
本記事では、会社譲渡とは何かについて、会社譲渡の詳しい手続き・流れや必要書類、役員や従業員の処遇、会社譲渡のメリットとデメリット、企業価値の算定方法や会社譲渡を成功させるポイントとは何かなど、幅広い視点から解説しています。
目次
会社譲渡とは

会社譲渡とは、会社が発行している株式を譲渡先の株主や企業に売却することで、経営権を移動させる取引のことです。株式を譲渡するので、株式譲渡とも呼ばれます。
吸収合併なども会社を譲渡する取引ではありますが、M&Aの手法としては株式譲渡に比べて使われる頻度が少ないのもあり、会社譲渡といえば株式譲渡を意味する用語として使われることが多いです。
ほかのM&A手法として事業を個別に売買する事業譲渡もありますが、これは会社を売却しているわけではないので会社譲渡には含めないのが一般的です。
会社譲渡の理由
会社譲渡が行われる理由にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、主な3つの理由を解説します。
【会社譲渡の理由】
- 新しい事業を始めたい
- 早期リタイアを検討
- 将来的が無いと感じた
1.新しい事業を始めたい
新しい事業を始める資金を得るために、会社譲渡を利用するのはよくある理由の一つです。
新しい事業を始める資金は、金融機関から借入れることが多いですが、借入れは将来的に返済しなければならず、担保や個人保証は経営者にとって大きな精神的負担となります。
もし、売却してもいいと思う事業がすでにあれば、その事業を売却することで借入れに頼らず資金を獲得することができます。
2.早期リタイアを検討
会社の経営は日々さまざまなプレッシャーに晒されているので、精神的に疲れてもう辞めたいと考える経営者の方もいるのではないでしょうか。
そこで、早期リタイアのための生活資金を得るために、会社譲渡を利用する事例もよく見られます。
早期リタイアとはいわゆるアーリーリタイアのことで、まだ働く体力や気力が残っている若いうちに、引退して悠々自適の生活に移ることです。
ただし、経営者以外が保有する株式に関しては、会社譲渡しても経営者の利益とはならないので、会社譲渡しても十分な生活資金が得られるとは限らないのが注意点です。
3.将来的が無いと感じた
経営状態がよくないにもかかわらず、会社をたたむ決断ができずにと経営を続けているケースも多いのではないでしょうか。
会社の将来性がもう感じられない時に、会社譲渡で会社を譲り渡してしまうというのも有効な選択肢です。
将来性がな会社を買い取ってくれるのかと思うかもしれませんが、相手にとって何らかの魅力が感じられるなら、会社譲渡が成立する可能性は十分あります。
会社譲渡による影響
会社譲渡は、M&Aのなかでは比較的シンプルな手法ではありますが、それでも従業員や取引先など関係者に大きな影響を及ぼします。
会社譲渡を行う時は、関係者の同意を得て迷惑をかけないように進めていくことが大切です。
この章では、会社譲渡を行った際に、従業員や取引先などの関係者にどのような影響が及ぶかを解説します。
【会社譲渡による影響とは?】
- 経営者の処遇・待遇
- 役員の処遇・待遇
- 従業員の処遇・待遇
- 取引先への対応
- 経営者の借入金
1.経営者の処遇・待遇
会社譲渡の結果、新しい経営者が誰になるかは株主が決めることですが、一般的には前経営者は会社譲渡とともに退任し、新しい経営者を据えることが多いです。
会社譲渡後の統合プロセスに必要であれば、前経営者が顧問などの役職で会社に残り、経営が軌道に乗ってきた時点で退任するというケースもよくあります。
統合プロセス(PMI)とは、会社譲渡が成立した後に、業務プロセスや企業風土のすり合わせなどを行い、譲渡先で会社がスムーズに経営できるようにすることです。
2.役員の処遇・待遇
譲渡会社の役員も経営者と同様、会社譲渡とともに退任し、新しい役員が株主によって決められることが多くなります。
3.従業員の処遇・待遇
