
シナジー効果の意味をお調べですね。
シナジー効果とは、2つの企業が協力し合うことによって、単独で行う以上の結果が生まれることです。
M&Aは、様々なシナジー効果が期待されて実行されます。
シナジー効果を正しく予測できなければ、M&Aは失敗に終わるかもしれません。
今回は、シナジー効果の意味や具体的な事例をわかりやすく解説します。
シナジー効果の意味を正しく理解し、M&Aを成功させましょう。
目次
1.シナジー効果の意味とは

シナジー効果とは、2つの企業が協力し合うことによって、単独で行う以上の結果が生まれることです。
簡単にいうと、1+1が2以上になることを指します。
日本語では「相乗効果」と言われるもので、会社売却や事業譲渡などによって狙われているのです。
例えば、商品力が強いA社と営業力が強いB社がM&Aで一つの企業になると仮定しましょう。
A社の商品力とB社の営業力が融合することで、より良い商品を多くの人に売ることができます。
このように、A社とB社が単独で生む利益よりも高い売り上げを上げることが「シナジー効果」です。
シナジー効果は、買い手企業にとっては、事業や売り上げの拡大のためにも非常に大切な概念となります。
※会社をまるごと売買する会社売却については以下の記事で詳しく解説しています。
※事業のみを売却する事業譲渡については以下の記事が参考になるでしょう。
事業譲渡とは?仕組みや手続きを理解し、効果的に事業を売却しよう!
2.M&Aの際にシナジー効果によってもたらされるもの

M&Aをする際にもたらされるシナジー効果は、売り上げだけではありません。
M&Aの際にシナジー効果によってもたらされるものは、以下の5点です。
- 売り上げアップ
- コスト削減
- リスク分散
- 生産性向上
- 財務力の向上
では1つずつ詳細を見ていきましょう。
シナジー効果1.売り上げアップ

シナジー効果の1つとして、売り上げアップが挙げられます。
ある企業が他の企業や事業を取り込むことで売り上げが向上するというものです。
その理由としては、主に以下の4つがあげられます。
- 顧客が増える
- 技術力が上がる
- 自社ブランドの知名度が上がる
- 買った企業の未使用資源を有効活用する
企業を取り込むことで、販売先が増えたり、営業の数の増加・スキルの向上などが予測できます。
その結果として、売り上げのシナジー効果が期待できるのです。
つまり、M&Aをすることで、それぞれの企業が単体であげる何倍もの売り上げを出す可能性があります。
しかし、売り上げシナジー効果の予測は、非常に難しいです。
売り上げシナジー効果の予測を行う際には、専門家に相談する・予測を見積もりは低めに設定しておく、などを行いましょう。
シナジー効果2.コスト削減

2つ目に挙げられるのは、コスト削減です。
M&Aをすることにより、企業運営に関わる様々な資源のコストを削減することができます。
代表的なものは以下の3つです。
- 固定費削減
- 仕入金額削減
- 外注作業を内製化によるコスト削減(外注先を買収した場合)
コスト削減のシナジーは、予測がしやすいのでM&Aをする際にも非常に大切なポイントとなってきます。
1つずつ見ていきましょう。
固定費削減
M&Aにより固定費が削減できます。
2つの企業が1つになるので、家賃や光熱費などの固定費が削減できるのです。
M&Aによって、様々な固定費をカットすることができます。
仕入金額削減
M&Aにより、仕入金額が削減できます。
販売顧客の増加により、1つ当たりの単価を値下げすることが可能です。
仕入金額のコストカットにより、販売価格の値下げ・利益の増加などのメリットがあります。
外注作業を内製化によるコスト削減(外注先を買収した場合)
外注先の企業を買収した際には、内製化によるコストカットが可能となります。
コスト削減シナジー効果がうまく発揮された場合、今よりも高機能な商品を安価で売ることが可能です。
シナジー効果3.リスク分散

