
「DIPファイナンスとはどんなものだろう」と、悩んでいませんか?
事業を再生させるために融資してもらっている銀行から勧められたけれど、どのような制度かわからない人も多いはず。
しかし、DIPファイナンスを活用しなければ、事業再生が失敗してしまうことが多いのです。
ここでは、DIPファイナンスの基礎知識や対象となる5つの要件、DIPファイナンスの相談先などについて紹介します。
DIPファイナンスを理解して、事業再生をスムーズに成功させましょう。
目次
1.DIPファイナンスとは?

DIPファイナンスとは、運転資金などを融資することです。
この融資は、会社更生法や民事再生法の申し立てを行った企業に対して行われています。
大きな特徴は、倒産手続きを行いながらも、旧経営陣に経営を任せて会社の再生を行うことです。
倒産手続きに入ると、取引先から現金の支払いを要求されることが多いので、申し立てを行った企業は資金繰りが悪化してしまいます。
このようなときに、DIPファイナンスでは短期融資を申し立て企業に対して行い、事業再生を支援するのです。
以上が、DIPファイナンスについてでした。
しかし、DIPファイナンスを知る上で、「DIP」そのものについて理解しておかなければなりません。
そこで次はDIPについて紹介します。
1−1.そもそもDIPとは?

DIPとは企業の再生を行うために、倒産させた経営陣が引き続き経営を行う制度のことを指しています。
企業を再生するにあたって、これまでの事情を知らない人に業務権限が移ることがあります。
しかし、その場合では経営状況を把握するのに時間がかかり、再建のタイミングを逃してしまうことが多いです。
そのため、会社主導の素早い事業再建を行うために、これまでの経緯を把握している倒産時の経営陣に、引き続き経営を任せます。
ただし、従来の経営陣がふさわしくない場合には、外部の人に再建を行ってもらう可能性があるので注意してください。
以上がDIP制度についてでした。
事業再生とはまずどのようなものなのかと疑問に感じた方は『事業再生を成功させる完全ガイド!ADRからM&Aまで徹底解説!』も参考にしてみてください。
DIPファイナンスの基礎知識が理解できたところで、実際にDIPファイナンスの使用事例を紹介します。
2.まずはDIPファイナンスの使用事例を確認しよう

まずはDIPファイナンスの使用事例を確認しましょう。
今回紹介するのは中堅アルミサッシメーカーの事例です。
業歴60年近くある中堅アルミサッシメーカーA社が4か月間で数千万円規模のDIPファイナンスを受けました。
業務の主体であるガラスとアルミを主材料としたビル外壁の製造・取付では業界内でも高い評価の技術力を持っている企業です。
しかし、バブル崩壊による市場規模の縮小と価格競争、海外製の安価な材料の流入によりA社の収益は悪化しました。
このとき、過剰な設備投資も行っていたため、多額の負債を抱えており、会社更生法の適用を申請し、会社更生手続きの開始決定と至ったのです。
今回のDIPでは、A社の資金繰りが厳しくなる更生計画認可までの資金支援が行われました。
金融機関は、A社の主要工場が地域の雇用を生み出し、納入業者も同地域の企業を活用していたため、地域経済の活性化に貢献できる案件として融資の決定を下したのです。
今回の融資のポイントは以下の3つです。
- 業界内でも高い技術力を持っている
- 地域の雇用を生み出している
- 地域経済への影響力が大きい
これらのポイントが、DIPでの融資が行われた理由となります。
DIPファイナンスを受けるには、融資の審査を通らなければなりません。
詳しいポイントは後ほど『DIPファイナンスの融資を受けるポイントは?』で紹介します。
以上が、DIPファイナンスの使用事例についてでした。
事例によってDIPファイナンスの型は異なります。
そこで、DIPファイナンスのタイプを確認していきましょう。
3.DIPファイナンスは大きく分けて3つある!