会社譲渡は株式を移動させる取引なので、事業譲渡に比べると従業員に大きな変化は起こりません。今まで働いていた同じ会社で、会社譲渡後も引き続き働くことになります。
事業譲渡では、従業員は譲受企業に転籍する必要があるのに対して、転籍せずに済む会社譲渡は従業員にとって混乱が少ない手法だといえるでしょう。
ただし、会社譲渡すると経営陣が入れ替わるので、経営方針により労働条件が変化することは十分あり得ます。
労働条件が変化する場合は、一定期間は労働条件を変化させない契約を結ぶなどして、従業員に混乱が起こらないように配慮する必要があります。
4.取引先への対応
譲渡企業で取引を続けてきた取引先は、譲受企業にとっても重要な資産になります。会社譲渡に伴い取引先が撤退してしまうと、会社の価値が大きく下がってしまうので、会社譲渡後も取引を続けてもらうようにケアすることが重要です。
会社譲渡によって経営者が変わっても、これまでどおり取引ができることをきちんと説明しておくようにしましょう。
また、会社譲渡後に取引内容が変化する場合は、取引先が納得できるよう説明しなければなりません。
5.経営者の借入金
会社譲渡は事業譲渡と異なり会社をまるごと譲渡するため、資産だけでなく借入金などの負債も引き継ぐことになります。
中小企業の経営者は、事業資金を得るために個人保証や担保を入れていることが多いですが、会社譲渡で借入金を引継ぐ時は、前経営者の個人保証や担保を解除する手続きをとらなければなりません。
個人保証や担保の解除については、会社譲渡の手続きの早い段階から金融機関と交渉し、余裕を持って準備を進めていく必要があります。
会社譲渡の手続き・流れ

会社譲渡は、M&A手法のなかでは比較的手続きがシンプルではありますが、初めて会社譲渡をする経営者にとっては複雑に感じると思います。
あらかじめその手続きと流れを把握しておき、スムーズに進められるように準備することが大切です。この章では、会社譲渡の手続き・流れとは何か、どのように行われるのかを解説します。
会社内での手続き・流れ
会社譲渡における、会社内での手続き・流れはおおむね以下のようになります。
【会社内での手続き・流れとは】
- 会社譲渡承認請求
- 取締役会・株主総会の開催
- 会社譲渡契約
- 株主名簿の書き換え請求
- 株主名簿記載事項証明書の交付請求・交付
- 会社譲渡完了
1.会社譲渡承認請求
上場企業でない会社は、ほとんどの場合において譲渡制限株式となっているので、会社に株式の譲渡を許可する会社譲渡承認請求(株式譲渡承認請求)を行う必要があります。
譲渡制限株式とは自由に売買できない株式のことで、会社にとって不都合な人物や企業が株主にならないために設けられています。
会社譲渡承認請求をするには、株主が会社に対して会社譲渡承認請求書を送付して会社に承認を求めます。
2.取締役会・株主総会の開催
会社譲渡承認請求書を受け取った会社は、取締役会設置会社であれば取締役会、取締役会非設置会社であれば株主総会を開催し、株式の譲渡を承認するかどうか決めます。
取締役会設置会社とは、取締役会の設置が定款で定められている会社のことです。非公開会社では、取締役会の設置は義務ではありません。
取締役会または株主総会での決議と株主に対する通知は、請求から2週間以内に行わなければなりません。もし2週間以内に通知しなかった場合はみなし承認が適用され、自動的に譲渡が承認されます。
3.会社譲渡契約
取締役会か株主総会で株式の譲渡が承認されたら、次は、株式を譲渡する人と譲受する人(または企業)の間で、会社譲渡契約(または株式譲渡契約)を締結します。
会社譲渡契約とは、株式を売買する当事者同士が譲渡について合意する契約で、会社譲渡契約書を作成することで契約を締結します。
4.株主名簿の書き換え請求
会社譲渡契約を締結したら、次は、株式を譲渡した人と譲り受けた人が、会社に対して株主名簿の書き換え請求を行います。
今はほとんどの会社で株券が発行されていないので、株主名簿の書き換えは非常に重要です。もし書き換え手続きが行われないと、株式を譲り受けた人は自分が株主であることを主張できなくなります。
