PPAとは?PPAの意味やM&Aに欠かせない会計処理をわかりやすく解説

PPAについてお調べですね。

PPAとはM&Aによる買収後、1年以内に行わなければいけない会計上の手続きのことです。

正しいPPA処理を行わなければ、M&A後の業績に悪影響を及ぼしたり監査に引っかかる恐れがあります。

そこで今回はPPAの基礎知識やPPA処理の流れについて、わかりやすく解説。

PPAの理解を深め、M&Aのあとの会計処理を正しく行いましょう。

1.PPAとは

PPAとは、売り手企業の資産と負債の価格を買い手企業が確定する会計処理のことです。

Purchase Price Allocationの略で、取得原価の配分と訳されます。

M&Aを行った場合、買い手企業に欠かせない会計処理です。

M&A成立後、1年以内に行わなければなりません。

1-1.PPAにおける無形資産の扱い

たとえば、A企業を譲渡価格5,000万円で買収したとしましょう。

このとき、A企業の持つ不動産や商品在庫などの資産1つ1つに価格を付けていくのです。

一方、負債に関しても価格を付けていき、以下のような価格が出たとしましょう。

譲渡価格 5,000万円
A企業の資産 4,000万円
A企業の負債 1,000万円

ここで重要なのが、無形資産の計上です。

無形資産とは、商標権・知財権・従業員の技術力など、目に見えない資産のことを指します。

資産から負債を差し引いた4,000万円ー1,000万円=3,000万円がA企業の価値です。

しかし、実際の譲渡価格には2,000万円が上乗せされています。

この2,000万円こそが無形資産なのです。

このように無形資産に価格を付けることがPPAにおいて重要なポイントとなっているのです。

1-2.PPAで認識される無形資産の種類

無形資産にはどのようなものがあるのか気になりますよね。

PPAで認識される無形資産には、大きく4つの種類があります。

  1. マーケティング
  2. 顧客
  3. 契約
  4. 技術

それぞれ表で内容を確認しておきましょう。

マーケティング
  • 商標や商号
  • インターネットドメイン
  • サービスマークやロゴ、アイコン
  • 競業避止契約
顧客
  • 顧客リスト
  • 受注残(売掛)
  • 顧客との契約・顧客との関係
契約
  • 従業員の雇用契約
  • ライセンスやロイヤルティ
  • リース契約
  • フランチャイズ契約
  • 営業許可
  • 利用権
技術力
  • 特許権の持つ技術
  • 特許申請中・未申請の技術
  • あらゆるデータベース
  • 社内システムなどのIT技術

