
事業譲渡・事業売却を成功させるためには、戦略を正しく練ることが大切です。本記事では、事業譲渡・事業売却戦略をたてる目的やポイント、事業譲渡・事業売却のメリット・デメリットや手続きの流れなどを解説します。
目次
事業譲渡・事業売却の戦略

M&Aにはさまざまな手法がありますが、株式譲渡に次いでよく利用されているのが、事業譲渡(または事業売却)です。
事業譲渡・事業売却は、株式譲渡と違ってどの事業や資産を譲渡するかの自由度があるので、戦略をうまく練ることが大切です。

事業譲渡の戦略とは
事業譲渡の戦略で考えるべきことは、適切な譲受企業をみつけること、譲渡価格をいくらにするか、どの事業や資産を譲渡するかなどです。
譲受企業探しや譲渡価格の交渉の戦略は株式譲渡でも共通ですが、一部の事業だけを譲渡できる事業譲渡では、どの事業や資産を譲渡するかを決めることも戦略において重要になります。
事業売却の戦略とは
事業譲渡と似た用語に事業売却というものがありますが、事業譲渡と事業売却は基本的に同じ意味で使われます。会社法では事業譲渡が使われているので、事業譲渡のほうが正式な呼び方だといえます。
一方で、事業売却は、売り手側の視点での事業譲渡というニュアンスで使われることが多いです。逆に買い手からみた場合は、事業買収と呼ばれることもあります。
よって、事業売却の戦略は、売り手側の事業譲渡の戦略と基本的に同じであるため、譲渡価格の交渉や売却する事業の選択などが主になります。
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事業譲渡・事業売却の戦略をまとめる目的

事業譲渡・事業売却の戦略を練る時は、目的を明確にしておく必要があります。主な目的としては、以下の4点が考えられます。
【事業譲渡・事業売却の戦略をまとめる目的】
- クロージングまで明確に道筋を作る
- 優れた後継者・譲渡先を選定する
- 譲渡利益の希望額を決める
- 債務・債権・個人保証の対処ができる
①クロージングまで明確な道筋を作る
事業譲渡・事業売却では、本格的な手続きに入る前の段階で、クロージングまでの明確な道筋を作っておくことが重要な戦略になります。
事業譲渡・事業売却は手続きが多く期間もかかるので、道筋について戦略を練っておかないと手続きがスムーズに進まないことがあるうえ、余計なコストがかかってしまう可能性もあります。
②優れた後継者・譲渡先を選定する
事業譲渡・事業売却では、優れた後継者・譲渡先を選定することが戦略的にも重要になります。
どの後継者・譲渡先が優れているかは、譲渡側企業の内容や事情によって変わってきます。例えば、財務状況がよい譲渡先であっても、シナジー効果が見込みがなければ自社にとって優れた譲渡先とはいえない可能性があります。
③譲渡利益の希望額を決める
事業譲渡・事業売却では、買い手と売り手の経営者が交渉して売却価格を決定します。よって、交渉の前段階で、譲渡利益の希望額を決めておくことが戦略的に重要になります。
譲渡利益の希望額は、得た利益を新たな事業の資金にしたいのか、それとも負債の返済にあてるのかなど、目的によっても変わります。また、理論的な企業価値評価を行い、それを基準に希望額を決めていくことも大切です。
④債務・債権・個人保証の対処ができる
事業譲渡・事業売却では、譲渡する事業や資産を買い手との交渉で決めていきます。譲渡せずに残った債務・債権の対処については、あらかじめ戦略を練っておく必要があります。
個人保証の取り扱いについても、譲渡した事業に関して個人保証を引き継いでもらえるか、残った事業について個人保証をどうするのかといった戦略を考える必要があります。
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事業譲渡・事業売却戦略をまとめるポイント