5.株主名簿記載事項証明書の交付請求・交付
株主名簿の書換請求が来たら、会社はすみやかに書き換え手続きを行う必要があります。
会社による株主名簿の書き換えが終わったら、株式を譲り受けた人は会社に対して、株主名簿記載事項証明書交付請求を行います。株主名簿記載事項証明書とは、株主の氏名や保有株式数などを記した書面です。
6.会社譲渡完了
株主名簿の書き換えと株主名簿記載事項証明書の交付が終わったら、会社譲渡の手続きは完了となります。
M&Aとしての会社譲渡手続き・流れ
M&Aで第三者に会社譲渡する場合は、前節で解説した会社内での手続きを行う前に、会社譲渡する相手をみつけて契約する必要があります。
M&Aとは、会社譲渡や事業譲渡など、会社を売買する手続きの総称です。会社譲渡(株式譲渡)はM&A手法の一つとして利用されます。M&Aとしての会社譲渡の手続き・流れは、おおむね以下のように進んでいきます。
【M&Aとしての会社譲渡手続き・流れとは?】
- M&A仲介会社などに相談・契約
- 秘密保持契約の締結
- 譲渡先企業の選定・交渉
- 意向表明書の提示
- トップ同士の面談
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終譲渡契約の締結
- 会社譲渡の公表
- 会社譲渡の完了
1.M&A仲介会社などに相談・契約
M&Aで会社譲渡するためには、M&A仲介会社など専門家のサポートを得ることが不可欠です。ほかにも、金融機関や公的機関の相談窓口で相談することも可能です。
M&A仲介会社とは、会社譲渡や事業譲渡といったM&Aを専門に取り扱う仲介会社で、M&Aによる会社譲渡の相談先としては最もオーソドックスな選択肢となります。
2.秘密保持契約の締結
M&Aによる会社譲渡では第三者に自社の情報を教えることになるので、情報漏洩を防止するために秘密保持契約を締結します。
3.譲渡先企業の選定・交渉
秘密保持契約を締結したら、次は会社譲渡する譲渡先企業の選定と交渉を行います。
譲渡先企業の選定はM&A仲介会社が主導して行い、譲渡会社の経営者はM&A仲介会社から提示された譲渡先候補の中から、気に入った譲渡先を選ぶことになります。
譲渡先候補が決まったらその会社の経営者にコンタクトをとり、経営者同士での交渉を打診します。
4.意向表明書の提示
本格的なトップ面談に入る前に、譲渡先候補の経営者が譲渡会社の経営者に対し、意向表明書という書面を提示することがあります。
意向表明書とは、本格的な交渉をする意思があることを譲渡会社の経営者に示す書面で、提示することで交渉をスムーズに進めることができます。
【関連】LOI(意向表明書)とは?内容や条項、MOUとの違いを徹底解説!
5.トップ同士の面談
譲渡先候補に打診して交渉の了承がとれたら、お互いの経営者同士でトップ面談を行います。
6.基本合意書の締結
トップ同士の面談により、会社譲渡について基本的な合意が得られたら、基本合意書を締結して合意内容を書面にします。
基本合意書とは、トップ面談の時点で合意した契約内容を記した書面で、まだ最終的な契約ではありません。
7.デューデリジェンスの実施
基本合意書が締結されたら、次はデューデリジェンスを実施して、譲渡会社の内容を詳細に調べます。
デューデリジェンスとは、会社の内容を調査することであり、法務・財務・事業内容など各分野について詳細を調べていきます。
デューデリジェンスは、全ての分野で行うことはコストや時間の面で難しいので、特に重要と思われる分野に絞って実施するのが一般的です。
【関連】デューデリジェンスの正しい意味は?目的や方法をわかりやすく解説
8.最終譲渡契約の締結
デューデリジェンスを実施して、譲渡会社にリスクや問題がないか調べたら、次は最終譲渡契約を締結します。
最終譲渡契約とは、会社譲渡の契約内容を確定させる書面のことで、この契約をもって会社譲渡契約の法的効力が発生します。
最終譲渡契約の内容は基本合意書の内容をもとに、デューデリジェンスの結果を加味して場合によっては変更を加えます。