DIPファイナンスには、以下の3つの種類があります
- プレDIPファイナンス
- 認可前型(アーリーステージ)
- 認可後型(レイターステージ)
それぞれ異なるタイミングでの融資になるので、確認しておきましょう。
それでは3つのタイプを順番に紹介していきます。
タイプ1.プレDIPファイナンス

プレDIPファイナンスとは、法的整理におけるDIPファイナンスより前の資金借入を指しています。
つまり、この後紹介する認可前型(アーリーステージ)の融資決定が決まる前に行われる融資です。
この借入は、事業再生ADR手続期間中に行われます。
一定の要件を満たしていれば、その後の更生手続きや再生手続きでも優遇措置を受けることが可能です。
したがって、スムーズな事業再生がしやすくなります。
ここで、事業再生ADRについて確認しましょう。
事業再生ADR

事業再生ADRとは、裁判外紛争解決手段です。
裁判上の手続きによらず、民事上の紛争解決をしようとしている当事者のために公正な第三者が関与して解決を図ります。
事業再生ADRには、公的機関が調整役となる行政型ADRと、民家案の中立的第三者が手続きを主催する民間型ADRの2つがあるのです。
プレDIPファイナンスは、このあと説明する認可前型(アーリーステージ)が行われる前のつなぎ融資が必要な場合に行われています。
※事業再生ADRについては『事業再生ADRとは?債権回収を停止して会社を立て直そう!』で詳しくまとめていますのでこちらを参考にしてみてください。
以上が、プレDIPファイナンスについてでした。
この後の2つは法的整理が開始されてからの資金借入になります。
それぞれのタイプを詳しく見ていきましょう。
タイプ2.認可前型(アーリーステージ)

認可前型(アーリーステージ)とは、法的手続きを申し立ててからすぐに、再生企業に対して行われる短期的融資です。
民事再生法の再生手続認可が決定される前に、中小企業に対して政府系金融機関が融資を行います。
認可前型(アーリーステージ)は早急な融資が必要な場合に選択されるのです。
通常、融資に関しては認可されてから融資を受けられるようになるため、それまでは一切の支援がありません。
融資を受ける前に倒産することを防ぎたい場合に利用されることが多いです。
また、認可前型(アーリーステージ)の他に、認可が下りた後の融資もあります。
認可後型についても、確認しましょう。
タイプ3.認可後型(レイターステージ)

認可後型(レイターステージ)とは、再生認可が決定してから再生期間に合わせて、短期的もしくは長期的に行われる運転資金融資です。
民事再生法の規定による再生計画等の認可を受けた場合などにより、再建中の中小企業に対して政府金融機関が融資を行います。
認可後型(レイターステージ)は、プレDIPファイナンスや認可前型(アーリーステージ)と比べて長期的な融資を安定して受けられることがメリットです。
再生計画通りの融資が受けられるため、返済金額が明確にされており、今後の返済スケジュールが立てやすくなっています。
以上が、DIPファイナンスの3つのタイプでした。
これに加え、再生企業の買い手がDIPファイナンスを利用するM&A型も存在しています。
つまり、M&A型でのDIPファイナンスは、再生中の企業の買い手が融資を受けるものです。
このようなDIPファイナンスを利用するには、要件があるので確認しておきましょう。
4.DIPファイナンスの対象となる5つの要件

DIPファイナンスの対象となる要件は、以下の5つです。
- 経済合理性
- 地域経済への影響
- 高い再建可能性
- 償還確実性の確保
- 利害関係の意向確認
金融機関がDIPファイナンスの対象として検討するときの指針としています。
これらの対象に当てはまっていれば、DIPファイナンスを受けられる可能性が高まるのです。
それぞれの要件を順番に見ていきましょう。
要件1.経済合理性

倒産企業でも、事業部門の中に収益性に優れた部門があることはよくあります。
そのような、経済合理性のある黒字部門には企業価値が認められる可能性が高いです。
企業価値が高いかを確認するためには、上場中の類似会社や類似業種の株価から類推することができます。
このような企業価値が高い企業に融資を行います。
要件2.地域経済への影響

該当企業の倒産により、多くの失業者が発生する場合や、他社にも連鎖する場合などが考えられます。
そういった地域経済に大きな影響を与える企業に融資が行われます。
たとえば、従業員数約450人、売上高20億円の地方路線バス運営会社が倒産による雇用の場の減少と地方移動インフラの衰退が懸念され融資が行われました。
要件3.高い再建可能性