事業譲渡・事業売却の戦略をうまくまとめるためには、どのような点を意識しておけばよいのでしょうか。ここでは、事業譲渡・事業売却をまとめる主な5つのポイントについて解説します。
【事業譲渡・事業売却をまとめるポイント】
- 自社の財務状況や債務・会計などを分析する
- 経営戦略や成長戦略を明確にする
- 事業譲渡・事業売却の目的を定める
- 譲渡・売却予定の事業の市場調査を行う
- 事業譲渡・事業売却の戦略オプション案をまとめる
①自社の財務状況や債務・会計などを分析する
事業譲渡・事業売却では一部の事業を譲渡することができるため、不採算事業を譲渡してコア事業に集中したり、逆に採算事業を譲渡して負債の返済に充てるといった戦略をとるケースが多くmきられます。
こういった戦略をうまくまとめるためには、まず自社の債務・会計などを分析し、財務状況を把握することが大切です。
②経営戦略や成長戦略を明確にする
事業譲渡・事業売却は成約したら終わりではなく、その後の経営でいかに事業を成長させられるかが重要です。
したがって、事業譲渡・事業売却の戦略をまとめる際は、成約後の経営戦略や成長戦略を明確にすることが大切です。
事業譲渡・事業売却を行う場合、譲渡先がなかなかみつからないと焦ってしまい、いつのまにか成約すること自体が目的になってしまうことも少なくありません。
このような失敗を避けるためにも、本格的な手続きに入る前の段階で、経営戦略や成長戦略を考えておくことが重要です。
③事業譲渡・事業売却の目的を定める
事業譲渡・事業売却は、売却益を得る・不採算事業を譲渡して選択と集中を行う・シナジー効果で事業の発展を目指すなど、さまざまな目的で活用することができます。
事業譲渡・事業売却戦略をまとめる際は、まず目的をはっきりさせておくことが大切です。
目的をはっきりさせることは優れた譲渡先企業の選定につながるだけでなく、交渉で説得力を持たせるためにも重要です。
④譲渡・売却予定の事業の市場調査を行う
事業譲渡・事業売却を成功させるためには、譲渡・売却予定の事業の市場調査を行うことも重要です。
市場調査を行うことで、譲渡・売却予定事業の市場での位置づけが明確になり、事業の強みと弱みを洗い出すこともできます。
譲渡・売却予定の事業について理解を深めておけば、優れた譲渡先の選定にもつながり、売却額の交渉なども有利に進めていくことが可能です。
⑤事業譲渡・事業売却の戦略オプションをまとめる
事業譲渡・事業売却では、買い手と売り手双方に希望する条件があるので、自社が求める条件が全て通るとは限りません。場合によっては、戦略を変えていく柔軟さも必要になることがあります。
戦略の変更は、いざその時になって行き当たりばったりで行ってもうまくいきません。あらかじめどのような事態が起こるか想定して、複数の戦略オプションを用意しておくことが大切です。
M&A戦略としての事業譲渡・事業売却のメリット・デメリット

M&Aの手法は、事業譲渡・事業売却以外にもさまざまなものがあります。業譲渡・事業売却を行う際は、株式譲渡などのほかの手法を使った場合とメリット・デメリットを比較して、事業譲渡・事業売却のほうが適していることを確認しておかなければなりません。
そのためには、まず事業譲渡・事業売却のメリット・デメリットを正しく理解しておく必要があります。

