M&Aの契約まとめ!秘密保持/意向表明/基本合意/最終契約【雛形あり】

M&Aの契約まとめ!秘密保持/意向表明/基本合意/最終契約【雛形あり】

M&Aは高額な資金が動く契約を締結するので、リスクを抑えるために多くの契約書を取り交わします。

契約書の内容に不備があると、M&Aの有効性が失われたり、損害賠償問題に発展したりと、様々な不都合が想定されます。本記事では、M&Aの契約書の目的や内容の解説と雛形を紹介します。

M&Aとは

M&Aとは

M&Aとは、企業の合併や買収の総称です。2つ以上の企業を1つに統合したり、ある企業が別の企業を買い取ったりすることを意味します。

M&Aで用いられる手法は多岐に渡り、企業の経営権を移転するものもあれば、事業のみを売却・買収して企業再生・事業規模拡大を図るものもあり、経営戦略の一環として幅広く活用されています。

これらの手法は、企業が抱える経営課題に合わせた手法を選択することで効果を最大化できますが、いずれの手法を用いたとしても必ず売り手と買い手が存在し、そこには資産の売却と高額な対価の支払いが伴います。

このことから、売り手と買い手の双方が安心してM&A取引を進行できるように複数の契約書を取り交わしながら進行します。

M&Aの際に交わされる契約一覧

M&Aの際に交わされる契約一覧

M&Aは進行に合わせてさまざまな契約を締結します。この章では、各契約の特徴と簡単な内容を解説します。それぞれの詳細については、後の章で個別に解説しています。

【M&Aの際に交わされる契約一覧】

  1. 秘密保持契約(機密保持契約)
  2. 意向表明
  3. 基本合意
  4. 最終契約
  5. M&Aアドバイザリー契約

①秘密保持契約(機密保持契約)

秘密保持契約(機密保持契約)は、ある取引に携わる上で知りえる情報を無許可で第三者に公開することを禁ずるという契約です。

ビジネス上の取引では企業の秘密情報を多分に含むことが多いため、取引に携わる者の間で秘密保持契約書を取り交わして情報の保護に努めます。

M&Aシーンにおいては、売り手の企業情報や双方がM&Aを検討している事実などの情報漏洩が致命的になります。

②意向表明

意向表明は、買い手のM&A取引に対する本格的な意向を示すことをいいます。売り手は複数の買い手を同時に選定することになるため、意向表明書が売り手にとって買い手企業選定の検討材料の1つとなります。

③基本合意

基本合意は、一定段階におけるM&Aの交渉内容に双方が合意していることを示すための契約です。

基本合意の契約書には、M&Aに用いる手法や取引価格も含まれますが、正式な決定というわけではありません。あくまで段階的な合意というもので、今後の交渉次第で内容が書き換えられます。

④最終契約

最終契約は、M&Aの最終段階で締結する契約です。この契約書が取り交わされるとM&A取引が正式に決定したことを意味します。基本合意の契約書を基に、その後の交渉内容を盛り込むことで最終契約書が完成します。

⑤M&Aアドバイザリー契約

M&Aアドバイザリー契約は、M&A当事者とM&Aアドバイザーの間で締結する契約です。

M&Aは、その複雑なプロセスや情報保護の観点から、客観性と専門性を併せ持つM&Aの専門家の仲介が欠かせません。M&Aを円滑に進めるために、M&Aの初期段階でM&Aアドバイザリー契約を締結します。

【関連】M&A契約書の書き方、印紙税、注意点を解説【雛形あり】

M&Aの際に交わされる秘密保持契約とは

M&Aの際に交わされる秘密保持契約とは

秘密保持契約は、M&Aで一番最初に締結する契約です。この契約がないと企業の情報が駄々漏れとなってしまうため、非常に重要な役割を果たします。

秘密保持契約の概要

秘密保持契約書の概要は以下の2点です。

【秘密保持契約の概要】

  1. 契約形態
  2. 契約範囲・期間

①契約形態

秘密保持契約は、売り手と買い手の双方がM&Aアドバイザーと締結します。基本的に売り手側の情報保護を目的としているため、売り手側の主導で契約書を作成することが一般的です。

