「事業承継とはいったいどのようなものなのだろう」とお調べですね。
あなたが経営者であれば、事業承継については早めに考えておくべきです。
リタイア直前に事業承継を考え始めても、間に合わなくて失敗するかもしれません。
そこで今回は、事業承継とはどのようなものなのかから、成功のためのポイントまでご紹介します。
事業承継について理解を深め、あなたの事業を上手く引き継いでもらいましょう。
目次
1.事業承継とは

事業承継とは、事業を後継者に引き継ぐことです。
事業承継を行うことによって、あなたが経営から退いても事業が続きます。
事業承継を成功させるためには、早めに後継者を見つけて準備をしていくことが大切です。
だいたい5年以上は期間が必要になると考えておいてください。
事業承継については、中小企業庁が『事業承継ガイドライン』を策定しています。
事業承継ガイドラインは事業承継について詳しく書かれていますが、やや読むのが大変です。
事業承継ガイドラインを理解したいなら、『事業承継ガイドラインを要約解説!効率良く引き継ぎを行おう!』を読んでみてください。
まずはこの記事で事業承継の重要ポイントをおさえるのも良いです。
最初に、事業承継と混同されやすい単語について見ておきます。
1−1.事業承継と事業譲渡は違うの?

事業譲渡は、事業を譲り渡すという意味です。
事業譲渡は、事業承継の方法の1つとして活用されています。
このとき、事業を譲る範囲は、譲る側と受け取る側で話し合って契約することが可能です。
会社の中に複数の事業があるのなら、それぞれを別の人に譲ることができます。
必ずしも会社ごとすべてを事業承継する必要はないのです。
1−2.事業承継とM&Aは違うの?

M&Aは、事業承継のための方法の1つとして活用されています。
身近に後継者がいない経営者がM&Aを使って、外部から後継者を探してくることも多いのです。
ちなみに、M&Aとは、「merger and acquisition」の略称で、合併と買収を意味します。
上手くM&Aを行えば、あなたが引退してからも事業が発展していくでしょう。
事業承継は他にも、社内従業員への引き継ぎや、親族への引き継ぎなどの方法があります。
あなたに最適な方法で、事業承継問題を解決するべきです。
2.事業承継問題とは

後継者不足などの事業承継問題で悩まされている経営者が多いです。
このことは、中小企業の経営者が高年齢化していることからもわかります。
中小企業庁のアンケートでは、自分の代で廃業を望んでいる経営者は少ないです。
どうにかして次の代に事業承継を果たしたいと考えている人が多数を占めています。
しかし、事業承継を希望していて後継者が既にいるという経営者は半分もいません。
このように、多くの経営者が事業承継問題に悩まされているのです。
あなたも現段階で後継者がいないというような、事業承継について悩んでいるなら早めに事業承継問題を解決しましょう。
ここで、事業承継問題を解決するメリットを見ていきます。
3.事業承継問題を解決するメリット

事業承継問題を解決すれば、以下のようなメリットがあります。
- リタイア後も会社が存続する
- 廃業コストがかからない
- 後継者の能力で会社が成長する
これらのメリットは、経営者にとっては嬉しいものばかりです。
それぞれのメリットについて、順番に確認していきましょう。
メリット1.リタイア後も会社が存続する

事業承継を行うことで、リタイア後も会社が存続します。
あなたが経営から退いても、会社がなくならないのです。
したがって、従業員の職がなくなることもなければ、取引先に迷惑をかけることもありません。
また、自分の会社がずっと続いていくのは経営者として嬉しいものです。
廃業してしまうと会社はあなたの代でなくなってしまうので、寂しい思いをするでしょう。
事業承継を行えば、安心してリタイアすることができます。
メリット2.廃業コストがかからない

事業承継を行えば、廃業コストがかかりません。
一般的に、事業を廃業するときにはオフィスやテナントの原状回復工事などの手続きが必要です。
そのような廃業手続きには、費用や時間がかかってしまいます。
しかし、事業承継を行えば廃業はしなくて良いので、コストがかからないです。
リタイアするのであれば、事業承継をしたほうが無駄をなくせます。
メリット3.後継者の能力で会社が成長する

