来の経営を担う人材の確保という一面も含まれています。

後継者の人材不足問題は、単純に後継候補者に値する人物がいないケースもあれば、能力はあっても承継する意思がないというケースもあるなど、問題の性格はさまざまです。

4.事業の将来性の問題

国内人口の高齢化やグローバル化の進展などに伴い、事業環境は刻々と変化しています。これまでは通用してきたことも、今後はIT技術に取って代わられる可能性があります。

そのため、事業の将来性がみえず、早めに事業承継対策を進めておこうと考える中小企業が増えています。

5.廃業・倒産の回避

IT技術の台頭や大手企業の進出によって、高い技術力を持っていながらも業績が低迷していたり、資金繰りが悪化している中小企業は数多く存在します。

従業員の雇用継続や企業の存続を図るためにも、将来的な廃業・倒産リスクへの備えとして事業承継対策を講じる中小企業も少なくありません。

中小企業経営者のための事業承継対策

事業承継対策を進める中小企業経営者は増えていますが、実際にはどのようなことを行っておけばよいのでしょうか。ここでは、中小企業経営者に向けた4つの事業承継対策について解説します。

【中小企業経営者のための事業承継対策】

  1. 後継者の育成
  2. 事業承継戦略の計画
  3. M&Aの活用
  4. 事業承継の相談先選定

1.後継者の育成

経営者の親族内あるいは役員・従業員に後継者候補者がいたとしても、すぐに事業承継が可能かといえば、それは別問題です。

経営者となるためには、事業に関する知識や経験だけでなく、会社をまとめるリーダーシップや経営についての知見なども必要になります。

場合によっては、経営者同士での協力が必要となるため、コミュニケーション力も不可欠といえるでしょう。

しかし、それらの能力や経験を始めから備えている人材は少ないため、5年先あるいは10年先の事業承継を見据えた次世代の経営者育成が重要です。

2.事業承継戦略の計画

事業承継をどのようなスケジュールで進めていくか、あらかじめしっかり計画しておくことは大変有用です。

事業承継には経営者の一存で決められない要素もあり、後継者候補との意思確認や認識のすり合わせも必要になります。

事業承継戦略の立案は、経営者と親族・後継者候補の相互理解を促す材料になり、取引先金融機関などの外部業者からの理解も得られやすくなるので、スムーズな事業承継に資する対策といえるでしょう。

3.M&Aの活用

事業承継は親族内承継および役員・授業員への承継が一般的ですが、幅広いネットワークから適任者を探すためにはM&Aの活用も視界に入れておくとよいでしょう。

かつてはM&Aに対して「敵対的買収」や「のっとり」といったイメージが持たれることも多かったですが、最近ではM&Aは経営戦略として有効な手段であるという認識が広まり、事業承継の方法として活用されるケースも増えています。

適切な売却先の選定によって、従業員の雇用維持・事業の継続が果たされるだけでなく、企業傘下となることで財務基盤の強固を図ったり、会社売却益が得ることもできます。

4.事業承継の相談先選定

事業承継を行ううえでは、さまざまな法制度や税金に関する知識が必要になります。親族内承継であれば相続税・贈与税問題、親族外承継やM&Aでも多領域に渡る知識と対策が不可欠です。

事業承継の悩みは自社だけで解決しようとはせず、相談先をみつけて課題解決を図ることをおすすめします。

相談先となるのはM&A仲介会社や各士業などがありますが、なかでもM&A仲介会社であれば後継者がいない場合でも事業承継ができます。

また、M&A仲介会社には弁護士や会計士などの専門家も在籍しているので、一括でサポートを受けることができます。

中小企業経営者が事業承継でつまずかない方法

中小企業経営者が事業承継でつまずかない方法

中小企業の事業承継は企業ごとにさまざまな課題があり事情も異なるため、一概にどの方法をとるのが正解であるかは言い切れない部分もあります。

しかし、どの企業でも活用できる国の補助金制度があるので、内容を把握しておくと課題解決に役立つ場面も多いでしょう。

この章では、中小企業庁が行っている「事業承継補助金」について、概要と補助率・補助金額を紹介します。

事業承継補助金とは

事業承継補助金とは、事業承継や事業再編をきっかけとした、中小企業による経営革新や事業転換への挑戦を応援するための補助金制度です。

簡単にいうと、事業承継に伴って行う新たな投資の一部を補助するものです。後継者承継支援型タイプ(親族内事業承継等)と事業再編・事業統合支援型(M&A等)の2タイプがあり、最大1200万円の補助額が設けられています。