②契約範囲・期間

秘密保持契約の有効期限は1~5年が一般的です。期間を長くしすぎても受領者のリスクを悪戯に増加させることになるので、適切な期間の設定が求められます。

秘密保持契約の範囲はM&A取引で知りえる情報全てです。しかし、これではいくつかの矛盾点が生じるため、秘密情報としない例外を設けることが一般的です。

【秘密情報から除外されるもの】

  • 情報開示以前から周知であった情報
  • 情報開示以後に受領者の責任以外で周知となった情報
  • 情報開示以前から受領者が所有していた情報
  • 情報開示以前から受領者が適切な手段で入手していた情報

秘密保持契約の目的

秘密保持契約の目的は、M&A取引において開示する情報を第三者に開示されることを防ぐことにあります。

売り手は、自社の適正な企業価値を伝えるために、さまざまな秘密情報を開示する必要があります。

なかには、事業の根幹をなすような技術や従業員の個人情報なども含まれるため、情報漏洩は防がなければなりません。

また、M&A取引を検討している事実も重要な秘密情報です。売り手は株式市場や従業員に対して悪影響を及ぼすことが想定され、買い手は同業界のライバル企業に動向を察知されてしまう恐れもあります。

秘密保持契約の必須項目

秘密保持契約の必須項目は以下の3つです。

【秘密保持契約の必須項目】

  1. 情報漏えい規程
  2. 秘密保持情報の範囲・対象機関
  3. 損害賠償

①情報漏えい規定

情報漏えい規程は、秘密保持契約の目的や禁止事項を定める項目です。秘密情報を保護する目的に取り交わす旨や、受領した情報を許可なく第三者に公開することを禁止する旨を記載します。

②秘密保持情報の範囲・対象機関

秘密情報とする範囲は、秘密情報とする定義を全て記載すると冗長化してしまうため、開示する全ての情報を秘密情報としたうえで、例外とする規程を設ける手法が一般的です。

対象機関は、M&A取引の当事者のことです。売り手と買い手の間で締結するものであることを記載します。

③損害賠償

損害賠償は、契約書の内容に反する行為が認められた際、損害賠償しなければならないことを定める項目です。

秘密保持契約書においては、主に受領者の過失で第三者に情報漏えいした場合が該当します。

秘密保持契約書の雛形

以下は、業務提携のシーンで活用される秘密保持契約書の雛形です。

秘密保持契約書

 株式会社○○(以下、「甲」という。)と××株式会社(以下、「乙」という。)とは、□□の製品化について共同して研究、開発するに当たって、次のとおり秘密保持契約を締結する。

第1条 (情報の開示)
甲及び乙は、業務提携契約を締結するに先立ち、甲は乙に対し□□の特性及び技術について、甲の秘密に属する情報を開示する。

第2条 (情報開示の目的)
甲が乙に対して甲の秘密に属する情報を開示するのは、□□の製品化について、甲乙が共同研究、開発するための業務提携契約締結の可否について、乙が検討するためである。

第3条 (目的外使用の禁止)
乙は、甲より提供を受けた情報を甲の許可なく開示又は漏洩してはならない。

第4条 (秘密事項)
この契約でいうところの「秘密事項」とは甲及び乙が□□の共同研究、開発に向けて協議中である事実及び甲が乙に提供する□□製品化のためのすべてのデータであり、甲より乙に開示又は提供されるものをいう。

2.以下のものについては、前項の「秘密事項」にはあたらない。
(1) 情報開示以前から周知であった情報
(2) 情報開示以後に乙の責任以外で周知となった情報
(3) 情報開示以前から乙が所有していた情報
(4) 情報開示以前から乙が適切な手段で入手していた情報

第5条 (秘密事項の管理)
1.乙は、甲より提供を受けた秘密事項を信頼できる管理者によって厳重に管理し、保持する義務を負う。
2.乙が甲より提供を受けた秘密事項は、必要最小限度の範囲で、乙の役員及び従業員(派遣社員、出向社員、契約社員等を含む)(以下、「従業員等」という)に開示することができる。乙は、当該役員又は従業員等に対して本契約で定めた事項については、その義務を遵守させるものとする。
3.乙は、前項に基づき乙の役員又は従業員等に秘密事項を開示するときは、甲に対しその氏名、開示する秘密事項の範囲及び内容を書面にて通知し、甲の承認を得るものとする。

