
「会社売却したら税金ってどれくらい取られるの?」とお調べですね。
会社売却の対価を受け取るのが法人か個人かによって、税率が変わります。
今回は、会社売却したときに発生する税金や税率、納税のタイミングを分かりやすく説明。
節税方法も解説しているので、会社売却前から検討して下さい。
できるだけ税金を抑え、手元の資金を多く残しましょう。
目次
1.会社売却で発生する税金とは

会社売却をすると、税金が発生するので注意しましょう。
譲渡所得もしくは譲渡益に対して課税がされますから、売却価格そのものに課税されるのではありません。
譲渡所得と譲渡益の違いは、会社売却の対価を誰が受け取ったかによって変わります。
経営者などの個人が受け取った場合は譲渡所得、法人(企業)が受け取った場合は譲渡益となるのです。
1-1.会社売却による課税対象

会社売却による課税対象は、譲渡所得もしくは譲渡益です。
両方とも、同じ計算式で算出することができます。
- 譲渡所得(譲渡益)=売却価格ー(会社の純資産+必要経費)
売却価格とは、会社売却によって得た対価のことを指します。
そこから、会社の純資産と必要経費を差し引くと、譲渡所得(譲渡益)を算出することが可能です。
1-2.差し引かれる費用

譲渡所得(譲渡益)を算出するために、売却価格から差し引かれる費用は2つあります。
会社の純資産と必要経費について詳しく確認しましょう。
(1)会社の純資産
純資産とは、会社の資産総額から負債総額を差し引いた金額のことです。
以下のような計算式で算出することができます。
- 純資産=会社の資産総額ー負債総額
会社売却は会社を売る行為です。
純資産とは、モノを売るときの原価といえます。
(2)必要経費
さらに、必要経費も差し引きます。
必要経費とは以下のように会社売却のために支払った経費のことです。
- M&A仲介会社へのコンサル費用
- デューデリジェンス費用
- 不動産の名義変更費用
他にも、交通費や資料作成費など、会社売却のための経費なら必要経費に含まれます。
しかし、一番大きな経費はM&A仲介会社へのコンサル費用です。
M&A仲介会社は、会社売却の検討から会社売却の成立までを全てサポートしてくれます。
仲介会社なしで会社売却をすることは不可能と言っても過言ではありません。
必ず発生する費用のため、覚えておきましょう。
2.会社売却で発生する税金の種類

さっそく会社売却で発生する税金の額を確認しましょう。
会社売却で発生する税金は、対価を受け取ったのが法人なのか個人なのかによって変わります。
- 法人が会社売却の対価を受け取るとき
- 個人が会社売却の対価を受け取るとき
それぞれの場合について、具体的に確認しましょう。
2-1.法人が会社売却の対価を受け取るとき
法人が会社売却の対価を受け取る場合、法人税が発生します。
法人税の額は、譲渡益×15~23.2%です。
譲渡益は通常の営業による利益としてみなされるため、法人税の対象となります。
法人税の税率
法人税の税率は、15~23.2%程度ですが、法人によって税率は異なります。
法人税率は、比例課税方式が採用されていて、一律で23.2%です。
しかし、平成30年4月より税法が改正されたため、中小法人の税率は所得金額によって税率が異なります。
資本金または出資金が1億円以下の場合には、軽減税率が適用されるようになりました。
資本金または出資金が1億円以上 | 23.2% |
資本金または出資金が1億円未満 かつ所得金額800万円以上 |
23.2% |
資本金または出資金が1億円未満 かつ所得金額800万円未満 |
15% |
上の表のように、資本金または出資金が1億円未満の場合は、2段階課税方式となっています。
2-2.個人が会社売却の対価を受け取るとき
個人が会社売却の対価を受け取る場合、所得税と住民税が発生します。
支払う税金の額は、譲渡所得×20.315%です。
所得税と住民税の税率は、以下の表を確認しましょう。
所得税+復興税 | 15.315%(15%+0.315%) |
住民税 | 5% |
つまり、所得税15.315%と住民税5%を足すと20.315%の税率となるのです。
このように、会社売却の対価を受け取るのが法人なのか個人なのかによって支払う税金の種類が変わります。
税金は種類によって支払うタイミングが異なりますので、次の章で確認しましょう。
3.それぞれの税金を支払うタイミング

会社売却をしたら、すぐに税金を支払うわけではありません。
法人税・所得税・住民税でそれぞれ支払うタイミングが異なるため、しっかりと確認しておきましょう。
3-1.法人税を支払うタイミング

法人税は、確定申告と中間申告の支払いタイミングが2回あります。
しかし、中間申告は、前年度の法人税納付額が20万円を超えたときにだけ必要です。
まず、確定申告分は事業年度終了日の翌月から2ヶ月以内に支払いが義務付けられています。
3月が決算月の企業の事業年度終了日は、3月31日です。
そのため、確定申告分は5月31日までに確定申告と納税をしなければなりません。
また、中間申告分は事業年度開始日から6ヶ月後から2ヶ月以内の支払いが義務付けられています。
4月から年度が替わる企業は、11月30日までに確定申告と納税をしなければなりません。
このように、法人税は支払うタイミングが2回あります。
ただし、前年度の納付額が20万円未満のときは確定申告分のみです。
自社の納付額を確認しておきましょう。
3-2.所得税を支払うタイミング

所得税は、会社売却をした翌年3月15日までに一括納付をしなければなりません。
たとえば、2019年1月に会社売却をしたら所得税の納付期限は2020年3月15日です。
ただし、年によって日数が前後することもあります。
確定申告期限と同じ日が納税期限なので、覚えておきましょう。
3-3.住民税を支払うタイミング