後継者の能力によって会社が成長する可能性があるのも、事業承継のメリットです。
若い世代ならではの経営戦略や、後継者の高い資金力などによって、会社が大きく成長することがあります。
今までは経営を続けるだけでも精一杯だった会社が、事業承継をキッカケに一気に成長することも珍しくありません。
特にM&Aを行って事業承継をした場合には、買い手側の会社の既存事業との相乗効果が期待できます。
事業承継を成功させることで、会社が大きく発展するのを見届けられるのです。
以上が、事業承継問題を解決するメリットでした。
メリットを考えれば、事業承継は行うべきだと言えます。
ここからは、事業承継に必要な手続きを見ていきましょう。
4.事業承継に必要な手続き

事業承継に必要な手続きは、以下のようなものとなっています。
- 事業承継計画の立案
- 後継者探し
- 後継者教育
- 事業承継実行
難しそうに思っている人も多いかもしれませんが、余裕を持って早めに手続きに取りかかれば大丈夫です。
それぞれの手続きについて、順番に確認していきましょう。
手続き1.事業承継計画の立案

事業承継を行うなら、まずは計画を立てる必要があります。
事業承継は数年間にわたって行うものですから、行き当たりばったりでは成功しません。
事業承継計画については、『中小企業庁のページ』に準備シートがあります。
事業承継についての基本的な事柄を簡単に整理できるので、ぜひ使ってみてください。
特に後継者教育の方法や、財産の分配方法はしっかりと考えておきましょう。
手続き2.後継者探し

事業承継の計画が立てられたら、後継者探しを行います。
後継者探しの方法は、以下の4つです。
- 会社従業員から見つける
- 親族から見つける
- 外部の第三者から見つける
- M&Aによって見つける
現段階で後継者がいなくても、いずれかの方法で見つければ問題ありません。
焦らずに後継者にピッタリな人を探してください。
あなたの経営理念を理解してくれ、経営スキルを高めることに意欲がある人が良いでしょう。
後継者の探し方については、このあとの『5.事業承継をする後継者の探し方』で見ていきます。
手続き3.後継者教育

後継者が見つかったら、経営者になるために教育をしていく必要があります。
いくら才能のある人でも、勉強をして実務経験を重ねておかなければ経営を成功させるのは難しいです。
事業承継をしてからも会社が繁栄して、やっと事業承継の成功だと言えるでしょう。
したがって、事業承継成功のためには、後継者教育は欠かせません。
後継者教育には、社内で経験を積ませる他にも、社外で行われる事業承継セミナーに参加してもらう方法があります。
社外で他の会社の後継者と一緒に勉強することで、より一層経営者としての自覚が芽生えるはずです。
事業承継セミナーについては、『事業承継セミナーには行くべき?効果的な選び方や参加方法を徹底解説!』を参考にしてください。
役員として実務経験を積ませながら、社外での教育機会も取り入れていきましょう。
手続き4.事業承継実行

後継者が十分に育ったら、事業承継を実行しましょう。
事業承継実行のタイミングは、後継者の準備がすべて整ってからにするべきです。
後継者に株式や経営資産を引き継いだら、あなたは経営者の地位から退きます。
資産を引き継ぐにあたって、後継者に贈与税や相続税が発生することが多いです。
事前に税理士に相談して、税金対策を行っておくのが良いとされています。
税金対策としては、事業承継税制の活用が有効です。
無事に納税も終えたら、あとは後継者の経営を見守ることになります。
事業承継を実行してからも、半年程度は会社の経営状況に気を配っておけば安心でしょう。
もしも後継者が困っていることがあるようなら、積極的に相談に乗ってあげてください。
以上が、事業承継に必要な手続きでした。
これらの手続きをしっかりと行うには、戦略が必要となるので早めにとりかかったほうが良いです。
事業承継の戦略については、『事業承継は戦略で成功が決まる!失敗しないための3つのポイントは?』を読んでみてください。
次に、先ほどご紹介した後継者の探し方について詳しく見ていきます。
5.事業承継をする後継者の探し方