第6条 (守秘義務)
1.乙は、甲より提供された秘密事項を甲の許可なく第三者に漏らしてはならない。
2.乙が甲より提供を受けた秘密事項を、外部の専門家に開示する必要がある場合は、甲の承諾を得なければらない。
3.乙が甲の承認に基、第三者に秘密事項を開示する場合は、乙と第三者は、本契約の同等の契約を締結しなければならない。

第7条 (複写・複製)
1.乙は、甲より提供を受けた秘密情報について、複写・複製する場合は、甲の事前承諾を得なければならない。また、承諾を得ている場合おいても、甲の了承した数量を超えてはならない。

第8条 (情報の返還・破棄)
1.乙は、本契約期間終了の日より○日以内に、甲より提供された秘密事項を、甲に返還、又は破棄しなければならない。
2.期間終了前であっても、甲から要請があった場合は、甲の指示に従い、甲から提供を受けた秘密事項ならびにその複製物および複写物の全てを、甲に返還、又は破棄しなければならない。

第9条 (損害賠償)
本契約の期間又は期間後に、乙が本契約に定める事項に違反したことにより、甲が損害を被った場合、乙は甲が被った損害を賠償するものとする。

第10条 (有効期間)
契約の有効期間は○○年○月○日より△△年△月△日までとする。

第11条 (協議)
本契約に定めのない事項又は疑義が生じた場合、甲乙は互いに誠意を持って協議のうえ、解決を図るものとする。

第12条 (管轄裁判所)
本契約に関して生じた一切の紛争については、○○地方裁判所を管轄裁判所とする。

 本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印の上各 1 通を保管する。

令和□□年□月□日
甲 東京都○○区○○1丁目2番3号
株式会社○○
代表取締役 ○○ ○○
乙 東京都△△区△△4丁目5番6号
××株式会社
代表取締役 ×× ××

M&Aの際に交わされる意向表明とは

M&Aの際に交わされる意向表明とは

意向表明は、買い手から売り手に対して提出する書面です。この書面は、厳密にいうと契約書ではありませんが、重要な役割を果たす書面なのでほかの契約書と同様に把握しておくことが大切です。

意向表明の概要

意向表明は、M&Aのトップ面談を終えた後で本格的な交渉へ入る直前に行うものです。法的な効力を持つものではなく、提出が義務付けられているものではありませんが、M&Aを円滑に進めるために活用されています。

意向表明の目的

意向表明を行う目的は、買い手の譲り受けに関する意思を示すことにあります。買い手の意向と求める条件が記載された意向表明書を提出すると、売り手に対して本格的な交渉へ入る意思を伝えることができます。

意向表明の必須項目

意向表明書は、参考資料として提出する意味合いが大きいものであるため、M&Aの基本的な情報以外に記載すべき項目というのはあまり存在しません。

M&Aの必要な基本的情報

M&Aに必要となる基本的な情報は以下の3つです。意向表明書を提出する場合、以下の3点は記載しなければ、わざわざ提出する意味が薄くなってしまいます。

【M&Aの必要な基本情報】

  • 譲り受けの意向
  • M&Aの手法
  • 買収希望価格

上記以外にも、その他の条件やデューデリジェンスなどの今後のスケジュールについても記載しておくと、今後の進行がさらに円滑になります。

意向表明書の雛形

意向表明書

この度は、貴社株式の譲受(以下「本件」)に係る検討の機会を賜り、深く感謝申し上げます。
つきましては、弊社の現時点における本件への意向を、以下の通り表明させていただきますので、よろしくご検討賜りますよう、お願い申し上げます。

1.弊社の概要
会社名:
代表者:
本社:
事業内容:

2.買収価格、譲受形態
(1)希望価格
〇〇万円

(2)譲受形態
発行済株式100%の譲受

3.対価の支払い方法
対価は、譲渡人宛銀行振込にてお支払いいたします。

4.従業員の承諾及び処遇
原則として、現状の雇用女権にて全従業員の雇用を維持します。

5.独占交渉権
令和○年○月○日まで、弊社に独占交渉権を付与していただき、弊社以外の第三者との間で本件取引に関する協議は行わないようお願い申し上げます。

6.デューデリジェンス
法務、財務、税務、ビジネスについて、弊社及び弊社の指定する専門家がデューデリジェンスを実施させていただきたいと存じます。
なお、調査の実施日、基準日・方法等の詳細につきましては、別途相談させていただきたいと存じます。