基本合意書の内容は後で変更することが可能でしたが、最終譲渡契約締結後に契約内容を変更することはできません。
9.会社譲渡の公表
最終譲渡契約が締結されたら、会社譲渡を行った事実を従業員や取引先などに公表し、譲渡後の新しい経営体制に向けて準備を行います。
規模の大きい会社の場合は、ネット上で会社譲渡を行ったことを書面にして公示したり、大企業の場合は新聞やテレビなどのマスコミを利用して、会社譲渡を広く知らしめることもあります。
10.会社譲渡の完了
最終譲渡契約が締結されたら、会社譲渡の手続きは一応完了となります。しかし、実際はやるべきことは終わりではなく、実際に株式の移転などを行うクロージングや、会社譲渡後の新しい経営体制を軌道に乗せる統合プロセスなどの作業があります。
会社譲渡の契約に関する手続きはここで完了となりますが、会社譲渡を成功させるためには、この後のクロージングや統合プロセスをいかに進めていくかが重要です。
会社譲渡の際に必要な書類

会社譲渡の際に、株主と譲渡会社が作成する主な書類は以下のとおりです。
【会社譲渡の際に株主が用意する主な書類】
- 株式譲渡承認請求書
- 株式譲渡契約書
- 株式名義書換請求書
- 株主名簿記載事項証明書交付請求書
【会社譲渡の際に会社側が用意する主な書類】
- 株主総会招集に関する取締役の決定書
- 臨時株主総会招集通知(取締役会非設置会社の場合)
- 臨時株主総会議事録(取締役会非設置会社の場合)
- 株式譲渡承認通知
- 株主名簿
- 株主名簿記載事項証明書
会社譲渡のメリット・デメリット

会社譲渡は、経営の様々な場面で活用できるメリットのある手法ではありますが、一方でデメリットも存在します。
会社譲渡を行うときは、そのメリットとデメリットを把握して、会社譲渡を選択すべきかどうか検討することが大切です。この章では、会社譲渡の主なメリットとデメリットを解説します。
会社譲渡のメリット
会社譲渡の主なメリットには、以下の6つがあります。
【会社譲渡のメリットとは?】
- 後継者問題の解決
- 創業者利益の獲得
- 従業員の雇用先の確保
- 会社の発展や規模拡大
- 廃業・倒産の回避
- 個人保証などからの解消
1.後継者問題の解決
団塊世代の経営者の高齢化による、中小企業の後継者問題は年々深刻化しています。多くの中小企業が親族や従業員に後継者がおらず、会社を廃業せざるを得ない状況に陥っています。
しかし、会社譲渡によるM&Aで第三者に会社を譲渡すれば、長年かけて築き上げてきた会社を存続させることができます。
2.創業者利益の獲得
会社の経営者は一般的に自社の株式を保有しているので、会社譲渡で株式を売却すれば創業者利益を得ることができます。
創業者利益というと株式上場(IPO)のイメージが強いですが、上場するほどの規模ではない中小企業でも、創業者利益を得ることは可能です。
3.従業員の雇用先の確保
もし、会社譲渡せず後継者が見つからないまま会社を廃業してしまうと、そこで働いていた従業員は職を失うことになります。
しかし、会社譲渡によるM&Aで会社を存続させれば、従業員の雇用先を確保することができます。
4.会社の発展や規模拡大
会社譲渡というと、身売りのようなマイナスイメージを持たれることもありますが、実際には会社の発展や規模拡大という積極的な理由での会社譲渡というのもあります。
例えば、経営基盤のしっかりした企業へ会社譲渡して傘下に入ることで、安定した経営基盤を得ることができます。
また、高いシナジー効果が期待できる企業へ会社譲渡することで、自社単独では成し得なかった事業発展を目指すこともできます。
5.廃業・倒産の回避
経営が思わしくなく廃業や倒産の危機にある会社が、会社譲渡によって危機を回避する事例もあります。
経営が順調な会社に比べると、倒産しそうな会社はもちろん買い手を見つけるのは大変ですが、買い手側にとって何らかの魅力がある会社であれば、債務超過でも買い手が見つかる可能性もあります。
6.個人保証などからの解消
