
子会社の売却方法についてお調べですね。
子会社を売却するときには、通常の株式譲渡とは少し違う手続きをすることがあるので注意をしなければなりません。
そこで今回は子会社を売却するときの流れを10のステップで詳しく解説しています。
また、子会社の売却だからこそできる税金対策を事前に学び、万全の体制で子会社を売却しましょう。
目次
1.子会社を売却した有名な企業の事例

子会社の売却はよくニュースで聞きますよね。
まずは、子会社を売却した有名な企業の事例を2つ確認しましょう。
事例1.日立製作所の子会社売却
売り手企業 | 日立製作所 |
対象の子会社 | 日立プロキュアメントサービス |
買い手企業 | 萬楽庵 |
売却価格 | 8億円程度(非公開) |
日立製作所は2018年12月に間接材の調達子会社である日立プロキュアメントサービスを売却することを発表しました。
売却先はインドのITサービス大手のインフォシス、パナソニック、パソナです。
株式の81%を引き受けるインフォシスの子会社となり、社名も変更する予定となっています。
パナソニックとパソナはそれぞれ2%ずつ引き受け、残りの15%は日立製作所が保有し続けることになっています。
今回、日立製作所が子会社の売却に踏み切った理由は、営業利益率を10%以上に高めるためです。
経営基盤を強化し、IoT事業に資金を集中させます。
日立製作所は、日立プロキュアメントサービスを数十億で売却することに成功しました。
事例2.RIZAPグループの子会社売却
売り手企業 | RIZAPグループ |
対象の子会社 | ジャパンゲートウェイ |
買い手企業 | インフォシス(81%保有) パナソニック(2%保有) パソナ(2%保有) |
売却価格 | 8億円程(非公開) |
RIZAPグループは、化粧品販売子会社であるジャパンゲートウェイを売却したと発表しました。
ジャパンゲートウェイの売却先は名古屋市の投資会社萬楽庵です。
萬楽庵は、今後展開する予定の通販事業にジャパンゲートウェイの持つブランド商品を活用したいとの考えを述べています。
RIZAPは2019年3月期連結決算の純損益が赤字になる見通しを2018年11月に発表したばかりです。
原因は、赤字企業の買収を繰り返し行っていたことにあります。
そのため、本業のフィットネスクラブとの関連が低い子会社を売却する計画を立てていたのです。
そもそも、RIZAPは赤字だったジャパンゲートウェイを2017年12月に買収しました。
しかし、買収後思うように業績が伸びず、赤字は回復しなかったのです。
売却額は非公開となっていますが、RIZAPは売却によって約8億円の損失を2019年3月期決算に計上する予定となっています。
ライザップが赤字に陥った原因については、『負ののれんとは?発生する理由とリスクをRIZAPを例に徹底解説!』で詳しく説明しています。
2.子会社を売却する目的は『経営再建』

2つの有名企業の事例を見てみました。
事例からも分かるように、子会社を売却する目的は経営再建です。
そもそも、子会社には経営の決定権がなく、親会社に経営権が握られています。
子会社を売却することで、力を注ぎたい事業のための資金調達することができるのです。
しかし、子会社の売却は通常の会社売却の手続きと少し異なります。
次の章で子会社を売却するときの流れを確認していきましょう。
3.子会社を売却するときの流れ

子会社を売却する場合、株式譲渡の手法が用いることが一般的です。
子会社を売却するときの流れは10のステップに分けることができます。
子会社を売却する場合、取締役会の代わりに特別決議が必要となる場合があるので特に注意して確認しましょう。
STEP1.株式譲渡承認請求

まずは、株式譲渡承認請求を行います。
株式譲渡承認請求とは、第三者の株式を譲渡することを子会社に対して承認するように請求することです。
株式譲渡承認請求書に、以下の項目を記載します。
- 譲渡する株式の種類
- 譲渡する株式の数
- 譲渡する相手企業の基本情報
表面上は、このように株主(親会社)から子会社に対して請求を行うことになっています。
しかし、現実的には事前に子会社と話し合いを行い、株式譲渡を内諾されているケースが多いです。
STEP2.取締役会