7.本意向表明書の有効期間
本意向表明書の有効期間は、本意向表明書の提出日から基本合意書締結日、精査後の本件取引に関する条件提示をした時点、本取引に関する検討の中止を表明した時点、本件取引に関する最終契約締結日、または令和○年○月○日のうち最も早く到来した時点までといたします。

M&Aの際に交わされる基本合意とは

M&Aの際に交わされる基本合意とは

M&Aの交渉がある程度進むと、基本合意という契約を締結します。現段階における交渉内容を確認するために基本合意書を取り交わします。

基本合意の概要

基本合意の概要は以下の2点です。

【基本合意の概要】

  1. 契約形態
  2. 契約範囲・開示期間

①契約形態

基本合意は、売り手と買い手の間で締結します。

基本合意まで進むと、M&A取引を実行するかどうかというものではなく、成約させるための具体的な交渉内容を決める段階に入っています。

売り手と買い手の双方が求める条件を仲介の専門家がとりまとめて、基本合意書へと落とし込みます。

②契約範囲・開示期間

基本合意の契約範囲は、M&Aに関する条件を記載します。ただ、法的な効力を持たせない形で取り交わすことが一般的です。

開示期間とは、M&A交渉を進めている事実を一般公開するタイミングのことです。上場企業は金融商品取引法で定められる適時開示に従う義務があります。

適時開示とは、上場企業は投資家の投資判断に大きな影響を与える情報は、全ての投資家に共有しなければならないという定めのことです。

M&Aにおける基本合意は最終的な決定ではありませんが、概ね成約に向かっていることが認められるため、適時開示が適用される可能性があります。

基本合意の目的

基本合意の目的は、売り手と買い手の交渉に関する認識の相違解消と、今後の要点を明らかにすることです。

基本合意の契約に至るまで、複数回に渡る交渉を行っているので双方が求める条件を確認しあったうえ、今後の交渉の要点となるポイントを明確にします。

基本合意の必須項目

基本合意の必須項目は以下の4つです。

【基本合意の必須項目】

  • 買収の条件
  • 各種義務事項
  • 交渉に関する項目
  • スケジュール

①買収の条件

M&A取引に用いる手法や買収価格についての記載です。今後の交渉次第では、手法や買収価格は変更される可能性があります。

②各種義務事項

各種義務とは、秘密保持義務や誠実交渉義務が該当します。秘密保持義務は、M&A取引において開示される情報を第三者に公開してはならないことを定める項目です。この際、M&Aの仲介役である専門家は例外とされます。

誠実交渉義務は、売り手と買い手の双方がM&A成約に向け、誠実に交渉に取り組むことを定める項目です。

省略されることも珍しくない項目ですが、その場合においても不誠実な交渉はトラブルの温床となるため注意が必要です。

③交渉に関する項目

交渉については、独占交渉権が主だった内容になります。独占交渉権は、売り手が第三者との交渉を進めてはならないことを定める項目です。

基本合意の締結後からは本格的な費用が伴うことになるため、売り手は買い手候補を1社に絞って交渉に努める義務があります。

買い手はできるだけ長い有効期限を設定したいところですが、長過ぎる期間設定は売り手の売却チャンスを失うというリスクもあります。双方の交渉で適切な期間を定める必要があります。

④スケジュール

基本合意の締結からM&A成約までの具体的なスケジュールを記載します。基本合意後に控えている交渉に関する工程は、デューデリジェンス(買収対象の価値・リスクを調査する活動)です。

潜在的なリスクを洗い出すために、買い手から専門家を派遣して徹底的な調査を行います。このデューデリジェンスのスケジュールや、費用負担の取り決めなどが主となっています。

基本合意書の雛形

基本合意書

株式会社〇〇(以下「甲という」)と××株式会社(以下「乙という」)は、甲が乙の株式を譲り受けることに関し、以下のとおり基本的な合意に達したので、ここに基本合意書(以下「本合意書」という。)を締結する。