中小企業では融資を得る時に、経営者自身が個人保証や担保を提供していることがほとんどでしょう。個人保証とは、金融機関から借入れをする時に、経営者自身が保証人となることです。
個人保証や担保があると会社の倒産が経営者個人の破産にもつながるので、経営者は大きなプレッシャーを受けることになります。
個人保証や担保などのプレッシャーから解放されるために、M&Aで会社譲渡してしまうという選択肢もあります。
会社譲渡のデメリット
会社譲渡の主なデメリットには、以下の6つがあります。
【会社譲渡のデメリットとは?】
- 手続き・準備が面倒
- 従業員・役員などの待遇が変わる可能性
- 希望通りの売却先が見つかるとは限らない
- 簿外債務などの発覚
- 旧経営者としての拘束
- 会社名が変更される可能性
1.手続き・準備が面倒
会社譲渡は、M&A手法のなかでは手続きが簡単な部類ですが、それでも初めて会社譲渡をする経営者にとってはとっつきにくいものであり、本業の経営にも少なからず支障が出てしまいます。
会社譲渡の手続き期間中は、100%本業にエネルギーを割くことはできなくなることを理解しておく必要があります。
2.従業員・役員などの待遇が変わる可能性
会社譲渡は事業譲渡と異なり従業員の転籍の必要がないので、譲渡後の労働条件は比較的変化しにくいといえるでしょう。
しかし、会社譲渡すると経営陣が変わるので、労働条件が全く変わらないというケースは少ないと考えられます。
もし会社譲渡後に待遇が悪くなると、従業員が退職してしまう可能性もあるので注意が必要です。
3.希望通りの売却先が見つかるとは限らない
M&Aによる会社譲渡は、幅広い選択肢から売却先を選べるメリットがありますが、必ずしも希望通りの売却先がみつかるとは限りません。
納得いかない条件でやむを得ず会社譲渡してしまったり、時間と労力を浪費して結局売却先がみつからないといったリスクがあることを理解しておく必要があります。
4.簿外債務などの発覚
事業を個別に売買する事業譲渡と違って、会社譲渡は会社をまるごと譲渡する取引なので、会社譲渡が成立した後で想定外の簿外債務が発覚するリスクがあります。
簿外債務の引継ぎは、事前にデューデリジェンスを徹底することである程度防げますが、100%防止できるとは限りません。
特に、未払い残業代などは後で訴訟になる恐れもあるので、デューデリジェンスでしっかり調べておくべきです。
5.旧経営者としての拘束
会社譲渡して退任した旧経営者は、すぐさま引退して悠々自適の生活を送れるとは限りません。
会社譲渡後の会社の経営がスムーズに進むためには、新しい経営体制に会社をすり合わせる統合プロセスが必要になります。
統合プロセスには旧経営陣の力が必要なことが多く、会社譲渡後も旧経営者として拘束されるケースが多いです。
6.会社名が変更される可能性
会社譲渡に伴い会社名が変更されるケースはあまり多くありませんが、大手の傘下に入った場合に、グループ名を冠して会社名を変更するような事例もあります。
会社名の変更は、場合によっては顧客や取引先などに混乱を起こす恐れがあり、会社譲渡では注意しておきたい点の一つです。
【関連】会社売却・企業売却のメリット・デメリット【体験談あり】
会社譲渡の際の企業価値算定方法

会社をいくらで譲渡するかは、最終的には買い手と売り手の交渉で決められますが、非上場企業では市場株価が存在しないので、まずおおまかな企業価値を理論的に算定しておく必要があります。
企業価値の算定方法としてよく知られているのは、時価純資産法・類似会社法・DCF法などです。それぞれ着眼点の違う算定方法なので、いくつかの算定方法を見比べながら、妥当な価格帯を見積もっていくことになります。この章では、これら3つの企業価値算定方法について解説します。
【会社譲渡の際の企業価値算定方法とは?】
- 時価純資産法
- 類似会社法
- DCF法
1.時価純資産法
時価純資産法とは、会社の資産を時価で評価し、そこから負債を引いた額をもとに企業価値を算定する手法です。
主に、中小企業や経営の安定した成熟企業で使われる手法で、この算定方法をコストアプローチと呼びます。