長期的・安定的に企業を経営したい人には、リスク分散シナジーも大切です。
一つの事業に売り上げが集中してしまっている場合、その事業が不振に陥ると一気に経営危機に陥ってしまいます。
例えば、冷蔵庫の製造のみで成功している企業があるとしましょう。
今は冷蔵庫のみでも十分に売り上げがあっても、競合他社からより良い商品が販売された場合、会社経営が危うくなります。
もし、一つの分野がうまくいかなくなっても、他の分野で経営を続けていくためにはリスク分散の観点でM&Aをする場合も多いです。
シナジー効果4.生産性向上

M&Aをすることにより、生産性向上シナジーももたらされます。
生産性向上シナジーで代表的なものは以下の3つです。
- 業務効率アップ
- 無駄な部門の排除
- 社員のモチベーションアップ
1つずつ見ていきましょう。
業務効率アップ
2つの別の企業が融合することにより、無駄なものをそぎ落とし、個々がレベルアップします。
そのため、今までよりも業務効率がアップし短時間で効率よく利益を出すことができるのです。
無駄な部門の排除
M&Aを行うことで、無駄な部門の排除ができます。
M&A完了後、組織は再編成されるでしょう。
その際に、不要であると判断された部門を削ぎ必要な部門に人員補強ができます。
社員のモチベーションアップ
M&Aを行うことで、社員のモチベーションが上がります。
新しい仲間が入ることで、刺激を受け切磋琢磨することができるのです。
今までと同じ時間や同じ金額をかけても、生産性が向上することでより高い利益が生まれます。
シナジー効果5.財務力の向上

最後に期待できるシナジー効果は財務力の向上でしょう。
2つの企業が一緒になることで財布が2つに増えたからという理由はもちろん、それ以外にも以下2つの理由があるからです。
- 資金調達のコスト削減
- 余剰資金の活用
1つずつ見ていきましょう。
資金調達のコスト削減
M&Aを行うことで、資金調達のコストをカットすることが可能です。
例えば、売り上げやコネクションの増加などの理由が挙げられます。
資金調達のコスト削減により、財務力が向上するのです。
余剰資金の活用
M&Aを行うことで、余剰資金の活用が可能となります。
余剰資金とは、使い道の予定の無い余分なお金です。
双方の企業間のM&Aを行うことで、余剰資金が発生する場合があります。
財務力が向上することにより、新しい事業への進出・既存の事業の精度向上など様々なメリットがあるのです。
3.マイナスのシナジー効果によってもたらされるもの

シナジー効果というのは、プラスのものだけではなく、マイナスにとらえる場合もあるのです。
マイナスのシナジー効果のことは、アナジー効果ともいわれます。
アナジー効果は、M&Aをする際のリスクともされるのです。
シナジー効果を考える際には、良い面だけではなく、マイナスの面もあるということを忘れてはいけません。
代表的なアナジー効果は、以下の3つです。
- 顧客離れ
- 人材の流出
- システム統合のコスト
では1つずつを見ていきましょう。
アナジー効果1.顧客離れ

アナジー効果の1つ目は、顧客離れです。
2つの企業が1つになることによって、顧客からの反発がある場合もあります。
例えば、M&Aにより長年付き合いのある顧客との取引内容が変更になる場合などです。
特に、売り手企業の取引先にとっては、影響はかなり大きいでしょう。
一定の顧客離れはあることを見越してM&Aを行う必要があります。
アナジー効果2.人材の流出

2つ目のアナジー効果は、人材の流出です。
M&Aを行うことで、社員同士の不和や人材配置などにより、人材が流出する可能性もあります。
2つの別々の企業が1つになるということで、社員から驚きや反発の声も出てくるでしょう。
特に売り手企業側の社員は、以下のような理由で退職者が増加することが多いです。
- M&Aによって環境が変わった
- 今まで通りの配属ではなくなった
- 上司が変わってなじめなくなった
これらのように、環境への変化にストレスを感じる人が増えます。
それゆえ、人材の流出を最小限に抑える努力が必要です。
例えば、社員へきちんと説明を行う・適切な人材配置を行うなどが挙げられます。
また、ある程度の人材の流出は避けられないので予測をあらかじめ立てておくのが良いでしょう。
アナジー効果3.システム統合のコスト