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戦略として事業譲渡を選ぶメリット
事業譲渡のメリットとしては主に以下の3つが挙げられます。ここではそれぞれについて解説します。
【戦略として事業譲渡を選ぶメリット】
- 一部事業のみを譲渡できる
- 譲渡した際の対価を直接得られる
- 従業員や資産を守ることが出来る
①一部事業のみを譲渡できる
最も一般的なM&A手法である株式譲渡では、会社を包括的に譲渡するため、どの事業を売却するか選を選ぶことはできず、営んでいる全ての事業が譲受企業に渡ることになります。
一方で、事業譲渡は株式ではなく事業資産を直接売買するため、一部事業のみを譲渡できるメリットがあります。
②譲渡した際の対価を直接得られる
M&Aで多く用いられる株式譲渡は株式の売買なので、会社ではなく株式を保有していた株主が対価を得ることになります。
また、会社分割のような株式を対価とするM&A手法では、得た株式を売却しなければ現金を得ることはできません。
一方で、事業譲渡では事業を譲渡した会社が直接対価を現金で受け取るので、新たな事業の資金として活用しやすいメリットがあります。
③従業員や資産を守ることが出来る
経営不振の会社がもし倒産・廃業してしまうと、破産や特別清算によって資産は全て失い、さらに従業員は解雇しなければならなくなります。
不採算事業を事業譲渡で売却すれば、倒産を避けて資産を守ることができるうえ、譲渡先企業で従業員は引き続き働くことができます。
戦略として事業譲渡を選ぶデメリット
戦略として事業譲渡を選ぶべきか検討する際は、メリットだけではなくデメリットも理解しておくことが大切です。戦略として事業譲渡を選ぶデメリットとしては、主に3点が挙げられます。
【戦略として事業譲渡を選ぶデメリット】
- 株主は譲渡対価を受け取れない
- 負債が譲渡できない
- 譲渡した事業を行えない
①株主は譲渡対価を受け取れない
事業譲渡は株式譲渡と違って、対価を譲渡企業が受け取ることになります。株主が譲渡対価を受け取れないのは場合によってはデメリットとなり得ます。
株主が譲渡対価を受け取れないのがデメリットとなるのは、経営者の引退のためにM&Aを行うような場合です。株式譲渡なら経営者に直接対価が入り引退後の生活資金にできますが、事業譲渡の場合は経営者に直接対価は入りません。
②負債が譲渡できない
事業譲渡ではどの資産を譲渡するか選ぶことができるので、譲受企業側は不要な負債を受け入れる必要はありません。
つまり、事業譲渡の場合は、譲渡企業側は整理したいと思っている負債を譲渡できない可能性がある、ということになります。
一方、株式譲渡の場合は、経営権の譲渡により会社を包括的に譲り渡すので、負債も全て譲渡することができます。
③譲渡した事業を行えない
事業譲渡で注意すべきなのは「競業避止義務」です。競業避止義務とは、事業譲渡した事業と同じ事業を一定期間行えないという規則で、原則として20年間の義務が課せられます。
事業譲渡を行う際は、競業避止義務も踏まえてその後の経営戦略を考えておく必要があります。なお、競業避止義務は買い手と売り手の交渉によって期間を変更できるので、この点も争点になることがあります。
戦略として事業売却を選ぶメリット
戦略として事業売却を選ぶメリットとしては、株主は売却益を得られる、負債から解放されるなど、以下の3つが考えられます。
【戦略として事業売却を選ぶメリット】
- 株主は売却益を得られる
- 負債から解放される
- 会社を引き継ぐことが出来る
①株主は売却益を得られる
事業売却では事業を売却した企業が対価を受け取るので、株主は直接的には売却益を得ることはできません。
しかし、まず会社が対価を受け取ったうえで、あらためて退職金などの名目で経営者へ分配することは可能です。事業売却でも、株主は得ようと思えば売却益を得られることになります。
②負債から解放される
もし不採算事業を事業売却できれば、その事業の負債から解放されることになります。ただし、事業売却では必ずしも負債を売却できるとは限らないので注意が必要です。
また、採算の取れている事業を事業売却して、得た売却益を負債の返済にあてる方法で負債から解放されることもできます。
③会社を引き継ぐことが出来る
経営者が引退する時に後継者がいない場合、事業が黒字であっても廃業せざるを得なくなります。
しかし、事業売却すれば譲渡先の企業で事業を継続することができるため、事業承継の手段としても有効です。
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戦略として事業売却を選ぶデメリット
戦略として事業売却を選ぶ主なデメリットには、以下の3点が考えられます。
【戦略として事業売却を選ぶデメリット】
- 売却後に拘束される可能性がある
- 従業員や資産も引き継ぐ
- 売却した事業を行えない
①売却後に拘束される可能性がある
経営者が引退する目的で事業売却するのは有力ですが、事業売却が成約したからといってすぐに引退できるとは限らないので注意が必要です。
事業売却で新しい企業が事業を引き継ぐと、今までとは違う風土やシステムのもとで事業を運営していくことになるので、売却した事業と譲受企業の間で風土やシステムのすり合わせを行う必要がでてきます。
譲受企業だけで進めてもうまくいかないことが多いため、すり合わせ作業には譲渡企業の経営者や役員のサポートが必要になります。
事業売却では、売却後も顧問などの形で譲渡企業の経営者や役員が一定期間拘束されるケースが多いことも理解しておくようにしましょう。
②従業員や資産も引き継ぐ
事業売却を行うと売却した資産は譲受企業のものになり、譲渡企業はそれを失う代わりに売却益を得ることになります。
事業売却を行う以上、負債ばかりを相手に押しつけることはできず、事業に関係する資産も手放さなければなりません。
また、その事業で働いている従業員も、譲受企業へ移籍することになります。優秀な従業員がいる場合は、人的資産を失うことも考慮しておかなくてはなりません。
③売却した事業を行えない
事業売却をすると、競業避止義務という規定により、売却した事業と同じ事業を20年間行えなくなります。
もし譲渡企業がすぐさま同じ事業を始めてしまうと、譲受企業にとって不利益となるため、この制限はやむを得ないものといえるでしょう。
事業売却をする際は、競業避止義務による事業の制限も考慮して、将来を見据えた戦略を練ることが大切です。
事業譲渡・事業売却戦略策定と手続き・流れ