取締役会が存在する場合、まずは取締役会決議が必要です。
取締役会で臨時株主総会を開催することを決定します。
取締役会を設置しない会社では、株主総会を開催する前提として、取締役の過半数の一致で株主総会の招集を決定しなければなりません。
STEP3.株主へ臨時株主総会の招集通知

臨時株主総会の開催が決定したら、株主に対して招集通知を行います。
原則、臨時株主総会の1週間前までには通知しなければなりません。
取締役会を設置していない会社の場合は、書面以外に口頭や電話での通知も可能です。
ただし、証拠を残すため書面による通知をしましょう。
STEP4.臨時株主総会

会社は、出来るだけ早い日程で臨時株主総会を開催します。
通常は、普通決議による決議となります。
特別決議が必要なケース
しかし、以下の2つの条件を両方満たす場合は、特別決議が必要です。
- 売却する子会社株式の帳簿価額が、親会社総資産額の5分の1を超える
- 株式譲渡によって、親会社が子会社議決権のうち過半数を保有しなくなる
特別決議とは、普通決議よりも重要な事項を決定するために行われる株主総会のことです。
議決権株式総数の過半数の出席と出席株主の3分の2の賛成が必要となります。
平成26年の会社法改正によって手続きの流れが変更されているため、注意しましょう。
STEP5.株主譲渡承認の通知

会社は譲渡承認請求を受けた日から2週間以内に株主総会を開き、結果を通知しなければなりません。
2週間を経っても通知がない場合、請求が承諾されたものとみなされるので注意しましょう。
STEP6.株式譲渡契約の締結

譲渡が承認されたら、株主である親会社と譲渡先(買い手企業)との間で株式譲渡契約を締結します。
株式譲渡契約書に譲渡対価や支払日などの条件を明記し、両社の記名・捺印を行うのです。
株式譲渡契約の締結により、「子会社の売却」の契約が成立したとみなされます。
STEP7.株主名義書き換え請求

株式譲渡契約の締結後、株主名義の書き換えをしなければなりません。
書き換えのために、売り手企業(親会社)と買い手企業が共同で子会社に対して株主名簿書換請求を行います。
そもそも、株主の証として会社の株主名簿に名前が記載されていなければなりません。
そのため株主の名前を売り手企業から買い手企業へ書き換える必要があるのです。
STEP8.株主名義の書き換え作業

株主名簿書換請求を受けたら、子会社は株主名簿を書き換えます。
このとき、子会社に拒否権はありません。
会社によって株主名簿の様式は異なるため、会社の様式に合わせて作成をします。
STEP9.株主名簿記載事項証明書の請求

新しい株主から株主名簿記載事項証明書の請求が行われます。
新しい株主(買い手企業)は、会社の株主名簿が本当に書き換えられているのかを知るために株主名簿記載事項証明書の交付を受けることができるのです。
STEP10.株主名簿記載事項証明書の交付

新しい株主から株主名簿記載事項証明書の請求をされたら、子会社は株主名簿書き換えをした証拠として株主名簿記載事項証明書を交付します。
株主名簿記載事項証明書の交付することで、会社の株主が変わったことが証明されるのです。
4.子会社を売却するときに行う税金対策

子会社を売却すると、株主である法人が事業を売却したとみなされるため、法人税が発生します。
経営再建のために子会社を売却するのであれば、できるだけ多くの資金を手元に残したいと考えるのが普通です。
そこで子会社を売却するときに行う税金対策を2つ確認しましょう。
税金対策1.事前に親会社で不要資産を吸い上げる