最後のアナジー効果は、システム統合のためにコストがかかってしまうという点です。
それぞれの企業で使用しているシステムを統合するにはかなりの費用が掛かります。
例えば、買い手企業の使用している社内システムと売り手企業の使用している社内システムが違うとしましょう。
どちらかのシステムに統合する・新しいシステムに導入する場合にはどちらもコストがかかります。
企業規模にもよりますが、数百万円以上かかる場合もあるのです。
しかし、そのアナジーを考えていない企業は多く、M&A後に発覚するというパターンも少なくありません。
その費用も計算したうえで、それ以上の見込みがあるかどうかを検討することは非常に大切です。
4.M&Aの際にシナジー効果を発揮させるためのポイント

ここまで、M&A後にもたらされるシナジー効果とアナジー効果について紹介しました。
М&Aを行うには、できるだけ多くのシナジー効果を出したいですよね。
そのためには、シナジー効果を最大限に発揮するためにポイントを押さえておく必要があります。
代表的なポイントは、以下の4つです。
- PMIを徹底する
- 双方が1番いいタイミングでM&Aを行う
- 計画を早期に立案しておく
- リスクを前もって検討しておく
では早速1つずつ見ていきましょう。
ポイント1.PMIを徹底する

シナジー効果発揮のポイントは、PMIを徹底することです。
PMIとは、Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略で、M&A成立後の統合プロセスのことを指します。
最大限のシナジーを発揮するためには、組織体制の構築が必要不可欠です。
PMIは、以下の3つの視点に分けることができます。
- 経営視点
- 業務視点
- 意識視点
それぞれがどんなものなのか見ていきましょう。
1.経営視点
PMIの経営視点とは、企業の経営理念やビジョン、戦略を統合することを指します。
2つの別々の企業の社員の士気を高めるためには、上記の統合は必要不可欠です。
どちらか一方の考えに偏らないように、お互いの理念やビジョンを大切にし、双方が納得いく答えを出しましょう。
2.業務視点
PMIの業務視点は、統合後の人員配置や情報システムの統合などです。
特に人員配置を適切に行わないと人材の流出などのマイナスの影響が出てしまいます。
統合後、双方の社員がストレスなく働くことができるように、尽力するが大切です。
経営の視点を持ちつつも、現場視点を忘れず現場の意見も尊重しましょう。
3.意識視点
PMIの意識視点とは、異なる文化や考え方を持つ双方の社員が相互理解を深めるための施策です。
買い企業・売り手企業、それぞれの理解がないと衝突を起こしてしまう場合もあります。
そのため、社員の意識統一や相互理解の場を設けるなどの施策を行うことが必要不可欠です。
意識視点がうまく働くことで、社員の士気がアップしより良い組織に発展につながります。
PMIに関しては、『PMIとは?初めてのM&Aでもシナジー効果を最大化させる方法を解説』で細かく説明しています。
ポイント2.双方が1番いいタイミングでM&Aを行う

シナジー効果発揮のポイントは、統合するタイミングです。
それぞれの企業の企業価値は、市場ニーズによってかなり変動します。
双方のベストなタイミングでM&Aを行うことで、企業価値の最大化をはかることができるのです。
しかし、市場の動きを把握するのには業界知識だけではなく、M&Aの専門知識も必要不可欠といえます。
知識や経験豊富なM&Aのプロに相談し、双方が1番良いタイミングでM&Aを行いましょう。
ポイント3.計画を早期に立案しておく

M&Aの計画を早期に立案しておくことも、シナジー効果を生み出すために大切なポイントです。
企業の方向性・将来性などから、綿密に事業計画を練っている企業は、M&Aで成功しているケースが多くなっています。
そのためにも、早期から立案し改良を重ねることが必要です。
また、計画するだけではなくM&A完了後に適切に実行するために、計画の具体性も非常に大切になってきます。
ポイント4.リスクを前もって検討しておく

