
PPAについてお調べですね。
PPAとはM&Aによる買収後、1年以内に行わなければいけない会計上の手続きのことです。
正しいPPA処理を行わなければ、M&A後の業績に悪影響を及ぼしたり監査に引っかかる恐れがあります。
そこで今回はPPAの基礎知識やPPA処理の流れについて、わかりやすく解説。
PPAの理解を深め、M&A後の会計処理を正しく行いましょう。
目次
1.PPAとは取得原価の配分のこと

PPAとはPurchase Price Allocationの略であり、取得原価の配分のことです。
取得原価の配分というと難しいですが、PPAとはM&Aにおける売り手企業の資産・負債の金額を確定させる作業のことを指します。
資産や負債など、売り手企業の貸借対照表に書かれている資産だけであれば作業は簡単なのです。
しかしM&Aにおいては売り手企業の持つ人材の価値や将来性、技術力などについても価格が付くため、PPAでこうした無形資産を計上しなければなりません。
PPAで評価の対象となる無形資産の種類には、以下のようなものがあります。
マーケティング |
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顧客 |
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契約 |
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技術力 |
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PPAは、無形資産を金額にして計上するという点から、通常取り扱わない会計・税務の処理が必要です。
M&Aを行う予定の企業は、こうした難しいPPAという作業が必要になることを覚えておきましょう。
1-1.PPAはM&Aに必須の手続き
PPAの手続きは、M&Aで他社の買収を行う企業にとって必須のものです。
「PPAの処理は大変そうだけど、本当にやる必要があるの?」と疑問をお持ちの方もいるでしょう。
日本では、PPA処理が法的に必須ではない時期もありましたが、2010年以降、M&Aの買い手には取引実行後から1年以内のPPAが義務付けられています。
そのためM&Aを行う買い手企業にとって、PPAは避けては通れない道なのです。
M&Aでは、数億円〜数十億円という多額のお金が動きます。
PPAは買い手企業の業績に大きく影響する処理なので、適切に会社の会計を把握するという点でもPPAを正確に行うことには意義があるのです。
1-2.PPAを行う理由
PPAを買い手が行うべき最大の理由は、交渉などで決定したM&Aの譲渡価格に第三者でも分かる明確な根拠を与えることです。
M&Aの交渉現場には必ずM&Aの専門家がいて適切なアドバイスを行いますが、無形資産についての価値を最終的に判断するのは買い手となっています。
どうして売り手にその価格を付けたのか、売り手の持つ資産にどれだけの価値があったのか、PPAで算出することで譲渡価格の根拠を株主に説明できるようにする必要があるのです。
M&Aの実行は買い手にとって大きな経営判断となります。
株主や取引先、従業員からの信頼を守るためにM&Aで使った多額のお金の根拠を明確にしなければいけません。
また、M&Aで使ったお金が税金の支払い額に影響するケースも多くありますので、税務面からもPPAによる会計処理は必要不可欠です。
M&AにおけるPPAの必要性について、ご理解いただけたでしょうか。
次はPPAで処理が必要となる「のれん」の基本について解説していきます。
2.PPAで必要な「のれん」とは

PPAでは、ブランド力や技術力、特許など純資産として計上されない無形資産を示す「のれん」の算出が重要なポイントです。
のれんとはM&Aの際、売り手企業の純資産より高い金額で買収を行ったときの、純資産との差額のことを指します。
例えば、純資産1億円の会社Aを買収した時、買い手は優秀な人材や技術力に魅力を感じたため1億2,000万円の価格でA社を買収しました。
このとき、純資産と買収価格との差額は以下の通りになります。
- 1億2,000万円-1億円=2,000万円
また、のれんは2,000万円です(例を分かりやすくするため、A社は負債を抱えていないものとします)。
内訳も不明な2,000万円ものお金が突然仕分けで発生すれば、業績に大きな影響が出てしまいます。
そのためPPAでは無形資産であるのれんを評価することが最も大切なのです。
M&Aにおける「のれん」についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考になるはずです。
次は、PPAの処理において不可欠な「のれん」の評価方法について解説していきます。
3.PPAにおいて「のれん」を評価する方法