事業承継をする後継者の探し方は、以下の4つがあります。
- 親族に声をかける
- 従業員・社員・役員に声をかける
- 外部の第三者を探す
- M&Aで承継先を探す
今は後継者がいなくても、いずれかの方法で見つかることが多いので、安心してください。
それでは、後継者の探し方について順に確認していきましょう。
探し方1.親族に声をかける
事業承継をする後継者の探し方の1つ目が、親族に声をかける方法です。
息子や娘、孫、兄弟姉妹などの親族に声をかけることによって、後継者が見つかる可能性があります。
親族にお願いするときは、自分の事業についてよく理解してもらうことが必要です。
どのような事業なのかだけではなく、やりがいや今後の展望なども説明して関心を持ってもらいましょう。
親族に声をかける方法は、お願いする相手が明確なので早めに取り掛かることができます。
また、親族に後継者になってもらえれば、相続で事業を引き継ぐことも可能です。
昔ほどは多くありませんが、親族に事業承継するのは今でも人気な方法だと言えるでしょう。
探し方2.従業員・社員・役員に声をかける
従業員や社員、役員に声をかけて後継者を探すという方法もあります。
親族に声をかけたのに後継者が見つからなくても、諦める必要はありません。
従業員や社員、役員といった社内の人に後継者になってもらうのは、既に働く姿を見てから候補を選抜できるので適性のある人を選びやすいです。
社内の雰囲気も理解しているはずなので、後継者教育もスムーズでしょう。
しかし、後継者に選ばれなかったものの、後継者になりたかった従業員などからは不満の声が出るかもしれません。
ですから、社内から後継者を探すときには、他の従業員にも納得してもらえるような説明や教育をすることがポイントです。
探し方3.外部の第三者を探す
親族内や社内で後継者が見つからなかったときは、外部の第三者で後継者になってくれる人がいないかどうかも考えてみましょう。
「外部の第三者に会社を託すことには少し抵抗がある」という方もいるかもしれません。
しかし、熱意があって信頼できる人を見つけることができれば、教育をしっかり行うことで安心して会社を任せられる可能性は高いです。
外部の第三者から後継者を選ぶためには、後継者募集サイトを活用する方法が人気となっています。
具体的な条件を定めた上で募集すれば、希望通りの後継者候補からの応募もされやすいです。
教育に時間がかかるので、早めに取り掛かってください。
※後継者募集については以下の記事を参考にしてみましょう。
【関連】後継者募集が成功する鍵は?サイト10選からM&A仲介会社も紹介!
探し方4.M&Aによって見つける
最近増えてきているのが、M&Aで承継先を探すという方法です。
M&Aと言えば経営戦略の1つとしてイメージしている方も多いですが、事業承継にも役に立ちます。
自分の会社を別企業に買い取ってもらうことによって、後継者は買い取ってくれた企業の中で選出されるのです。
納得できる買収先を見つけることさえできれば、会社を売ることによる売却利益も受け取ることができます。
相性の良い買収先に引き継ぎをお願いすれば、今まで以上に事業が成長していく可能性も高いです。
身近なところや後継者募集サイトなどで後継者が見つからなくても、諦めずにM&Aを行うことを検討しましょう。
※M&Aでの事業承継なら『事業承継でM&Aは人気急増!今すぐ知りたいメリットや流れを解説!』が参考になります。
6.事業承継にかかる税金などの費用

ここまで事業承継をする後継者を探す方法についてお話してきました。
しかし、見つけるだけで安心してはいけません。
事業承継を行う場合、後継者側に税金がかかることがほとんどです。
具体的には、相続税や贈与税がかかります。
現経営者が持つ株式や事業資産が後継者に譲られる際、その金額に応じて税金がかかるのです。
他にかかる費用として、専門家への相談料もありますが、税金はそれ以上に高額になりやすいので気を付けておく必要があります。
次に、贈与税と相続税の税率についてそれぞれ見ておきましょう。
6−1.贈与税の税率