第1条(取引の内容)
1.乙は、甲に対し、乙が所有する対象会社の発行済株式合計○株を譲渡するものとし、甲は乙からこれを譲り受ける。
2.取引価格は、対象株式1株あたり金○円とする。

第2条 (乙の従業員の処遇)
甲は、本件株式譲渡後当分の間、本件株式譲渡時点において雇用している従業員の雇用を維持するとともに、労働条件を実質的に下回らないことを保証する。

第3条(表明及び保証)
乙は、最終契約書において、甲に対し、対象株式の実在性・妥当性等に関し、買主との間で合意した事項につき表明保証を行うものとする。

第4条(デューデリジェンス)
甲は、本契約の締結後○か月以内において、甲及び甲の指定する専門家がデューデリジェンスを実施するものとし、乙はこれに最大限協力するものとする。

第5条(善管注意義務)
乙は、特別な事由があった場合を除き、最終契約締結日までの間、善良なる管理者による運営のもと、以下の行為を行わず、重大な変更を生じさせる行為を行ってはならない。
(1) 増減資、新株予約権の発行
(2) 新たな設備の借入、投資
(3) 重要な資産の譲渡、処分、購入
(4) 従業員の雇用に関する大幅な変更
(5) 重要な取引先の条件変更
(6) 非経常的な契約の締結及び解約

第6条(誠実交渉義務)
甲及び乙は、本合意書締結後、最終契約書の締結に向けて誠心誠意努力するものとする。

第7条(独占的交渉権)
乙は、有効期間中は、第三者との間で、乙の所有する株式の売却や増資の引受等の取引をできないものとし、交渉、情報交換等を行ってはならない。

第8条(買主の解除権)
乙に、以下の事由があった場合、甲は乙に対して書面で催告後○日を経過するまでに改善が見られない場合は、甲は本合意書を解除することができるものとする。
(1) 乙が本合意書に違反した場合、または、乙の重大な過失により本合意書の目的が達成できない場合
(2) 主要な取引先の倒産、天変地異その他不可抗力等の外的要因により、甲及び乙の財務内容、資産状態その他について重大な変動が生じ、本件株式譲渡の実行が不可能であると認められる場合
(3) 本件調査により、乙の財務内容、資産状態その他に関わる情報の詳細が明らかとなり、乙の企業価値について重大な影響を及ぼす事象が認められる場合

第9条(秘密保持義務)
1.甲は、乙より提供を受けた情報を「秘密事項」とし、乙の許可なく開示または漏洩してはならない。
2.以下のものについては、前項の「秘密事項」にはあたらない。
(1) 情報開示以前から周知であった情報
(2) 情報開示以後に乙の責任以外で周知となった情報
(3) 情報開示以前から乙が所有していた情報
(4) 情報開示以前から乙が適切な手段で入手していた情報

第10条(有効期間)
契約の有効期間は○○年○月○日より△△年△月△日までとする。

第11条(協議事項)
本契約に定めのない事項又は疑義が生じた場合、甲乙は互いに誠意を持って協議のうえ、解決を図るものとする。

第12条(適用法と裁判管轄)
本契約に関して生じた一切の紛争については、○○地方裁判所を管轄裁判所とする。

本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印の上各 1 通を保管する。

令和□□年□月□日
甲 東京都○○区○○1丁目2番3号
株式会社○○
代表取締役 ○○ ○○
乙 東京都△△区△△4丁目5番6号
××株式会社
代表取締役 ×× ××

M&Aの際に交わされる最終契約とは

M&Aの際に交わされる最終契約とは

M&Aの最終段階となる最終契約です。ここまでの交渉を包括する内容となり、重要な契約書です。

最終契約の概要

最終契約は、売り手と買い手の間で締結します。M&Aの総仕上げともいえる契約書となっており、全ての項目において法的な効力を持ちます。

最終契約書の締結後は、契約を破棄すると破棄された側に損害賠償を請求する権利が与えられます。気軽に取り消しすることはできませんので、締結の際は全ての項目を理解しておく必要があります。