子会社を売却する前に、親会社で不要資産を吸い上げるようにしましょう。
そうすることによって、譲渡対象が少なくなるため子会社売却の価格が下がり、節税に繋がるのです。
子会社から親会社への資産移動には税金が発生しないため、買い手企業が不要だと判断した資産は吸い上げておきましょう。
図のように、余剰資産を配当金として吸い上げることで譲渡益が下がり、自動的に税金も少なくなります。
税金対策2.株式譲渡と事業譲渡でシミュレーションする

子会社を売る場合、株式譲渡と事業譲渡の両方でシミュレーションをしてみましょう。
事業譲渡とは事業だけを売却する方法です。
株式譲渡を行った場合、譲渡益の計算上の譲渡原価は子会社における株式の簿価となります。
一方、事業だけを売却する場合、譲渡原価は子会社における譲渡対象の純資産簿価です。
それぞれでシミュレーションをしてみてどちらの原価が高くなるか比較しましょう。
ご紹介した2つの節税方法は、必ず税理士に相談するようにしましょう。
5.子会社を売却するならM&A仲介会社に相談しよう

子会社の売却を検討しているのであれば、M&A仲介会社に相談をしましょう。
経営者だけで子会社を売却することは、非常に困難です。
しかし、M&A仲介会社にはM&Aのプロであるコンサルタントがいます。
コンサルタントと一緒に子会社を売るための戦略を考え、スケジュールを立てていきましょう。
M&A仲介会社に相談すべき理由は3つあります。
1つずつ確認していきましょう。
理由1.専門家のサポートで安心できる

M&A仲介会社に相談することで専門家のサポートを受けることができます。
子会社を売却するためには、会社の法務・税務・会計などさまざまな専門知識が不可欠です。
M&A仲介会社はこのような専門家とのネットワークを必ず持っています。
そのため、各方面からのアドバイスを受けることが出来るのです。
特に、契約を締結する際に必要な契約書の記載内容には弁護士のチェックが欠かせません。
子会社売却後にトラブルが起きたとき、賠償責任は契約書の内容が判断基準となるからです。
M&A仲介会社に相談することで会社の法務・税務・会計に詳しい専門家からアドバイスをもらえるため、安心できます。
理由2.適切な相手企業を提案してくれる

M&A仲介会社に相談することで、適切な相手企業を数社提案してもらえます。
子会社の売却で一番大変なことが適切な買い手企業を探すことです。
M&A仲介会社は、全国に広いネットワークを持っています。
そのため、自社だけでは探せないような買い手企業情報を提案してくれるのです。
子会社を売却するときには、売却価格などさまざまな条件があると思います。
その条件に最も合う買い手企業を紹介し、アプローチしてくれるのです。
このようにM&A仲介会社に相談することで、買い手企業が見つけやすくなります。
理由3.本業に集中することができる

M&A仲介会社に相談することで、経営者は本業に集中することができます。
子会社を売却するためには、買い手企業探し・企業評価・提案書の作成・契約締結のための交渉など、さまざまな業務をこなさなければなりません。
その間、本業の経営を疎かにしてしまうと売上げが下がる恐れがあります。
売上げが下がると売却価格も低くなる可能性もあるのです。
しかし、M&A仲介会社に業務を依頼することで経営者の負担が軽減されます。
もちろん、丸投げすることは出来ませんが、段取りを汲んだりやスムーズに行うためのアドバイスをもらうことができます。
賢くM&A仲介会社を活用し、本業に支障をきたさないように子会社を売却しましょう。
まとめ
子会社を売却するときは、以下の場合に特別決議が必要なので注意しましょう。
- 売却する子会社株式の帳簿価額が、親会社総資産額の5分の1を超える
- 株式譲渡によって、親会社が子会社議決権のうち過半数を保有しなくなる
また、子会社を売却しようと考えているなら必ずM&A仲介会社に相談することをオススメします。
プロの力を賢く借りながら、子会社の売却を成功させましょう。