競業避止義務とは?雛形を見ながらM&Aにおける競業避止義務を理解しよう

競業避止義務についてお調べですね。

M&Aにおける競業避止義務とは、M&A成立後に売り手企業が売却した事業に関する競業行為を禁止することです。

競業避止義務を正しく理解しておかなければ、M&A成立後に大きな損害を被るかもしれません。

そこで今回は、競業避止義務の規定文の作成例や気を付けるポイントを分かりやすく解説しています。

競業避止義務についての理解を深め、リスクを抑えたM&Aを実現しましょう。

1.競業避止義務とは

競業避止義務とは、自社の利益を損ねる競業行為を禁止するという意味です。

一般的に、競業避止義務には2つの概念があります。

1つは、従業員が務める企業の不利益となるような兼業などの競業行為を禁止することです。

勤務先で知りえた人脈やノウハウを利用して、従業員が違う商売をしてしまうと、企業にダメージを与える恐れがあります。

2つ目は、企業を退職した従業員が競合他社への就職を禁止することです。

たとえば、Aという製薬会社から別のBという製薬会社へ転職することを禁止するといった内容を指します。

なぜなら、A社の持つ研究内容や顧客情報をB社に流出する恐れがあるからです。

このように、競業避止義務を従業員へ課すことは、自社の利益を守ることへと繋がります。

ただし、M&Aにおける競業避止義務は少し意味が異るので、次の章で詳しく確認しましょう。

2.M&Aにおける競業避止義務とは

M&Aにおける競業避止義務とは、M&A成立後に売り手企業が売却した事業に関する競業行為を禁止することです。

売り手企業の経営者が同業の企業を設立してしまうと、買収した意味がありません。

買い手企業は、膨大な対価を支払ってで手に入れた事業の競業をされてしまうと、大きな損失に繋がる恐れがあります。

そのため、M&Aの契約書では買い手企業に対して一定期間・範囲の競業避止義務条項が盛り込むのです。

競業避止義務の期間

競業避止義務の一般的な期間は、10年~20年程度です。

しかし、事業譲渡の場合は原則20年間の競業避止義務が課せられます。

これは、会社法21条に明記されていることです。

ただし、両社の同意があれば伸長もしくは短縮することも出来ます。

通常、買い手企業側は利益を最大化するために期間を伸長したいと考えるはずです。

短縮に制限はありませんが、最長30年間まで伸長することができます。

実際にどのような規定文が盛り込まれるのか次の章で見てみましょう。

3.競業避止義務の規定文の参考例

そっそく、競業避止義務がどのようなものなのか、規定文の参考例を見てみましょう。

  • A社:買い手企業
  • B社:売り手企業

競業避止に関する契約書

A社とB社は以下の通り競業避止契約を締結する。

第一条. B社はA社に対し○年○月○日から○年○月○日までの20年間、以下に示す競合・競業行為を行わないことを制約する。
①A社と競合になる企業や提携先企業に就職・役員に就任すること
②A社の競合となる事業を自ら開業・設立すること
③A社の従業員に対し、A社の競合になる企業への就職のあっせんをすること

第二条. A社は、B者が前条の競業避止義務を遵守することの対価として、金○○円をB社へ支払い、B社は受領した。

第三条. B者が競業避止義務を遵守しなかった場合、A社はB社に前条の対価の返還を求めることが出来る。
さらに、B社がA社の競業行為によって損害を被った場合には、A社はB社に対して賠償を求めることが出来る。

以上の通り契約が成立したことを証明するため、本書2通を作成し、各自署名押印のうえ1通を所有する。

以上のような規定文を作成し、両社の署名押印を行います。

基本的には、買い手企業が売り手企業に対して求める競業避止義務のため、買い手企業が規定文を作成することになります。

次の章で有効な競業避止義務規定文を作るポイントを確認していきましょう。

4.有効な競業避止義務規定文を作る3つのポイント

競業避止義務規定文を作るときには、万が一裁判になった場合でも有効となる文章を作らなければなりません。

売り手企業が競業避止義務を守らなかったことで損害を被っても、規定文が有効でなければ賠償を求めることが出来ないからです。

そこで以下の3つのポイントを押さえる必要があります。

  1. 合理性のある内容にする
  2. 対象者や期間、地域を明示する
  3. 代償措置を用意する

それぞれ詳しく確認しましょう。

ポイント1.合理性のある内容にする

まずは、合理性のある内容にするべきです。

  1. 対象者
  2. 期間
  3. 事業内容

以上の3つをしっかりと検討しなければなりません。

  • 本当に全従業員に課すべきか?
  • 期間は長すぎないか?
  • そもそも競業避止義務を設けるほどの事業内容なのか?