また、最終契約書で注意すべき点として印紙代があります。印紙とは、行政機関に手数料を支払う際に利用する切手のような紙です。

株式譲渡の場合、最終契約書に売上代金に関する記載を行わないため、印紙税を納める必要はありませんが、事業譲渡の場合はその限りではありません。

印紙税については国税庁のホームページで公開されており、事業譲渡の取引価格に応じて200円~60万円の印紙税が課せられることが記載されています。

【関連】事業譲渡契約書の書き方や記載内容、注意点!印紙代も紹介

最終契約の目的

最終契約の目的は、最終的な交渉内容を決定することにあります。最終契約書の内容に基づいて、クロージング(売り手の資産の引き渡しと買い手の対価の支払い)が行われます。

また、クロージングを実現させるための条件を定めておく目的もあります。最終契約の締結日からクロージングまで一定の期間を空けることが一般的のため、クロージングに向けた取り組みも定めます。

最終契約の必須項目

最終契約の必須項目は以下の4つです。

【最終契約の必須項目】

  1. 前提条件
  2. 契約義務
  3. 表明保証
  4. 補償条項

①前提条件

前提条件は、最終契約書に定める条件が満たされなければクロージングを実行しないという定めです。

最終契約の締結からクロージングの実行までに、状況が著しく変化することを防ぐために定められる項目です。

②契約義務

契約義務は、売り手がクロージング実行日までに果たすべき義務のことです。その代表例は、人材の流出です。M&Aによる環境の変化に対する漠然とした不安から、従業員が自主退職する自体が想定されます。

重要な人材や大量の労働力の流出があると、買い手にとって大きな痛手となるため、売り手は人材流出の阻止に努める義務があります。

③表明保証

表明保証は、最終契約書の内容に関して一定の項目が真実であることを証明する定めです。表明保証に反する内容が認められた際に責任の所在を明らかにするために定めておきます。

④補償条項

補償条項は、前提条件や契約義務、表明保証に違反した場合の補償に関する取り決めを定める項目です。損害賠償の上限・下限額や対象期間を記載しておくことが一般的です。

最終契約書の雛形

株式譲渡契約書

○○株式会社(以下、「甲」という)及び××株式会社(以下、「乙」という)は、乙の株式の譲渡に関し、以下の通り契約を締結する

第1条(目的)
1.乙は、甲に対し、乙が所有する対象会社の発行済株式合計○株を譲渡するものとし、令和○○年○○月○○日又は甲乙別途合意する日(以下、「譲渡日」という)をもって、甲は乙からこれを譲り受ける。
2.取引価格は、対象株式1株あたり金○円とする。

第2条(株式譲渡の実行) 
前条に定める本件株式の譲渡は、譲渡日において、株主名簿の名義書換の請求を行う。

第3条(譲渡価額及び支払方法)  
1.乙は、本件株式の全てを、令和○○年○○月○○日限り、1株につき金〇円、譲渡の対価として金○円(以下、「本件譲渡価額」という)にて甲に譲渡する。甲は、乙に対し、譲渡日において、株主名簿の名義書換の請求と引換えに本件譲渡価額を支払うものとする。
2.前項に定める支払いは、乙の指定する金融機関の口座に振り込む方法により支払う。

第4条(表明及び保証) 
乙は、本株式譲渡契約書において、甲に対し、対象株式の実在性・妥当性等に関し、買主との間で合意した事項につき表明保証を行うものとする。

第5条(補償)
甲又は乙は、前条に定めた項目に違反があった場合、それによって相手方が被った損害、損失、費用等を合理的範囲内で相手方に賠償又は補償するものとする。

第6条(秘密保持義務)
1.甲は、乙より提供を受けた情報を「秘密事項」とし、乙の許可なく開示または漏洩してはならない。
2.以下のものについては、前項の「秘密事項」にはあたらない。
(1) 情報開示以前から周知であった情報
(2) 情報開示以後に乙の責任以外で周知となった情報
(3) 情報開示以前から乙が所有していた情報
(4) 情報開示以前から乙が適切な手段で入手していた情報

第7条(準拠法) 
本契約は、日本法に準拠するものとし、これに従って解釈されるものとする。

第8条(管轄裁判所)
本契約に関して生じた一切の紛争については、○○地方裁判所を管轄裁判所とする。

第9条(協議条項) 
本契約に定めのない事項又は疑義が生じた場合、甲乙は互いに誠意を持って協議のうえ、解決を図るものとする。

 本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印の上各 1 通を保管する。

令和□□年□月□日
甲 東京都○○区○○1丁目2番3号
株式会社○○
代表取締役 ○○ ○○
乙 東京都△△区△△4丁目5番6号
××株式会社
代表取締役 ×× ××

