
本記事では、M&A・会社売却・事業譲渡を行う理由にはどのようなものがあるのかについて解説します。
M&A・会社売却・事業譲渡のよい理由と悪い理由、会社売却を成功させるために気をつけておきたいポイントなども解説しています。
目次
M&A・会社売却・事業譲渡とは

本記事では、M&A・会社売却・事業譲渡を行う理由について解説していきますが、まずこの章では、M&Aや会社売却・事業譲渡といった、基本的な用語の意味を説明します。
M&Aとは
M&Aとは、会社売却・事業譲渡を始め、合併や会社分割など会社を売買する取引のことです。英語で合併を「Mergers」、買収を「Acquisitions」というので、頭文字をとってM&Aと呼ばれています。
M&Aは会社だけでなく、個人事業の売買のことも意味します。大企業による買収も小規模な飲食店譲渡のどちらもM&Aの一種です。また、医療法人など株式を発行しない法人の売買もM&Aに含まれます。
買収といっても、全株式を取得する完全子会社化だけでなく、過半数の株式を取得して子会社化することや、株式の一部だけを取得して資本業務提携を結ぶことも、広い意味でM&Aに含めるのが一般的です。
近年は、中小企業の後継者不足を解決する手段としてM&Aが注目されており、今後さらに活発化していくことが予想されています。
会社売却・事業譲渡とは
会社売却とは、その名の通り会社を売却することを指しますが、この用語の使い方にはややあいまいな部分もあります。
一般的には、株式譲渡や合併など会社を売却するM&Aスキームの総称として使われることが多いですが、株式譲渡のみを意味する用語として使われることもあります。
また、事業譲渡は厳密にいうと会社を売却しているわけではありませんが、これも広い意味で会社売却に含めることもあります。
事業譲渡とは会社自体をまるごと売却するのではなく、会社の中の事業の一部(全部でも可)を売却するM&Aスキームのことです。株式譲渡と違って、株主は変更されず会社はそのまま存続します。
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M&A・会社売却・事業譲渡の理由10パターン