事業譲渡・事業売却の戦略策定と手続き・流れは、おおむね以下のような手順で進んでいきます。この章ではこれらの手続き・流れについて1つずつ解説していきます。
【事業譲渡・事業売却戦略策定と手続き・流れ】
- 事情譲渡・事業売却の戦略選定及び、決定
- 譲渡・売却先の選定
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 取締役会での決議
- 事業譲渡契約(事業売却契約)の締結
- 各種届出・株主への通知・公告
- 株主総会での決議
- 名義変更などの手続き
- クロージング
①事業譲渡・事業売却の戦略選定及び、決定
M&Aを行う際は、まずM&A仲介会社などの専門家に相談を持ちかけ、自社の状況や事業譲渡・事業売却の意図を説明した後、どの戦略を選ぶのが最適かを考えていきます。
事業譲渡・事業売却を希望している場合でも、この段階では株式譲渡などほかの選択肢の可能性も考えておくと戦略の幅が広がります。
②譲渡・売却先の選定
戦略選定の結果事業譲渡・事業売却を行うことが決まったら、次は譲渡・売却先となる企業の選定を進めていきます。
譲渡・売却先の選定は、主にM&A仲介会社が持っている候補先のリストから行います。
また、最近はマッチングサイトというネット上で譲渡・売却先を探せるサービスも増えてきており、選択の幅が広がっています。
秘密保持契約の締結
事業譲渡・事業売却を行う際に必ずしておかなければならないのが、秘密保持契約の締結です。
M&Aによる事業譲渡・事業売却では、仲介会社や初対面の譲渡先候補に対して自社の情報を明かさなければならないので、情報漏洩防止の観点からも秘密保持契約の締結は必須だといえます。
③基本合意書の締結
譲渡・売却先候補の経営者と実際に会って面談を行い、基本的な合意内容を固めていきます。この時点ではまたお互いの企業を書類でしか把握できていないので、最終的な合意は行わずあくまで仮の合意内容を詰めていきます。
仮の合意内容が固まったら、基本合意書という書面にして締結します。この時点ではまだ契約内容は確定ではないので、この後の交渉によって条件を変更することも可能です。
意向表明書の受領
買い手と売り手の経営者が面談を行う際、買い手から売り手へ意向表明書という書面が提出されます。買い手側が本格的に交渉する意思があることを売り手に示すもので、提出することでスムーズに交渉を進めていくことができます。
意向表明書の提出は義務ではありませんが、できるだけ提出しておくことをおすすめします。
M&Aの基本合意書を徹底解説!内容/注意点/印紙【サンプルあり】
④デューデリジェンスの実施
基本合意書を締結した時点では、相手の経営者から聞いた話や書類でしか、相手企業のことを把握できていません。
事業譲渡・事業売却の最終契約を締結するためには、より詳しい相手企業の調査を行う必要があります。デューデリジェンスとは、買い手企業が売り手企業に対して会社の内容を調査することです。
デューデリジェンスは買い手にとっては大きなコスト的負担となり、売り手にとっては精神的負担となりますが、事業譲渡・事業売却を成功させるためには、デューデリジェンスをしっかり行うことが大切です。
⑤取締役会での決議
取締役会を設置している会社では、事業譲渡・事業売却契約を締結するにあたって、取締役会の決議を得る必要があります。
⑥事業譲渡契約(事業売却契約)の締結
デューデリジェンスの結果を加味して基本合意書の内容を精査し、買い手と売り手が納得して取締役会の決議が得られたら、事業譲渡契約(事業売却契約)を締結して事業譲渡・事業売却を確定させます。
⑦各種届出・株主への通知・公告
事業譲渡・事業売却契約が締結されると、それを株主総会で決議するために株主への通知・公告を行います。また、ほかに必要な各種届出がある場合もこの時点で行います。
⑧株主総会での決議
事業譲渡・事業売却では、原則として株主総会特別決議が必要とします。特別決議は議決権の過半数の株主が出席したうえで、3分の2以上の賛成を必要とします。
ただし、譲渡した事業の規模が非常に小さく、総資産の5分の1以下の場合は、特別決議が必要ないなどの例外もあるため、事業譲渡・事業売却では、特別決議が必要なケースかどうかを確認しておくことも大切です。
⑨名義変更などの手続き
株主総会の特別決議が可決されたら、資産の名義変更など具体的な事業譲渡・事業売却の手続きを進めていきます。
事業譲渡・事業売却は資産を個別に譲渡するので、全ての資産について一つずつ名義変更や契約の再締結や登記が必要であるのが注意点です。
従業員の雇用契約も、譲渡企業を一旦解雇したうえで、従業員の同意のもと譲受企業で新たに雇用契約を締結しなければなりません。
⑩クロージング
クロージングとは、事業譲渡契約(事業売却契約)の内容を具体的に実行していくことです。先ほどの名義変更などの手続きも、広い意味でクロージングの一種に含まれます。
株式譲渡に比べると、事業譲渡・事業売却のクロージング作業は、時間と労力がかかる傾向があります。
事業譲渡契約(事業売却契約)には、通常「クロージング条件」という条項が入っており、これが満たされた時に初めてクロージングを実行できることになっています。
具体的なクロージング条件としては、会社の財務や税務に関して虚偽がないこと、許認可の再取得を行うこと、取引先との取引を継続することなどがあり、どの条件を課すかは個々の契約によって変わってきます。
事業譲渡・事業売却の戦略算定の予備知識