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M&Aの際に交わされるアドバイザリー契約とは

M&Aの際に交わされるアドバイザリー契約とは

アドバイザリー契約は、M&Aの初期段階で締結する契約です。交渉に直接関わるものではありませんが、M&Aを進行するうえで重要となるものです。

M&Aアドバイザリー契約の概要

M&Aアドバイザリー契約は、M&A当事者とM&Aの専門家の間で締結します。売り手と買い手の双方が同じ専門家と契約することもあれば、別々の専門家と契約することもあります。

M&Aアドバイザリー契約は「専任契約」と「非専任契約」があります。専任契約は他の専門家とM&Aアドバイザリー契約を締結しないという契約です。

情報保護の観点で大きなメリットがある一方、契約した専門家の能力や取り組みに強く依存してしまうというデメリットがあります。

非専任契約は複数の専門家との契約締結が可能な契約です。同時に多くのM&A取引相手を探すことができますが、契約した数だけ情報を提供することになるため、情報流出リスクが高まります。

どちらを採用しているかは専門家によりますが、両方採用していて自由に選択できるところも存在します。

M&Aアドバイザリー契約の目的

M&Aアドバイザリー契約の目的は、M&Aの専門家のアドバイス・サポートを受けることです。

M&Aの交渉は当事者間で進めることも不可能ではありませんが、長期に渡る交渉や多岐に渡る複雑な工程を日頃の業務と並行するのは非現実的といえるでしょう。

M&Aに関する知識を持った専門家にサポートを依頼することで、M&Aを円滑に進めることができます。

M&Aアドバイザリー契約の必須項目

M&Aアドバイザリー契約を締結すると、M&Aの専門家が独自に採用する料金体系に準じた手数料が発生します。

【M&Aアドバイザリー契約の必須項目】

  1. 報酬発生の条件
  2. 手数料・相談料・報酬などの条件

①報酬発生の条件

報酬発生の条件は、どういう名目の手数料がどのタイミングで発生するか、という条件を記載します。M&Aの成約に関わらず支払いが必要な手数料も存在します。

②手数料・相談料・報酬などの条件

M&Aの専門家が採用する一般的な報酬体系は以下の4種で構成されるものです。

【M&Aの専門家の一般的な報酬体系】

  • 相談料
  • 着手金
  • 中間金
  • 成功報酬

相談料以外は、M&Aの規模に応じて変動することが一般的です。固定費として分かりやすいものではないので、条件について確認しておくことが大切です。

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M&Aの主な流れと各種契約のタイミング

M&Aの主な流れと各種契約のタイミング

ここまで述べた契約は、M&Aの流れのなかで順次締結します。この章では、M&Aの全体的な流れと各種契約のタイミングを解説します。

【M&Aの主な流れと各種契約のタイミング】

  1. M&Aの専門家に相談する
  2. M&Aの秘密保持契約の締結
  3. 候補会社の選定
  4. トップによる会談
  5. 意向表明書の提示
  6. M&A時の売却価格等の交渉
  7. 基本合意書の締結
  8. デューデリジェンスの実施
  9. 最終条件の交渉・最終契約書の締結
  10. クロージング

①M&Aの専門家に相談する

M&Aを検討する際は、M&Aの専門家に相談することから始めます。この段階ではM&Aの意思が固まっていないことが多いので、相談内容は「取引価格の見積もり」や「M&A成約の可能性」などがほとんどです。

