事業譲渡の消費税まとめ!計算方法や納税方法を解説!営業権はどうなる?

事業譲渡の消費税まとめ!計算方法や納税方法を解説!営業権はどうなる?

事業譲渡は数あるM&A手法のなかでも利用されることが特に多いものですが、事業譲渡は金銭の支払いをもって成立するため消費税の課税対象となります。事業譲渡の場合は営業権の扱いも注意する必要があるので、事前に把握しておくことが大切です。

事業譲渡の消費税

事業譲渡の消費税

事業譲渡を実施すると発生する税金は、主に消費税と法人税の2つです。消費税は事業譲渡で引き継ぐ資産に対して課税されるものですが、全てが課税対象となるわけではありません。

2019年10月より消費税10%に引き上げも行われ、事業譲渡を行うM&A当事者の負担はさらに増加しています。計画的に事業譲渡を進めるためにも、引き継ぐ資産や消費税の概要について把握しておくことが大切です。

事業譲渡とは

事業譲渡とは、事業の全部あるいは一部を譲渡(売却)するM&A手法です。事業譲渡の取引対象となるのはその名のとおり事業であり、会社の経営権は保有したままになります。

事業譲渡の対象は、会社が保有する資産から自由に選択することができ、土地や建物のような有形資産のみならず、人材や技術のような無形資産の譲渡も可能です。

事業者の采配で選択できますので、不採算事業の清算や採算事業の切り出しなど、事業の選択と集中する手段として事業譲渡が幅広く活用されています。

【関連】事業譲渡とは?仕組みや手続きを理解し、効果的に事業を売却しよう!

事業譲渡の消費税とは

事業譲渡の消費税は、買い手に対して課税されられます。クロージングの際に取得対価と消費税の支払いを行い、受け取った売り手が管轄の税務署に消費税を納税するという流れになります。

事業譲渡の際の消費税も増税対象

2019年10月より消費税が10%に増税され、食料品等の一部の軽減税率対象品目は8%のままですが、事業譲渡にかかる消費税は10%が適用されます。

課税対象資産の10%相当が消費税として課せられるため、買い手側は最大1.1倍相当(取得対価+消費税)の買収資金を用意しておく必要があります。

事業譲渡の際は法人税も発生

事業譲渡の際は、消費税のほかに法人税(地方法人税・法人住民税・法人事業税)も発生します。消費税は買い手負担ですが、法人税は売り手が負担します。

事業譲渡の際に法人税が課せられる対象は譲渡益であり、売却額から譲渡資産の簿価を差し引き譲渡益を算出して法人税率(30~40%前後)を掛けて算出します。

事業譲渡の消費税は課税資産と非課税資産に注意

事業譲渡の消費税は課税資産と非課税資産に注意

事業譲渡の消費税は、全ての引き継ぎ資産に対して課せられる税金ではありません。課税資産と非課税資産に分類されており、課税資産に対してのみ消費税が課せられます。

事業譲渡を行う業種によっては非課税資産が主体となることもあるので、効果的な消費税対策を施すことも可能です。課税資産と非課税資産の分類について解説します。

課税資産

まずは課税資産です。事業譲渡で引き継ぐ資産のうち、以下の資産は課税資産と分類されて消費税10%が課せられます。

【事業譲渡の際の課税資産】

  1. 有形固定資産
  2. 無形固定資産
  3. 棚卸資産
  4. 営業権(のれん代)

1.有形固定資産

有形固定資産とは、事業活動のために長期に渡って運用する目的で保有する形のある資産を指します。主に該当するものは、建物・工具・機械・その他設備などです。

ポイントは、土地は課税資産に含まれないという点です。事業譲渡の際、土地はあくまでも資本の移転とされ、消費されるものではないという考えから消費税の課税資産に含まれません。

2.無形固定資産

無形固定資産とは、長期に渡って利用できる形のない資産のことです。事業譲渡の場合、特許権・商標権などの知的財産権が該当します。

有形固定資産のように目にみえるものではありませんが、確かな会社の資産として評価されるものであるため、消費税も同様に課せられます。

3.棚卸資産

棚卸資産とは、販売・加工目的で一時的に保有している商品・製品・原材料などを指します。会社が保有する倉庫に保管していることが多く、一般的に在庫と呼ばれているものです。

事業譲渡の際、石油製品・石炭製品や鉄鋼業など製造業は、棚卸資産の割合が大きくなる傾向にあります。

棚卸資産を正確に把握できていないと、想定以上の消費税がのしかかることもありますので、注意が必要です。

4.営業権(のれん代)

営業権(のれん代)は、事業譲渡の対象が将来的に生み出す収益価値を指します。無形固定資産と同様に目にみえるものではなく、技術・ノウハウ・ブランドなど、独自の収益力を営業権として換算したものです。

事業譲渡の際、これらの資産が評価されることで譲渡対象の簿価よりも高い金額で取引が行われ、営業権が発生します。営業権はほかの課税資産と同様、消費税10%が課せられます。