高い再建可能性が認められる場合には、融資が行われます。
認められるには、株主責任や経営者責任を明らかにした上で、経済的に実現性が高い計画を作成しなければなりません。
事業再建計画を作成するには、以下の内容を盛り込む必要があります。
- 経営改善のための努力目標(基本方針、項目別)
- 収支計画
- 長期資金収支予想表
- 資金繰り表(実績、予定)
中小企業再生計画を作成する場合、『中小企業庁のホームページ』でサンプルが閲覧可能です。
融資を受けやすくするコツとしては、3年後までの売上や利益の推移を予測し、実現可能性が高い計画書を作成することにあります。
要件4.償還確実性の確保

返済確実性もDIPファイナンスを受けるためには重要な要件です。
返済確実性とは、どのような状況になっても返済することができる事業再生計画書を提出することを意味します。
事業再生計画書だけでなく、返済が可能なことを証明するために担保も必要です。
担保は、商業手形や売掛金など裁判所から許可を受けた債権でなければなりません。
要件5.利害関係の意向確認

DIPファイナンスでの融資を利害関係者に周知しなければなりません。
裁判所選任の監督委員の了解など透明性の高い手続きが必要です。
利害関係者に了解を得るために、資産や負債、倒産の原因、社員の動向、取引先の状況を把握しておくことに気を付けておきましょう。
以上が、DIPファイナンスの対象となる5つの要件でした。
しかし、これらの要件を満たしていても、必ずDIPファイナンスの融資を受けられるとは限りません。
ここで、DIPファイナンスの融資を受ける際に知っておくべきポイントを確認しておきましょう。
5.DIPファイナンスの融資を受けるポイントは?

DIPファイナンスの融資を受けるポイントは、以下の4つです。
- 早めに専門家を通して相談すること
- 受取手形などの担保を確保できること
- 関係者の合意が得られる再建計画の策定見通しがあること
- 申立代理弁護士を通じた相談であること
特に、専門家への早めの相談は非常に重要です。
DIPファイナンスについての専門家は、弁護士となります。
企業再生に関する経験が豊富な弁護士に相談に行ってください。
ただ、これらのポイントを押えても、必ず融資を受けられるとは限りません。
ここで、DIPファイナンス以外に会社を再生させる方法がないのかを確認していきましょう。
6.DIPファイナンス以外の再生方法は?

DIPファイナンス以外で使える代表的な方法がスポンサー型事業再生です。
過剰な債務などによって、再建をしていくのはとても難しいとなったとき、スポンサーとして他の企業から手助けしてもらいます。
支援の仕方は、会社分割や事業譲渡などで手法で変わることになるでしょう。
スポンサー型事業再生のメリットは、スポンサーの知見や経営資源、販路、信用を活用できることです。
これにより、収益力が改善する効果が得られるため、事業再生の確実性が上がります。
スポンサー型事業再生を活用するにあたっての注意点は、スポンサーの選定です。
スポンサーから支払われる資金が債権者への返済原資となるため、スポンサーが経済的に余裕があることや社会的信用があることが求められます。
事業再生のスポンサーとのマッチングは、M&A仲介会社が得意としています。
以上が、DIPファイナンス以外の再生方法でした。
どのように再生していくのかについては、速やかにかつ慎重に検討しなければなりません。
そこで、専門家に相談に行くのが最適です。
7.DIPファイナンスの相談先は?

DIPファイナンスの相談先は以下の3つがあげられます。
- 中央組合中央金庫
- 日本政策投資銀行
- その他地方銀行
これらの相談先は、DIPファイナンスの融資を積極的に行ってきているため、適切な助言をしてもらえるでしょう。
それでは、相談先を順番に見ていきましょう。
相談先1.商工組合中央金庫

商工組合中央金庫は、政府と民間が共同出資する公的金融機関です。
中小企業等協同組合などの団体とその構成員に対する金融の円滑化を目的として設立されました。
全国で100店舗を有し、設備資金、長期・短期の運転資金などの金融サービスを行っています。
各相談先は『商工組合中央金庫| 店舗一覧』から確認してください。
相談先2.日本政策投資銀行