2.類似会社法
類似会社法とは、自社と事業内容や規模が似ている上場企業を探して、その会社の株価を参考に企業価値を算定する手法です。
もし似ている上場企業が見つからない場合は、一部だけでも似ている企業を複数ピックアップして、総合的に判断していくこともあります。
3.DCF法
DCF法とは、企業が将来的に生み出すと思われる収益やキャッシュフローをもとに、企業価値を算定する手法です。この算定方法は、インカムアプローチと呼ばれます。
将来的な価値に着目するので、これから成長していく若い企業を算定するのに適しています。
DCF法は最もよく利用される企業価値算定手法ですが、将来的なキャッシュフローをどう見積もるか、さらにそれを現在価値としていくら割引くかなど、専門家でなければ正しい算定が難しい手法です。
会社譲渡に必要な税務

会社譲渡では株式を売買するので、株式を売却した譲渡企業の株主には税金がかかります。
株式の税金は給与などの所得税とは違い、さらに株主が個人か法人かでも税務が変わってきます。会社譲渡においては、税務をきちんと理解しておくことが重要です。
株主が個人の場合は、売却により得た金額から取得価額と必要経費を引いた額に対して、申告分離課税で所得税と住民税が合計20%、および復興特別所得税がかかります。
申告分離課税とは、他の所得と合算せずに税額を計算することです。申告とは確定申告で納税することで、源泉徴収される場合は源泉分離課税といいます。
法人の場合、売却により得た金額から取得価額と必要経費を差し引いて、その額に対して法人税が課せられます。
法人の場合は総合課税になるのが個人との違いであり、他の所得と合算して、その合計額に対して約40%ほどの法人税が課せられます。
会社譲渡にかかる費用

会社譲渡にかかる費用は、株式を購入するための資金、会社譲渡の手続きのための実費、そしてM&A仲介会社などへの手数料などです。
M&A仲介会社の手数料は会社ごとに個別に設定されているので、相談する際は料金体系を理解しておくことが重要になります。
よくある料金体系は、着手金・中間金・成功報酬というシステムです。着手金とは本格的な仲介業務に入る際に支払う料金で、中間金とは基本合意の時点で成功報酬の一部を支払う料金です。両者とも成約に至らなくても返金はされません。
成功報酬とは、最終契約締結時にレーマン方式で支払う料金です。レーマン方式とは取引した金額に応じて料率を掛けて手数料を計算するシステムで、取引金額が大きいほど料率が下がるように設定されます。
会社譲渡を成功させるには?

会社譲渡を成功させるには、以下のようなポイントを押さえておきましょう。
【会社譲渡を成功させるには】
- 自社の強みをアピールする
- 会社譲渡の準備を入念に行う
- 簿外債務などがないように確認する
- 情報の漏洩に注意する
- M&A・会社売却の専門家に相談する
1.自社の強みをアピールする
会社譲渡を成功させるには、買い手に自社の魅力を理解してもらうことが大切です。
自社の強みを積極的にアピールして、シナジー効果を期待できる買い手に会社譲渡すれば、譲渡後の経営も順調なものになるでしょう。
2.会社譲渡の準備を入念に行う
会社譲渡は、何の準備もなくいきなり始めても、なかなかうまく手続きが進みません。
自社の税務状況や強みと弱みの整理、自社の磨き上げや会社譲渡の計画書の作成など、入念に準備を行うようにしましょう。
3.簿外債務などがないように確認する
簿外債務はどの会社でもある程度存在するものですが、買い手にとってはリスクの一つでもあります。
会社譲渡では、買い手側がデューデリジェンスを実施して簿外債務をチェックしますが、事前に売り手側が自ら簿外債務をチェックし、修正できる部分は修正しておくと買い手からも信頼を得ることができます。
4.情報の漏洩に注意する
会社譲渡は従業員や取引先にとって大きな環境の変化となるので、事前に情報が洩れると不安に感じて退職してしまったり、反発を招く恐れもあります。
会社譲渡の手続き中は、一部の役員以外に会社譲渡の事実を話さないなどして、情報が漏洩しないように注意する必要があります。