M&A・会社売却・事業譲渡をする理由は、会社によってさまざさです。主な理由だけでも、以下の10例ほどが考えられます。
理由は1つだけにはっきり決まっていることもありますし、2つ以上の理由が複合していることもあります。
会社売却の理由として、以下のようなものが考えられるということは、逆にいえばこれらの理由に自社が当てはまる場合は、M&A・会社売却・事業譲渡が有力な選択肢となるという意味でもあります。
会社売却で解決できると思っていなかったために、ずるずると問題を悪化させるといった事態を防ぐためにも、M&A・会社売却・事業譲渡の理由を知っておくことは有益です。
【M&A・会社売却・事業譲渡の理由10パターン】
- 後継者探し
- 将来的な事業への不安
- 注力事業へ集中するため
- 単独では難しい事業規模の拡大
- 資金調達・資本提携
- 大手傘下による安定経営
- 経営難による事業の継続が困難
- 健康な内にセミリタイア
- 新規事業への参入
- 創業者利益の獲得
1.後継者探し
中小企業や小規模な個人事業のM&A・会社売却・事業譲渡の理由として多いのは、後継者不在の解決です。
近年は、団塊世代の中小企業経営者が引退年齢に差し掛かっていますが、家族や従業員など身近な人間に後継者がおらず、経営は黒字にもかかわらず廃業してしまう事例が増えています。
かつては家業を経営者の子供が継ぐのが一般的でしたが、近年はその価値観も希薄化しており、後継者が容易に見つからないのが現状です。
M&A・会社売却・事業譲渡は、親族でも従業員でもない第三者から幅広く後継者を探すことができるのが特徴です。
しかし、今まで面識のなかった相手に会社を譲ることになるので、売却先の選定は慎重に行う必要があります。
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2.将来的な事業への不安
よほど安定して成長している企業でない限り、経営者は多かれ少なかれ将来的な事業への不安は持っているものです。
しかし、普通はそういった不安を持ちながらも、それを解決すべく経営に精を出していくことになるでしょう。
ただ、業界自体が衰退して業績の回復が見込めない場合や、大手の業界再編に対抗する術がない場合などは、いくら経営者が頑張ってもどうしようもないこともあります。
このように、事業の将来性に対する不安が非常に大きい時は、経営基盤の安定した企業へ売却して不安から解放されるというのも、M&A・会社売却・事業譲渡のよくある理由の一つです。
3.注力事業へ集中するため
多くの事業へ手を広げるというのは会社の規模を拡大する有力な手段ですが、事業の数を増やすと個々の事業にかけられる経営資源が限られてしまい、どっちつかずになってしまう危険性もあります。
ある事業だけが赤字で会社全体の業績の足を引っ張ってしまうのはよくあるケースで、こうなるとコア事業や黒字事業へも悪影響が及びかねません。
そういった場合に、M&A・会社売却・事業譲渡で赤字事業やノンコア事業を売却してコア事業に注力するというのも、よく見られる理由の一つです。
4.単独では難しい事業規模の拡大
単独では難しい事業規模の拡大を目指すというのも、M&A・会社売却・事業譲渡が行われる理由の一つです。
中堅・中小規模の会社はある程度事業が拡大すると、それ以上の発展が単独では難しくなることがあります。
M&A・会社売却・事業譲渡で同業種の会社の傘下に入ったり、高いシナジー効果が得られる会社を買収したりすることで、単独では成し得なかった事業拡大を実現することができます。
5.資金調達・資本提携
子会社を会社売却したり事業の一部を事業譲渡することで、資金を調達できるのもM&Aが行われる理由の一つです。
また、大手企業に株式の一部を売却して資本提携を結ぶことで、資金調達するというのもよくある理由です。
資金は融資で調達すると返済しなければなりませんが、M&A・会社売却・事業譲渡を利用すれば、事業をスリム化しつつ、返済しなくてよい資金を得ることができます。
6.大手傘下による安定経営
中小企業はすでに融資を目一杯借りてしまっていることも多く、常に経営が安定しないということも多いでしょう。
そういった経営の不安定さを解消するために、大手の傘下に入り安定した経営基盤を得るというのも、M&A・会社売却・事業譲渡を行う理由の一つです。
大手の傘下に入ってしまうと大手の言いなりになってしまい、自分が思っているような経営ができなくなるのではと考えるかもしれませんが、自社の経営方針を理解してくれる会社売却先を選ぶことで、自由な経営を継続することも可能です。
7.経営難による事業の継続が困難
経営難で事業の継続が困難となった会社を経営の安定した企業に売却するというのも、M&A・会社売却・事業譲渡が行われる理由の一つです。
ただし、経営難の会社は黒字の会社より買い手がみつかりにくいので、納得いく会社売却の相手がみつかるかという問題があります。
しかし、経営難だからといって、全く買い手が見つからないというわけではありません。独自の技術や販売網といった強みを持っていたり、買い手が進出しようとしている地域に根差した会社などは、債務超過でも買い手がつくケースがあります。
8.健康な内にセミリタイア
まだ若くて気力があるうちに、会社売却で生活資金を得てセミリタイアしてしまうというのも、M&A・会社売却・事業譲渡が行われる理由の一つです。
経営者が保有している株式を株式譲渡(会社売却)で売却すると、経営者個人に売却益が入ってきます。
その資金をリタイア後の生活資金に充てることで、40代・50代でセミリタイアすることも可能になります。
ただし、売却益が生活できるぎりぎりの金額だと、精神的にリタイア生活を安心して過ごせなくなるので、十分余裕をもった金額が得られるくらい経営規模が大きい会社でなければ、なかなか実現するのが難しい面もあります。
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9.新規事業への参入
新規事業へ参入するために、M&A・会社売却・事業譲渡を利用するのもよくある理由の一つです。
例えば会社売却や事業譲渡で不必要な子会社や事業を売却し、その売却益を新規事業の資金に充てることができます。
また、参入したい事業を営んでいる会社をM&Aで買収することで、新規事業に参入するという方法もあります。
買収による新規参入は設備投資などのコストを抑えることができ、買収した会社が今まで培ってきたノウハウや販売網などを引き継ぐことができるのがメリットです。
10.創業者利益の獲得
創業者利益を得ることを目的に、M&A・会社売却・事業譲渡を利用するというのもよくある理由の一つです。
創業者利益というと、かつては株式の上場(IPO)によるものが一般的でしたが、上場はほとんどの中小企業にとってハードルが高く、よほど野心的な企業かベンチャー企業でないと実現が難しい面があります。
そこで、新しい創業者利益の獲得手段として普及しつつあるのが、会社売却などのM&Aです。
株式譲渡によって会社売却すると、創業時に株式を購入した金額との差額が経営者個人の利益となります。
この方法なら、上場できるほどの力がない会社や個人事業でも、創業者利益を得ることが可能です。
M&A・会社売却・事業譲渡には良い理由と悪い理由がある