非課税資産

続いては、非課税資産です。以下に挙げる資産は非課税資産とされているため、事業譲渡時の消費税はかかりません。

【事業譲渡の際の非課税資産】

  1. 土地
  2. 有価証券
  3. 債権

1.土地

土地は有形固定資産に含まれるものですが、消費されるものではないため、事業譲渡で土地を引き継いでも消費税はかかりません。

例えば、ある工場を事業譲渡する場合なら、建物や建物内の設備は課税資産として10%が課税されますが、土地は非課税資産として消費税の課税対象から外されます。

2.有価証券

有価証券は、単体で財産的価値のある証券です。株式・社債・手形・小切手など、簡単に移転させることができるものなので、国や会社の資金調達手段として活用されています。

3.債権

債権は、債権者が債務者に対して一定の行為を請求することができる権利です。債権は発生した段階で消費税も課税されていますので、事業譲渡の引き継ぎ段階で再度課税されることはありません。

事業譲渡を行った際の営業権(のれん代)はどうなる?

事業譲渡を行った際の営業権(のれん代)はどうなる?

事情譲渡時の営業権(のれん代)は、消費税の課税資産です。営業権は譲渡対象の簿価より高い評価を行ったことで発生しますが、消費税負担が大きくなるデメリットがあることを忘れてはなりません。

事業譲渡の際、営業権は主に企業価値評価の「DCF法」を使って算出します。将来的な収益価値の現在の価値に換算するというもので、事業の無形資産を評価する際に広く活用されています。

また、中小規模の事業譲渡では、営業権の評価に「時価純資産法」を用いることが多いです。時価評価を行った純資産に対して営業権を加えることで、客観性の高い事業価値を算出することができます。

資産の大部分が営業権で占める事業の買収を検討する際は、消費税負担についても検討する必要があります。場合によっては、事業譲渡以外の手法を用いることも検討したほうがよいでしょう。

【関連】のれんとは?意味や会計処理方法について具体例を挙げながら徹底解説

事業譲渡は棚卸対象資産に気をつけるべき!

事業譲渡は棚卸対象資産に気をつけるべき!

事業譲渡の際は、棚卸資産も注意が必要です。課税資産として消費税の課税対象に入っていますので、買収する事業が棚卸資産の多いものである場合、消費税負担も増加します。

また、時期によって棚卸資産の変動が激しい業種もあります。初期段階で想定していた量より大幅に増加していたというようなケースも考えられます。

事業譲渡を検討する際は、売り手の仕入と売上のタイミングについてある程度把握しておくことで防ぐことができます。

仕入直後は必然的に棚卸資産が多くなり、売上が多い時期は棚卸資産が減って消費税負担を抑えた引き継ぎが可能です。

事業譲渡のご相談はM&A総合研究所へ

事業譲渡は営業権(のれん代)や棚卸資産など、注意すべきポイントが沢山あります。営業権や棚卸資産を意識したいえで進行しなければ、消費税負担が増加して事業譲渡後の統合プロセスに支障がでる恐れもあります。

スムーズな事業譲渡を行うためには、M&A・事業譲渡の専門家に頼ることをおすすめします。M&A総合研究所では、M&Aに明るいアドバイザー・会計士・弁護士3名のフルサポート体制を用意しています。

会計士は財務面はもちろんのこと、税務面もカバーしていますので節税テクニックについてもお任せいただけます。

事業譲渡以外の手法も模索したうえで、目的の達成と税金負担を両立させたM&Aプランをご提案します。

料金体系は完全成功報酬制を採用しています。成功報酬のみのシンプルな料金体系なので税金と合わせた最終的な支出額を算出しやすくなっています。

無料相談は24時間お受けしています。事業譲渡をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。

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事業譲渡の消費税の計算方法

事業譲渡の消費税の計算方法

事業譲渡の際にかかる消費税の概要をみてきましたが、実際に課される消費税はいくらになるのでしょうか。ここでは、以下の事業譲渡の設例を用いて消費税の計算方法を解説します。

【事業譲渡の評価総額】

  • 建物・・・1億円
  • 設備・・・1000万円
  • 土地・・・2億円
  • 棚卸資産・・・3000万円
  • 商標権・・・2000万円
  • 営業権・・・5000万円
  • 社債・・・1000万円
  • 債権・・・2000万円

上記の事業譲渡で課税資産となるのは、建物・設備・棚卸資産・商標権・営業権です。「1億円+1000万円+3000万円+2000万円+5000万円=2億1000万円」となり、2億1000万円が消費税の課税対象となります。

2020年5月現在の消費税は10%であるため「2億1000万円×10%=2100万円」となり、消費税は2100万円という計算結果になります。

続けて、総合的に支払う金額を算出します。課税資産と非課税資産の評価総額は4億4000万円であるため、事業譲渡のクロージング時に支払う金額は消費税を加算して「4億4000万円+2100万円=4億6100万円」となります。