これら無形資産に価格を付けることがPPAにおいて重要な作業です。

価格を付けなければ、M&Aの譲渡価格の根拠がないことになってしまいます。

目に見えない無形資産にも価格を付け、譲渡価格の理由を株主に説明が出来るようにしましょう。

2.M&AによるPPA処理の5つの流れ

PPAの意味を理解したところで、実際にどのようにPPA処理を行うのか流れを確認しましょう。

PPA処理の流れは、大きく5つに分けることができます。

  1. 初期分析
  2. 無形資産の特定
  3. 無形資産の評価
  4. レポートの作成
  5. 会計監査人による監査

PPA処理は、第三者である専門家が行うことが一般的です。

それぞれの流れを詳しく確認していきましょう。

流れ1.初期分析

まずは、売り手企業の分析を行います。

初期分析はM&Aを成立させる前に行うデューデリジェンス時から開始することが重要です。

法務・財務・税務などの報告書、株式価値算定書、社内検討資料などを集め、資産や負債の評価をします。

流れ2.無形資産の特定

つづいて、無形資産を特定します。

そのために、M&Aにおける買い手企業・売り手企業にヒアリングを行います。

買い手企業にとって「価値あるものは何か」を把握していくためです。

両社のディスカッションを通じて、無形資産を特定していきます。

流れ3.無形資産の評価

特定した無形資産の価値を評価していきます。

具体的に価格をつけるのです。

以下の3つの中から最適だと判断された方法で評価されます。

  1. インカムアプローチ
  2. マーケットアプローチ
  3. コストアプローチ

それぞれの評価方法については、あとの章で詳しく説明をします。

流れ4.レポートの作成

無形資産も含め資産・負債の評価結果をレポートにまとめます。

内容については、買い手企業・売り手企業が最終確認を行わなければなりません。

両社納得のいくレポートであれば、会計監査人へ提出します。

流れ5.会計監査人による監査

最後に、会計監査人のレポート確認です。

特に、無形資産の評価の信頼性や妥当性をチェックされることになります。

監査が終わるとレポートは確定となり、PPA処理は終了です。

3.PPAに欠かせない「のれん」とは

M&Aの会計で欠かせないキーワードが「のれん」です。

のれんとは、M&Aを行うときに発生する対象企業の純資産より高い買収価格で取引したときの差額のことを指します。

のれんは無形資産の価格であり、PPA処理で無形資産に価格を付けることでのれんが発生すると考えることが出来るのです。

そのため、のれんの存在はPPAにおいて無視できません。

無形資産のことを会計上では「のれん」と呼ぶので覚えておきましょう。

3-1.のれん=無形資産のワケ

のれん=無形資産の価格と考えましょう。

基本的に、企業の価値は純資産額で表されますが、M&Aの譲渡価格は純資産額を上回るケースがほとんどです。

なぜなら、企業は事業のブランド力や技術などの無形資産価値に魅力を感じるてM&Aを実行するからです。

この無形資産の価格が上乗せされるため、のれんが発生します。

つまり、のれんとは無形資産の価格と考えることができるのです。

次の章では、のれんの評価方法を確認しましょう。

4.PPAにおける「のれん」の評価方法

PPA処理において、のれん(無形資産)の特定と評価は重要な作業です。

そのため、どのようにのれん(無形資産)に価格が付けられるのか知っておきましょう。

のれん(無形資産)の評価方法には、3つの方法があります。

  1. インカムアプローチ
  2. マーケットアプローチ
  3. コストアプローチ

評価方法を間違えると、企業の業績に大きく響きます。

しっかりと確認しましょう。

評価方法1.インカムアプローチ

インカムアプローチとは、企業が将来生み出すと予測される利益・キャッシュフローをもとに対象の無形資産を算出する方法です。

無形資産評価で、ほとんどのケースに採用されます。 

インカムアプローチでは、DCF(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー)法を用いられることが多いです。

DCF法とは、会社が将来生み出す価値をフリーキャッシュフローで推計し、資本コストで割り引いた現在価値に換算します。

将来の利益はあくまでも事業計画書などによる予測のため、客観性に乏しく信頼性の低いものですが、将来に対する期待を反映するため、合理的な評価方法です。

評価方法2.マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、上場企業の場合は市場株価を基礎とし、非上場会社の場合は上場している同業他社をもとに対象の無形資産を算出する方法です。

業種など類似した上場企業と財務諸表で対比率を出し、時価総額に倍率をかけて算出します。

しかし、無形資産のマーケットは皆無に等しく、類似の事例を見つけることは非常に難しいです。

そのため、ライセンス契約のロイヤリティから算出されることがあります。

ロイヤリティ収入(将来キャッシュフローの現在価値合計)を無形資産の価値としており、インカムアプローチに近い方法です。

評価方法3.コストアプローチ

コストアプローチとは、企業が保有している純資産をもとに、企業価値を算出する方法です。

コストアプローチの中でも3つの算出方法があります。

  1. 貸借対照表上の純資産額を株主価値とする簿価純資産額法
  2. 貸借対照表の資産と負債を時価評価した上で時価純資産額を算出した後、その額を株主価値とする時価純資産額法
  3. 時価純資産額と営業権の合計を株主価値とする時価純資産額と営業権を考慮した算出方法