PPAにおいて、「のれん」を評価するための主な方法は以下の通りです。
- 時価純資産法
- 簿価純資産法
- DCF法
「のれん」を特定・評価することで無形資産を正しく評価できます。
ベストな評価方法は売り手と買い手の状況によって異なりますので、PPAの際は必ず公認会計士・税理士など専門家に相談しましょう。
評価方法1.時価純資産法
のれん算出の方法として、良く使われているのが時価純資産法です。
時価純資産法とは、企業の持つ全ての資産と負債の時価を算出し、資産から負債の額を引く方法となっています。
単なる数値上の資産・負債の価値でのれんを算出するのでは無く、現在の価値に基づいて評価ができるのでのれんの計上に合っていると言えるでしょう。
ただしこの方法では、買い手がM&A時に評価した将来性については算出することができません。
売り手企業が将来どれだけ多くの価値を生み出しても、その価値はのれんとして計上されないことになってしまいます。
そのため時価純資産法だけで、PPAを行うのは困難です。
PPAを行う際は、他の手法を並行して利用しましょう。
評価方法2.簿価純資産法
簿価純資産法とは、売り手企業の資産・負債に基づいて純資産額を算出し、のれんの額を導く方法です。
簿価純資産法は、中小零細企業の企業価値を評価する際などによく使われます。
しかしのれんの算出において、簿価純資産法が使われるケースは稀です。
なぜなら、簿価純資産法の元となっているのは資産や負債のみであり、無形資産の評価に繋げるには難しいためです。
簿価純資産法は、帳簿上の資産から負債を引くことで企業価値を算出できる手軽な手法ですが、無形資産の価値であるのれんを算出する場合はほとんど使われません。
評価方法3.DCF法
DCF法とは、Discounted Cash Flowの略であり日本語では割引現在価値法と言います。
売り手企業が将来獲得すると考えられるキャッシュフローに、適切な割引率を適用させ現味の価値に直したものを指します。
DCF法なら、売り手企業の将来価値についても算出できるため、無形資産の評価を行うには適していると言えるでしょう。
しかし売り手企業の将来出せる売上の予測が困難であること、割引率の算出に絶対的な基準が無いことが問題点です。
そのためDCF法を使う専門家によって、のれんの評価は大きくぶれてしまいます。
またDCF法の場合、現在売り手企業が持っている資産や負債をのれんの評価には反映出来ないため正確な数値では無いとする専門家も少なくありません。
実際にのれんを処理するときは、他の方法と組み合わせて使いましょう。
以上が、のれんの代表的な算出方法でした。
どの方法を選ぶかによって、PPAの結果は大きく変わります。
それぞれの方法にはメリットとデメリットが存在するため、実際にのれんの計上、PPAを行う際には複数の手法を組み合わせて無形資産の計上を行うのが一般的です。
また今回紹介した以外にものれん計上の方法はあるのでPPAは自社だけで行うのではなく、必ず専門家の意見を聞くようにしましょう。
4.M&AにおけるPPA処理の手順

PPAの手順は、以下の流れが基本です。
- 初期分析
- 無形資産の特定
- 無形資産の評価
- レポートの作成
- 会計監査人による監査
PPA処理には、専門的な知識と十分な経験が必要です。
信頼できる専門家とともに、一つずつ丁寧に進めていきましょう。
手順1.初期分析
まずは外部の専門家の用意した資料依頼リストに基づき、必要な資料を準備します。
必要な資料は専門家の指導によっても変わりますが、以下のものは必須です。
- 売り手会社の基礎資料
- 売り手会社の法務・財務・税務資料
- 株式価値の算定書
- 社内検討資料
こうした資料をもとに、売り手企業の資産や負債の評価をします。
その後、専門家などが資料に関する疑問点をまとめ、さらに正確な評価やデータを作成するのです。
場合によっては、資料の作り直しや追加資料の用意が必要なケースもありますので、時間に余裕を持っておきましょう。
手順2.無形資産の特定
次は、PPAで処理を行う無形資産を特定します。
買収を行った背景を踏まえ、何を無形資産とするのか明確にすることで、処理を手早く済ませることが可能です。
国際会計基準で示される無形資産には、以下のようなものがあります。
- 商標・商号
- 顧客リスト
- 顧客との関係・信頼
- 絵画および写真
- 音楽作品
- 使用許諾
- 建設許可
- フランチャイズ契約
- 雇用契約
- 特許技術
- 製法
など、業種によって無形資産は様々です。
PPAの際には全ての無形資産を金額化するのではなく、重要度の高いものから優先して測定することが必要になります。
手順3.無形資産の評価
計上する無形資産を具体的に調べ、評価していきましょう。
例えば、人材については資格を保有していたらこのくらいの価格、など具体化していくのです。
そうすることで、譲渡価格に根拠を与えていきます。
ただし、専門家によってどのような評価をするのかには違いがあるので注意してください。
ですが、専門知識と経験がなければ適切な価格にすることは難しいです。
信頼できる実績をもった専門家に依頼し、適切な価格を調べてもらうようにしましょう。
手順4.レポートの作成
無形資産の評価が終わったら、無形資産を含め売り手企業の資産・負債の結果をレポートにまとめます。
レポートの内容については、売り手企業と買い手企業が双方確認しなければいけません。
手順5.会計監査人による監査
レポートが完成したら、会計監査人の監査を受けます。
会計監査人の仕事は、レポートの元となっている数値などの妥当性、無形資産の選び方が適切かどうかなど様々なポイントで買い手のPPAを確認することです。
また無形資産の評価手法、評価モデルについてはM&Aの目的などに対し妥当なモノになっているか厳しくチェックされます。
監査の結果として生じた疑問点や不明点については会計監査人が質問してくるので、買い手企業として回答をしなければいけません。
監査が無事に終われば作成したレポートは確定となり、PPA処理が終了します。
ここまで手順をチェックして「なんだか難しそう」と感じた方は少なくないでしょう。
実際M&Aを行ったほとんどの買い手が、外部の専門家にPPAを依頼をしているのです。
では、なぜ依頼するのかの理由についても見ていきましょう。
5.PPAを専門家に依頼すべき理由