といった点を協議しましょう。

ポイント2.対象者や期間を明示する

検討した対象者や期間を規定文の中に明示しましょう。

第三者が見ても同じ理解が得られるような書き方をしなければなりません。

曖昧になっていると、裁判になったときに不利に働きます。

ポイント3.代償措置を用意する

あらかじめ代償措置を用意しておきましょう。

代償措置を用意していなければ、競業避止義務の有用性を否定されることが多いです。

  • 競業避止契約のために支払った費用を返還する
  • M&Aによる譲渡価格の20パーセントの支払いを賠償とする
  • 違反によって被った被害額を賠償とする

など、しっかりと代償措置を明示しておきましょう。

5.競業避止義務における2つの注意点

続いて競業避止義務の注意点を確認しましょう。

注意点は2つあります。

  1. 従業員や経営陣の将来を縛ってはいけない
  2. 買い手企業の取締役も競業避止義務が課される

2つの注意点について、詳しく確認しましょう。

注意点1.従業員や経営陣の将来を縛ってはいけない

競業避止義務を売り手企業に課すときには、売り手企業の従業員や経営陣の将来を想定して作成する必要があります。

というのも、従業員や経営陣も退職後生活をしていかなければなりません。

基本的に労働者が再就職でどのような仕事を選ぶかは自由です。

たまたま勤めていた企業がM&Aをしたからといって厳しい制限を設けるのは不条理といえます。

どうしても他の企業にと止めて欲しくないというのであれば、買い手企業が好条件を提示し、働いてもらうことがベストです。

一方的な競業避止義務を課すのではなく、出来るだけ自社で勤めてもらえるよう努力をしましょう。

注意点2.買い手企業の取締役にも競業避止義務が課される

買い手の取締役にも競業避止義務が課せられることがあります。

なぜなら、取締役であれば事業の機密情報やノウハウ、人脈を使って独立することで、買い手企業と競合する可能性があるからです。

特に、取締役であれば自社の社員の引き抜きも簡単なため、利益の損失は膨大になってしまいます。

そのため、取締役が退職したり他の事業を立ち上げる時には、事業内容が競業していないか取締役会で確認される可能性が高いです。

これはM&Aに関係なく、既存事業にも当てはまります。

このように、売り手企業に対してだけでなく、買い手企業の取締役にも競業避止義務が発生する可能性があることを覚えておきましょう。

6.競業避止義務違反によって賠償金が発生したケース

最後に競業避止義務違反によって賠償金が発生したケースを確認しましょう。

  1. 買収した衣料ECサイトとの類似サイトが見つかったケース
  2. 解雇された取締役が反発して競業となる事業を立ち上げたケース

これら2つのケースに賠償金が発生したのは、競業避止義務規約文が明確なものだったからです。

それでは2つの事例を確認しましょう。

ケース1.買収した衣料ECサイトとの類似サイトが見つかった

まずは衣料ECサイトのM&Aのケースを見てみましょう。

A社
買い手企業
日本の多数ブランドを取り扱うECサイトを運営。
海外ブランドを取り扱いたかったため、B社の運営するECサイトが魅力的だった。
3,000万円でサイトを買収。
B社
売り手企業
韓国ブランドばかりを取り扱うECサイトを運営
エンジニアなどの従業員は社内に残しECサイトや韓国ブランドとの契約などECサイト経営に関する資産のみを売却。

A社はB社の運営するECサイトを取り込むことで、顧客が増え売り上げもアップすると考えました。

さらに、B社の運営ノウハウも取り込むことが出来、シナジー効果も期待できると判断したのです。

そこで、3,000万円の譲渡価格でM&Aが成立。

もちろん、競業避止義務に関する契約も交わしていました。

ところが、やっと引継ぎが終わり買収したサイトの運営権がA社に移ったタイミングで類似サイトの運営がスタートしていたのです。

すぐに調査をすると、運営元はB社。

ターゲットや取り扱うブランドも類似しており、A社が「競業避止義務違反だ」と主張しました。

しかし、それでも運営が続いたため、裁判に発展したのです。

裁判結果

裁判の結果、2,000万円の支払い命令が出ました。

2000万円の内訳は、新サイトの売り上げ500万円とM&A譲渡価格の半額である1,500万円の合計金額です。

この賠償金額は、もともと競業避止義務規定文に書かれていた内容がそのまま判決となりました。

M&A成立後すぐの競業避止義務違反だったため、求めた賠償金すべてを支払ってもらうことが出来たのです。

ケース2.解雇された取締役が反発して競業となる事業を立ち上げた

D社がC社を買収して、子会社にするというM&Aがありました。

C社の経営者であるE氏は、D社の取締役として残る予定だったのですが、方針が合わず退任することに。

このとき、2年間の競業避止義務の契約をC社・D社・E氏の間で取り交わされました。

しかし、1年も経たないうちにE氏は反発してC社と競業となる事業を立ち上げたのです。

そのため、C社とD社は一緒になって競業避止義務の存在を求める裁判へと発展しました。

裁判結果

裁判の結果、競業避止義務違反が認められ、300万円の支払い命令が出ました。

E氏は職業選択の自由を訴えましたが、2年間という短い期間の拘束期間が妥当だと判断され、違反と認定されたのです。

300万円の内容は、E氏が立ち上げた事業の売り上げに当たります。

事業の売り上げ=C社・D社の損失とみなされたのです。

このように、M&Aにおいて競業避止義務は大切な契約といえます。

まとめ

競業避止義務とは、M&A成立後に売り手企業が売却した事業に関する競業行為を禁止することです。

万が一、違反があった場合に有利に裁判を進めるためには、規定文の内容が肝となります。

一番は違反がないことですが、未来のことは予測できません。

自社を守るためにも、M&Aをする際には専門の弁護士のいるM&A総合研究所のようなM&Aアドバイザーへ依頼するようにしましょう。

そうすることで最小限のリスクに抑えてM&Aを実行することが出来ます。

※M&Aについて、もっと詳しく知りたい場合は『M&Aとは?成功させるための基礎知識を世界一分かりやすく解説!』にわかりやすく説明しているので参考にして下さい。