これらの方法には、将来性を考量していなかったり、時価評価額を考慮していないというデメリットがあります。

そのため、無形資産の価値算出に利用されることはほどんどありません。

5.PPA処理は必ず専門家に依頼しよう

PPA処理は自社で行わず、必ず第三者の評価専門家に依頼するようにしましょう。

具体的には、公認会計士が多数在籍するM&A仲介会社が業務提携を行うことが多いです。

専門家に依頼する理由は3つあります。

  1. 専門知識と経験が必要だから
  2. 監査手続きの対策が難しいから
  3. 業績へ影響を与える可能性があるから

M&Aを行うときに頼ったプロに紹介してもらえるよう、相談しておきましょう。

理由1.専門知識と経験が必要だから

PPA処理をするには、専門知識と経験が必要です。

特に、無形資産の評価方法は難しく、決まった方法があるわけではありません。

さまざまなケースを経験していなければ、「無形資産の認識や評価の信頼性や妥当性が低い」と会計監査人に判断される可能性もあります。

そうなると、口頭指導や文書の指導が入ったり、追加の資料提出が求められることもあるのです。

さらに、監査結果が芳しくない場合、銀行や株主などの債権者からの会社の信用が失われることもあります。

最悪の場合、株式が売り払われ、株価が大暴落することもあるでしょう。

このように、会計監査人への対応は大変重要です。

知識と経験のある専門家に任せましょう。

理由2.監査手続きの対策が難しいから

PPAの監査手続きの対策はとても難しいです。

最終的にPPAの内容をまとめたレポートを会計監査人へ提出しますが、認められなければ何度も修正をしなければなりません。

M&Aが珍しかった数十年前までは無形資産を無視して会計処理ができました。

しかし、最近は無形資産の認識・評価に対して厳しいチェックが入っています。

会計監査人の対応は、専門家でなければ出来ない難しいものになっているのです。

理由3.業績へ影響を与える可能性があるから

PPAによって評価された無形資産をどのように償却するかによって、買い手企業の業績へ大きな影響を与えます。

無形資産の評価や償却期間を正しく設定しなければ、M&Aを行った年だけ大幅に業績が延びてしまったり、次年度に業績が落ち込むといったような現象が起きてしまうのです。

正しい評価・償却期間を設定するためには、専門家の知識が不可欠となります。

デューデリジェンス前から専門家へ相談するようにしましょう。

【補足】日本会計基準とIFRSの違い

ここまでPPAについて詳しく説明してきました。

この章では、2つの会計処理方法について詳しく説明していきます。

  1. 日本会計基準
  2. IFRS(国際財務報告基準)

M&Aの会計処理において、日本基準とIFRSの違いは大変重要といえます。

なぜなら、のれん(無形資産)の扱いが大きく異なるからです。

2つの会計基準について、詳しく確認していきましょう。

会計基準1.日本会計基準とは

日本会計基準では、20年以内にのれん償却をしなければなりません。

日本会計基準とは、1949年に大蔵省企業会計審議会が定めた「企業会計原則」を元に作られた会計基準です。

社会情勢や経済状況の変化に合わせて、過去に何度も改訂されてきました。

日本会計基準だと、のれん償却を行うため、のれんの非永続性を反映することが出来ます。

つまり、「のれんは会社の利益を生み出すが、永久に利益を生み出すわけではない」ということを会計上で反映できるのです。

もちろん、ブランド力や従業員のスキルなどの「のれん」の価値は下がりにくいです。

しかし、永続的ではなく、いつかは価値が下がってしまうものであることを覚えておかなければなりません。

会計基準2.IFRS(国際財務報告基準)とは

IFRS基準とは、International Financial Reporting Standardsの略で、国際財務報告基準のことです。

世界で100ヶ国以上で採用されている世界標準の会計基準となっています。

日本でのIFRS基準の任意適用が始まったのは2010年からで、現在は140社以上の上場企業がIFRS基準を採用しています。

IFRS基準では、のれん償却は行いません。

そのため、M&Aを頻繁に行う企業はのれん償却の必要がないため、IFRSを採用するケースが増えてきています。

ただし、のれん償却をしない代わりに、毎年のれんが利益を生み出すことに貢献しているかチェックが必要です。

このように日本会計基準とIFRSにはのれん償却の有無に違いがあります。

どちらの基準を採用するかによって、業績が大きく左右されるかもしれません。

安易にIFRSを採用するのではなく、必ず専門家へ相談しましょう。

まとめ

PPAとはM&Aによる買収後、1年以内に行わなければいけない会計上の手続きのこと。

正しいPPA処理を行わなければ、M&A後の業績に悪影響を及ぼしたり監査に引っかかる恐れがあります。

PPAの専門家に頼って、正しい会計処理を実行しましょう。

※M&Aについて、もっと詳しく知りたい場合は『M&Aとは?成功させるための基礎知識を世界一分かりやすく解説!』にわかりやすく説明しているので参考にして下さい。