贈与税の税率は、以下の表の通りです。
課税対象の価格 | 贈与税の税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
課税対象になる金額に税率を掛け合わせて、控除額を引けば計算ができます。
たとえば、3,000万円の場合は以下のようになります。
3,000万円 × 50% – 250万円 = 1,250万円
したがって、贈与税は1,250万円となります。
6−2.相続税の税率

相続税の税率は、以下の表の通りです。
相続での取得金額 | 相続税の税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
課税対象の金額に税率を掛け合わせ、控除額を差し引けば計算ができます。
たとえば、8,000万円のときは、以下のようになります。
8,000万円 × 30% – 700万円 = 1,700万円
つまり、相続税は1,700万円です。
相続は贈与の場合に比べ、事業承継に関わる財産以外も受け取りやすくなるとされています。
したがって、相続においては入念な節税対策が必要です。
相続税も贈与税も、数千万円もの税金がかかることは稀ではありません。
事前に税理士と相談しながら、資金集めや節税対策を行いましょう。
7.事業承継の節税対策や資金集めの方法

事業承継は既に述べた通り、高額な贈与税や相続税が発生する可能性が高いので節税対策を行うべきです。
メジャーな節税対策として、事業承継税制の活用があります。
また、事業承継補助金を利用して後継者に資金を作ってもらうのも有効です。
それぞれの制度について、順番に確認していきましょう。
制度1.事業承継税制

事業承継の節税対策として注目されているのが、事業承継税制です。
事業承継は今の経営者から会社を引き継ぐ後継者に資産を引き継がなければなりません。
資産の引き継ぎの際に、贈与税や相続税といった税金がかかります。
特に今の経営者が後継者に株式を引き継ぐときには、多額の納税資金が必要となることも珍しくありません。
事業承継税制を使えば、贈与税や相続税の納税が猶予されるので後継者にスムーズに事業承継をしやすくなります。
事業承継税制を利用するには所定の手続きが必要ですが、納税に不安があるなら検討してみてください。
【関連】事業承継税制で節税しよう!改正内容から手続き方法を完全ガイド!
制度2.事業承継補助金

中小企業の事業承継の際には、事業承継補助金も活用できます。
事業承継補助金というのは、事業承継やM&Aを契機として中小企業が何か新しいチャレンジをするのを支援する制度のことです。
新しいチャレンジとして例えば、事業承継をキッカケに経営革新を行うための取り組みを指します。
チャレンジに必要な経費を補助してもらえるので、事業承継の資金に不安がある方は利用を検討してみましょう。
補助される金額に上限はありますが、少なくとも225万円以上が現在は受け取れるとされています。
交付申請から補助金の交付までにはいくつかの手続きがあるので、スケジュールを意識して行動することがポイントです。
※認定経営革新等支援機関については『認定経営革新等支援機関 – 中小企業庁』で確認できます。
【関連】事業承継補助金を使って資金対策をしよう!採択率や申請方法を紹介!
8.事業承継を成功させるための5つの注意点