事業承継補助金の補助率や補助金額

事業承継補助金には、類型ごとに補助上限額および補助率が決められています。下表は令和元年度に補正された内容一覧ですが、より詳しい内容は中小企業庁のホームページでも確認することができます。

【補助率1/2以内】原則枠

申請類型 補助金上限額 上乗せ額
【Ⅰ型】後継者承継支援型 225万円 +225万円以内 (補助上限額の合計は450万円)
【Ⅱ型】事業再編・事業統合支援型 450万円 +450万円以内 (補助上限額の合計は900万円)

【補助率2/3以内】ベンチャー型事業承継枠または生産性向上枠

申請類型 補助金上限額 上乗せ額
【Ⅰ型】後継者承継支援型 300万円 +300万円以内 (補助上限額の合計は600万円)
【Ⅱ型】事業再編・事業統合支援型 600万円 +600万円以内 (補助上限額の合計は1200万円)

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中小企業経営者が注意すべき事業承継税制とは

中小企業経営者が注意すべき事業承継税制とは

事業承継税制とは、中小企業の株式を相続・贈与で引き継いだときにかかる相続税・贈与税の納税を猶予する制度です。

制度自体は2009年にできたものの利用条件などが厳しかったこともあり、当初はあまり使われていませんでした。

その後、2018年の改正がによって抜本的に条件が拡充され、一気に注目度を高める形となりました。改正前後での適用条件の主たる変更点は、以下のとおりです。

改正点 改正前(一般)の概要 改正後(特例)の概要
対象に含まれる株式 発行済議決権株式総数の3分の2 全株式
相続税・贈与税の猶予割合 80% 100%
後継者  1人  最大3人まで適用
相続・贈与を行う者  先代経営者のみ 複数の株主
相続時精算課税  推定相続人等後継者のみ 推定相続人等以外も適用可
雇用条件  承継後5年間8割の雇用維持  原則、5年間8割の雇用維持。ただし、できない場合は理由を記載した報告書を提出すれば、納税猶予継続

改正後の事業承継税制では、相続税・贈与税の猶予割合が80%から100%に引き上げられたこと、納税猶予適用後の要件の緩和があったことなどが、大きなポイントです。

ただし、この変更における特例には以下のような適用期限が設けられており、疎漏なく取り組む必要があります。

【事業承継税制の注意点(例)】

  • 2023年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出すること
  • 適用後5年間は毎年、5年経過後は3年に1回、報告書を税務署と地方自治体に提出すること
  • 2027年12月31日までに事業承継を行うこと

事業承継税制で節税しよう!改正内容から手続き方法を完全ガイド!

中小企業経営者が事業承継を行う際の相談先

中小企業経営者が事業承継を行う際の相談先

中小企業がM&Aによる事業承継を成功させるためには、まず自社の希望条件に合った相手先を探すことから始めなければなりません。そのうえでよりよい条件でM&A成立を目指すには、専門的な知識や交渉力が不可欠です。

中小企業経営者で事業承継を検討されている方は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、中小企業のM&A・事業承継を多数有する仲介会社です。

M&Aを行う際は、豊富な経験と知識を持ったアドバイザー・会計士・弁護士が3名体制でクロージングまでをフルサポートいたしますので、安心して事業承継に取り組んでいただけます。

料金体系は完全成功報酬制となっており、M&Aが成立するまで費用は一切かかりません。無料相談は24時間受付ておりますので、お電話またはメールフォームよりお気軽にお問い合わせください。

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まとめ

まとめ

中小企業の事業承継について解説しました。現在、国内の多くの中小企業が経営者の高齢化と後継者不足に頭を抱えており、事業承継対策を講ずることは喫緊の課題といえます。

事業承継は決して簡単なものではないため、長期的に取り組みを進めておき、最適な形で引き継ぎを行う必要があります。

まだ先の話だからと事業承継対策を後回しにするのではなく、将来に向けてしっかり対策を立てていくことが大切です。

【事業承継の方法】

  1. 親族内事業承継
  2. 親族外事業承継
  3. M&Aによる事業承継

【中小企業経営者が事業承継対策を行う理由】

  1. 後継者問題
  2. 自分の高齢化問題
  3. 人材不足問題
  4. 事業の将来性の問題
  5. 廃業・倒産の回避

【中小企業経営者のための事業承継対策】

  1. 後継者の育成
  2. 事業承継戦略の計画
  3. M&Aの活用
  4. 事業承継の相談先選定