M&A・会社売却・事業譲渡を行う理由はさまざまなので、この理由であれば会社売却してもよいが、この理由ならいけないなどということはありません。
基本的にはどのような理由であれ、誰でもM&A・会社売却・事業譲渡を行うことができます。
しかし、M&A・会社売却・事業譲渡では、交渉相手に対して必ず理由を明かすことになるので、相手によい印象を持たれる理由かどうか考えておくことは重要です。
簿外債務や負債を相手に押しつけたいといったような理由は論外ですが、相手側の会社の発展を望むのではない、自分勝手な理由は一般的に敬遠されるでしょう。
一方で、経営のモチベーションがなくなってしまったとか、売却益を得てアーリーリタイアしたいといった理由は一見ネガティブにみえますが、買い手からみて必ずしもマイナスイメージは抱かない傾向があります。
買い手からすれば、事業内容が魅力的かどうかが重要なので、むしろよい会社を自ら手放してくれてありがたいと感じることも多いようです。
M&A・会社売却・事業譲渡理由は非常に重要

M&A・会社売却・事業譲渡理由が何かということは非常に重要です。もし、会社売却する理由が明確でないと、交渉において自社の魅力を効果的にアピールすることができなくなり、買い手は話を聞いていて疑問に感じてしまうでしょう。
場合によっては理由が明確でない点をついて、売却価格を不当に安く提示される可能性もあります。
また、M&A・会社売却・事業譲渡の理由が買い手にネガティブなイメージを与える場合、交渉が難航したり買い手がつかない可能性が高くなってしまいます。
嘘の理由を相手に伝えるのはもちろんいけませんが、自分勝手な理由と思われないように伝え方や表現の仕方を考えるというのも、交渉をスムーズに進めるためには大事な要素だといえるでしょう。
M&A・会社売却・事業譲渡の際に気をつけること