ここまで便利な節税対策についてお話してきました。
節税対策まで行えていれば、後は以下5つの注意点だけ最低限守って動いてみましょう。
- 相応の期間が必要
- 人間関係が悪くなりやすい
- 目に見えない財産にも目を向ける
- 後継者候補が挫折する可能性がある
- 専門家への依頼も検討する
どうして注意すべきなのかわかりやすくお話しますので参考にしてみてください。
注意点1.相応の期間が必要
事業承継を成功させるためには、相応の期間が必要であることを理解しておくのが良いです。
事業承継をしようと思ったとき、後継者さえ見つければすぐに会社を引き継げると思う方も少なくありません。
しかし、実際には後継者教育や納税のための資金作りなどで時間がかかります。
ですから、目安としてはリタイアしようと思っている5年以上前から事業承継の準備に取り掛かるようにしましょう。
また、早めに後継者を選んで教育を始めなければ、今の経営者が急にリタイアすることになった場合に会社内が混乱してしまいます。
トラブルを避けるためにも、積極的に準備に取り掛かってください。
注意点2.人間関係が悪くなりやすい
事業承継をする際には、人間関係が悪くなりやすい点にも注意が必要です。
後継者選びに不満を覚える人が出るケースや、後継者のやり方に反発する人が出るケースはよくあります。
親族内や社内でトラブルが多発すると、事業承継を成功させるのは難しくなってしまうでしょう。
できるだけ今の人間関係を維持しながら事業を引き継ぐために、周囲の考えには自分から耳を傾ける姿勢が重要です。
「とにかく引き継いでしまえば何とかなるだろう」と考えていると、大量離職されてしまうこともあります。
大量離職されると今まで通りの経営が厳しくなるので、できる限り避けなければなりません。
注意点3.目に見えない財産にも目を向ける
忘れがちなポイントですが、目に見えない財産にも目を向けることも大切です。
事業承継の際の目に見えない財産とは、経営ノウハウや経営理念、人脈、従業員との関係性、経営へのモチベーションなどのことを意味します。
事業承継は後継者に資産を引き継ぎ、経営者を代わってもらうものだと考えている方も多いはずです。
確かに株式や事業用資産の引き継ぎは欠かせない手続きだと言えます。
しかし、目に見えない財産も上手く引き継がなければ、会社経営は今まで通りにはいかないかもしれません。
事業承継をきっかけにより一層、会社を発展させるためにも、目に見えない財産は意識しておきましょう。
注意点4.後継者候補が挫折する可能性がある
事業承継の際には、後継者候補が挫折する可能性があることも考えておかなければなりません。
必死に選んだ後継者候補が必ずしも挫折しないとは限らないのです。
事業を引き継ぐための後継者教育は、時に厳しいこともあります。
熱心な指導にも耐えられるくらい後継者候補のやる気があるのかは、事前に確認しておきましょう。
また、事業承継後に実際に経営者として後継者が経営を引き継いだとき、最初のうちは困ることも多いです。
ですから、事業承継後にアフターケアをどのように行うのかも考えてみてください。
例えば、元経営者が1年間は会社内に残るという手段も有効ですので先を見据えて動きましょう。
注意点5.専門家への依頼も検討する
事業承継を行う際には、専門家への依頼も検討するのが良いです。
事業承継には様々なポイントがあり、未経験者が全てを自分だけで行うのは難しいとされています。
今まで経営してきた会社を自分のリタイアによって厳しい状況にしないためにも、専門家に頼ることも考えてみてください。
専門家に依頼すれば、後継者探しや教育、節税対策など多くの手続きのアドバイスをもらうことや、サポートを受けることができます。
トラブルを極力回避するための方法も教えてもらえるので、専門家に相談することによって安心して事業承継ができるようになるでしょう。
9.事業承継の相談相手や相談料は?

事業承継について相談できる専門家には、事業承継士や事業承継アドバイザーがいます。
また、外部から後継者を探すのであれば、M&Aアドバイザーも相談先に必要です。
他にも税金対策については税理士に相談するのが良いとされています。
身近な専門家の探し方としては、インターネットを活用するのが良いでしょう。
インターネットで検索して自分の地域の専門家を探し、ホームページを見てみてください。
ちなみに、専門家によって今までにどのような内容の事業承継に関わってきたかが異なります。
過去の事例が掲載されているなら、あなたの会社と似ている規模や業種の経験があるところを選べば安心です。
ここで、以下の専門家について確認しておきましょう。
- 事業承継アドバイザー
- 事業承継士
- M&Aアドバイザー
- 税理士
相談先に悩まないように、それぞれについて見ていきます。
専門家1.事業承継アドバイザー

事業承継アドバイザーとは、事業承継についての民間資格保有者です。
事業承継に関する幅広い知識を持っているので、事業承継計画の相談を安心して行えます。
節税対策を行う際には、事業承継アドバイザーの資格も持った税理士に依頼すれば心強いです。
事業承継アドバイザーによって相談料は異なりますが、1ヶ月に30万円程度が目安となっています。
高いと感じるかもしれませんが、節税を行えば最終的には得になることも多いです。
事業承継アドバイザーは難易度がそこまで高くはなく、わざわざ取得していない専門家もいます。
したがって、無理に事業承継アドバイザーの資格を持っている人を探す必要はありません。
あくまでも、資格を持っていれば心強くなるという程度だと考えておいてください。
専門家2.事業承継士