PPAの手続きに専門家が必須である理由は、以下の通りです。
- PPAでしか使わない専門知識が必要だから
- 自社内で適切な人材を見つけるのは難しいから
- 自社のみで行うと膨大な時間がかかるから
- 失敗すると会社の信用が失われるから
PPAの手続きは、素人が簡単にできるものではありません。
専門家による監査もありますので、専門家に依頼し正確な処理を行うことが大切です。
それぞれの理由をチェックし、専門家への依頼についてM&A前から意識しておきましょう。
理由1.PPAでしか使わない専門知識が必要だから
PPAの処理には、専門の知識が必要です。
特に無形資産の選び方や評価方法は非常に難しく、現在でも定型的な方法があるわけではありません。
そのためPPAでは、経験豊富な専門家が過去の例や他の専門家の意見などに基づき、適宜最適な方法を判断するのが一般的です。
素人判断でPPAを行ってしまうと、会計監査人に「妥当性が低い」と判断されPPAがやり直しになってしまうこともあります。
PPAの処理は、M&Aから1年以内に終えなければいけません。
早く、正確な処理を行うためにも知識を持った外部の専門家に依頼しましょう。
理由2.自社内で適切な人材を見つけるのは難しいから
PPAに対応できる人材を、自社内で見つけるのは非常に難しいです。
「自社内の税理士や会計士に処理を行ってもらえば良いのでは」と考える方は少なくありません。
しかしPPAには専門的な知識と経験が必要となるため、会社の一般的な会計・税務の処理に当たっている専門家では十分な対応ができるとは言えないでしょう。
運営している会社が多数の士業専門家を有する会社でない限り、PPAは外部の専門家に任せるべきです。
理由3.自社のみで行うと膨大な時間がかかるから
PPAを自社だけで行おうとすると、膨大な時間がかかってしまい通常の業務にも悪影響が出てしまいます。
どうしても外部の専門家に依頼する費用を節約したいという思いから、PPAを自社で済ませようとする会社は少なくありません。
PPAについて従業員が学び、一から進めれば処理を行うこと自体はできます。
しかし専門の人材がいない中でPPAについて勉強し、短期間で十分な知識を身につけることは不可能です。
特にM&A後のPPA処理は、1年以内に行わなければいけないというルールがあります。
知識を持った人材を育成するには時間がかかりすぎてしまうので、処理が間に合わない可能性があるのです。
理由4.失敗すると会社の信用が失われるから
PPAの処理に失敗してしまうと会社の業績に影響が出てしまい、信用が失われます。
無形資産の評価を誤って進めてしまうと、M&Aの年にだけ業績が大幅に伸びてしまい、翌年度に落ち込むといった会計上のトラブルが発生しかねません。
株主や取引先にとって、会社の業績は非常に大きな関心ごとです。
M&Aをきっかけに業績が乱高下することがあれば、会社の信頼が失われてしまいます。
正しい知識を持った専門家のもと、関係の人にも納得してもらえるよう業績を付けていきましょう。
PPAを外部の専門家に依頼すべき理由は、以上でした。
M&A仲介会社ならPPAはもちろんM&Aの手続きにも詳しい公認会計士、税理士と密接なネットワークを持っているので安心して処理を任せることができます。
その他、M&A手続き全般を仲介会社に任せるメリットは以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ読んでみてください。
6.PPAを正しく行うならM&A総合研究所

PPAをしっかりと行い、M&Aを完了させるにはM&A総合研究所へご相談ください。
M&A総合研究所には、M&Aの知識が豊富な公認会計士が多数在籍しており、PPA処理にも深い知見を持っております。
誤った方法でPPAを行うと、買い手企業の業績や売り手企業や取引先との信頼関係にも悪影響が出てしまいかねません。
M&Aのパートナーとして多くの買い手に選ばれているM&A総合研究所では、PPAだけでなく売り手探しやM&A手続き、デューデリジェンスまでしっかりと対応いたします。
信頼できる専門家と、安心してM&Aを進めていきたい方はぜひM&A総合研究所へお問い合わせください。
電話とWEBから、お問い合わせは24時間受け付けております。
また、M&A総合研究所が多くの企業様に選ばれている理由を以下の記事で分かりやすくまとめています。
M&A総合研究所についてもっと詳しく知りたい方はぜひお読みください。
7.まとめ
PPAとは、M&Aの後に買い手が行う取得原価の配分手続きです。
PPAは非常に複雑であるため、買い手企業自らが完璧に処理することは非常に難しいと言えます。
M&Aを検討している方は、PPAの手続きについても専門家に依頼する必要があるでしょう。
M&A総合研究所では、PPAの手続きに加えM&A後の会社成長プランを含め総合的なアドバイスを行っています。
PPAでの失敗を防ぐため、ぜひ事前にご相談ください。