M&A・会社売却・事業譲渡では、どのような理由で行うのであれ、共通して気をつけておきたいポイントがあります。
本格的な会社売却の手続きに入る前にこういったポイントを押さえて頭に入れておけば、手続きや交渉をよりスムーズに進めることができるでしょう。
【M&A・会社売却・事業譲渡の際に気をつけること】
- 従業員の雇用確保
- 取引先・顧客との関係
- 債務・債権などの扱い
- 経営者として一定期間拘束される可能性
- 希望条件での交渉
- 情報漏えい
1.従業員の雇用確保
会社売却というと、一般的には身売りというネガティブなイメージがまだまだ強いので、たとえ正当な理由があるにしろ、自分が働いている会社が売却されるとなると、従業員は不安になることもあります。
M&A・会社売却・事業譲渡の際は、売却後の従業員の雇用をきちんと確保することが大切です。
事業再生による会社売却などにより、どうしても一部の従業員を解雇しなければならない場合は、退職金を多く支給したり、解雇後の転職をサポートするなどして、従業員が納得できるようにケアしなければなりません。
また、雇用を確保するだけでなく、雇用条件を悪化させないというのも重要なポイントです。会社売却後に雇用条件が悪化するとなると、不満に思った従業員が退職してしまい、買い手にとって買収のメリットがなくなってしまうこともあります。
2.取引先・顧客との関係
M&A・会社売却・事業譲渡の際は、懇意にしてくれている取引先や顧客に不安を与えないように配慮することが大切です。
取引先や常連の顧客に対しては会社売却の理由をきちんと説明し、今後の取引やサービス提供がどうなるか相手に理解してもらうようにしましょう。
特に、中小企業は経営者個人の手腕や人柄に頼る部分が大きいので、会社売却による経営者の交代は取引先・顧客にとって大きな変化となります。
経営者が交代しても取引を続けたいと思ってもらえるように、会社売却の理由を説明することが大切です。
3.債務・債権などの扱い
M&A・会社売却・事業譲渡の際は、債務や債券の扱いに気をつける必要があります。特に、債務の取り扱いは重要であり、場合によっては成約の可否を左右することもあります。
事業譲渡では、買い手が不要な債務を引き継ぐことはありませんが、株式譲渡(会社売却)の場合は債務も買い手が引継ぐので、偶発債務や簿外債務が買い手を圧迫しないよう注意しなければなりません。
M&A・会社売却・事業譲渡では買い手側がデューデリジェンスを行うので、簿外債務はある程度発見することができますが、全てのリスクを排除できるわけではありません。
売り手側も事前に財務状況を確認して簿外債務を整理しておくなどして、売却後にトラブルが起こらないようにケアしておくことが大切です。
4.経営者として一定期間拘束される可能性
引退を理由としてM&A・会社売却・事業譲渡を行う時は、旧経営者は手続きが終わったらすぐ引退したいと考えることでしょう。
しかし、M&A・会社売却・事業譲渡では、売却手続きが終わってもすぐには引退できないことがあるのが注意点です。
M&A・会社売却・事業譲渡は、契約の手続きや株式の売却手続きなどが終わると一応は終了となりますが、その後は売却した会社が新体制のもとでスムーズに経営できるように調整する、統合プロセス(PMI)という作業があります。
いくらよい条件で会社売却の契約を締結できても、統合プロセスに失敗して業務がうまくいかなければ意味がありません。
統合プロセスには、会社の内情をよく知る旧経営陣のサポートが不可欠です。そのため、旧経営者は会社を売却したあとも、一定期間会社に残って統合プロセスを進めるために拘束されることがあります。
5.希望条件での交渉
M&A・会社売却・事業譲渡は、買い手と売り手双方が納得できる妥協点を模索して、契約内容を詰めていきます。
できるだけ希望する条件で成約できるように、上手に交渉していくことが重要ですが、こちらの希望ばかりを押し通しても成約することはできません。
そこで、これだけは絶対に譲れないという条件をいくつか洗い出して、それ以外の点については相手の条件を柔軟に取り入れるというスタンスをとることになります。
譲れない条件が何かを洗い出すには、M&A・会社売却・事業譲渡する理由をはっきりさせることが重要です。
例えば、売却益を得ることが理由なら売却価格が重要になり、従業員の雇用を確保するのが理由なら、売却後に整理解雇などを行わないという条件が重要になります。
6.情報漏えい
M&A・会社売却・事業譲渡を検討しているという情報が従業員や取引先に漏れると、不安に感じて退職してしまったり、解雇されるのではと感じて反発が起こったりする可能性もあります。
また、M&Aによる会社売却では、売買相手や仲介会社のスタッフに自社の情報を明かすことになるので、それが漏洩すると自社の経営が不利になる恐れもあります。
売買相手に対しては、まず秘密保持契約を締結したうえで、必要十分な情報に絞って段階的に公開していくことが大切です。
従業員や取引先への対策としては、最小限の役員以外にはM&A・会社売却・事業譲渡の情報を明かさないことや、会社内でうかつに会社売却について話さないことなどが重要です。
M&A・会社売却・事業譲渡の際に成功させるには

M&A・会社売却・事業譲渡を成功させるには、売却益を得たいのか、それとも高齢だから引退したいのかなど、会社売却する理由に合わせて最適なプランを提案してくれる仲介会社を選ぶことが大切です。
M&A総合研究所では、M&A・会社売却・事業譲渡の経験豊富な会計士・弁護士・アドバイザーがサポートにつき、どのような理由の会社売却でも親身にサポートします。
会社売却する理由によっては、必ずしも会社売却するかどうか現時点では分からないということもあるでしょう。
M&A総合研究所は着手金・中間金無料の完全成功報酬制を採用しており、成約に至らなければ料金はかからないので、どのような理由による会社売却でも安心して相談することができます。
無料相談は随時受け付けていますので、会社売却を検討している、こういった理由で会社売却してもいいのかなど、どのような相談でもお気軽にお問い合わせください。
まとめ

M&A・会社売却・事業譲渡には様々な理由があります。このような理由で会社売却してもいいという情報を知らなかったために、M&A・会社売却・事業譲渡で会社を成長または存続させるチャンスを逃すという事態は避けなければなりません。
M&A・会社売却・事業譲渡にはどのような理由があるのかについて、できるだけ多くのパターンを知っておくことが大切です。
【M&A・会社売却・事業譲渡の理由10パターン】
- 後継者探し
- 将来的な事業への不安
- 注力事業へ集中するため
- 単独では難しい事業規模の拡大
- 資金調達・資本提携
- 大手傘下による安定経営
- 経営難による事業の継続が困難
- 健康な内にセミリタイア
- 新規事業への参入
- 創業者利益の獲得
【M&A・会社売却・事業譲渡の際に気をつけること】
- 従業員の雇用確保
- 取引先・顧客との関係
- 債務・債権などの扱い
- 経営者として一定期間拘束される可能性
- 希望条件での交渉
- 情報漏えい
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