日本政策投資銀行は、日本政府の出資により設立した金融機関です。
長期的な資金の融資を行うことを目的とし、日本政策銀行法に基づいて融資業務を行っています。
全国では19支店・店舗を有し、主に信用力の高い企業が融資を要請することが多いです。
各相談先は『本店・支店情報|会社情報|日本政策投資銀行(DBJ)』から確認してください。
相談先3.その他地方銀行

その他地方銀行では、政府公表の中小企業経営支援のための政策パッケージを踏まえた取り組みを行っています。
事業継続や事業再生に必要な支援・ノウハウの提供と、他の金融機関との情報共有や連携を行ってくれるのです。
注意点として、すべての地方銀行が支援を行っているわけではないので、事前に確認しましょう。
以上が、DIPファイナンスの相談先でした。
商工組合中央金庫が最も相談窓口としては広く展開しており、短期・長期両面での融資を行っています。
特に身近な相談先がないのなら、まずは商工組合中央金庫に相談するのが良いです。
最初から長期的な融資を希望している場合には、日本政策投資銀行を活用しましょう。
地域経済に根付いた企業なら、地方銀行が融資を積極的に行ってくれます。
ただし、どうしてもDIPファイナンスを利用したいのなら、専門家である弁護士に代理人になってもらうべきです。
8.DIPファイナンスの手続きを代理してもらうには?

DIPファイナンスの手続きを代理してもらうには、弁護士と契約を結びましょう。
DIPファイナンスは、裁判所及び債権者との法的整理手続や交渉などを行うため特に法律関係の知識が必要となります。
また弁護士であれば、代理人として法的手続きなどを進めることが可能です。
企業再生案件に携わる数が多いと融資を受ける際に、有益な方法を取ってくれます。
さらに、途中から企業破産に手続きが移行しても適切に対応してもらうことが可能です。
そのため、金融手続きを専門に行っている弁護士に依頼するべきです。
金融手続きを扱っている弁護士は、各都道府県の弁護士会やホームページで探すことができます。
以上が、DIPファイナンスの手続きを代理先についてでした。
しかし、相談を行っても再生が難しい場合があります。
その場合は、M&Aでの企業売却も検討しましょう。
9.再生が難しければM&Aで売却も検討しよう

もう自分の手では会社を再生させることが難しいなら、M&Aで売却を検討してください。
M&Aでの売却なら、事業再生中でも買い手が見つかり、会社の立て直しが行えることが多いです。
会社を買ってくれた側がDIPファイナンスを使える可能性もあります。
しかし、買い手はあなたの会社に魅力を感じなければ現れません。
あなたの会社を買い取ることによって、会社の規模拡大や技術の吸収を行いたいと考えています。
そのため、買い手企業が魅力と感じる企業の強みを用意しなければいけません。
この強みは先程の『DIPファイナンスの対象となる5つの要件』の経済合理性で紹介した企業価値に相当します。
事業再生のためにも明確な企業価値を用意してください。
また、M&Aでの売却を成功させたいなら、M&A仲介会社に依頼しましょう。
M&Aでの企業売買については専門性が非常に高く、あなたの希望に沿った条件で交渉を行ってくれます。
M&A仲介会社によってもプランや料金体系が変わってくるため確認が必要です。
9−1.相談先に悩んだ時には『M&A総合研究所』へご連絡ください

(引用:M&A・事業承継のマッチングプラットフォームならM&A総合研究所)
M&A仲介会社の中で選ぶ時に迷ったら、気軽にご相談いただける『M&A総合研究所』へお声掛けください。
相談先を確保しておくだけで多くのトラブルを防げます。
事業再生に失敗して後悔する前にご相談をいただければトータルでアドバイスが可能です。
企業名 | M&A総合研究所 |
URL | https://masouken.com/ |
各種手数料 | 無料(一部有料プランあり) |
経営状態が悪くても、選べる選択肢はありますのでお手伝いをさせていただくためにも気軽な相談からしてみてください。
まとめ
倒産したけれど事業を立て直したいならDIPファイナンスを活用しましょう。
再生の見込みさえあれば、経営状態が悪くても融資してくれる場合が多いです。
事業を再生するために行うM&Aでも活用できます。
『M&A総合研究所』で買い取ってもらいつつ融資も受けられる道を一緒に探しましょう。