これらの相談を行ったうえでM&Aの具体性がみえてきたら、M&Aアドバイザリー契約を締結して正式にサポートを依頼します。

②M&Aの秘密保持契約の締結

M&Aアドバイザリー契約の締結後は、M&A進行のために企業の情報を提供することになるので、秘密保持契約も締結します。

③候補会社の選定

ノンネームシートを作成して、複数の候補会社に打診します。この際に反応を示した候補会社に対しては、ネームクリアをして企業概要書を提供します。

④トップによる会談

交渉に前向きな姿勢をみせる買い手が現れたら、双方の経営陣の初顔合わせとなるトップによる会談を実施します。

M&A対象となる企業や事業に関する内容、M&Aに求める条件について双方からの質問が行われます。

⑤意向表明書の提示

トップによる会談を経て本格的な交渉に移る場合は、買い手より意向表明書が提示されます。

ここまで進むとM&A成約に向けて実感が出てくる頃であり、並行していた複数の買い手選定を一旦取りやめて、1社との交渉に専念することも多いです。

⑥M&A時の売却価格等の交渉

意向表明書の提出後は、売却価格などの具体的な交渉へと入ります。売り手は提示する売却価格に納得感を持たせるため、自社の強み・魅力をアピールに努めます。

⑦基本合意書の締結

売却価格を始めとした諸条件の交渉が落ち着いたら、基本合意書の締結です。M&Aの取引条件など、ここまでの交渉内容を取りまとめたうえで記載し、今後の交渉の指針にします。

⑧デューデリジェンスの実施

基本合意書を締結すると、間もなくデューデリジェンスです。デューデリジェンスは、財務データなどの資料・書面からは分からない潜在的リスクを調査するために、実地調査を行います。

⑨最終条件の交渉・最終契約書の締結

デューデリジェンスで大きな問題がみつからなかった場合は、基本合意書に結果を反映させて最終契約書を作成・締結します。

⑩クロージング

最終契約書の締結日から一定期間空けてクロージングです。売り手の資産の引き渡しと買い手の対価の支払いが終わったら、M&A取引の全てが完了です。

M&Aの際に結ばれる各種契約を学べる書籍

M&Aの際に結ばれる各種契約を学べる書籍

M&Aを勉強する方法の1つに書籍を活用する方法があります。M&Aの専門家が出版しているものばかりなので、分かりやすく解説されているものが多いです。この章では、M&A契約に関する解説書として、評価の高い書籍を紹介します。

M&A契約――モデル条項と解説

本書は、M&A仲介を扱っている法律事務所に在籍する弁護士4人が共同出版している本です。M&Aの最前線で10年以上活躍しているベテラン弁護士によるものなので、実務で活用できる知識が詰まっています。

主な内容は、M&Aを進めるうえで締結する契約についてです。各種契約が売り手・買い手にとってどういう意味を持つのかという視点で分かりやすく解説されています。M&Aの契約に関する勉強でしたら、本書の購入をおすすめします。

M&Aのご相談はM&A総合研究所へ

M&Aのご相談はM&A総合研究所へ

M&Aは進行に合わせてさまざまな契約を締結します。契約書の内容は複雑になっており、全てを正しく把握するためには、膨大な時間と労力を要します。

M&Aや契約書の内容に関してお悩みの際は、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&A経験の豊富な弁護士が法的な内容を含む契約書の作成を担当します。

それぞれに記載される項目の意味についても適宜解説しながら進行する形式を取っていますので、安心して相談いただけます。

料金体系は完全成功報酬制を採用しています。着手金や中間金は発生せず、クロージングした段階で初めて成功報酬が発生するタイプです。無料相談は24時間お受けしています。M&Aの際はお気軽にご連絡ください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所

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まとめ

まとめ

本記事では、M&Aの契約の意味や契約書の内容について解説しました。M&Aの進行に合わせて取り交わす契約書はそれぞれが発揮する効果が異なるため、それら全てを理解しようとするには時間がかかります。

独学の知識で失敗すると大変なことにもなりかねないので、必要に応じてM&Aの専門家への相談も検討してみるとよいでしょう。

【M&Aの際に交わされる契約一覧】

  1. 秘密保持契約(機密保持契約)
  2. 意向表明
  3. 基本合意
  4. 最終契約
  5. M&Aアドバイザリー契約

【M&Aの主な流れと各種契約のタイミング】

  1. M&Aの専門家に相談する
  2. M&Aの秘密保持契約の締結
  3. 候補会社の選定
  4. トップによる会談
  5. 意向表明書の提示
  6. M&A時の売却価格等の交渉
  7. 基本合意書の締結
  8. デューデリジェンスの実施
  9. 最終条件の交渉・最終契約書の締結
  10. クロージング