住民税は、会社売却をした翌年の6月末までに一括納付と年4回の分納を選べます。
分納の場合は、6月・8月・10月・翌1月に分けて納めます。
たとえば、2019年1月に会社を売却したとしましょう。
一括の場合は、2020年6月頃までに支払わなければなりません。
一方、分納の場合は一括納付の場合は2020年6月・8月・10月・2021年1月の4回に分けて納付することになります。
会社売却をした翌年の6月ころにお住いの自治体から納付書が納付されるので、内容に従いましょう。
4.会社売却したときの節税対策

会社売却をしたときの税金の種類と支払うタイミングを解説しました。
会社売却では多額の現金が手に入りますが、できるだけ手元にお金を残したいですよね。
そこで、会社売却をしたときに有効な節税対策を2つご紹介します。
- 第三者割当増資を活用する
- 退職金を利用する
会社売却をする前から、しっかりと節税を考慮しておきましょう。
節税対策1.第三者割当増資を活用する
会社売却を第三者割当増資を活用して行うと税金が発生しないため、節税となります。
第三者割当増資とは、売り手企業が買い手企業に対して新株を発行するM&Aの手法です。
第三者割当増資は新株を買い手企業に発行するだけなので、すでに発行されている株式はそのまま保持することになります。
そのため、100%の株式取得をさせることはできません。
しかし、株式保有割合によって経営権を買い手企業に移すことはできます。
第三者割当増資は、「増資が行われた」とみなされるだけなので、税金が発生しないのです。
ただし、新株を買い手企業に対して発行することを贈与とみなされると、贈与税が発生する可能性があるので注意しましょう。
節税対策2.退職金を利用する
退職金(役員退職慰労金)として会社売却の対価を受け取ることで、節約に繋がることがあります。
例えば、会社売却の価格が1億円だったとしましょう。
このとき、取締役へ4,000万円を退職金として支払い、残りの6,000万円を会社売却の代金として支払うこともできるのです。
このとき、退職金は譲渡所得ではなく退職所得となります。
退職所得に対する税金は以下のように計算するのです。

まず、退職所得控除の計算方法を確認しましょう。
勤続年数(n年) | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×n年 ※80万円未満は80万円とする |
20年超え | 800万円+70万円×(n年-20年) |
また、退職所得に対する税率は所得金額によって異なります。
所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 15.105% | なし |
195万円超330万円以下 | 20.210% | 97,500円 |
330万円超695万円以下 | 30.420% | 427,599円 |
695万円超900万円以下 | 33.283% | 636,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 43.693% | 1,536.000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 50.840% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 55.945% | 4,796,000円 |
このように、退職所得控除とや控除後の金額を2分の1にするので、税額を抑えることができます。
退職所得と譲渡所得の税額を比較しよう
勤続年数25年で4,000万円の退職金を受け取るとしましょう。
- {4,000万円ー(800万円+70万円×5年)}×1/2=14,250,000円
このとき、税率は43.693%、控除額は1,536,000円です。
支払う税金は、
14,250,000円×43.693%-1,536,000円=4,658,000円となります。
一方、譲渡益が4,000万円だったときの計算式は以下の通りです。
- 4,000万円×20.315%=8,126,000円
このように、退職金として受け取った方が8,126,000円ー4,658,000円=3,468,000円も節税できるのです。
ただし、勤続年数や額によって退職金として受け取るほうが高い税額になる可能性もあります。
節税をするためには、必ず税理士へ相談するようにしましょう。
また、節税することも大切ですが、そもそもの売却価格を高めることで手元に残る資金を増やすことも考えるべきです。
※会社売却の基礎知識について詳しくは以下の記事で解説しています。
『会社売却の基本を学ぶ!知っておきたい8つの知識を徹底解説!』
※初心者の方にわかりやすく会社売却について解説している以下の記事も参考になるでしょう。
『会社を売りたい全ての人へ!高い価格で会社が売るために今から準備出来ること』
5.会社売却をするならM&A仲介会社に相談しよう

会社売却を検討しているなら、まずはM&A仲介会社に相談しましょう。
M&A仲介会社とは、会社売却の戦略から買い手企業探し、成立までをコンサルタントしてくれる存在です。
会社売却をすると、税金だけでなく法務・会計などさまざまな知識が必要となりますから、対応した専門家を紹介してもらうこともできます。
もちろん、税理士とのネットワークもあるため節税についても詳しくアドバイスしてもらえるでしょう。。
もし、思い当たるM&A仲介会社がないのであればM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所なら、会社売却の経験豊富なM&Aコンサルタントや公認会計士がフルサポートいたします。
会社売却で発生する税金のことも、もちろんご相談下さい。
※M&A仲介会社については『【M&A仲介会社BEST5を発表】有名企業5社を徹底比較!!』で解説していますので、参考にしてみてください。
まとめ
会社売却をすると、税金が発生します。
会社売却の対価を受け取るのが法人か個人かによって、税額や納税のタイミングが異なります。
せっかく会社売却をするのであれば節税をして、たくさんの資金を手元に残すようにしましょう。
そのためには税理士を紹介してくれるM&A仲介会社へ相談することをおすすめします。
税金以外のことも、会社売却に関わる全ての道筋を経営者と一緒に考えてくれるはずです。
もっと会社売却の基礎知識を知りたいなら、『会社売却の基本を学ぶ!知っておきたい8つの知識を徹底解説!』を参考にして下さい。