事業譲渡の消費税の納税方法

事業譲渡の消費税の納税方法

事業譲渡の消費税の負担者は買い手ですが、実際に納税するのは売り手です。事業譲渡のクロージング時に取得対価と一緒に消費税を受け取り、後日税務署に納税します。

消費税の納税時期は「事業年度終了日の翌日から2月以内」です。事業年度が4月1日~3月31日であれば、5月31日が納付期限となります。消費税の納付方法は「現金に納付書を添えて納付」と「電子納税」の2つがあります。

現金に納付書を添えて納付

管轄の税務署より確定申告書と一緒に納付書も送られてくるので、納付書に消費税金額を書き込み、管轄の税務署で納付します。

納付書が送られてこないまたは紛失したという場合は、税務署で納付書を受け取ることができます。

電子納税

確定申告をe-Taxで行っている場合は電子納税も可能です。確定申告を行った際に発行される納付番号を使ってインターネットバンキング・モバイルバンキング・ATMなどから納付します。

また、電子納税にはダイレクト納付という選択肢もあり、事前に利用届を提出して口座を登録しておくと直接納付が可能です。承認には1ヶ月程度かかりますので早めに手続きを済ませておくとよいでしょう。

事業譲渡以外のM&A手法

事業譲渡以外のM&A手法

事業譲渡以外にも沢山のM&A手法があります。営業権や棚卸資産の割合が大きい事業の場合、消費税がかからないM&A手法に切り替えることで、事業譲渡よりも税負担を抑えることも可能です。

この章では、事業譲渡以外のM&A手法を消費税や法人税に焦点をあてて解説します。税負担を抑えるためにも、事業譲渡以外のM&A手法を把握しておきましょう。

株式譲渡

株式譲渡は、売り手が保有する株式を譲渡して経営権を移転するM&A手法であり、手掛けている事業や保有する資産の全てを自動的に引き継ぎします。

事業譲渡の税金と比較すると、大幅に税金負担が軽い特徴があります。株式譲渡は株式の売買となるため、売り手は株式の譲渡所得として所得税・住民税・復興特別所得税(20.315%)、買い手には税金はかかりません。

買い手は消費税を納める必要がないうえ、売り手の課税率も大幅に下がっているので、税金面を重視するならば株式譲渡を利用するのも有効です。

合併

合併は、2つ以上の会社を1つの法人格に統合するM&A手法です。合併に関わった会社は、1つの会社を残して全て消滅します。

合併の税金は、非適格合併の場合は売り手に法人税(最大49.44%)が課せられます。買い手に対する消費税はありませんが、合併の場合は法人格が統合されるので、売り手の法人税負担は買い手の負担と同義になっています。

分割

分割は、事業の全部あるいは一部に関わる権利義務を包括的に承継するM&A手法です。事業譲渡は個別の同意が必要ですが、分割であればまとめて引き継ぎすることができます。

分割の売り手は、適格分割の場合は税制面で大幅な優遇措置が受けられます。また、適格・非適格関係なく、買い手側に消費税が課せられることはありません。

【関連】会社分割とは?4つの種類や税務・メリットやデメリット・事業譲渡との比較について解説

その他

そのほかのM&A手法には、第三者割当増資があります。第三者割当増資とは、定の第三者に新株発行の引受権利を割り当てて増資する手法です。

資金調達法として用いられることが多いですが、経営権が移転する範囲まで割り当てを行うことでM&A手法として活用することもできます。

資本金の増資となるため売り手側に税金は課せられませんが、新株の発行価格が株価よりも低い有利発行である場合、買い手に対して贈与税・所得税・法人税が課せられることがあります。

【関連】【会社売却で発生する税金の全知識】節税するコツまで徹底解説!

まとめ

まとめ

当記事では、事業譲渡の消費税についてくわしく解説しました。事業譲渡を行う場合、営業権(のれん代)の扱いや棚卸資産など、消費税に関する注意点がたくさんあります。

しかし、営業権の算出や棚卸資産の把握は難しいため、自力で行おうとすると無理が生じる可能性もあるため、事業譲渡は「売り手に法人税」「買い手に消費税」が課せられるという点を押さえておくだけでも十分です。

前提知識があるだけでも専門家の助言を仰ぐ時にスムーズに入ることができます。余裕があれば営業権や棚卸資産についても覚えておくと取りまとめも早くなるでしょう。

【事業譲渡の消費税まとめ】

  • 事業譲渡は課税資産と非課税資産に分類される
  • 事業譲渡の消費税は課税資産に対して課税
  • 事業譲渡は営業権と棚卸資産に注意

【課税資産】

  1. 有形固定資産
  2. 無形固定資産
  3. 棚卸資産
  4. 営業権(のれん代)

【非課税資産】

  1. 土地
  2. 有価証券
  3. 債権