事業承継アドバイザーとは、事業承継についての民間資格保有者です。
事業承継アドバイザーとは別の団体が資格の認定を行っています。
事業承継士になるためには、原則として弁護士や税理士、公認会計士などの士業であることが必要です。
したがって、高度な専門的知識を使って事業承継の相談に乗ってくれます。
事業承継アドバイザーの受験資格よりも厳しいので、より難易度の高い資格です。
事業承継士によって相談料は異なりますが、1ヶ月に30万円以上が目安とされています。
事業承継について最初から最後までサポートしてほしいなら、事業承継士に相談しに行きましょう。
ただし、事業承継アドバイザーと同様に、事業承継士を所有していないからといって相談先に適さないわけではありません。
相談先選びの1つの基準として考えるのが良いです。
専門家3.M&Aアドバイザー

M&Aアドバイザーとは、相手企業探しから最終的な手続きまでトータルサポートが可能な専門家です。
証券会社やコンサルティング会社、M&A仲介会社に在籍しています。
専門的な知識を豊富に有しており、経験もあることからM&Aの成立に必要不可欠な存在です。
事業承継を目的とするなら、同じ業種・規模の経験が豊富なアドバイザーを選んで依頼すると良いでしょう。
依頼料が成功報酬のみとなっているところでは、売買価格が10億円だと4,000~5,000万円程度を目安としてかんがえてみてください。
報酬は依頼するところによって違うので、必ず確認しておきましょう。
専門家4.税理士

事業承継にあたって考えなければならない贈与税や相続税については、税理士に相談するのが最適です。
既に述べた事業承継アドバイザーや事業承継士の資格を持った税理士なら特に相談しやすいでしょう。
しかし、事業承継に関する資格を持っていなくても、実務経験を積んでいる可能性があります。
したがって、民間資格を持っていなくても事業承継を専門としている税理士なら相談して問題ありません。
税理士への相談料についてですが、贈与税や相続税の試算なら無料で行ってくれる場合もあります。
料金がかかる場合も10万円程度で計算してもらえるので、まずはどれくらいの税金がかかるのかを早めに相談に行ってください。
税金が発生するのであれば、節税対策もあわせて行ってもらえば安心です。
以上が、事業承継の専門家についてでした。
もっと詳しく知りたいなら、『事業承継は相談先で成功が決まる!すぐ使うべき専門窓口7選を紹介!』が参考になります。
信頼できるパートナーを見つければ、事業承継も成功しやすくなるはずです。
焦らずに最良の相談相手を見つけてください。
10.良いパートナーを見つけて事業承継を成功させよう

良いパートナーを見つけることは成功に必要不可欠な要素です。
そこで活躍するのが専門家の知識とプラットフォームとなります。
事業承継に失敗してしまえば、せっかく十分に検討した戦略がすべて無駄になってしまう可能性は捨てきれません。
仮に、引き継ぎまで無事に終えたとしても、経営が傾くといったことも。
ですから、良いパートナーを見つけられるように事前にリサーチ・準備を怠らないようにしましょう。
専門家であれば、豊富な知識と経験によって最適な売買相手を見つけだすことができます。
また、独自のプラットフォームを持つことからさまざまな業種から豊富な相手を見つけることも可能です。
さらに、見つけるだけではなく手続きから法務・税務まで頼ることもできるでしょう。
ぜひ、専門家に依頼して良いパートナーを見つけられるよう動き出してみてください。
まとめ
事業承継とは、行っている事業を後継者に引き継ぐことです。
事業承継をすれば、自分がリタイアしてからも事業が続いていきます。
事業承継には、後継者や承継する時期、承継の方法を決めなければならないので、専門家のもとで準備をしていきましょう。
事業承継は時間が必要となるので、早めに取り掛かることが大切です。