5.M&A・会社売却の専門家に相談する
会社譲渡は経営者が自分だけで行うことを禁止するものではありませんが、財務・税務や業界動向などの幅広い知識、そして買い手候補のネットワークなどが必要になるため、普通はM&A仲介会社などの専門家に相談することになります。
M&A仲介会社には、中小企業を専門としているところや特定の業種に特化しているところなど、特定の分野に強みを持っている会社がたくさんあります。
M&A仲介会社を選ぶ時は、自社の規模や業種に強いところを選ぶことがポイントです。
会社譲渡の際におすすめの相談先

会社譲渡をご検討中の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所には会社譲渡の経験豊富な会計士・弁護士・アドバイザーが在籍しており、気軽な相談から売却先の選定と交渉、そしてクロージングまでトータルにサポートいたします。
料金は成約時に成功報酬を支払うだけの完全成功報酬制を採用しており、着手金や中間金は無料となっています。成約するまでは料金が一切かからないので、安心して納得いくまで相談することができます。
まとめ

会社譲渡はM&Aの手法の中でもよく利用されるものの一つで、近年は中小企業の事業承継手段としても有力視されています。
大企業だけでなく、全ての中小企業経営者にとって、会社譲渡とは何か知っておくことが今後ますます重要になるでしょう。
【会社譲渡の理由とは?】
- 新しい事業を始めたい
- 早期リタイアを検討
- 将来的が無いと感じた
【会社譲渡による影響とは】
- 経営者の処遇・待遇
- 役員の処遇・待遇
- 従業員の処遇・待遇
- 取引先への対応
- 経営者の借入金
【会社内での手続き・流れとは】
- 会社譲渡承認請求
- 取締役会・株主総会の開催
- 会社譲渡契約
- 株主名簿の書き換え請求
- 株主名簿記載事項証明書の交付請求・交付
- 会社譲渡完了
【M&Aとしての会社譲渡手続き・流れとは】
- M&A仲介会社などに相談・契約
- 秘密保持契約の締結
- 譲渡先企業の選定・交渉
- 意向表明書の提示
- トップ同士の面談
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終譲渡契約の締結
- 会社譲渡の公表
- 会社譲渡の完了
【会社譲渡の際に株主が用意する主な書類】
- 株式譲渡承認請求書
- 株式譲渡契約書
- 株式名義書換請求書
- 株主名簿記載事項証明書交付請求書
【会社譲渡の際に会社側が用意する主な書類】
- 株主総会招集に関する取締役の決定書
- 臨時株主総会招集通知(取締役会非設置会社の場合)
- 臨時株主総会議事録(取締役会非設置会社の場合)
- 株式譲渡承認通知
- 株主名簿
- 株主名簿記載事項証明書
【会社譲渡のメリットとは】
- 後継者問題の解決
- 創業者利益の獲得
- 従業員の雇用先の確保
- 会社の発展や規模拡大
- 廃業・倒産の回避
- 個人保証などからの解消
【会社譲渡のデメリットとは】
- 手続き・準備が面倒
- 従業員・役員などの待遇が変わる可能性
- 希望通りの売却先が見つかるとは限らない
- 簿外債務などの発覚
- 旧経営者としての拘束
- 会社名が変更される可能性
【会社譲渡の際の企業価値算定方法とは】
- 時価純資産法
- 類似会社法
- DCF法
【会社譲渡を成功させるには】
- 自社の強みをアピールする
- 会社譲渡の準備を入念に行う
- 簿外債務などがないように確認する
- 情報の漏洩に注意する
- M&A・会社売却の専門家に相談する
会社譲渡をお考えの方は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。
会社譲渡の経験豊富な会計士・弁護士・アドバイザーにより、会社譲渡のクロージングまで丁寧にフルサポートいたします。
無料相談を随時受け付けていますので、会社譲渡を検討中の方は電話かメールで気軽にお問い合わせください。