この章では、事業譲渡・事業売却の戦略算定を行うにあたって、把握しておきたい予備知識について解説します。
事業譲渡・事業売却の戦略算定のための企業評価算出
事業譲渡・事業売却の目的はいろいろありますが、どの目的で行うにしろ、売却価格をいくらにするかは重要な問題になります。
事業譲渡・事業売却の戦略算定のためには、企業価値評価により理論的な価格を見積もっておくことが重要です。
企業価値評価の価格を参考にしつつ、具体的な金額は買い手・売り手の交渉によって詰めていきます。
事業譲渡・事業売却後の仕訳内容の確認
事業譲渡・事業売却は資産を1つずつ売買するので、仕訳内容を確認しておくことも大切です。
事業譲渡・事業売却の基本的な仕訳は、譲渡側は借方に現金、貸方に譲渡した事業資産を計上します。譲受側は譲渡側とは反対の仕訳になり、借方に事業資産、貸方に現金を計上します。
事業譲渡・事業売却の注意点
事業譲渡・事業売却では取引するものを細かく決めることができますが、譲渡する資産を選べるため交渉が難航するケースもあります。
事業譲渡・事業売却を行う際は、こういった注意点をあらかじめ押さえておくことが大切です。
事業譲渡の注意点
事業譲渡は、株式譲渡に比べると手続きに手間と時間がかかるのが注意点の1つです。株式の譲渡では株主名簿を書き換えればよいですが、事業資産の譲渡は契約の再締結など非常に手間がかかります。
譲渡する事業資産について、どういった手続きが必要になるかをあらかじめ把握しておくことが大切です。
事業売却の注意点
事業売却で事業を売却する側の注意点としては、競業避止義務や税金などが挙げられます。
事業売却で事業を売却した側の企業は、競業避止義務により一定期間同じ事業を行うことができません。
また、事業売却の税金は一般的に株式譲渡より高くなる傾向があるので、税金の支払いも考慮して価格交渉していく必要があります。
事業譲渡・事業売却の戦略算定・相談は仲介会社がおすすめ

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まとめ

本記事では、事業譲渡・事業売却の戦略について解説しました。事業譲渡・事業売却は、戦略のポイントを押さえて進めていくことが、事業譲渡・事業売却の成功率を高めることにつながります。
戦略策定が成功のカギともなるので、M&A仲介会社など専門家のサポート下で進めていくことをおすすめします。
【事業譲渡・事業売却の戦略をまとめる目的】
- クロージングまで明確な道筋を作る
- 優れた後継者・譲渡先を選定する
- 譲渡利益の希望額を決める
- 債務・債権・個人保証の対処ができる
【事業譲渡・事業売却戦略をまとめるポイント】
- 自社の財務状況や債務・会計などを分析する
- 経営戦略や成長戦略を明確にする
- 事業譲渡・事業売却の目的を定める
- 譲渡・売却予定の事業の市場調査を行う
- 事業譲渡・事業売却の戦略オプション案をまとめる
【戦略として事業譲渡を選ぶメリット】
- 一部事業のみを譲渡できる
- 譲渡した際の対価を直接得られる
- 従業員や資産を守ることが出来る
【戦略として事業譲渡を選ぶデメリット】
- 株主は譲渡対価を受け取れない
- 負債が譲渡できない
- 譲渡した事業を行えない
【戦略として事業売却を選ぶメリット】
- 株主は売却益を得られる
- 負債からの解放
- 会社の引き継ぎができる
【戦略として事業売却を選ぶデメリット】
- 売却後に拘束される可能性がある
- 従業員も引き継ぐため優秀な人材を失う可能性がある
- 売却した事業を行えない
【事業譲渡・事業売却戦略策定と手続き・流れ】
- 事業譲渡・事業売却の戦略選定及び、決定
- 譲渡・売却先の選定
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 取締役会での決議
- 事業譲渡契約(事業売却契約)の締結
- 各種届出・株主への通知・公告
- 株主総会での決議
- 名義変更などの手続き
- クロージング