最後に、リスクを前もって検討しておくということです。
上記でも解説した通り、M&Aによるシナジー効果は良いものだけではありません。
マイナスの面もあるということをあらかじめ把握しておき、どのように対処するかをじっくりと検討する必要があります。
M&Aにおけるアナジー効果は以下の3つです。
- 顧客離れ
- 人材の流出
- システム統合のコスト
上記のパターンを想定し、それでもM&Aする価値があるのかどうかを考える必要があります。
また、簿外債務などのリスクも考えられるでしょう。
簿外債務をあらかじめ把握しておくためには、デューデリジェンスが欠かせません。
デューデリジェンスを行うことで、リスクを回避しましょう。
5.M&Aによるシナジー効果の実例

最近では日本企業でもM&Aを積極的に実施しています。
その中でも、高いシナジー効果を発揮しM&Aを成功させている企業も非常に多いです。
ここでは、日本の企業がM&Aで発揮したシナジー効果の具体例を紹介していきます。
実例1.ソフトバンクの場合

2001年にブロードバンド通信に参入したソフトバンクは、数々のM&Aを行い、今や日本を代表する携帯キャリアの企業となりました。
ソフトバンクの多岐にわたる事業展開は、積極的にM&A行ったことが主な理由といえます。
これまでソフトバンクは、日本テレコムやアーム社、ガンホー・オンライン・エンターテイメントなど様々な企業をМ&Aしてきました。
その中でも代表的なM&Aは以下の3つです。
買収企業名 | もたらされたシナジー効果 |
日本テレコム(2004年5月27日) | 法人顧客の取り込み(約17万社) |
ホークス球団(2004年11月30日) | 日本全国に知名度アップで顧客の取り込み |
ボーダフォン(2006年3月17日) | 通信事業の収益アップ(2600万回線) |
上記のように、まず日本テレコムを買収したことにより、通信業界の法人顧客の取り込みに成功したのです。
そして、ホークス球団を買収したことにより知名度やブランド力を向上させ、ボーダフォンを買収したことで通信事業の収益を拡大させました。
ソフトバンクが日本を代表する携帯企業になったのは、まぎれもなくM&Aのシナジー効果の結果といえるでしょう。
実例2.阪急阪神グループの場合

続いては、阪急阪神グループの事例を確認しましょう。
関西を基盤とする鉄道企業の阪急電気鉄道は、2006年に競合である阪神電気鉄道の株64.76%を保有するという形で経営統合しました。
百貨店などの事業を展開する阪急と都市開発などを積極的に行う阪神電鉄が統合した結果、以下のシナジー効果がもたらされたのです。
- 都市交通事業の連携強化
- マンション事業でのコラボレーション
- 両社施設への流通店舗出店
上記のような事業展開により2014年6791億円の売り上げが、2018年では7,602億円まで上昇しています。
同業種でありながらも、それぞれの強みを活かすことで非常に大きなシナジー効果を得ることに成功したのです。
実例3.セブン&アイ・ホールディングスの場合

セブン&アイ・ホールディングスが展開しているセブン銀行もシナジー効果のたまものです。
セブン銀行は、セブンイレブンとイトーヨーカ堂が主体となり、資本金202億500万円で「株式会社アイワイバンク銀行」が設立されました。
集客力の高い「セブンイレブン」や「イトーヨーカ堂」にセブン銀行のATMを国内に約1万2,000個設置することで利用者が増加。
手数料収入が急増し、2018年現在で1,059億円(手数料収入)の収益が発生しています。
それだけではなく、本来の銀行店舗に必要な人件費や警備費などのコストカットも実現したのです。
セブンアンドアイホールディングスは、シナジー効果を活かすことで、異業種に進出しました。
まとめ
シナジー効果は、2つの企業がM&Aし協力し合うことによって単独で行う以上の結果が生まれる効果のことを指します。
シナジー効果によって事業を拡大することが期待できますが、マイナスの側面もあるということを忘れてはいけません。
あらかじめマイナスのシナジー効果を把握したうえで、最大のシナジー効果をもたらすためも適切な手法やタイミングを選びましょう。
そうすることで、M&A時にシナジー効果を発揮することができます。
シナジー効果を活用し、М&Aを成功させられるように検討してみてください。
※そもそもM&Aとはどのようなものなのかについては、以下に記事が参考になります。